二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~ 作:クラリオン
まさかここまで長く更新できないとは私自身予想外でした。予定では土曜日辺りに閑話を1話上げる予定だったんですが……ボツになりました(´・ω・`)
そんな感じで本編、第五十七話です、どうぞ!
さて、とりあえず目的地に到着したわけだが、改めて状況を確認しよう。
こちら側の戦力は、<勇者>一行が俺含め19名。他に元々街に居た王国軍の兵士が三百ちょい。元は五百居たが、かなり負傷者が出ている上に、装備が少ないとの事。
相手側の戦力は、低く見積もって千といったところか。
戦争における法則として攻撃三倍の法則、もしくは三対一の法則とよばれるものがある。戦闘に於いて攻撃側は防御側の三倍以上の戦力が必要であるという経験的法則である。まあこれが絶対正しいとは一概に言えないのだが。
上の法則と魔族のステータスが人族のそれより優れている事を考慮すると、人族と魔族の戦力差はかなりギリギリのラインである事がわかる。今まで拮抗できていたのは、主に都市防御障壁と、冒険者組合の物体転送機を利用した物資補給のお陰であろう。
しかし、これからはまた話が別になる。今回俺達が北方へやって来たのは、魔族を
何はともあれ、つまるところ、
本当に早く召喚されたのが良いことだったのか疑わしい状況だなこれ。いや、だからこその多人数?でも低戦力の下手な分散は各個撃破を招く。
だとすれば今回の切り札は確実に<防衛者>だったんだろうな。<
前も思った気がするが自分で
……まあ、良いか。
さて、打って出るときの戦力は、まあ<勇者>、それも戦闘職だけだわな。住民と非戦闘職の護衛は一か所に集めて俺が<
……いや<絶対障壁>張るんならいっそ住民後衛組も門の近くまで動かしてもらうか?それで俺が門のところに居れば、外と中の両方に<神楯>張れるので住民を確実に守りつつ<勇者>の護衛が出来る。どうせ魔族は<勇者>が出てくればそっちに集中するだろうし。
まあそこは今代<勇者>達と協議かな。
まあ<賢者>も何かしら策は立ててはいるだろう。期待しとこ。俺と違って純然に全能力を<賢者>に振り分けられるんだし。あ、でもレベル低いからそこまでもないか……
作戦決定。決行は明後日から。
意外にも民間人及び兵士、そして俺含む後衛組の配置は俺の案と一致した。段取りは以下の通り。
隠密に優れた<暗殺者><探索者><狩人>の四人が、まずひそかに敵陣に侵入。この時、<絶対障壁>を張っておく。タイプは魔法吸収型と音遮蔽。例の魔法ソナーへの備えと、聴覚強化系への対処。
侵入成功後、<勇者><騎士><剣聖><槍術師><拳闘士>が突撃。<魔導士><魔導師>はそれを後方から援護、<聖女>と<回復術師>は回復担当。
突撃と同時に四人が後方で撹乱開始、出来ればこの時に<絶対障壁>を張りなおしてほしいとの事だったが……
「悪い、それは厳しい。<絶対障壁>の対象に出来るのは術者本人かその視界内にある物だ」
乱戦のさなかに、敵陣に潜り込んで隠蔽系の魔法発動中な斥候職を見つけて、魔法を掛けろって、俺<防衛者>だからね?<防衛魔法>以外使えないぞ、望遠系とか無理無理。出来ないことは無いけどな、出来ない事になってるから仕方ない。あとそんな事してたら前衛組の援護が疎かになる可能性もある。
「……そうか」
「よって代案として、<防衛業務委託>の行使を進言する」
俺が無理なら本人達に発動してもらおうぜ、と。
「張りなおす事になっているのは、物理・魔法攻撃の遮断だったな」
つまり通常の<絶対障壁>である。
「<神楯>か<絶対障壁>を彼等に委託しよう、どちらも魔力消費は低い。隠蔽系の魔法を発動しながらでも併用できるはずだ」
付け加えるなら、問題は消費量だけではない。
魔法はイメージ。発動している間は意識をある程度そちらへ振り分ける必要がある。隠蔽系の魔法が、攻撃されると解除されるのはそのせいだ。何回も発動して慣れているのであれば、無意識でも可能ではあるのだが、まあ可能ならば意識をそちらに振り分けるべきだろう。
なら委託時点でイメージが固定され、短詠唱のみで発動可能な<防衛魔法>は併用に向いている。
「……そうか。その手があった」
「俺としては<神楯>をお勧めする」
候補として挙げた二つのスキルは、イメージで決定される要素に違いがある。<神楯>は範囲を、<絶対障壁>は範囲に加え、障壁の形状、性質を、それぞれ術者のイメージによって決定する。
委託時点でイメージはほぼ固定化されるとはいえ、発動する側のイメージが反映されないとも限らない。今回並列発動することになるのは、隠蔽、つまりイメージは可視光線の透過である。
範囲は問題ない。隠蔽のイメージ範囲は自分だから。しかし透過という性質が反映されると、障壁を張る意味が無くなる。
<神楯>は通常の魔法分類からいえば障壁ではなく探知系に分類される。主体が相手の攻撃を察知する事だからか。そのお陰でイメージ要素が対象範囲のみなので、イメージを同調させても大丈夫だろう。
「<神楯>……ああ、あのパッシヴスキルか」
「そうだ。あのスキルは自動で敵の攻撃を全て迎え撃つ。魔力消費も低く、相手側の攻撃に注意を割く必要が無くなる」
少数での後方撹乱は、効果は大きいが実行者のリスクも高くなる。だから普通なら隠蔽系スキルを発動していても相手の攻撃に目を配る必要がある。
しかし<神楯>は死角からだろうが空間を越えようが異次元からだろうが全て迎撃し無力化する。つまり相手の動きに目を配る必要が無い。
……本来の用途からかけ離れている気がしなくもないが、こんなぶっ壊れ性能かつ高効率のスキルを運用させる<システム>が悪い。
「……その案で行こう」
「了解した。では後で委託しておこう」
で手順の説明に戻る。撹乱というよりは、挟み撃ちにしている、という形にしておきたいらしい。まあいくら<勇者>と言えど最初から二十倍の相手はキツいか。あとは魔族軍の強い奴を、出来れば司令官クラスを潰して敗走させる。まあそれは必須だな。
決行が明後日なのは、<勇者>連中の調子を戻すのと今の気候に慣れさせるため。まあ多分明日には<寒冷耐性>とか付くだろ。ステータスに表記される事のない完全パッシヴスキル。今日までの移動で<雪上移動>とかも付いてそうだけどまあそれはどうでも良いか。
んで決行までの二日は、俺が防衛を担当、と。うん妥当な判断。ただ住民は一か所に集めてもらった。流石にな、一瞬だけなら例の重ね掛けで、それこそ村全体を覆えるんだが、常時展開だと魔力量の兼ね合いもあるしなあ。足りなくなったら<勇者>ステに自動で切り替わるけどまあそれは切り札っつーか自分の発言と辻褄合わなくなるしなあ。
いやそんな嘘だろみたいな顔するな篠原。見てただろ俺のスキルの効果範囲。
今の俺は、いやいつでもか、俺はチートじゃないんだよ。
特に今、レベルは大してお前達と変わらんのだ。基本は相応の事しか出来ない脇役だぞ、ちょっと存在感あるけど。
気合でどうにかなるのは伝説の主人公の特権だ。
「出来る事はしよう。だが防衛に専念しても、限界はある、俺は全能じゃない」
全能だったらそもそも召喚を回避してるっつの。
さて、それでは。改めて(明後日からだけど)第二回・今代<勇者>の防衛戦を開始する!
……誰に宣言してるんだ?
<防衛者>は存在そのものがチートだと思う。
最近気づいたんですが、『防衛用だと確信できる兵器』ってあんまり縛りになってないなって(今更)
極端な話が自衛隊の装備は無条件で召喚できるし、何より「実在する」の縛りがないのはアウトだと思います。なぜかって?
……考えてみよう、私達は既に防衛という名を持ちながら星まるごと滅ぼせる兵器を知っている筈。
この説明ですらいくつか候補がある時点で察してください。
それでは感想批評質問等、お待ちしております。