二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~ 作:クラリオン
前回の続きボス戦になります。
一応前回の後書き分の小話はどういう意味かと言いますと、ようはくっそ強いモンスターの名前付けたの主人公達ですってだけの話なんですが。
3人の召喚者が挑むは3体のアンデッド。さてさてどうするんでしょうね。
いつもより少々長い(4000、いつもは3000前後)ですがお付き合いくださいませ。
というわけで第六十二話です、どうぞ!
広い部屋の中央に待機する二体のアンデッド。いや<
それに、ボス部屋にいるのがさっきも遭遇した<
多分レベルも相手が上。まあこれは想定範囲内ではある。
「<
「無い!行くぞ英吾!」
「お、おう!」
思考しながらもほぼ無意識に段取り通りスキルを発動。前衛二人が一直線に<不死身の魔法詠唱者>へ向かうのを見て、相手の前衛も動き出す。
「<絶対障壁>」
それに合わせ、対魔法に特化した障壁を張る。<首無し騎士>は騎士鎧のアンデッド。対して<死霊馬>は複数の死霊系アンデッドが集合したアンデッドなので実体は無かったりする。何で騎乗できるのか疑問だが多分魔力の物質化をしてるんだろう。
さて、問題です。それらの前に魔力による干渉、魔力の塊たる魔法を弾く障壁を張ったらどうなるでしょうか。
答:馬が一瞬弾かれてバランスを崩す。
<死霊馬>のレベルが高かったせいか、弾くと同時に障壁も砕け散ったから本当に短時間だけでしかないが、時間は稼げた。それだけあれば十分だ。<不死身の魔法詠唱者>の首に刃が届く、
直前で
「不味い!<絶対障壁><
自分と篠原達を守るための魔法を矢継ぎ早に展開させていく。少々構成が甘いかもしれないが耐え切る事は出来るはずだ、多分。
<首無し騎士>の長剣が振るわれ、白井へ迫る。胴体を両断する軌道に乗った長剣は、その直前で張られた障壁と差し出された剣に阻まれ、直後に撃ち出された魔力弾によって弾かれた。同様に篠原目掛け放たれた魔法も、障壁と魔力弾により迎撃されている。
二人はそのまま下がってくる。飛んでくる攻撃は全て重ね掛けにより有効範囲を拡大した<神楯>が迎撃する。さて。
「相手が思ったより頭が良いな……<
大抵のアンデッドは自分の身より生者への攻撃を優先する。ゆえに今までは相手の初手の攻撃を無力化してこちら側の攻撃を通す事で倒してきたのだが、どうも今回のは毛色が違う。狙われていると分かって、守りの態勢に入った。そして今は、<首無し騎士>のやや後方に位置している。んでもって何か禍々しいオーラを<首無し騎士>に飛ばしてる。
多分あれは支援魔法だろう、<周辺警戒>でも敵性魔力の動きが探知できている。
つまりこのアンデッドは、前衛後衛の配置含め、大まかな戦術を理解できることになる。少々面倒だな。
「<絶対障壁>」
取り敢えず対魔法障壁を二つ展開、<首無し騎士>の突進に備える。
「どうする?」
「……俺が前衛で騎士の気を引こう。白井は全力で後衛狙いに動いてくれ」
「ならそうだな……<絶対障壁>。とりあえず魔法では見つからないはずだ。下手に動くなよ」
分担の指示に応じ、追加で例の対レーダー障壁を張る。
「わかった。頼むぞ」
そう言って白井は姿を消す。<探索者>は<暗殺者>程ではないが隠密には長けている。とは言え相手はかなり強い魔法詠唱者。俺と篠原が(多分ほぼ篠原が)注意を引き付ける事で看破される可能性を減らさなくては、不意討ちは厳しいだろう。
さて、どうしようか。
「篠原、前衛の相手は任せた」
「お、おう!」
任せた直後に<首無し騎士>が突っ込んできた。先ほどの失敗を
飛んだ先のもう一枚の対魔法障壁に引っかかり、バランスを崩し、落ちた。
地面に落とされた<首無し騎士>に篠原が斬りかかるが、すぐに体勢を立て直した<首無し騎士>が剣で受け止める。一方で騎乗者が居なくなった<死霊馬>がこちらへ走ってきた。ほぼ同時に<不死身の魔法詠唱者>が攻撃魔法を放つ。あれは<連続発動>か、属性魔法だが面倒な。
「<絶対障壁>」
取り敢えず<死霊馬>突進阻害用に対魔法障壁二枚を展開、ついでに対物理障壁も一枚張っておく。もしかしたら役に立つかもしれない。それぞれもう一枚ずつを即時展開できるように準備。こういうとき張った後放置が可能な<絶対障壁>は便利。
相手の攻撃は全てさっき展開した<神楯>に迎撃してもらう。相手の手数が多いために魔力が急激に減少していく。半分を切らないうちに魔力回復薬を飲む。一気飲みではなく、三分の一程度。人間は学ぶ生き物なのさ。
「<絶対障壁>」
あまり魔力を込めていないため、割れやすい対魔法障壁を二枚、地面と水平に張る。それに重ねるようにして対物理障壁も張っておく。これはわざと壊れやすくした足場だ。
突進してきた<死霊馬>は、予想通り対魔法障壁を一枚目は飛び越え、二枚目はすり抜けた。さらにその直後に張っておいた対物理障壁を飛び越えて避け、着地したところでバランスを崩す。
……こいつもか、
態勢を立て直す<死霊馬>を睨みながら思考を巡らせる。多分次は先ほどの手は通用しない。相手は学習できるアンデッド、千年前は<
ふとした拍子に人間だった頃の思考が一部、稀に全て復活し、人間のように学習し経験を積むことのできるアンデッド。そのランクは、その魔物本来のランクより一個上となる。基本的にそうなるのは上位個体がほとんどであるため、戦闘能力が跳ねあがるからだ。
大方<不死身の魔法詠唱者>もそうなのだろう。では<首無し騎士>は?
「うぐっ!」
「<絶対障壁・迎撃>……大丈夫か?」
吹き飛ばされてきた篠原を追いかけるように突撃してきた<首無し騎士>に魔力弾が叩き込まれ始める。<不死身の魔法詠唱者>が障壁を飛ばすが関係ないと言わんばかりに乱射され、撃ち破られる。たまらず<首無し騎士>が一度後退。あるラインを越えたところで乱射が止んだ。
「……あ、ああ、何とか、な」
「学習されてるか?」
「……多分。同じ攻撃は二回目からは読まれてる感じがした。速度が追い付いていないだけだ。いずれ追いつかれる」
「……ちっ、頭脳も優秀か。頭ないくせに」
「ははっ、それは確かに」
「早めに後衛潰してもらわないと……」
<神楯>が全自動で助かった。魔力はゴリゴリ削られてるが、迎撃にまで意識を割かなくて良いというのは<賢者>スキルが使えない身としてはありがたい事この上ない。
冗談を言えばそれに答えられる程度の余裕はあるようだが、本人も言っていた通りいずれは追いつかれる。アンデッドに疲労などと言う状態異常は存在しない。ほぼ互角の力量同士で削り合えば疲れてしまう生者が不利だ。
とはいえ篠原には白井が後衛潰すまで前衛で注意を引き付けてもらう必要がある。最悪は異常状態解除ポーションでも飲んでもらって戦ってもらわなくてはならない。薬物ドーピングで戦い続けるのは正直おすすめ出来ないが……
「もう少しだけ、頼む。そっちにも障壁割くから」
「ああ、任せとけ」
篠原は聖剣を握って立ち上がると再び<首無し騎士>のところへ向かう。
「<絶対障壁>」
まあ多分大丈夫だとは思う。<復活者>とは言えど、アンデッドである事に相違なく、ゆえに行動は少し遅れる。篠原に少々意識を割いたところで致命傷は喰らわないはずだ。
さて、本命たる白井は今どこにいるのやら。
……もう少し、か?もう少し時間を稼げば絶好の位置に付けそうだ。後はタイミングに合わせて注意引ければ、良いんだが。
「<絶対障壁>」
魔力を追加する前に割られた。割られただけ展開しなおす。さて、注意を引くにはどうすればいいだろうか。一番良いのは派手な技を撃つのが良いのだが今の<
よって強制的に注意を別の方向に向けさせなくてはならない。
「障壁の多重展開で引けるかな?」
薄い対魔法障壁を大量に多重に、それこそ自分の今の最大出力で、相手の目の前に張りまくる。ヤバい、自分で考えておいてアレだけどこれ相当うざい。ポイントは一撃で壊れる強度設定だな。
確か<勇者>組に<結界術師>いたな。小規模障壁扱えたっけあの職業。扱えるなら教えてみようか、囮としての立ち回り。<魔導師><魔導士>に教えるのもアリか。
「<絶対障壁>」
設置済みの障壁を学習して全部避けきられた。まあ想定通りなのでリアルタイムで追加する。障壁は割れるがそれでエネルギーを失った相手も叩き落される。うん楽しい。
「<周辺警戒>」
ふむ、
「<絶対障壁>!」
対魔法障壁をギリギリまで薄く、可能な限り多く張る。全方位に満遍なく張ってあるように見せかけて後ろにちょっとした隙間が有ったりするが。
煩わしいと言わんばかりに、<火球>によって割られる一枚の障壁。だが残念、それは悪手だ。
「<迎撃>!」
同時に張った障壁に対する魔力供給は、同一経路によって行われる。これを利用し複数枚の障壁を同一の物として認識させる。内一枚が割られた。つまり張った障壁全てが攻撃を受けたと解釈、追加スキル発動。
さらに追加で割るべく放とうとした<火球>を探知、放たれた瞬間に全ての障壁から放たれる魔力弾。一発ずつだがそもそも魔力をそこまで振ってないし追加もしてないからな。仕方ない。迎撃するのが重要なのだ。普通の障壁じゃ出来ないコンボだからな。
至近距離での暴発によって少なくないダメージが入る。ついでに強制的に注意を引ける。
「<
直後に敵の首が飛んだ。
以上です。
そういえば、更新していない間もちょくちょくUAあるんですが、皆様いったいどこからいらっしゃるのでしょう……?
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