機械人形は救済の夢を見る   作:御供のキツネ

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9Sは少し踏み入る。



ch-13 小さな懐疑心

7Sの下へとやってきた2Bと9Sが飛行ユニットから降りると、飛行ユニットは自動操縦に切り替わりバンカーへと帰艦して行く。

そしてそれと同時に司令部から通信が入った。

 

「司令部より全ヨルハ部隊へ。数百年もの間確認されなかったエイリアンたちの反応を確認した。

 知っていると思うがエイリアンは機械生命体の司令塔だ。エイリアンを殲滅すれば長きに渡るこの戦争も終結する。

 現在、技術部の方で電波発信源の解析を進めているが、情報が不足している。

 地上にいるヨルハ部隊は本案件に対する情報収集を最優先しろ。この好機を逃してはならない。

 ……人類に栄光あれ」

 

それだけを一方的に伝えると通信は切れた。

すると7Sはその通信に対してため息をつくと、2Bと9Sへと声を掛ける。

 

「お疲れ様、二人とも。怪我は無い?」

 

「大丈夫。それより7Sこそ怪我や損傷はない?」

 

「オレも大丈夫。9Sは?」

 

「僕も平気ですよ。というよりも、僕や2Bよりも7Sの方が心配だったんですけど……何もないようで何よりです」

 

それぞれが無事かどうか確認してから三人は顔を見合わせた。

何を口にしようとしているのかは、わかりきっている。先ほどの司令部からの通信にあったエイリアンについてだ。

 

「一応、司令部の情報を元に信号発信源を予測。マップにマークしました。

 ……でもこれ、地下の深めの場所みたいですけど……」

 

「行ってみればわかるよ……多分」

 

「2Bって……大雑把なところがあるんですね」

 

「乱暴なところもな。それで、今すぐ向かうつもりじゃないよな?」

 

9Sが2Bの意外な一面というか、何となく察していたことを口にすると、それに追加で7Sが乱暴なところもあると告げる。すると9Sはそれに対して何処か納得しているように見えた。

だがそれよりも言っておきたいことがあった7Sは二人を見てそう続けた。

 

「調査するなら早い方が良いと思う」

 

「そうですね、それに本当に戦争が終結するなら……」

 

「はい、ダメでーす」

 

二人の言葉を聞いて7Sが腕を交差させて×を作りながらそう言った。

それを見て二人は意外そうな顔をしていた。ゴーグルのせいで微妙にわかりづらいが、7Sにはすぐにわかった。

 

「二人とも遊園地廃墟に行って、その後補給やスキャン、メンテナンスはした?」

 

「……してない」

 

「あー……そういえば、出来てませんね……」

 

「なら一旦キャンプに戻ってスキャンしてメンテナンス。たぶんデボルとポポルがいると思うからオレや9Sだと出来ないメンテナンスもやってもらえるな。そういうわけで一度戻るぞ。

 って9Sは知ってるみたいだけど、2Bはデボルとポポルのことは知らないのか」

 

「僕は前に一度会いましたからね」

 

「私は知らない。けど、私は9Sにしてもらうから大丈夫」

 

7Sにスキャンとメンテナンスをしていないことを指摘された二人は、7Sが引かないことが理解出来ているので大人しく一度キャンプに戻ることにした。

また、デボルとポポルに頼めばより良いメンテナンスが出来ると言う7Sだが、2Bは9Sにやってもらうから良いと断る。それが信頼されているようで9Sには嬉しくて、一人上機嫌になっているのに2Bは気づいていないようだった。

 

「はいはい。それじゃさっさと戻ろう。あ、スキャンとメンテナンスだけじゃなくてちゃんと補給とか準備するものがあるならそれを忘れないようにしないとダメだからな」

 

「はーい、わかってますよ。7Sも僕らのことばかり言ってないで、自分のことを忘れないでくださいよ?」

 

「7Sは私たちのことを気にするのは良いけど、自分のことをたまに蔑ろにしてることがある。気をつけて」

 

「わかってるって。まったく……子供じゃないんだからそれくらいちゃんとやるっての」

 

「それ、僕たちの……いえ、僕の台詞ですけど」

 

「……なんでそこで私を除外したのかな」

 

「深い意味はありませんよ?ただ2Bってたまーに子供っぽいところがあるからなぁ、なんて思ってませんから」

 

何やら9Sを問い詰め始めた2Bに呆れながら7Sはキャンプへと向かう。

それに気づいた二人が急いで後を追ってくる様子を見て、仕方が無いな、というように7Sは小さく笑った。

 

 

 

 

レジスタンスキャンプに戻った三人は宛がわれた部屋でスキャンとメンテナンスを済ませている。

とは言え、7Sは非常に手馴れた様子で自身のメンテナンスを終えると先に部屋から出て行く。

そして道具屋の隣にいるデボルとポポルを尋ねた。

 

「こんにちわ、デボル、ポポル」

 

「おう、こんにちわ。7S」

 

「こんにちわ。何だか大変なことになってるみたいだけど、無理はしていないかしら?」

 

「無理なんてしないって。それで、そっちは何か面白い物とかあった?」

 

「それ嘘だろ?まぁ、私たちが見つけたものと言えば……砂漠地帯でこんなの見つけたくらいだな」

 

そう言ってデボルが手元の道具を操作して表示した写真には、丸い髑髏のような見た目の物体だった。

その写真を見る限り、どうやら巨大なそれが幾つも転がっているのがわかる。

 

「それが何なのか私たちにはわからなかったけど……7Sは何か心当たりがあったりする?」

 

「これって……確か研究所で……?」

 

「お、知ってるのか?」

 

7Sが小さな声で呟いたのを聞き逃さなかったデボルが聞くが7Sは首を傾げた。

 

「え、何が?」

 

「いや、研究所で、とか言ってただろ?」

 

「言ってないんだけど……」

 

「はぁ?いや、今確かに……」

 

「また、なのね。デボル、7Sに聞いてもわからないわよ。

 きっと前と同じことでしょうからね」

 

「あぁ……そういうことか。7S、記憶領域に何か変なバグとかエラーが発生してるんじゃないのか?」

 

前と同じ、というのは自分たちが庇われたときのことを言っているようだが、やはり7Sは首を傾げるばかりだった。

7Sとしては何処かで見たことがあるような、そんな気がしていた程度だったのだが気づかないうちに何か言っていたらしい。

当然、7Sは自分が何を言ったのか知らないし、この写真の物体についてもやはり記憶にない。

 

「さっきチェックしたばかりだからそんなことはないと思うけど……いや、後で念の為にもう一回やっておくか……」

 

「その方が良いわね。あぁ、それとその写真のデータだけど、貴方にあげるわ」

 

「え、特に必要ないんだけど」

 

「折角の好意なんだ、受け取っておけよ」

 

「……押し付けられたような気がする……!」

 

楽しそうに7Sへと写真データを押し付けたポポルはその次に自分たちの後ろに置いてある荷物を漁り始めた。

その中にはまだ何かあるようだが、それが出てくるよりも先にデボルが口を開く。

 

「そういえば、あの9Sと2Bってやつだけど、どうなんだ?」

 

「どうって言われても」

 

「お前が随分と気に掛けてるみたいだからな。信用出来るのか、って意味だよ。まぁ、見る限りは大丈夫そうだけど、やっぱりあの二人を良く知ってる7Sの意見も聞いておきたいからさ」

 

「あぁ、出来る出来る。2Bはお堅いように見えるけど天然だったり大雑把だったり意外と優しかったり……デボルとも結構気があうんじゃないか?

 9Sは少し幼さがあるけど礼儀正しいし人当たりも良いからポポルと気が合うだろうな。まぁ、その辺りは自分たちで話して確かめるべきだと思うぞ」

 

どうやらデボルは、自分たちの友人である7Sが気に掛けている相手が信用出来るのか、それが気になっていたらしい。

とはいえ、デボルとしては遠目で様子を見る限り問題ないとは思っているようだが、それでも念のため、というやつだろうか。

それに対して7Sは二人は信用出来ると良い、また意外と気が合うであろうことも伝えた。

 

「へぇ……なら今度話してみるか」

 

7Sの話を聞いて少し嬉しそうに言って頷くデボルは、友人が出来ることが楽しみで仕方が無いように見える。

それを見て、7Sは最初の頃に比べると大分明るくなったな、とそう思った。

 

「あぁ、あったあった。この杖なんだけど……7Sは何か知らないかしら?」

 

荷物の中から目当てのものを探し出したポポルが7Sに差し出したのは、二本の杖だった。

その杖は同じデザインをしていて、7Sは首を傾げる。

 

「いや、知らない……と、思う。

 なんだろう、見たことがあるような、ないような……酷く曖昧な感じがするんだけど……」

 

「そう……なら仕方ないわね……」

 

「でもわざわざ拾ったってことは何かあると思ったんじゃないのか?」

 

「あぁ、それか。なんとなく私たちが持ってないといけない気がしたんだよ。そうだよな、ポポル」

 

「ええ、何故かはわからないけどね」

 

そんなことを言うポポルだが、大事そうに杖を持っているのを見ると7Sにもそれが当然のように思えた。

もしかすると二人にとって何か意味のある物なのかもしれない。そう考えると同時に、ふと思う。

 

「……何か、すっごい口の悪いポポルが頭に浮かんだんだけど……?」

 

「それ、酒でも入ってるポポルでも想像したんじゃないか?」

 

「あぁ、そうかも。前に見たのが頭に浮かんだのかも。

 あの時は酔ったポポルがレジスタンスたちを殴り倒したんだよな。

 前線で戦ってるレジスタンスだったのに、ポポルに殴られてから自信喪失してたのが可哀想だったけど……」

 

「私は少しだけ覚えてるけど、結構爽快だった気がするぞ?」

 

「デボルはデボルで酔ってたからほとんど覚えてないだろうけど、アネモネと一騎打ちって何してんだか。って思ったのを覚えてるな」

 

「あの、えっと……そういう記憶に無い話をされると困るんだけど……

 というか忘れてくれないかしら。ね?ね?」

 

妙なことを口にした7Sに対してデボルがそう答えた。

確かにデボルは酒が入ると可愛らしい感じになるのに対して、ポポルは酒が入ると大暴れしてしまう。それと、なかなかに暴力的な一面を見せる。

具体的に言うと、今までの鬱憤を晴らさんばかりにレジスタンスたちを殴り飛ばしたのだ。

屈強な男型のレジスタンスを一撃で殴り飛ばし、その隣でデボルが「さっすがポポルだにゃー♪」と楽しそうにし、それを呆れた様子で見る7Sがいて、ポッドはその一部始終を映像データに収めていた。

尚、最終的にはアネモネとの一騎打ちの最中にポポルが寝落ちする。という結末を迎えたが、ポポルはその一切を覚えていないというのが驚きである。

その後、デボルとポポルに対して厳しい態度で接するレジスタンスがまだ残っていたがその一件以降激減した。触らぬ神に祟りなし、とでも考えたのだろう。

 

「はいはい。それで、他に何か確かめたいことってある?」

 

「いや、私はないな。ポポルはどうだ?」

 

「私も特にはないわね」

 

「そっか。それじゃ念のためにもう一回記憶領域のチェックをするから、そろそろ部屋に戻らせてもらうぞ」

 

「あぁ、お前はちょくちょく可笑しくなってるみたいだからちゃんとチェックしとけよ?」

 

「そのことで何かわかったら教えてね。もしかしたら力になれるかもしれないから」

 

「ん、その時はよろしく。それじゃ、また」

 

最後にそう言葉を交わして部屋に戻る7Sだが、最後にちらりと二人を窺い見ると二人とも杖を手にしてあれやこれやと話をしていた。

その表情は初めて会ったときよりもずっと明るくて、やっぱりあの二人はああして明るく楽しくしてる方が似合うものだ。

そんなことを考えながら、ポッドを引き連れて歩いて行った。

 

 

 

 

7Sが外でデボル、ポポルと会話をしている間、9Sはスリープモードになっている2Bのスキャンとメンテナンスを行っていた。

本体はこうしてスリープモードの相手をスキャンし、メンテナンスを行うのが一般的であり、7Sのように行動している相手をハッキングして行うようなことではない。

 

「さて……スキャンしたけど、何処も異常はないし……7Sはちょっと心配性すぎるんだよなぁ……

 あ、いや……自分のことは蔑ろにしてるっていうか、あんまり気にしてる様子はないから微妙に違うのか……」

 

そうした作業の間、独り言を口にするがそれは7Sに対して9Sが感じていることだった。

どうにも7Sは自分と2Bに対しては過剰なまでに心配している。そんな気がしてならないのだ。

最初は気のせいかとも思ったが、日に日に過保護になっている。と、9Sは感じていた。

 

「んー……やっぱり僕と2Bに対して、心配性ってことなのかな……」

 

そんなことを考えながらも2Bのメンテナンスを終える。

 

「さて、と……とりあえずは終わったけど、最後にもう一回確認しておかないと7Sがうるさいんだから……」

 

不満そうに口にしてから再度2Bのシステムをスキャンしていく。

やはり何処にも異常は見られないな。そう納得して終了しようとしたところでふと気になることがあった。

2Bの記憶領域の一部にロックがかけられているのだ。

 

「どうしてこんなところに……?」

 

そんな疑問を浮かべながら、何かあるのかと一瞬ロックを解除しようかどうか、悩んでしまう。

本来なら他人の記憶を勝手に覗くようなことは許されることではない。許されるようなことではないのだが、以前から、2Bと7Sが自分に対する態度がどうにも気に掛かっていた。

まるで今回の任務の為に同行する以前から、自分を知っているような、そんな感覚を覚えていた。

だからもしかしたらこれはその疑問の答えを見つけるチャンスなのかもしれない。

そう考えているからこそ、9Sは悩んでいる。

 

「……ごめん、2B」

 

聞こえていないのを承知で一言謝ると、9Sはそのロックを解除しに掛かる。

当然のように防衛プログラムが作動するがそれを突破し、2Bの記憶を確認する。

だがどうにも不鮮明で、ロックだけではなく他にも何か仕掛けがされていたようだった。

 

『とりあえ………監視………そ………追って……る』

 

途切れ途切れでよく聞き取れないがどうやらそれは司令官であるホワイトの声だと9Sは判断することが出来た。

 

『S………情報……専門…………特性と………知りすぎ…………S型の宿…………』

 

聞けば聞くほど雑音が混じるようになり、聞き取れなくなってくる。

それでも9Sは言葉として聞き取れるものを聞き逃さないようにと神経を集中させる。

 

『いつ…………禁止さ………染め…………』

 

だがほとんどの言葉を聞き取ることが出来ないほどに雑音が酷くなり、それ以上はただのノイズとしてしか認識出来なかった。

また、先ほど解除した防衛プログラムとは別のプログラムによってか、9Sは強制的に記憶領域から追い出されてしまった。

それでも9Sにとっては少しだけ聞くことが出来たそれらの言葉から本来ホワイトが何を言っていたのかを予想することが出来た。

 

まずホワイトが誰かを監視するように2Bに対して命令していたこと。

次にS、情報、専門という言葉からはS型に対して情報収集を専門とする機体であると言いたいのだろう。

それから、欠けている言葉を予想するのであればその次は、特性と何らかの理由から知りすぎてしまうのがS型の宿命だと言っていたと予想が出来る。

また、ほとんど聞き取れなかったがホワイトは、いつか禁止された行為に手を染める。ということが言いたかったのではないか、何故か確信染みた予想が9Sの脳裏に浮かぶ。

 

ならばその監視されていたのは誰なのだろうか。

S型ということから監視されていたのは自分か7Sだとは思う。だが2Bがそうして自分を監視をしているような素振りは見えないし、7Sを監視している素振りもない。

であるならば別のS型を監視していた過去の記憶なのだろうか。

だがどうして戦闘モデルである2Bがそんなことを命令されていたのか。

そこまで考えているとノックなどなく、急に扉が開かれた。

 

「ただいまー……って、2Bはまだスリープモードか」

 

いきなり入ってきた7Sに驚いて、9Sは咄嗟にコンソールを消してしまう。

それを見た7Sは何事かといぶかしむが、何やら良からぬことを考えたようににやりと笑った。

 

「そっかそっか。これはあれだな?」

 

「待って!7Sが想像してるのは絶対に違いますからね!?」

 

「スリープモードの2Bに悪戯しようとしてたな!」

 

「違いますってば!」

 

うんうんと一人頷く7Sに対して自分はそんなつもりではなかったと口にする9Sだったが、まったく聞いてくれない。

むしろ何かを閃いたように部屋の中に放置されている荷物を漁り始めた。

また何かやらかす気ではないだろうか。そう思いながらも止めるだけ意味がないとわかっている9Sはその動向を見守る。

その頭の中には先ほど聞いた、2Bの記憶の断片のことなど既にない。

主に7Sのせいで考える余裕がなかったことと、また妙なことをしようとしている7Sを見て呆れてしまった。というのがその理由だ。

少しして7Sが目当ての物を見つけたらしく何かを持って2Bの傍へと近寄った。

 

「旧世界の文献によるとだな、寝ている相手への悪戯は額に肉って書くらしいんだ」

 

「それを2Bにやると、後で絶対に怒られると思うんだけど……」

 

「やれるチャンスがあるならやっとかないとな!」

 

言いながら非常に楽しそうにマジックペンの蓋を取ると2Bの額に肉の文字を書こうとそのペン先を額へと向ける。

そしてそれが額に当たる寸前でペンを持っている手が何者かに掴まれた。

 

「何をしようとしていたのかな」

 

「あ、おはよう2B。いや、そろそろ起こそうかなー、と思って……」

 

「ペンを持って?」

 

「そうそう。あ、起きたならもう良いから手を放してもらいたいんだけど……」

 

「9S、7Sを捕まえてて」

 

「あ、はい。わかりました」

 

普段と変わらない様子で淡々と喋る2Bに対して7Sは自分のしていたことを誤魔化そうとしているようだった。

だがそんなことは意味がない。2Bは9Sにお願いして7Sを捕獲。マジックペンは没収である。

 

「放せ!俺にはわかるぞ、2B絶対に怒ってるから!逃げないといけないんだよ!」

 

「7Sの自業自得ですから、諦めてください」

 

「諦めてたまるか!あ、そうだ。2B、私たちは感情を持つことを禁止されている。ってことで怒ったりしないよな?」

 

「大丈夫。私は感情を持っていない。でもやられた以上はやり返す」

 

「まだ何もやってなかっただろ!」

 

「何かする気はあったんですよねー……」

 

「あっ……」

 

自分の失言に気づいたのか、やってしまった。というような顔をしてから動きを止めた7Sに2Bの魔の手が迫る。

無言で手を伸ばした2Bは7Sの頬を摘むとそれを横に引っ張る。

 

「報告:7Sは内心でまたこれか!と思っている」

 

「そのひょーり」

 

「なんで考えてることがわかるのかは置いておくとして……僕もやって良いんですかね」

 

「構わない。7Sの意見は聞かないから」

 

「まひゃひょほははーんは!」

 

文句を言っている7Sなどお構いなしに2Bと9Sは7Sの頬で遊ぶ。

むにむにと摘んで遊んだり、引っ張ってみたりと何時か見た光景だ。

 

「でも何ででしょうね……7Sの頬を引っ張ったりしてると安心すると言うか……」

 

「確かに、少し不思議だね……」

 

「ひーひゃははひゃへほ」

 

「ええ、本当に不思議な感覚ですね……」

 

「でも、悪くはない、かな」

 

「はひゃへっへは!」

 

どうしてかこうしていると安心する。そう言って7Sの頬で遊ぶ二人だが当の7Sは抗議を続けていた。

ただ、本当に聞こえていないのか、聞こえないふりをしているのかわからないが二人とも7Sに対しては何も言葉を返さない。

そんな状態で7Sは、いつかこの復讐せねばなるまい。そう考えながら二人が放してくれるのを待つことにした。

本当ならば待ちたくはないが、抵抗しても2Bに邪魔をされるのがわかりきっているので待つしかない。というのが正しいのだが。

そして、9Sは先ほどまでのことから懐疑的な思いを二人へと向けそうになっていたが今の状況のせいか少しばかりどうでも良くなっていた。

この先考える機会は巡って来るだろうことと、今は2Bと一緒に7Sで遊んで楽しむことの方が重要なような、そんな気がしたからだ。

 

尚、それぞれのポッドはその光景を映像データ、画像データとして保存をしていることに気づいたのは7Sだけで、何でこの自分のポッドだけじゃなくて、二人のポッドも可笑しくなっているのだろうか。

そんな疑問を浮かべていたことを知る者は誰もいなかった。

 

 

 

 

「にぃちゃん」

 

「何だ?」

 

「にぃちゃんの言ってたアンドロイド、来るのかな……」

 

「あぁ、必ず来る」

 

「そっか。にぃちゃんが言うなら来るんだろうなぁ……

 ところでにぃちゃん」

 

「どうした?」

 

「すぐに来る。って最初に言ってたけど、まだ来ないのかな……」

 

「…………予定していたよりは遅れているが、もうすぐ来るはずだ。そろそろ地下へと降りてきていると思うが……」

 

「にぃちゃん。ネットワークで繋がった他の機械生命体の情報だと、此処から遠ざかってるみたいだよ。

 にぃちゃんの言ってた紅い髪のアンドロイドが、他の二人を連れて何処かに行ったって」

 

「………………あの紅い髪のアンドロイドは、行動が読めないからな……」

 

「そうなんだ……ねぇ、にぃちゃん」

 

「今度は何だ?」

 

「ヒーローって何なんだろう?」

 

「ヒーロー、英雄のことか?」

 

「ううん、キカイレンジャーって言うらしいけど……紅い髪のアンドロイドが言ってたのを、ネットワークに繋がってる他の機械生命体が聞いたんだって」

 

「………………人類よりもあの紅い髪のアンドロイドの方が興味深いような、謎が多いような気がしてきたな……」

 

「うん、俺もそう思うよ、にぃちゃん」

 

「とりあえずは……あのアンドロイドたちが来るのを待つか……」




原作だと言葉の端々とかふとした表情とか声色とかで2Bが自分を殺そうしている確信を持ったりしていた9Sですが、何処かのS型のせいでその辺り察することが出来そうにないので露骨にやってみたり。
そして何処かのS型に思考を邪魔される回。

話変わってデボルとポポルが幸せそうならそれで良いよね!
ところで今作だとデュエットしてくれないんですかそうですか。

アダムとイブの会話、良いですよね。
あの二人も幸せになってくれれば良かったのに。

報告:準備が完了。
推奨:電波発信源へ向かい、調査する。

追記
DLC決定!
カイネ衣装の2Bとかヤバイ。
それ以上に人類を模して作った結果が社長とかヤバ過ぎる。

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