二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~   作:クラリオン

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どうも、二週間ぶりです。

大分久しぶりの本編となります。内容的にはあまり進みませんが……



というわけで第五十九話、どうぞ!


第五十九話  予知夢

 

 

 

「……知らない天井だ」

 

 

 

この台詞この世界に来て二回目だな。魔力全回復、HPは当然というか元から減ってない。今のところ状態異常も感じられず。

 

 

 

よし神崎啓斗完全復活!

 

 

 

というか俺は馬鹿か、アホか。魔力酔い忘れるとかどんなポカだ。

 

自分で制限かけといて、自滅してんじゃねえよ。今回は終わりごろだったから良かったけどさあ。今度から戦闘時の制限外すかレベル上げ急がないと。でも&表示にしてる時は<勇者>サイドの経験値量がプラスされるから上がらないんだよなあ……レベル上げのしにくさは変わらんというかむしろ面倒になってる。

 

 

 

まあそれはどうでも良い。

 

 

 

一つ、気になる事があった。

 

 

 

「<自己傀儡人形(マイセルフ・マリオネット)>、使っちゃったのか……」

 

 

 

俺の切り札中の切り札にして、多分最悪の持ち札。初披露でさくら、春馬さん、陽菜乃さんに、もう二度と使うな、と念押しされたスキル。

 

称号<傀儡術師>を持ちながら職業は<勇者>という前衛職である俺だから行使できるスキル。

 

 

 

例え疲労していようと、痛みで動けなくなっていようと、魔力が続く限りその全てを無視して動くことが出来る。すなわち魔力が継続する限り戦い続けるいわば狂戦士の出来上がり。ただし魔力が尽きた後に全ての反動が来る。

 

 

 

──やったか、はフラグだぞ、今代<勇者>

 

 

 

──初代<勇者>を、舐めるな

 

 

 

そんな自壊系スキルを、夢の中の俺は、そう言って、発動した。

 

 

 

 

 

 

スキル<予知夢>。称号<(かんなぎ)>のスキルの一つである。神託を授かる方法の一つ。

 

このスキルの内容は、確定していない未来の夢を見る、事。それだけなら、別に使いやすいスキルではない。ただの<予知夢>なら、下手をすればしょうもない事を見せられる事もあるが、俺の場合は別だ。

 

詳しいことは分からないが、<時空魔導>スキルが影響しているらしく、基本的には自分の事に関する夢しか見ない、とそこそこ利便性が上がっている。

 

 

 

 

 

つまりさっきまで見てた夢は、いつか、俺が辿り着き得る未来である。

 

ただし、このスキルは少々問題点があって。

 

 

 

「何のための発動だ?」

 

 

 

当然ではあるが夢で見る出来事の前後関係が全く不明なのである。とりあえず視点が俺だったので自分の状況から推測してみる。

 

まず、場所から判断して大方<システム>前での最終決戦と言ったところか。それなら俺単独だったのも納得がいく。俺が、単独で、今代と戦う。使用スキルは<自己傀儡人形>。戦闘中の魔法使用は無し。

 

という事は、目的は時間稼ぎか。

 

 

 

となると、次なる疑問はやはりこれだろう。

 

 

 

「……なぜ<防衛者>を使わなかった?」

 

 

 

<自己傀儡人形>は<勇者>が持つスキルの中では一番時間稼ぎに向いている。

 

だがそれであっても<防衛者>が行使する<防衛魔法>には及ばない。特に&表示が出来るのであれば、<勇者>の圧倒的な魔力量を元に<防衛魔法>を行使可能で、おまけに自動回復スキルも付いて来る。

 

 

 

それをせずに、<勇者>としての最善手で臨んだ。

 

 

 

なぜか。

 

 

 

と言っても俺の事だ。大体想定は付く。

 

理由は単純明快。<防衛者>()()()()()()()()()

 

 

 

恐らく今現在俺とさくらが考えている事──重複ステータスの分離と乖離──が可能で、それに成功したのだろう。

 

夢で視た未来の俺は、そのために<防衛者>でなくなったと考えられる。

 

 

 

<防衛者>と<勇者>、どちらを残すかは選べたはずだが、今代<勇者>とやりあう時に、同レベルの<防衛者>単独では拮抗しきれないとみて<勇者>を残した、といったところか。

 

 

 

妥当な判断だ。受けたダメージ量はまあ何となく感覚で把握できるが、<勇者>時の物攻・物防値から判断して相手のレベルはおおよそ150前後。

 

となると、俺とさくらが<勇者><聖女>ペアで動くとき以外は負け戦であると考えて良いだろう。ただその場合、圧倒しすぎて逆に殺しかねない。こちらも命を懸けている以上、手加減は不可能に近い。レベル差は多めに見積もって60。数が違い過ぎてちょっと厳しい。手加減するにはこちら側の手数が足らない。

 

<聖女>状態のさくらはなんだかんだ言って聖属性特化・広範囲殲滅型の魔導師。手加減にはあまり向いていない。回復に専念させ、俺が一手に相手を引き受ければ勝てるかもしれないが……

 

 

 

 

 

 

そもそも当時の俺達は、<システム>は、()()()()()()()()()()()

 

 

 

本当に<システム>が勝ちを望むなら、俺達二人に加え、グラディウスを投入すればいい。<システム>自体の守りは時空帝竜が居れば済む。それをしなかったという事は、ただ時間を稼ぐだけで良かった?

 

あるいはもはやその意味が無いところまで追い込まれているのか?それともその手を打つことが出来ない状態にある?というか俺何でそんな簡単に死にに行ったんですかね?

 

 

 

……時空帝竜?ちょっと待て、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

<時空魔導>があるなら時を止めれば、時間など無限に稼げるじゃないか。何故そうしなかった?

 

<時空魔導>は<管理者>の特権のような物だろ。今代は使えないのだから、影響はもろに受ける筈だ。

 

 

 

……駄目だな、やはりあの情報だけだと足り無さすぎる。

 

あの未来は、俺が辿り着き()()未来である。確定していない未来なのだ。つまり事情が分かれば避けることが出来るだろう。

 

 

 

しかし、事情が分からない事には対策が立てようがない。

 

 

 

取り敢えず、今代が<システム>について気付かないようにするくらいしかないか。今代が気づいたらまず間違いなく敵対ルート確定だろうしなぁ……俺ですら敵対選んだくらいだ、敵対しないわけがない。

 

……いやマジでどうしたもんか。

 

 

 

「国崎」

 

「ん?ああ、何だ篠原か、どうした」

 

「何だじゃないだろう!急に倒れて……誰か!」

 

「どうしたの勇人君……あ」

 

「国崎が起きた、優菜か荒山さんを呼んでくれ」

 

「わかったわ」

 

 

 

別に呼びにやらなくでも良いのに。まあ良いか。

 

 

 

「そうだ、ちょっと国崎に聞きたいことがあるんだけど」

 

「何か、あったのか?」

 

「何か、昨日くらいからさ……」

 

「あ、待て、俺何日くらい寝ていたんだ?」

 

「三日だ。心配したぞ」

 

「そうか。いや、制限付きのステータスに思ったより慣れていなかったらしい、すまんな。次からは大丈夫のはずだ……それで?昨日くらいから何があったんだ?」

 

「大丈夫なのか本当に……ああ、何か、こう、特定の場所に行かなきゃいけない気がしてさ」

 

「特定の場所?どこだ」

 

「この村から少し北だ。村人に話を聞いたが、何か古びた神殿みたいなものがあるだけらしいが」

 

 

 

ああ、剣強化イベントですねわかります。声で反応しなかったんで精神干渉始めたのか<正義(ジャスティス)>。

 

 

 

「なるほどな」

 

「何か知らないか?」

 

「これだという確証は無いが、一応は」

 

 

 

嘘です確証あるある。

 

 

 

「教えてくれ」

 

「その神殿では、おそらくだが、何かしらお前に利益がある」

 

「何か、とは?」

 

「わからない、来る時にも言っただろう?多分アレと同じ物だからな」

 

 

 

神剣かもしれない、剣じゃない神授武器かもしれない。純粋に<聖剣>が強化されるだけかもしれない。何回かの戦闘を経て、新たなスキルが手に入るのかもしれない。

 

 

 

<正義>が干渉している事を考えると、おそらく二番目ではないかと思うのだが。

 

 

 

「もし気になるのだったら俺も付いて行こう。あまり他の人間を連れて行くのも考え物だな。<魔導師>の……誰だっけ、彼に<防衛業務委託(ディフェンス・サブコンストラクト)>をしておこう」

 

「川島だ……そうか。わかったありがとう」

 

「行かなくて良いのか?」

 

「行きたいが、国崎が回復してからだな。一応病み上がりなんだ、休むべきだろう」

 

「多分大丈夫だと思うぞ」

 

「それでまた倒れられたら困るからな」

 

「わかった」

 

 

 

じゃあお言葉に甘えて未だしばらくベッドの上にいるとしますかね。

 




以上です。

それで良いのか聖剣。

この一週間で、実は過去話をいくつか編集しました。流れに変化はありませんが、感想欄で質問・指摘頂いた箇所や自分で少々気になるところ、不自然に感じたところを訂正させていただきました。報告までに。

感想質問批評などお待ちしております。

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