二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~   作:クラリオン

75 / 108
前年度が楽だっただけに今学期の週四1限スタートがキツい。中学高校とこんな苦行をしてたのが信じられない。

とかまあ私の個人的事情はさておき、取り敢えず二週間には間に合いましたかね。

今回は前話の続きを今代勇者篠原君の視点でお送りいたします。

それではどうぞ!


閑話  今代<勇者>は

 

 

 

 

 

「……異世界の、<勇者>は、化け物、か……」

 

 

 

その台詞を最後に、彼は息絶えた。否、俺が斬り殺したのだ。不思議と罪悪感が無かったのは、なぜだろう?必死に戦う兵士たちを嬲るように戦っていたと聞いたからか。

 

 

 

「……勝ったぞ!」

 

 

 

テンション高く声を上げ、近寄ってきたのは<暗殺者>の職業を持つ皆本(みなもと)修也(しゅうや)

 

 

 

「ああ、そうだな」

 

「それにしても最後は驚いたが……何とかなる物だな」

 

 

 

魔族軍の部隊を率いていたと思われる隊長格の魔族が、最期に放った炎属性の魔法。

 

 

 

「国崎のお陰だな」

 

 

 

魔法が発動する直前、障壁が目に見えて厚くなり、さらに相手の周囲を覆うように障壁が展開された。遠距離での行使は難しいと言っていたが、巨大な炎が目印のようになったのだろうか。

 

アレが無くては、俺や裕次郎以外は重傷だっただろうし、潜入組に至っては死んでいたかもしれない。

 

その存在全てが守る事に特化し、魔族との戦争において<勇者>と双璧を成すと彼は言った。<防衛者>の存在があるからこそ<勇者>は躊躇なく前にいる魔族にだけ集中できるのだと。

 

聞いた当時は話半分に受け取っていたが、実際に援護を十分に得た上で戦ってみると、過言ではない事が理解できた。

 

戦いやすい……というレベルではない。もはや実戦ですらないように思えた。相手の攻撃は物理・魔法問わず全て無力化され、なのにこちら側の攻撃は全て通るのだ。住民を狙ってこちらの態勢を崩そうにもその攻撃全てが防がれるのだから理不尽でしかない。

 

<防衛者>も<勇者>に負けず劣らずどころか<勇者>以上に規格外で、理不尽な存在であると理解できた一戦だった。あまりにも一方的過ぎる。こちらにとっては模擬戦でしかない。最後のあの攻撃すら、障壁が割れただけで中にいたクラスメイトは全員無事だった。

 

 

 

「……そうだな、この戦闘の立役者は間違いなく奴だ」

 

「認めるのか?」

 

 

 

<賢者>が立てた策は、全て<防衛魔法>前提の策だった。普通の結界術や障壁魔法ならまず実行できなかったことが多すぎる。

 

だが、あまり国崎を好ましく思っていないと考えていたクラスメイトから、彼の功績を素直に肯定する言葉が出た事には驚いた。

 

 

 

 

 

「……認めるも何も、あの状態で戦えばそう感じざるを得ないだろ。攻撃を防ぐ必要が無いんだ、普段と違う状況なのに、普段と同じように戦える。いや、それ以上だったな。異常なまでに戦いやすかったぞ」

 

 

 

 

 

<暗殺者>という職業は、基本的には一撃必殺の一撃離脱が主な戦闘方法だ。目に見えるステータスも基本的には物理攻撃に特化していることが窺える。職業・称号による補正も、移動速度と認識阻害のみ。つまり攻撃を受ける事を想定していないのだ。

 

 

 

 

今回の戦闘のように敵陣中に忍び込んで、そのまま戦いを続けるなど以ての外である。

 

 

 

 

それを可能にしたのが、<防衛魔法>のスキルだ。魔法探知を防ぐ障壁と物理・魔法問わず全ての攻撃を迎え撃つ<神楯(イージス)>。

 

 

 

攻撃を受けないばかりか、斬りかかってきた相手が<神楯>により攻撃を弾かれ、姿勢を崩したところを仕留める事も出来た。普段より確実にやりやすい。

 

結果としてこちらの損害はほぼ0、敵部隊潰走という結果に終わっている。

 

 

人族領とは言え、設備も揃わぬ辺境の地で、初めてこちら側から打って出た戦いにしてはこれ以上ない結果であると言えよう。

 

 

 

 

「これで怪我でもしていたら文句の一つでも言ってやるんだが、あそこまで完璧に守り通されるとな」

 

 

 

敵の数も圧倒的な中で、無傷で済ませられたという事実は、感情による色眼鏡を通してなお良い評価を下せるレベルだったという事なのだろう。

 

 

 

「じゃあ、戻るか」

 

「勇者の凱旋だな」

 

 

 

王都への襲撃を含めれば二度目の人族の勝利。

 

 

 

「──そうか、良く考えれば王都の時もアイツに助けられたな」

 

 

 

王都への襲撃の際、後衛組を守ったのは国崎で、夜襲の時に敵の初撃を完璧に防いだのも彼であった。

 

今までの勝利は全て、<防衛者>の援護によるものが大きい。

 

感謝しなければならない。彼と、彼を<防衛者>として送ってくれた女神リシュテリアに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

門まで戻ってきたところで異変に気付いた。国崎が居ない。戦闘開始まで国崎が居たはずの場所にあるのは、六本の空き瓶。

 

 

 

「……前原さん、国崎はどこだ?」

 

「……国崎君ならさっき倒れたわ、今はそこの家に居る筈だよ」

 

「倒れた?」

 

「……おい、勇人、こ、これ……」

 

 

 

<探索者>の職業を持つ英吾(えいご)が指さしたのは、空き瓶……空き瓶?

 

 

 

「全部、()()魔力回復薬だ」

 

 

 

上級魔力回復薬。初級から上級まで四種類存在している魔力回復薬の中で最も性能が良く、現状俺達<勇者>の中で最大の魔力量を持つ<魔導師>である直樹ですら一本で七割近く回復する魔力薬。全体的にステータスが低い<防衛者>ならば一本飲めば全回復は確実である。

 

その空き瓶が六本。推察するに全部国崎が消費したものだろう。

 

ってちょっと待て。

 

 

 

「六本……これ全部か?前原さん、ここにある空き瓶は……」

 

「全部、国崎君が飲んだ物だよ」

 

 

 

上級魔力回復薬を、六本も、あんな短時間で?

 

<防衛魔法>は効率が良い省エネ型の魔法じゃなかったのか?

 

 

 

「……それで、国崎の様子は?」

 

「とりあえず、今は眠っているよ。多分魔力酔いだと思う」

 

「だろうな」

 

 

 

<防衛魔法>は効率的なスキルじゃなかったのかとか先代<勇者>なら魔力酔いくらい知ってるだろうとか思ったことは多いが、取り敢えず納得はした。

 

あの短時間で六本も飲んだのなら魔力酔いになるのもわかる。ではなぜそのような事態に陥ったか。

 

 

 

「あの爆発のせい、か?」

 

「いや、六本も消費している以上、それ以前からのはず……まさか」

 

 

 

国崎は、スキルをずっと、発動しっぱなしだったのか?!

そういえば、俺達が出るときにも飲んでいたような……

 

 

 

改めて、今回<防衛者>がやったことを考えてみる。まず事前潜入組四人へ、魔力吸収障壁、<神楯>の付与。続いて俺達突撃組へ、対魔法障壁を、のちに対物理を追加。後衛組・住民・兵士の護衛用に<神楯>と<周辺警戒(レーダーマップ)>の常時展開、最後の巨大障壁。

 

 

 

……ああ、そうか、自分で言っていたじゃないか。この作戦は<防衛者>の存在が前提であると。

 

作戦の要所要所全てに関わっていたらやる事が多くなるのは当たり前じゃないか。

 

何だ、全部俺達の落ち度じゃないか。いや、落ち度と言える程でもないが……でも考えればすぐわかる事だ。目覚めた時に謝罪か感謝はしておくべきだろう。

 

前原によれば後を頼むと言われたらしいので、目覚めるまでは村を守らなくてはならない。

 

<防衛者>が居なくてもそれくらいは出来なくては<勇者>の名が廃る。元々彼は代理的存在。一応、人族領を守りきるまでは居れるだろうという話ではあったが、神の事は人には把握できない。防衛面だけであっても彼に頼りすぎるのはよろしくない。

 

 

 

「……夜間警戒のシフトを組むぞ、国崎もいつまでいてくれるかわからないからな。彼が動けない今の間だけでも俺達だけで回そう」

 

「そうだな」

 

 

 

 

 




以上です。とりあえず名前だけで何気な初登場な裕次郎氏について。

太刀山裕次郎(たちやまゆうじろう)  職業:騎士

そこそこガタイの良い奴。柔道部所属。


<騎士>……防御値、剣術、盾術への補正。


それではまた、二週間以内に。


感想批評質問等お待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。