二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~   作:クラリオン

65 / 108
何か女神様が動いて何か転生した少年()

ちなみに前回の閑話は、時系列的には本編の数十年前の話になります。



というわけで第五十一話です、どうぞ!


第五十一話  終結と対策

 

「それは……?」

 

「写真だな」

 

「写真?」

 

「見るか?ほら」

 

 

 

そういって写真を手渡す。ちなみに写真の裏には、名前と、いつまでも愛してる、的な事が書いてあった。

 

称号<異世界人>の効果により、自動的に読み聞きは各自の母語に翻訳される。なお書くまでは対応してくれない。

という事は当然ながらメッセージも読めるわけですが。

 

まあ、この程度なら後味悪くなる程度で済むんじゃないかな?とりあえず魔族が外見と魔法特性以外は基本人族と変わらないって分かるくらい。死に方も自爆で、俺達が手を下したわけじゃないからね。

 

そう言えば今代って魔族をどう思っているのか聞いたことが無いな。あとで聞いてみようか。もし人として見ているのなら、それは良いことである、多分。見ていないのなら後になるほどきつくなっていく。後半になればなるほど受け止める物が多く、あるいは重くなっていくからだ。

 

さて、<勇者>達は気付いているのかな?<魔王>だろうと魔族だろうと、それは殺人であるという事に。

 

 

 

「<周辺警戒(レーダーマップ)>」

 

 

 

まあそんなことは俺が悩むべきではないと思うので、次の作業に取り掛かる。既に展開済みの魔法を再度詠唱することで、一瞬だけ効果範囲を()()()に引き伸ばす。

 

 

裏技みたいなものだ。普通の魔法でもできないことは無いが一瞬で普通の倍以上の魔力を持って行かれるのであまりお勧めは出来ない。<防衛魔法>の魔力超低消費があってこそできる事。

 

 

さて、現在の探知範囲は最大で王城全体。これを倍に引き伸ばすことで、街まで届かせる。一瞬だけだがそれで十分。その一瞬で目標の大体の位置を知る。ゲームと一緒だ。

 

現状、パーティーを組んでいる認識になっている<勇者>は青、住民は黄色、魔族は赤なわけだが。

 

 

 

「優勢だな、俺が手を貸す必要も無さそうだ」

 

 

 

赤点()1に対し青点(今代)2の戦力差で戦闘を行っているようだ。他にもちらちら数個固まっていたのは後衛職か?

 

前衛と後衛で分かれて戦闘が出来る……というかまあ今代ならそれが普通なんだろうが、それが出来ているという事は、こちら優勢で進んでいることの証。自分達の戦術で戦えているという事なのだから。

 

 

 

「家屋の被害は流石に分からんな。一応見に行くべきか」

 

 

 

全ての魔族は既に<勇者>により釘付けにされている。なら次にすべきことは民間人の救助であろう。

 

 

 

「行くって……何で?」

 

 

 

おい<勇者>……ってまあ仕方ないのか?少なくともRPGじゃ<勇者>は戦うだけだったしな。今までの戦闘もほぼ全て外だったことを考えればそこまで思い至らないのも決して不思議ではないが。

 

 

 

「まずは移動しよう、話は移動しながらでも出来る」

 

 

 

取り敢えず残された<勇者>3人を連れ、移動を開始する。怪訝な顔をしながらも一応ついてきているので良しとしよう。

 

 

 

「現状、取り敢えず魔族全員をその場にとどめる事には成功している。だが<勇者>到着までには多少なり被害はあったはずだ。家屋倒壊で逃げ遅れた人もいるだろうし、怪我人は確実に出ている」

 

「<勇者>の役割は、確かに<魔王>を倒す事だ。だがそれは手段であって目的ではない。人族が<勇者>を召喚するのは、元はと言えば、魔族による被害を減らすため。ならば戦いは出来ずとも、犠牲者を減らすことは出来る」

 

 

 

召喚者の身体能力は異様に高い。ステータスとして現れる魔力、体力、攻撃、防御は勿論、ステータスに数値として現れる事のない能力もだ。例えば俊敏性や筋力、持久力など。

 

何が言いたいかというと、災害救助みたいな事が出来る、多分。建物の下敷きになった人がいても、持ち上げられる。何で知ってるかって?やったことあるからだよ。

 

 

 

「例え戦闘向きでなくとも、こうやってその職業で召喚された以上は、何かしら果たす役割がある、出来る事はある。それはお前達も分かっているはずだ」

 

 

 

防御値を除き異様に低いステータス、固有魔法しか使えない魔法適正、謎職業<防衛者>が、その実<勇者>と同レベルの重要職業であったように。その職業で召喚するからには、何らかの意味がある。

 

直接戦闘にも後方支援にも向かない<鍛冶><巫女><調教師>でさえも何かしら役に立つ時が来る。でなければ<治癒術師>や<結界術師>、<回復術師>を増やせばよかっただけの事なのだ、回復役や壁張り役は多ければ多い程良い。

 

その意味がまだ見つからないとしても、その優秀なステータス・身体能力は、それまで腐らせるには惜しい。非戦闘職と言えど、俺が行動を共にする限り、命の危険は無い。

ならとりあえず出来る事を。

 

何が言いたいかというと、

 

 

 

「魔族との戦闘だけが<勇者>の役割じゃない。寧ろ()()()()()()()()()()()()だ」

 

 

 

その為に行動しなきゃいけないだろう、と。魔族を釘付けに出来ている、という事は同時に、<勇者>もまた動けないという事だ。今すぐに動けるのは俺達と、夜警当番の兵士くらいだ。その中で一番有力なのは確実に今ここに居る俺含めた4人。

 

 

 

「本当はツーマンセルの方が早いが、それだと戦力的に心許ない。俺が広範囲捜索と警戒、万一の戦闘を担う。お前達が救助に当たれ。ある程度なら俺の障壁の範囲に入るからそこから出ないようにしてくれればそれ以外は自由だ」

 

 

 

説明している間に城門を抜けた。王城前の広場は既に避難してきたと思しき人たちで埋め尽くされ、大通り遠方の方には炎が見えた。

 

 

 

「<絶対障壁(バリア)><絶対障壁>──空中に足場を作った!転ぶなよ!」

 

「りょ、了解!」

 

 

 

目の前にうっすらと青く光る坂が出現する。<絶対障壁>はある程度形をいじくる事が出来る。それを利用し、まずは斜めに板状の障壁を1枚。そして、広場の地下数十メートルの1点を中心とした球面の内、地上2メートル以上の局面に障壁を展開。

 

これを足場として、火が見える方向へ移動。降りるときはそのまま飛び降りる。移動中も定期的に例の重ね掛けを行って、生存者を探す。広場に近いうちは反応がない。家も倒壊していないため、<勇者>が間に合ったのだろう。離れていくにつれ、魔法が直撃したと思われる損傷の家も増えていく。外周付近に至ってようやく生存者を次々と探知する。

 

途中までは魔法の流れ弾が多く飛んできていたため、可能な限り広範囲を<神楯(イージス)>で護り、迎え撃つ。途中で追いついてきた兵士に引き渡しつつ、救助を続行。

 

襲撃してきた魔族を撃退し、戻ってきた<勇者>達も含め、救助活動は夜中まで続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の襲撃による死者は354人、負傷者はその3倍以上。<勇者>が早めに出た事が良かったらしい。魔法の流れ弾は、人的被害がありそうな場合は、<魔導師>系職が相殺したと聞いた。つまり損傷していたのは避難済みであった家がほとんど。ただ外周部では外に出ている人はともかく、家までは確認できなかったとの事。まあそれくらいはね、仕方ないね。

 

相手に与えた損害は、二人死亡、六人戦闘不能である。一人しか殺せていないのが気になるね。

 

 

とは言えともかく魔族の撃退に成功した今、考えるべきことは、王都の守りである。特に気になる事が1つ。

 

 

大結界が弱すぎる。

 

 

見張りは軍の各部隊を城壁に配置することでどうにかするとして、大結界が外か中かは知らないが、たかだか普通の魔族に破られる程度ではあまりにも不安過ぎる。出力を上げる必要がある。恐らくエネルギー源は魔力。ならば<勇者>か<魔導師>、あるいは非魔法職、非戦闘職の召喚者にでも魔力を余分に供給してもらえばいい。

 

 

 

……<支援者>が居ればそんな面倒な手を使わずに<絶対障壁>を張ればあとは<対象範囲拡張(エリアワイデン)><硬き壁(ハードウォール)><魔力消費軽減(マナセイビング)><魔力吸収(ドレイン)>辺りを使ってもらえば、大結界とか余裕なのに……

 

 

 

やはり<支援者>が欠けるのが想定以上に痛手過ぎる。あとは<防衛魔法>のレベルアップを祈るしかない。

 

 

 

以上の事を纏めて篠原に話す。

 

 

 

「……わかった、国王陛下に話してみよう。あと結界についても聞いてみる」

 

「頼む」

 

 

 

取り敢えずこれで急場しのぎとはいえ対策は出来たかな?

 

 

 




以上です。

以下雑記ですので読み飛ばして構いません。

なお前閑話に登場した少年ですが、割合まともな人だと思います。
というのも女神の<システム>についての話から、一応<システム>の長所を肯定できているからです。本文中ではさらっとしか触れてないですけどね。
まあ女神の話を鵜呑みにするのは頂けませんが、あの状況で、それ以外に情報源がない事を考えると、仕方ない気もします。



感想批評質問等お待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。