二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~   作:クラリオン

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<聖剣>が何か呼んでたっぽいけど無視無視。


そんな感じで第五十六話です。漸く、三話かけて到着です。
遅い()まあ移動手段に電車とか自動車とか無いですし……逆に三話分日数にして5日と経たずに着いてるってどれだけ速いのん?

改めまして、第五十六話、どうぞ!


第五十六話  <勇者>現着

 

 

 

翌朝。

 

誰に起こされるわけでもなく、日の出とほぼ同時に起床。習慣って怖いよな。

 

今代もほぼ同時に起きた(起こされた)ようなので、出発。

しようとしたところで、村の人から犬橇を貰った。あるのかよ。これは逆に<調教師>が必要だったかもしれん。

と、思ったが、なんとこいつら、勝手に目標地点まで行ってくれるんだとか。何それ便利。

 

 

さて、犬橇は二人乗りが五台。パーティー編成は前衛9後衛10。ピッタリじゃないですか。あとは配置だよねえ……俺が乗るのを中心に、ひし形か正方形に並ぶのが一番効率的。それは篠原も分かっているだろうし、それは心配しなくてもいいだろう。

 

 

 

前衛組は知らん。篠原がどうにかするだろう。ただ、俺達の時より人数がはるかに多いので、取れる陣形も多いだろう。何を想定しどんな陣形にするのかは少々気になる。

 

<防衛者>が居れば理論上は後衛組に護衛は不要であるから、前衛組全てを前に持って行くのか、念のためとして後衛組を囲むのか。

 

俺にとっては正直どっちでも変わらない……いや、僅かに前者の方がキツイかもしれないか。まあ多分誤差の範囲内だとは思うが。

 

 

 

結局、<探索者>をそこそこ先に出し、残りは後衛組を囲む形での移動を開始した。まあいたって普通の陣形である。っつーかこれ馬で移動してる時と変わんないな。

 

 

 

 

 

その日も、予定していた場所へ到着し、翌日の朝もほぼ同じような感じで移動を開始。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今。目的地となる街の近くまで来ていた。現在地点は林の茂みの中。魔族の様子を<探索者>に見に行ってもらっている。

 

 

 

「<周辺警戒(レーダーマップ)>」

 

 

 

流石に敵が近いのに開けた場所に居るわけにもいかないので、森の中で待機となった。

 

 

 

「──<周辺警戒>」

 

 

 

無論、何もしていないわけではなく、俺も頻繁に重ね掛けを行って、魔族の様子を見ようとしている。ただ、相手が遠すぎて陣営の一部しか見えない。

 

 

 

「<周辺警戒>」

 

 

 

そして何度目かの重ね掛けの時、敵陣に動きがあった。

 

 

 

「見つけられたか」

 

 

 

どうも<探索者>が下手を打ったらしい。いくつかの反応がこちらへ……いや、少しずれた方向へ向かって動き始めた。確かその先にはもう一つ林があったはず。<探索者>は思ったより冷静なようだ。撒きにかかっている。

 

 

 

「篠原、<探索者>が見つけられた。今ここじゃないもう一方の林に向かっている」

 

「わかった」

 

 

 

そしてその反応が林についたころ、<探索者>が戻ってきた。

 

 

 

「悪い、へましちまった」

 

「いや、良い。無事に戻ってきてもらえただけありがたいよ」

 

 

 

其の通り。情報は大切だからね。え?違う?

 

 

 

「それで、相手の陣営は?」

 

「えっとな……」

 

 

 

説明するために地面を枝でガリガリやり始めたところで。

 

 

 

「──<絶対障壁(バリア)>」

 

 

 

障壁を内向きに張りなおした。何でって?待てばわかる。

 

 

 

「どうした国崎?」

 

「<周辺警戒>が魔力反応を探知した。恐らく索敵系の魔法だ。障壁の効果範囲から出るなよ」

 

 

 

この世界において、一般的な索敵魔法は、コウモリやイルカなどと同じ方法によって敵を発見する。すなわち、魔力の波を全方位もしくは特定の方位に放ち、跳ね返ってくる魔力で、物体や敵の位置を把握するというもの。魔力が低い物は透過してしまうので、森林の中や岩の影とかに居ても見つかる。無論まともな障壁張ってたら見つかる。

 

じゃあどうするかと言うと、ここでまともじゃない障壁魔法の登場である。

 

対魔法に設定して内向きに展開する、以上!

 

 

 

イメージとしては、障壁の外側から内側に向かって魔力が常に流れているという感じだ。それに魔力の波が巻き込まれ、反射することなく障壁内へ流れ込み、あとは障壁内でひたすらでたらめに反射し続ける。つまり相手の下に帰って行かないので、探知されない。

 

 

 

円形にしてあるのは、波を完全に封じ込めるため。別に直線状でも良いかとも思うのだが、何せ魔法である。何があるか分からない以上、万全の対策を取るべきだ。

 

 

 

とかやってる間に、突入の手順が決まったようだ。

 

 

<勇者><騎士><槍術師>を先頭に突入、<魔導師>他後衛職からの支援攻撃込みの最大火力で相手の包囲の一点をこじ開けて突破。まあそれ以外の選択は無いか。

 

 

 

「後衛組の防御は頼む」

 

 

 

あいあい任された。

 

 

 

さて、では参りましょう。

 

 

突撃ぃ!

 

 

とか叫ぶ事無く、ただひそやかに、森を飛び出し静かに突貫を開始。目指すのは敵陣で最も警戒網が薄い場所。

 

まあ当然のことながらすぐ見つかる。承知の上。

 

 

 

「<三叉槍(トライデント)(ファイア)>」

 

「<三叉槍・(サンダー)>」

 

「<光槍(ライトランス)六重(セクスタプル)>」

 

 

 

火で雪解かして感電させるのか?んで有利属性で滅多打ちと。上手くいかなくても、三叉槍だから広い範囲に高ダメージ、一応は考えてんのかね。

 

 

 

「<神楯(イージス)><絶対障壁>」

 

 

 

対物理・魔法両方に設定して張りなおす。

 

 

 

「<疾風>」

 

「<迅雷>」

 

 

 

高速移動用付与(エンチャント)。予定通り一気に突き破る。

 

あれだね、いやっほう!て叫びたい気分だね。

 

はっはっは、撃っても無駄だぁ!

 

 

 

 

 

気付けば一瞬で魔族の包囲を突き破っていた。とりあえず一層目。

 

 

「<火球(ファイアボール)・六重>」

 

「<雷球(サンダーボール)・六重>」

 

「<光槍・六重>」

 

 

 

後はもう一層突破すればおしまい。<魔導師>二人が前後に魔法を撃つ。ああ、あとこれも。

 

 

 

「せいっ!」

 

 

 

うしろに向けて放り投げたのは、黒い玉。外見上は何もない玉だ。まあ、卵みたいなやつに中身詰めて放り投げただけだし。

 

それらは<火球>によって雪が溶かされ、見えてきた地面に着弾すると同時に割れ、中身をまき散らす。

 

 

 

「<火球・六重>」

 

 

 

二度目の<火球>が着弾した瞬間、地面が燃え上がった。

 

玉の中身は油。どこにでも売ってるであろう油。ちょっとした時間稼ぎにな。出来ればガソリンが欲しかったけどまあ、あれで十分ではある。

 

油の火災って水で消火できないからな。

 

なぜそれで足止めになるのかっつーと、俺達が突き抜けたのが物資置き場だから、以上。

 

消火頑張ってくれ、引火する前にな。

 

物資置き場は見た目、警備は厚い。まあ重要箇所だし、警戒はするよな。だけど置き場の中には兵を振ってない。定期的な見回りはいるみたいだが。だから、基本上から見た場合、警備兵の層は二層。つまり街包囲の外側警備と内側警備だけ。

 

そして物資置き場がぐちゃぐちゃだったら、物資を取り出しにくい。当然ながら整理整頓されている、ちょうど、昔の都のような碁盤目状に通路が張り巡らされた状態で。

 

今回の動きは貫通特化。一度勢いで破ってしまえば、そのまま直線状通路をすり抜けるのは容易い。進路変更による速度の低下もなく、むしろ敵が居ない分加速しながら駆け抜ける。

 

その間、俺や<魔導師>みたいに追撃してきた兵へ攻撃すれば、外れたとしてもそれは物資に当たる。当然物資は消し飛ぶ。前にいる魔族も、外された場合に物資に当たるとなると、怖気づいたのかそれとも物資の消耗を避けたいのか、あまり攻撃してこない。まあ攻撃してきても確実に<神楯>に迎撃されるからそんな心配はないんだけど、そんな事向こうは知らないだろうしな。

 

 

 

とかこんな事をすぐ思いつく辺り、流石は<賢者>である。<神楯>云々は今気づいた事だけど。

 

 

 

 

物資置き場を通り抜ける。最後に先程の油玉をもう一度放りだす。

 

包囲内側の魔族は先ほど突き破った層よりやや厚めだが、この程度なら問題ない。仮にも<勇者>だし。加速した勢いのまま文字通り蹴散らした、吹き飛ばした。

 

 

 

よっしゃさあ逃げろ逃げろ!

 

 

 

あとはもう後ろにひたすら魔法を撃ちながら逃げるのみ。

高速移動魔法を利用しながら、後ろへ広範囲型の<三叉槍>や手数の多い球系統をばら撒きながら逃げられたら、正直俺でもお手上げ状態でしかない。

 

 

 

 

 

 

 

お疲れ様でしたー、と追撃を諦める魔族に心の中で挨拶を送り、前を向く。既に目的地となる街の門は開いている。

門は俺達が入ると同時に閉じられた。

 

 

 

「勇者様だ!」

 

「助けに来てくださったんだ!」

 

「勇者様ー!」

 

 

 

兵士や住民の声に手を上げて振って応える篠原。そこそこ絵になる光景だ。一番絵になるのは馬に乗って聖剣掲げてるとこ。まあそんなことはどうでも良い。

 

 

 

いよいよ始まる、今代<勇者>による、魔族への反撃。

 

 

 

魔族に対する防衛戦の、人魔大戦の本番の始まりだ。

 




以上です。


<絶対障壁>だと反射されない理由
外側から内側にかけて、魔力が徐々に濃くなりながら流れるイメージ。外側はものすごく弱いので反射されず魔力の流れに巻き込まれてしまう。一度障壁の内側に入れば、内側の面は魔力が濃いので中で永遠に反射し続ける。


感想批評質問等、お待ちしております。

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