二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~ 作:クラリオン
ちょっと遅れました(投稿直前に寝落ちしたのです)がお許しください。
今回も前回同様やや長めとなっております。
それでは第六十三話、どうぞ!
気配を消して近寄っていた白井が天井近くまで飛び上がり、そこから奇襲をかける。使用武器は短刀だったが魔力によって伸長された斬撃は障壁の隙間を縫い、確かに<
同時に相手の前衛に掛かっていたあらゆる支援魔法が解除される。
「よし!」
<
回復・支援・遠距離攻撃を潰せたので、あとはこちら側の損害を可能な限り軽くする方向で慎重に削ればいずれ勝てる。
「<
さて、バフを全部削り取った以上、多分篠原だけで<
となると自動的に<
相手も中身はどうあれ形が馬なので、<首無し騎士>のような戦いはしないだろうが、単純に大きさと火力だけで押し切る可能性が高い。下手すれば無詠唱で魔法くらいは使いそうだ。レベルが上の相手の魔法なんざ喰らったら軽装甲の<探索者>じゃ耐え切れない。つまり楯役が要る。まあ俺なんですけど。
「<周辺警戒>」
なので魔力の動きを見切る。魔力が動いたらすぐに障壁を追加できるように。
んでもって後は相手の注意を引ければ完璧なんだけど、まあ足場をちょこちょこ邪魔してるから白井に向く注意をある程度逸らせてはいるはずだ。もうちょい派手なスキル欲しいんだけどな……
「<絶対障壁>」
無い物ねだりしてもしょうがないけどな。現在時点の所持スキルでどうにかするしかない。
「<
「<
おお、合わせてきた。<迎撃>のノックバックに合わせるとは、中々やるね。あ。
「<
重ね合わせで範囲拡張、ギリギリ白井を効果範囲に収める。すぐさま打ち出された魔力弾が白井を狙った<
しかし、こいつどこが弱点なんだろう。人型じゃないせいで逆に分かり難い。前は範囲浄化してたから弱点気にする必要とか無かったし……
【悲報:俺氏思ったより役に立たない説浮上】
とかいうテロップが頭の中を流れはじめ、時を同じくして当たり前だろうという表情のさくらの顔が思い浮かんだ。わかんないけどなんか負けた気がする、ちくせう。
「<絶対障壁>」
リンク分割型障壁再び。からの、
「<
「<迎撃>」
「<属性付与・光><
合わせ攻撃。グッジョブの意を込めてサムズアップしてみたら応えてくれた。これは俺に対する警戒が解かれつつあるって事で良いんだろうか。
てちょい待て、今さらっと炎属性使いおった。でも短詠唱だけど無言じゃない。魔力か体力に余裕が無いか、<魔導>スキルはまだ<無言詠唱>まで届いていないってとこか。後者だな。前者だとどっちとっても辻褄が合わない気がする。
作戦会議でもするか。左手でちょいちょいと白井を招く。
「<絶対障壁><神楯>」
同時に<絶対障壁>を大きく追加で展開、重ねた<神楯>で防衛範囲指定。とりあえずの安全を構築。ちらっと視線をやると、白井は素直に近づいてきていた。
「どうした?」
「ちょっと作戦会議というか相談だ」
なお俺は<死霊馬>を見たままである。
「相談?」
「そう。白井の武器は短刀だから、攻撃範囲と威力がどうしても低くなる。スキルを使うのは構わないが魔力も無尽蔵じゃない。だから手っ取り早く倒すには弱点を突くしかないが、どこが弱点か分からないからな」
「……千年前、だったか、その時には居なかったのか?」
「居たが広範囲スキルで纏めて浄化してた。アンデッドと関わったのは旅始まってから結構後だったから、俺と今の篠原やお前じゃスキル構成とレベルが違い過ぎて参考にならない」
「……普通に考えれば首とか頭じゃないのか?」
「<迎撃>……っとあれは死霊系アンデッドで、それなりに強いタイプでな。ゾンビ系や骸骨系……実体保持アンデッドとはまた別らしい」
「らしいって……」
まとめて浄化してたから気にしてなかったんだごめんね。
死霊系アンデッドに刺さるのは、魔法攻撃か、光・聖属性魔法武器・付与武器のいずれか。基本的に実体を持たないアンデッドが死霊系だ。レイスとかゴーストが代表種。火と物理が刺さらない点で実体保持系アンデッドよりめんどい。
まあ基本<浄化>で溶けるので当時の俺達には関係なかったんだが。
基本的な倒し方は…………あ。
「思い出した」
「何を?」
「死霊系のアンデッドの内、
いつだったか、ザイドル騎士団長が言っていた事だ。これが「
実体化、つまり魔力の物質化が出来るアンデッドは基本的に長生きである。逆か、長生きした死霊系アンデッドは、自らを構成する魔力の扱いに慣れているので実体化が出来る。その際、実体化することで、物理攻撃が通るようになってしまうので、それでの即死を避けるために『核』を創り出すらしい。斬られようが、魔法を被弾しようが、核が無事であれば速攻で再生できるとか。
逆に
「核に深い傷を負わせれば再生できなくなって最終的には倒せる。ただ核は体内のどこにでも移せるからそれを見つけないといけないらしい……っと<迎撃>」
「核、か……」
「そう、んで以て俺じゃ探知できないからどうにか探してくれと。<探索者>は<勇者>組じゃ数少ない捜索スキル持ちだからさ」
「……お前のスキルじゃダメなのか?」
「<周辺警戒>はなぁ……細かい物探すのには向いてないんだ。<防衛魔法>は元々対多数用の魔法だからな……<絶対障壁>」
<防衛魔法>は<防衛者>一人もしくは<支援者>と二人、場合によっては被委託者一人で、軍勢を迎え撃つ防衛戦用の魔法。<周辺警戒>は広範囲索敵がメインで、対象の体の中まで探れるわけではない。<神楯>は、まあ分類としては近距離索敵だが、迎撃用なので能動的に使えない。<防衛魔法>の意外な弱点である。
「<迎撃>っと。その点、<探索者>の捜索スキルなら、そういう事は出来るだろ?」
<探索者>など斥候職の捜索スキルは近~中距離専用で、隠蔽看破能力も高い。死霊系アンデッドの核を探すにはもってこいのスキルである。
「魔力はまだあるから……楯役はまだ出来る。ただ、まあ早い方が良いかな。よろしく頼む。見つけたらそのまま攻撃して構わない。サポートくらいは出来るはずだ」
魔力回復薬を飲みながらお願いしておいた。
「……わかった、やってみよう」
そう言うと、白井は再び空間に溶け込むようにして消えた。<死霊馬>の結構な至近距離にいる。ちらりとそちらに視線を向ける。
「<絶対障壁>」
さあ頑張って探してくれ……うん?
《<防衛魔法>スキル解放条件が満たされました》
《スキル<
《<防衛魔法>がレベルアップしました》
《<防衛魔法>スキル解放条件が満たされました》
《スキル<
おし来たこれは勝った!
「<地雷原>!」
<絶対障壁>を待機分除いて解除、魔力回復薬を飲みながら<地雷>敷設に全力傾注。
障壁が消えたのを隙と見て、<死霊馬>が突撃してくる。その脚が一点に降ろされた時、その点を中心に立体魔法陣が一瞬で展開、直後に爆散する。無論脚ごと。そのままバランスを崩し転倒した。転倒した先でも爆散。そのままそこそこ離れた所まで跳ね飛ばされていった。
スキル<地雷原>。
陸上の拠点防衛には必須ともいえるスキルの一つだ。これがあるだけで市街防衛戦の労力が大幅に削減される。文字通り魔力で形成した多種多様な地雷を指定範囲に指定密度で敷設していくスキルだ。
単体スキル<地雷>もこれはこれで何気に使いやすいのだが、やはり<地雷原>のお手軽さは異常である。ちなみに空中でも水中でもどこでも敷設できる。
んでもってあの破壊力である。威力的には<
あれくらい消し飛ばせれば修復にもそこそこ魔力を持って行かれるはずだから多分核の位置も分かるはず。
「<地雷原>」
取り敢えず追加。攻撃はいつでもって言っちゃったからな。さて、見つけてくれただろうか?
「<周辺警戒>」
え、待ってもう動いてる?!
「ば、<絶対障壁>、<地雷原>!」
一回やった障壁の檻プラス地雷の海。<周辺警戒>で動きを見切ってその分の隙間は開けてある。仕上げに、
「<地雷><地雷><地雷><地雷><地雷>!」
四肢と頭の近くに設置。すぐに接触、あっさり起爆。行動を阻害する。
「<属性付与・光><斬撃伸長>」
よしナイス連携(自画自賛)。
「<周辺警戒>」
魔力の動きは見られない。
「やっt「ちょっと待って」?」
フラグ建てんな馬鹿野郎。その流れは前回散々やったから要らない……って
「<地雷>」
言い切ってなくてもフラグって発動するのかよ。<地雷>で核を直接叩いたから。多分もう大丈夫だと思うけど。
……よし、動かないな。魔力が分散するのも確認した。残されたのは斬られた核だけだ。
「よし。篠原の方はどうだ?」
と、既に篠原の方を向いていた白井の様子を見遣ると、ただ呆然としていた。
「どうした?」
篠原の方を見た。ああ、成程。
「……すっげぇ……」
<首無し騎士>を圧倒する篠原の姿があった。まあバフあってある程度余裕あったしな。バフ剥がれたなら圧倒出来るだろうさ。技術的には劣るだろうがステータスと属性的有利、あとバフ剥がしによる感覚のずれがそれを埋めている。
まあ半分くらいステータスによる力押しである。
とはいえ強引な力押しであっても圧倒は圧倒。<勇者>の仲間にとっては心躍る場面だろうな。自分達では苦戦必至の強力なアンデッドを一対一で圧倒する頼もしき<勇者>の姿は。
そろそろ終わりか。
<首無し騎士>の手から片手剣が跳ね飛ばされる。なおも楯で突撃しようとしたが、その時には既に篠原がその懐へ。
「<光刃>!」
輝く剣が、鎧の胸を貫きとおした。
『見事、だ』
喋ったぁ?!
鎧の首の部分に除いていた青白い炎が消え、鎧が崩れ落ちる。魔力の拡散も確認。討伐完了。残ったのは貫通された鎧と真っ二つの核のみ。え、コイツも核あったの。
その場に膝をついて肩で息をする篠原。どうやら結構疲れていたらしい。お疲れ様。あともう少ししたら帰れるからもう少し耐えてくれ。
「篠原、お疲れのとこ悪いが」
「……ああ、分かってる」
アンデッドたちの初期位置の後にある祭壇。そこに、祀られた一体の神像が光り輝いていた。
以上です。
それでは、感想批評質問などお待ちしております。