二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~   作:クラリオン

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なろう版の修正(フォルダデータ側のみ)と何より車校に時間とられましたね、誰だ二週間に一回とか抜かしたの

自分です



そろそろ動きますよぉ……(消えゆく声)

そんな感じで最新話です、どうぞ


第七十二話  帰還

 

帰還!

 

久々、というほどでもない王都だがしかし結構長く離れていたように感じるのはなぜだろうな? いや、二週間か、長い方と言えば長い方か。

 

 

 

そして今日は元の世界で言うところの十二月二十三日。この世界風にいうなれば下六の月、第三旬……じゃなかった、今の言い方だとラボルファ(魔神)の月、第三旬三の日、って言ってたはずだ。

 

 

 

気候帯は千年前同様いまいち不明ながら、気温は低いが雪は降っていないところを見るに、多分緯度と気候帯の一致は望めないな。イギリスみたいなものだろうか、しかしこの国は別に海に面しているわけでは無い。謎だな。

 

改めて思うが元の世界と暦も季節も時間の進み方も一緒とか都合いい世界だよな。まあなんとなく理由は分かるからいいけど。

 

 

 

さて、そんな事はどうでもいい。十二月二十三日である。そう、クリスマスの前日である、元の世界では。この世界では元の世界における季節イベントの多くが形を変えて、あるいはそのまま存在している。

 

クリスマスは前者に当たり、この世界では神が世界を創った日だとされる。何でそんな事を人族が知ってるのかは俺が知りたい。

 

さて、つまりクリスマスはこの世界の誕生日ともいえる日で、人・亜人族は神に祈りを捧げ、家族や親友と共に穏やかに過ごし、御馳走を食べ世界の誕生を祝すというのが定番である。

 

 

 

ちなみにこの創世だが、聖書的サムシングによればちょうど七日間あり、ちょうど大晦日、第四旬一の日に今の世界が完成したとされる。そのため世界生誕祭は七日間続く。この七日間とその翌日、つまり世界が始まった日であるところの一月一日、リシュテ(創世女神)の月第一旬一の日までは国営民営に関わらずほとんどの業務が停止する。

 

 

 

静かに家か教会で神に祈りと感謝をささげる日が計八日間ほどあるわけだ。

 

そしてその分の反動でもあるのか知らないが、二十四日、場所によっては二十三日もだが、お祭り騒ぎの日になっている。そして王都もまたその真っ最中、というわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなわけで俺はなぜか<鍛冶>佐々木(ささき)、<探索者>白井(しらい)、<巫女>石縄(いしなわ)、<回復術師>荒山(あらやま)などのメンバーと共に街にいた。いやなんでだ。

 

 

 

「いや国崎ってこういう時あまり騒がないというか静かに部屋に籠ってそうだからさ」

 

 

 

と佐々木が楽しそうに広場を眺めながら言った。そりゃああまり騒がしいのは好きじゃないからな。

 

 

 

「あまり楽しくなさそうだけど自分からは絶対に来ねえだろうなと思って誘ってみたんだ」

 

 

 

お、おう、そうか。

 

というか何で佐々木は俺にそんなにフレンドリーなの。篠原と洞窟戦後の白井以外大抵皆敬語だし距離取ってるし何なら敵意向ける連中もいるのに。最近ようやくフレンドリーファイアを完全に諦めたように思えてきたレベルだぞ。

 

 

 

篠原はわかる。少し理想主義的なところがあるからな。白井……は、まあ多分洞窟戦で協力したのが良かったのかもしれない。

 

 

 

多分ものすごく怪訝な顔を浮かべていたのだろう。俺の方を見た佐々木が少し心配そうな顔になった。

 

 

 

「……もしかして迷惑だったか?」

 

 

 

その聞き方ずるくないか。

 

 

 

「……いや、迷惑ではない。賑やかなのは得意ではないが嫌いではないからな。ただ、何でそこまでフレンドリーなのかと思っただけだ」

 

「ああ、確かになぁ、水山と川島辺り仲良くないもんな」

 

「仲良くないなんてもんじゃねえぞ佐々木。全部捻り潰してもみ消してるけど味方撃ちとかされてたからな」

 

「はぁ? あいつらそんなことまでやってたのかよ! ていうか捻り潰してって」

 

「まあレベルが低いからな。<防衛者>なら双方無傷で収められる」

 

「……よくキレないな」

 

「まあ、こうなる事は予想出来ていた。全員から恨み買うのは承知の上で全部やったし、それは<防衛者>として来た時に言った。だから明確に何か被害が出るか、<勇者>としての義務に何か支障が出ない限りは見逃す事にしている」

 

「凄いな、俺なら絶対我慢できねえよ」

 

 

 

面倒事が嫌いなだけなのさ。

 

 

 

「俺が君達に危害を加えたのは明白だからな。理由があったとはいえ、ある程度の恨みは已む無しだと考えている。だからこそ逆に俺にこうも気安く接してくるお前が少しわからなかった。篠原は、まあおおよそそういう性格なのだろうと思ったが」

 

「はは、確かにな。そうか、確かに俺みたいなのは少数派だろうな」

 

「というかここにいる俺と佐々木、あといないけど篠原くらいだと思うぞ、国崎に気安く出来るのは」

 

「……それが不思議なんだよ」

 

「あー、俺はな、なんとなく励まされたように感じたんだよ」

 

「励まされた?」

 

「そう。ほら、ここで最初に魔族と戦った時言ってただろ、夜にさ。

 

『例え戦闘向きでなくとも、その職業で召喚された以上は、何かしら果たす役割、出来る事はある』

 

みたいな事。俺は<鍛冶>じゃんか、普通<勇者>の中にそんな奴いないだろ。だからもしかして俺は余計な人間なんじゃねえかって思ってたんだよ。

 

ステータスは高いけど鍛冶屋だぜ? 元ただの高校生に何をしろってんだってな。だから少し焦ってたというか、不安だったというか?」

 

 

 

なるほど。間違ってはいない。<鍛冶>は直接戦闘に寄与する事はほとんどないため、いつか見せられた『<召喚者>割当職業一覧』でもそこそこ下の方、つまり優先順位は低い。俺が<鍛冶>称号を持っていなかった事からもそれは分かる。

 

 

 

ただ<鍛冶>、あとは同系統として<錬成師>や<錬金術師>は優先度こそ低いものの全体的に見れば実は『当たり』の職業である。どちらとも職業の関係上最初から<鑑定>を持ち、それぞれに職業固有のスキルを持つ。最大の特長は魔道具を作れる事だ。それも<勇者>の言わば規格に準じたものを。

 

優先順位が低いのは、先ほども言った通り直接戦闘に寄与しないため。具体的に言うと、人族に余裕がある状態で、かつ大人数での<勇者召喚>であれば、<鍛冶>や今回はいないが一覧にはあった<錬成師>あるいは<錬金術師>等の職業が<召喚>される可能性が高い。

 

……あ、そうだよ<鍛冶>に加えて<巫女>と<調教師>がいるって事は余裕ありまくりだったって事じゃんか。何で気付かなかった数か月前の俺。分かってたら色々仕込めたし対策も出来ただろうに。

 

どうせ結果分かり切ってるからってステータス公表見逃したのはミスだったな。

 

 

 

「それで、まあお前の言葉でそれがなんとなく落ち着いたから、自分ができる事を探してみようと思って、勇人達が居ない間にさ、弟子入りしたんだ」

 

 

 

え?

 

 

 

「ここから少し西に外れたところの村に、凄腕ベテランの<鍛冶>職のじいさんが居てさ。その人から色々教えてもらってるんだ。今は創世記念旬だから王都に戻ってるけど、来年からはまた向こうに通うんだ。何か結構筋が良いってさ」

 

 

 

それは中々積極的だな。筋が良いのは分かる。だからこそ<鍛冶>が割り当てられたのだろうし。

 

 

 

「んで、まあそういう行動に出た根底にはお前のあの言葉があったからこそなわけで。だからこう、今の聞いてても思ったけどなんだかんだ色々言ってるけどちゃんとしてるなって」

 

「……どういう意味だよそれ」

 

「あーなんか言葉にしづらいんだけどな。結構最初の方で敵愾心煽るような事言ってたし、女神さまから言われたから、みたいなやりたくないけど義務だから、みたいな感じで嫌々動いてるかなって思ってたんだ。ほら、公国の一件でも次に会う時は敵同士、みたいな事言ってたし。

 

だけどちゃんと色々助言とかあったしきちんと考えて夜の襲撃の時も独自に動いてただろ?」

 

 

 

あーそういえばそういう事にしてたな。

 

 

 

「女神様からの頼み事なら全力でやるほかない。それに、助けられる命を見捨てるような趣味は無いからな」

 

「だろ? だからだよ、本当は優しい良い奴なんだろうなって思ったからだ」

 

 

 

純粋過ぎやしないか。そう突っ込もうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ごめんなさい、助けてもらえない?』

 

 

 

は?

 

 

 

『何があった』

 

『魔族の襲撃、70レベル前後の完全魔法無効型が一人。私とセレスじゃ攻撃が通らない』

 

 

 

くたばれ魔族。反射的にそう思った。

 

 

 

『了解した』

 

 

 

 

 

 

「……すまない、急用ができた」

 

「どうしたんだ?」

 

「俺と一緒に再召喚された<聖女>からの救援要請が来た。詳しく知りたければ後で聞け」

 

 

 

さてと。

 

 

 

「創世の女神リシュテリア様に、<再び喚ばれし者>ケイ・クニサキが願い奉る。我が力を我が下に、我が身を我が同胞の下に、我が力を以て我が友を護らせ給え」

 

 

 

幻影(ファントム)六重(ゼクス)><隠蔽(コンシール)><陽炎(ミラージュ)>。

 

 

 

俺の体の周りを光が包む。腕輪が消えた、ように見せる。ステータスを変えるために俺の周囲をぼやかして。

 

<聖剣召喚・犠牲><神剣召喚・孤独>。

 

 

 

「……慈悲に感謝を」

 

 

 

<転移点><空間門>。俺の目の前にぽっかりと黒い穴が開く。

 

 

 

「ついてくるなよ、命の保証は出来ん」

 

 

 

大袈裟に言い立ててるわけでは無く事実だからな。

 

 

 

では行こうか。

 




以上です

はい、クリスマス短編に繋がる動きで、一応次の大きな動きに繋がる引き金でもあります

まあ、全部魔法で片付くのなら苦労しないんですよねって話です

感想評価批評などお待ちしております

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