二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~   作:クラリオン

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サブタイは仮


一ヶ月ぶりです
申し訳ございません!
今回更新が遅れたのは非常に馬鹿馬鹿しい理由なのですが
やっべ続き中々書けねえ次の一話の終わりが見つかんない!って言いながら書いてたら一話の平均文字数の1.5倍書いてました。
これ投稿できる!と気づいたのは数日前。この数日レポートや私事の推し事で忙しく小説に時間を割けませんでした。

というわけで一ヶ月ぶり、第七十四話でございます。




第七十四話  滞在

 

 

 

 

 

 

「これで全員か」

 

 

 

透明化していた有翼系の魔族の記憶を改竄して、全員分の記憶改竄を終了。後は気が付いて起きるのを待つだけだ。

 

 

 

「ええ。ありがとう」

 

 

 

傷は小さな物を除いてさくらに風属性魔法で治癒・回復を行ってもらった。とりあえず編集した記憶と大きな齟齬は無いはずだ。

 

 

 

「あとごめんなさい、わざわざ呼び出して」

 

「気にするな、いくら稀とはいえ魔法無効体質の存在を忘れていた俺のミスでもある」

 

 

 

魔法無効体質、魔力吸収体質と呼ばれる彼らは自分達に向けられた魔力を吸収する事で無効化する。それは攻撃魔法にとどまらず、回復系の魔法や自分に対する付与系魔法、さらには自分に接触した武器に付与された魔法までも無効化される。

 

人族が魔族と戦う時、基本的なダメージソースは光・聖属性の魔法もしくは光・聖属性魔法付与の武具だ。これらを用いればレベルが同等以下でステータスに差が生じていても無視できない攻撃を加える事が可能となる。

 

が、魔法無効体質であればそれらの効力を一切無視できる。例え低レベルであっても種族間のステータス差から自分よりある程度上の人族を相手できるし、高レベルであれば強力な戦力となる。

 

ただ稀な体質である上、戦力として運用するにはそれ相応の欠点もあるのだ。まず回復・治癒にはいちいち回復薬が必要である事。そして最大の欠点として移動が困難な事。何せ魔法を用いた移動が困難なのだ。

 

 

 

戦争において初期から終戦まで最も多く用いられる移動手段は基本飛行可能な動物を用いた空輸、そして数は限られるが転移系の魔法である。しかし、魔法無効体質の場合、転移系の魔法は使えない。厳密に言えば出来ない事も無いがそれが可能なのは今のところ俺と時空帝竜、始祖竜くらいだろう。動物を用いる場合も、飛行ルートや高度、速度に大幅な制限をかけられてしまう。

 

そのために遠隔地での前線投入は非常に困難であり、敵地への潜入などは以ての外だと考えていた。しかし記憶を見た感じ、有翼系人種の魔族が運ぶ形で空中を移動してきたらしい。速度が必要な作戦ではないためにできた事だろう。

 

 

 

にしても中々面白い作戦を考えたな。普通は西大陸の南側をどうにかする事を考えそうだが無視するとはね。

 

 

 

「とりあえず移動しよう、いつ目覚めるか分かったもんじゃない」

 

「そうね」

 

「あと片方の八九式消しとこう、煩いからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「改めて、助かったわ、ありがとう」

 

「俺のミスの部分もあるんだ、気にするな。それよりちょっと気になったんだが」

 

「なに?」

 

「いや、セレスに俺の剣持たせてただろ?」

 

「ええ」

 

「何であれ撃たなかったんだ? <雷霆>使えるだろうに」

 

「……それ本気で言ってるの?」

 

「おう」

 

「……あのね、あんな神器級の剣ほぼ使い捨ての弾頭にしろとか無理だから」

 

「神器級って言っても所詮素人製作のだから剣としての性能は微妙だからバリバリ使い捨ててもらって構わんかったんだが」

 

「最初からそう言いなさいよ。総合性能は一級品どころじゃないんだから気軽に使い捨てなんて無理よ。それにこれロストしたらそれこそ次に使える物が無くなるじゃない」

 

「次が無いって、え、マジで?」

 

「ええ、私が持ってる近接武器はアレだけよ」

 

 

 

え?

 

 

 

「まだ他にも持ってると思ってた」

 

「何でよ。私は完全魔法職なのよ、寧ろ護身用とはいえ神器級の直剣持ってる方がおかしいわ」

 

 

 

ふむ、つまりだ。

 

 

 

「あれ全部コレ俺のミスじゃね?」

 

「それは同様に思いつかなかった私のミスでもある。まあ上手く解決できたから良いじゃない。それでどうするの?」

 

「そうだな……まだしばらくここにいる事にする。さっき連中の記憶を覗いた感じ、同規模の部隊が複数この近辺をうろついているっぽい。一部隊相手なら多分兵装あげるだけでなんとかなるだろうけど、二部隊相手じゃ取り逃がすだろ?」

 

「そう、ね」

 

「俺がいれば最悪三部隊でもどうにかなる。作戦実施地域は頭に叩き込んだからそこを抜けるまでは護衛として付き添うよ。最大でも三日か四日くらいで済む」

 

「今代の方はどうするのよ」

 

「篠原はまあそこそこ強い。<賢者>も二人ついているし<巫女>は<防衛魔法>委託したままだ。何より王都に襲来した魔族軍部隊を一度潰走させた。次に来るのはもっと後だ。俺だったらそうするし、ああいう作戦を立てる奴なら何するにしても準備を入念にする、多分しばらくは王都には来ねえよ」

 

 

 

そこそこ定石から外れてはいるがそれでも常識の範囲内。<勇者>が成長しきってない初手で王都を狙ったのも、作戦としては王道というか相手がこちらを真正面から対等な敵として見ている証拠だ。

 

レベルはそうでもないとはいえ魔眼持ちを隊長に、<変化>できる奴を編成したそこそこの戦力を綺麗に撃退されているのだ。下手な部隊を送り込んだら再び返り討ちされるのは目に見えている。

 

 

 

「……そうね」

 

「こっちの方が会敵の可能性は高いし、会敵した場合の対処の難易度もこっちが上だ」

 

 

 

相手を捕えて遭遇の記憶を消して無傷で解放しなくてはならない。どうも見た感じ魔法無効化体質者は各部隊に一人はいるようで正直さくら達じゃ荷が重い気がする。

 

戦うにしても姿を消すにしても、だ。

 

完全な偽装は俺かさくら片方では不可能だが、俺とさくら二人でならかなりの精度で偽装できる、と思う。二人いなければ無理でその上、偽装中は二人とも戦闘不能になるので現実的な手段ではないが。

 

 

 

「だからついて行く。お前に渡す分の金属杭も作りたいしな」

 

 

 

<電磁砲>は電磁系の複合魔法の一つだが、イメージの仕方が少々特殊なせいで俺しか使えないような構成になっている。いや普通に魔法を使えたなら春馬さんも使えただろうけれど。

 

この魔法の核はかなりいい加減というか感覚に頼ったものだからな。

 

まあ<雷霆>で打ち出すだけでも十分なはず。だから渡しておきたいのだが、この金属杭魔法で魔力を材料にしたものじゃない。地下から金属だけ引っこ抜いて魔法で杭の形に加工したもの。

 

そしてさくらは錬成系をあまりレベル上げしてないし使い慣れても無いので金属だけ引っこ抜くという器用な真似は出来ない。つまり作れるのは俺だけ。

 

現在俺が所有する金属杭の在庫は先程使った物を回収したのを合わせて20本ほど。これを全部さくらに渡す、でも良いのだがそれをすると俺の分が無い。備えあれば憂いなし、俺は極度の心配性にして物を捨てられないタイプの人である。

 

 

 

折角だし増産してストックも増やしておこう。んでついでに金属杭に思いつくだけ思いついて施す事は出来なかった改良でも加えておこう。楽しい楽しい工作の時間だ。

 

 

 

 

 




以上です。

次の投稿は今回のようには遅れないとは思いますが二週間は開く可能性があります。

とっとと動けよ、と思われるかもしれませんが、次くらいまでジャングルと平原をゆっくり進み(時系列的には間にクリスマス短編を挟みます)、その次からようやく勇者本隊と動き始めます。

これからも本作をよろしくお願いいたします。
感想質問批評など、お待ちしております。

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