二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~   作:クラリオン

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新学期始まるから書き溜めしなければ、と思い続けて肝心の更新をしてなかった件

完全に私の手落ちです、申し訳ございません

私事ではございますが上記したように来週月曜から学校が始まります、それにともない執筆にかけられる時間がこれまで以上に少なくなります
必死こいて二週間に一回がギリギリ微妙なところであります


取り敢えず最新話です、今回は視点がさくら視点からの始まりとなってます
それではどうぞ


第七十三話  対魔族戦

 

 

 

 

「<神光・六重>!」

 

 

 

光の束が六本、少しずつずれた状態で放たれる。

 

 

 

「……やっぱり足止めにもならないわね。<防衛業務委託・絶対障壁><防衛業務委託・神楯><魔法封印(マジックシール)爆裂(バースト)>」

 

 

 

魔族に対して最高効果を発揮する聖属性魔法。その最上位レベルの殲滅力を誇る<神光>が六本。<支援者>による援護を受け威力が上昇したそれを耐えうる魔族など、魔王かその側近程度しかいないと言っていいはず。

 

実際外した分の直撃を受けた後列は致命傷ギリギリ。

 

しかし本来狙っていた魔族の男──現在交戦中の魔族軍部隊の隊長と思しき魔族は、何事も無かったかのように光の砲撃を潜り抜けてきた。

 

<神楯>が魔力弾を放つが、魔族に触れた瞬間に掻き消えた。

 

 

 

「魔法攻撃無効体質……本当に厄介ね」

 

 

 

魔法攻撃無効体質。もしくは魔力吸収体質と呼ばれるそれは、人族魔族問わず、あらゆる種族で稀に生まれる特殊な個体が持つ体質。どんな魔法であれ、自分に接触すれば、魔力を吸収し魔法を無効化してしまう。基本的に通るのは物理攻撃だけ。

 

厄介なのは魔力を吸収してしまうという事。<防衛装備召喚>によって召喚される現代兵器も、弾薬は使用者の魔力だ。直撃すると同時に魔力として吸収されてしまう。直撃の衝撃は小さなノックバックという形で現れるが、ダメージはないし本当に微々たる物だ。地雷や手榴弾も試したが与えられたのは爆風によるノックバックのみ。破片は全て当たった瞬間に魔力として吸収される。

 

 

 

魔法攻撃が主体の私にとっては天敵に等しい相手だ。とはいえそういう体質の魔族は千年前にも居たし、交戦経験もある。直接がダメだとしてもやりようはある。

 

<絶対障壁>に触れると一瞬だけ食い止められるが、すぐさま<絶対障壁>が消えて行く。

 

 

 

「<魔法封印・解放(リリース)><噴流(ジェット)>」

 

 

 

<爆裂>を用いて目標の周辺空間と地面を爆破。爆風に<噴流>を重ね、距離を離す。やはり魔力そのものによる干渉は無効化できても、魔法による影響全てを遮断できるわけでは無いらしい。

 

<爆裂>の爆風と爆破され飛び散る石礫、<噴流>によって作られる空気の流れ。これらは全て魔法によって作られた、現存する物質の影響。それまでは防げないのなら現存する物質で攻撃をすればいい。

 

ただそれには問題がいくつかある。

 

 

 

「……私<錬成>系統は不得意なんだけど」

 

 

 

土属性の派生系統に当たる<錬成>系統を得意としているのは私ではなくケイだ。

 

 

 

「……<錬成>」

 

 

 

地面の下から岩を引きずりだし、手ごろな大きさに分断、矢のような形を作る。

 

 

 

「<空間圧縮(エアコンプレッション)><魔法封印・爆裂><限定解除(パーティカルリリース)><魔法封印・接続(コネクト)雷霆(ケラウノス)>」

 

 

 

造り上げた岩の弾頭を覆うように空間を圧縮、空気の砲身と砲室を作る。

 

 

 

「<魔法封印・解放>」

 

 

 

砲室内部で<爆裂>を発動。その勢いを以て弾頭を射出。直後に<雷霆>が発動し弾頭はさらに加速する。

 

疑似的な火薬電磁複合砲、のはず、多分。

 

高速射出された砲弾は、しかし相手が装着している防具に弾かれた。

 

 

 

「……やっぱり岩じゃどうにもならないか」

 

 

 

分かってはいたけれど。となるとアレに今一番楽に攻撃が通せる可能性があるのはセレスだけだろう。

 

 

 

「セレス! これ使ってアイツの相手して! 少しだけで良いから! <全身体能力上昇(オールフィジカルライズ)>」

 

 

 

当初展開していた二両目の装甲戦闘車からセレスを呼び、<空間収納>から一本の剣を取りだす。かつてケイが作り上げた剣の一つ。物理攻撃力への補正がかかる特殊な効果のある剣だ。

 

 

 

「わかった!」

 

「あまり使いたい手ではなかったけど……」

 

 

 

<念話>を使ってアレを倒せる相手を呼ぶことにする。

 

 

 

『……ごめんなさい、助けてもらえない?』

 

 

 

ややあって返事が返ってくる。

 

 

 

『何があった』

 

『魔族の襲撃、70レベル前後の完全魔法無効型が一人。私とセレスじゃ攻撃が通らない』

 

『了解した』

 

 

 

即答すると<念話>は切れた。

 

 

 

 

「……くっそ!」

 

 

 

普段吐かないような言葉遣いで悪態をつきながら、素手の相手に喰い下がるセレス。

 

彼女の現在のレベルは30~40無い程。そのステータスを<支援魔法>で60以上相当に押し上げている。そこに魔剣でどうにか攻撃力だけは70レベルに届かせている状態。

 

<支援魔法>で重ね掛けすればもっと上げられるがそれではセレスの思考が追い付けない。むやみやたらに身体能力だけ上げればいいという物じゃないのだ。一応それも対応できる<支援魔法>はあるが、<支援者>としてのレベルがまだ十分でない私は使えない。

 

 

 

「っ!」

 

 

 

斬りかかった剣を防具で弾かれ、さらに殴り飛ばされる。間髪入れず敵は後衛の私の方へ。

 

 

 

「──<電磁砲(レールガン)>」

 

 

 

その突進は傍から聞えた一言と同時に強制的に停止させられた。踏み出そうとした右足がその場に縫い留められ、その場に転倒したのだ。

 

 

 

「悪い、遅くなった」

 

「……いいえ、急に呼び出したのはこちらだもの。<聖天結界>」

 

 

 

セレスに回復・治癒効果のある範囲魔法を適用。

 

 

 

「ほかの連中は」

 

「殺しちゃいないわ、四肢全部取ったけれど」

 

「上等、そんじゃアレも瀕死にして記憶消せばいいんだな」

 

「お願い」

 

「任せろ」

 

 

 

声と共に姿が消えて、気付いたら敵の四肢を全部切り落としていた。速い、そして強い。

 

 

 

「……あ、まだいんのか。<空間収納><竜巻(トルネード)><電磁砲>」

 

 

 

傍らに空いた<空間収納>から杭が上空に射出される。

 

 

 

「当たったな。<竜巻・五重(クインテット)><電磁砲・五重>」

 

 

 

<空間収納>の出口を下方に向けて落ちてきた金属杭を<竜巻>で水平に安定化、<雷霆>と多分電磁力系の魔法もう一つか二つの複合魔法<電磁砲>で上方に射出している。ああそうだ、魔力を感知させない遠距離戦闘はいつもこれだった。

 

空中に突き立った六本の杭、不意にそこに影ができたかと思うと落ちてきた。いや、光学系魔法を使って透明化していたのか。

 

 

 

「いや危なかったな。一人でも取り逃したら拙かった。監視の目が無かったのが幸いか」

 

「……ええ、そうね」

 

「<睡眠(スリープ)多重(マルチプル)>……よし、治療は任せていいか?」

 

「ええ」

 

「あ、記憶はどうそろえる?」

 

「……興奮した雑魚の魔物の群れに遭遇しこれを殲滅」

 

「了解」

 

 

 

倒れ伏した隊長格の魔族の方へ向かうケイを見送って、眠っている隊員の方へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何のつもりだ」

 

「あ?」

 

「なぜ我等をすぐに殺さない? その服装と、剣から見て、貴様は勇者だろう。拷問にでもかけるつもりか? 生憎だが我が部隊の隊員にそのような……」

 

「ほいどーん」

 

「ぐっ」

 

「一丁上がり」

 

 

 

頭をぶん殴って脳を揺らして気絶させる。<睡眠>が効かないならこうするほかない。

 

 

 

「そんでまずは治療からか」

 

 

 

当然ながら治癒魔法は使えないので回復薬を使うしかない。体力回復薬と万能治癒薬をドバドバかけて足に空いた穴を埋めて切断した四肢を結合させる。防具に損傷は無いように戦ったので問題は無い。

 

 

 

「さてと、上手く出来るかな。<並列思考><護魂障壁(ソウルバリア)><精神同期(シンクロマインド)>──」

 

 

 

相手と自分の頭に手をかざす。自分の頭から伸びた意識が自分の両腕を伝って相手の頭の中に入るイメージ。並列思考の片方が、意識から消えた。

 

<護魂障壁>で包む事で、並列思考の片方は魔力の塊となる。身体に触れた魔力を吸収してしまう体質を利用して体内、魂のある場所へと送り出す。<護魂障壁>と<精神同期>のおかげで魂が混ざり合う事無く記憶を操作できる。

 

 

 

「あとは待つだけ、か」

 

 

 

人の記憶というのは特殊な例外を除けばかなり曖昧なものだ。印象的なものはより印象強く、嫌な物は曖昧に、あるいは逆に印象的に。正しい事実のまま残る記憶はそう多くはない。今回やるのはそれを利用した物だ。つまり、ある程度の道筋を残しつつ、記憶を最大限に捻じ曲げる。

 

前後の状況と矛盾せず、かつそれでいて俺達の存在を抹消する。

 

まず会敵状況について、上空から地上を爆走する装甲車を見かけた、となっているそれを、地上を驀進する不死系魔物の群れに改変する。刷り込むイメージは俺が前に上空から見た魔物大暴走。この時に魔物の群れに混じった<不死身の魔法詠唱者(アンデッド・マジックキャスター)>から攻撃を受けた事にする。アンデッドは生者全般に対して強い憎しみを抱くから攻撃する事は不自然ではない。

 

そこで自衛のために降下し戦闘に入る、と。どうも見た感じ特に急ぎの任務では無かったようなのでそれも理由に加えた事にする。雑魚の掃討に少々手間取ったものの損害はほとんどない状態で殲滅に成功。やや休憩を挟んだが異常は無し、良くある遭遇戦だ。

 

まあこんなところだろう。

 

 

 

「<同期解除>」

 

 

 

分離していた並列思考を回収。

 

 

 

「よし」

 

 

 

記憶の改変に成功。

 

 

 

「終わった?」

 

「ああ」

 

「じゃあこっちお願い」

 

「了解」

 

 

 

 

 




以上です

お分かりかと思いますがクリスマス短編との接続点になります

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