二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~   作:クラリオン

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先代<防衛者>春馬さんはただの変人だった説が浮上。

夜、城の中庭で接触してきた今代<巫女>。彼女の感謝と謝罪の意味は……


というわけで第四十九話です。どうぞ!


第四十九話  初代<勇者>はかたる

 

 

 

 

「私達のせいで、本来なら関係が無かったはずの貴方を引っ張りだしてすいませんでした。本当なら、貴方の援護も、助言も受けられないはず、なんですよね」

 

「そうだな。俺はたまたま再召喚されただけだからな。その偶然が無ければ、<防衛者>の援護は受けられなかっただろうよ。そもそもその偶然が無ければ、<勇者>が今まともに戦えていたかどうか」

 

「どういう事、です?」

 

「公国との戦争を止めに行った時、俺は<勇者>は人族同士の争いに手を出してはならない、と言った。記憶しているか?」

 

 

 

後衛組だとその時は少し離れたところに待機していたようだったから聞こえなかったかもしれないな。

 

 

 

「あ、はい」

 

 

 

聞こえていたか。

 

 

 

「あれは、俺の持論ではない。純然たる根拠がある。昔女神に、いろいろ気になる事を聞いてみた事があるんだがな」

 

「直接ですか?!」

 

「そうだ。俺は称号に<(かんなぎ)>を持つからな」

 

 

 

オールラウンダー型<勇者>は神(偽)の声を聞く事が出来る。

 

 

 

「その時に、人族同士の大規模な内戦で、<勇者>がどちらかについて戦ったらどうなるかと。すると女神からの答えはこうだった」

 

『<勇者>は世界を、人族を守る存在である。やむをえない場合を除き、人族に危害を与える事は禁止されている。その行為を行った場合、相応の罰が下るであろう』

 

「相応の罰?」

 

 

「例えば、<勇者>のうち何人かが人質とされ、戦う事を強いられた場合と、<勇者>自身の私利私欲で戦う事にした場合で、同等の罰を与えるのは公平でないだろう?前者の場合は一時的にレベルが上がりにくくなる程度だが、後者の場合は、ステータスにマイナス補正がかかる上にスキルの多くが一定期間封じられる」

 

「そうなっては<魔王>の討伐が余計に難しくなる。その暴走を止めるのもまた<防衛者>の役割。しかしなぜか動かなかったためにその代わりに俺が動いた」

 

 

 

全ては<勇者>を無難かつ早急に向こうの世界に帰すため。わざわざ来てやったのに魔族扱いとはね。知らないから仕方ないにせよ人の話は聞けよ。それと<勇者>らしくしろよ。

 

 

 

「……そこでも助けてもらっていたのですね、知らなかったとはいえ、どうお礼をすれば……」

 

 

 

「気にするな。俺が勝手にやったことだ。<魔王>討伐が遅れるのは俺も困る。俺の時は罰を受ける事は無かったから、それによって実際どれ程の影響が出るのかは分からない。おまけに今<防衛者>は居ても<支援者>は居ない」

 

 

「<防衛者>の役割を果たす上で、数多くの支援系スキルを行使できる<支援者>の影響は大きい。<支援者>が居ない現状で、俺が十分に役割を果たせるとは限らない。特に人族の守護までは手が回らない可能性がある。ただでさえそんな状況で、<勇者>が使い物にならなくなったら最悪、」

 

 

 

 

「人族は滅ぶぞ」

 

 

 

流石に絶句はしていないようだが、それでも顔は青ざめたように見える。自分達が見捨てたに近い二人の、役割の大きさに改めて後悔、といったところか?まあ絶句してないだけ優秀か。

 

 

 

<勇者>が最悪に最悪を重ねた末路は、人族の滅亡、<魔王>による世界征服。当然の話だ。それを防ぐ行動をとるのが本来の<勇者>。なら行動をことごとく(たが)え、最悪の選択をし続けるなら、待ち受けるのはバッドエンド。

 

 

 

俺に色々言っていた前衛組は分かって……居ないんだろうな。

 

まあそんな事にならないように俺も動くし、<システム>も誘導してくれるとは思うが、<システム>に余計な負担をかける事は好ましいことではない。なら脅しでもして、可能性を少しでも減らすべきだろう。

 

 

 

「篠原にも言ったし、俺の話をきちんと聞けたなら理解できていると思うが、お前達が背負っているのは世界の、人族の命運だ。仲間内でどうこうしている暇などない。仲が良い悪い、変な遠慮、どれも連携する上では邪魔でしかない。人族が既に<勇者召喚>を行うまで追い込まれているとすれば、猶予は無いに等しい」

 

 

 

特に今代は、俺達の時は2人に集められていた<勇者>の能力が、28人にばらけている状態だ。この状況で俺達と同レベルの戦果を欲するなら、高レベルの連携が必要となる。特に<支援者>が居ない以上、俺を含む後衛組のやる事は多い。

 

一度発動すれば継続するのに魔力の必要のない<支援魔法>と違って、普通に使う支援系魔法スキルは、継続発動には魔力の補填が要る。つまり、一度発動しておけばしばらく放置できる<支援魔法>とは異なり、発動タイミングを見極めないと魔力を大幅に使う事になる。

 

俺やさくらのように、得意属性でなくとも魔導十位階クラスを数回連発出来る魔力量ならともかく、レベルが30すら超えていない現在では、魔力の無駄な消費は避けたい。

実際には人族は追い込まれていないので、俺達の時の様に()()()()()とかふざけた事にはならないであろうことが救いだ。まあその分クリアしなきゃいけないハードルが上がっているわけだが。

 

 

「俺に対する変な遠慮だとかも同様だ。戦闘での連携に支障が出ては困る。だからこの話はこれでおしまいだ。どうせ同級なんだ。敬語を使う必要もない。遠慮もいらん。要望があったらはっきりと言え、誰が相手でもな」

 

「同級……ってええ!?高2!?」

 

「と、いうわけで宜しくな石縄」

 

 

 

何か驚いているが、そんなに意外なのか?何はともあれ、この話はこれで決着、という意味を込め、苗字を呼び捨てにする。

 

 

 

「あ、うん、よろしく……同級なのかぁ……」

 

「他に、お前みたいな考え方をしている奴が居たら、そいつにもそう伝えてくれ」

 

 

 

一々対応するのは面倒だ。全部ではないが、嘘が混ざっているのもいただけない。あと一々同級だから敬語なしで、って言うのも面倒だし。それだから全員の前で喋った時に敬語はいらないと言ったんだが。

 

この様子だと、他に分かってる連中が居たら、全員敬語なんじゃなかろうか。同級生に敬語使われるのってちょっと接し方が分からなくなるから止めて欲しいなあ。

 

 

 

「他には用は?」

 

「あ、無いよ」

 

「そうか。ならとっとと建物の中に入った方が────っ<神楯(イージス)>!」

 

「え?」

 

 

 

周辺警戒(レーダーマップ)>に突然現れた敵性反応。それに対して反射的に自分と後ろにある建物までを覆う形で<神楯>を発動。

 

直後に空から落ちてくる炎の槍、それに応じて打ち出される水色の魔力球。空中で衝突し、轟音と共に火の粉をまき散らしながらも消滅する。

 

 

 

「<勇者>か<魔導師>を呼べ、出来るだけ早く」

 

 

 

今の<炎槍(フレイムランス)>が通常攻撃だとすれば、この程度ならば<防衛者>の障壁は破れない。相手は今のところ単独。ただし町の方に向かっている可能性も否定はできない。ならここのをとっとと片付ける必要がある。

今の音で気付いただろうが、一応知らせてもらうとしよう。

 

 

 

「わ、わかった!」

 

 

 

さて、あとは攻撃をひたすら捌いて、<勇者>が来るまで時間稼ぎだ。

 

 

 

 




以上です。


……千年前は本当にハードです、ええ。そもそもが<勇者>の召喚は最終手段なのですから。

悠長にラブコメしてる暇なんて無かったんですよ()

そろそろ千年前のお話も書くべきかなあ……



それでは感想批評質問等お待ちしております。

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