二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~ 作:クラリオン
<防衛業務委託>によって四つのスキルを委託された<巫女>石縄令奈。しかし<周辺警戒>は彼女には少々手に余るようで……
それでは第五十四話、どうぞ!
<勇者>の北部地域への出撃、これを第五フェイズとみるか否か。
本来の人魔大戦プログラムではどう考えても第五フェイズ、<勇者>を先頭にした人族の反撃とも言える。
しかし、今回は、<魔王>の指定に伴う魔族側からの攻撃が、<勇者>の召喚より後である。従って、第五フェイズが存在せず、第四フェイズから直接第六フェイズに移行する可能性が高い。
その事にたった今気づいた。
アホか。アホです。さくらに言ったらまた抜けてるとかなんとか言われる気がする。
まあいっか。
やることは変わらない。
「あの」
「何か?」
目の前で、さっきから集中して、おそらく<
「この、<周辺警戒>っていうスキルのコツみたいなのってありますか?」
コツ、かあ……コツねえ……
「……基本的には、慣れる、以外には無い、と思う。俺としてもかなり無理を言っているのは分かっている。段階をかなり飛び越えているからな」
<周辺警戒>は、レベルが上がるごとに情報量が格段に増加する。最初レベル1では生命体の存在のみ、範囲は訓練場程度。レベル2だと、それがやや広がり、敵味方の区別がつく。以後さらにレベル3で範囲が球状、つまり三次元立体レーダーと化し、レベル4、5で範囲が順調に拡大する。レベル4で<
つまり現時点でこのスキルは、人間に自動
レベル1からなら、平面レーダーにIFFが付き、慣れてきたところで三次元に移行、あとは範囲が少しずつ広がっていくだけなのだが、いきなりレベル5は色々と飛び越え過ぎた。
とはいえ、やってもらわなきゃいけない。巻き込んでしまうのは心苦しいが、<防衛者>の責務を果たせなくなる方がまずい。
しかしなあ……あ、一つだけ出来るかもしれんな。
「……<
かつて春馬さんに授けられた方を使う。<周辺警戒>レベル10。これに向ける魔力量を絞ってみると、探知範囲が狭まっていくのを感じた。
成程、なんてことは無い、<防衛魔法>も魔法である事には変わらない。<
なら他の探知系魔法同様に、<周辺警戒>も流す魔力を減らせば、探知範囲が狭まるのではないか、と考えたが、どうやら当たりらしい。
なんつー見落とし、凡ミス。やっぱ俺アホだな。
「石縄」
「え、あ、はい」
「<
「あ、はい」
ならわかるか。
「<周辺警戒>を発動したまま、流す魔力を抑えてみてくれ」
と、言うのは簡単なのだが、これが少々難しい。というのも、
「
「そうだ、難しいとは思うが、そのまま慣れるよりは簡単だと思う」
<防衛魔法>は、省エネ型の魔法である。特に初期スキルとなる<絶対障壁>と<周辺警戒>の魔力消費量は、別の意味で頭がおかしい。
<周辺警戒>はレベル5、すなわち現在時点で、
これを、10秒で消費2か3まで減らす。
……うん、頭がおかしい事を言っている自覚はある。
基本的に<魔力操作>で消費軽減を行う場合、第七位階以上のスキルを対象に、おおよそ10や100単位で軽減する。決して1単位で軽減することは無い。なぜなら、<魔力操作>による消費魔力の削減の一般的な目的は、基本的に高威力魔法を可能な限り多く、連発出来るようにする事、あるいは長時間維持する事だからである。
逆に言えば、魔力消費量が1とか2とか変化したところで大差ない。その程度残ったところで、第一位階スキルすら発動できないのだから。よって一般にはそんな事に費やす集中力があるなら、よりイメージを明確にする方に集中力を割く。
ただ、今俺がやってみるようにいった目的は、スキル効果範囲の縮小である。最悪<勇者>後衛の周囲のみを見張れればいいと割り切って、訓練場程度の大きさまで絞る。前衛は<絶対障壁>に任す。
さて、問題は石縄が、<魔力操作>でそこまで細かい調整を出来るかにかかっている。出来なくとも是非習得してもらいたい。何気にこれは役に立ったりするのだ。付与とか、<巫女>ならば儀式魔法にも応用が可能だし。
結局、石縄は何とかこの微小単位の<魔力操作>に成功した。良かった、これで思い残すことなく出陣できる。
……別に死にに行くわけじゃないんだが。
そして翌日。残存組10名を残し、俺含めて19名の<勇者>パーティーは、王国北方へ向け出陣した。人族側の戦力が残っているうちに到着できればいいけどな。
到着までの日程は五日。同伴現地人0、休息をギリギリまで削ってもなおこれだけはかかる。目指すは王国最北端。バリバリ水帝竜の縄張り。久々のご対面となるけど……まあそこらへんはあっちも上手くやってくれるでしょう……その前にそもそも会うかどうかだが。
北を目指して、馬で街道を進む。
途中までは今のように馬で、そこから徒歩……というかまあ随時回復しながら走る予定らしい。後衛前衛関係なしだ。<
懐かしいなあ、昼も夜も、時には睡眠すら犠牲に走ってたジャングルが。睡眠不足による眠気や、疲労によるパフォーマンスの低下全てを、状態異常回復で消し飛ばして、走って、もしくは馬を走らせて、剣を振り、魔法を撃った。
……今思い返すとだいぶヤバい。まだ中学生の癖に魔法でドーピングしながら戦い続けてましたって。
途中から<転移門>使えるようになったからだいぶ楽になったものの……ん?てことは今回もいずれは<転移門>使えるようになるのか?だとすれば有難い。
俺の時はレベル30以上で、ある程度大規模な都市を解放した時に使えるようになった。基本的な用途は拠点間の行き来で、これを用いた移動の場合、魔力を消費することは無い。ちなみに一度行って、有効化しないと使えない。
なお名前が似たものに、完全なスキルとしての<
前者はあらかじめ記録した座標で、思い浮かべたところに転移できる。後者は<管理者>専用スキルで、主に現地移動の時に使う。
前者は……レベル50だったか60だったかそれくらいか?<空間魔法>適正があってかつ<転移門>の一定回数以上の利用、<聖剣>の強化が習得条件だったか。
戦闘で馬を走らせる篠原を見やる。流石<勇者>、既に馬を乗りこなしている。
頑張ってくれ、<勇者>。まあとりあえずは目先の目標、北方の防衛戦の成功からだけど。
再三言ってる気がしますけど、前回召喚は、本当に最終手段として<勇者召喚>されているので、こんな事になるんです……
それでは感想質問批評等、お待ちしております。