二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~ 作:クラリオン
なお第二回防衛戦は短いです。
それでは第四十四話、どうぞ!
「ユウト、深追いはするな!」
素早く後退した魔族に、追いすがろうとしたが、その言葉を聞き止めた。
「『聖なる癒しを彼の者に』<聖光>」
直後に自分の体が光で包まれる。治癒・回復の両方の効果を持つ魔法だ。
「どけぇ!」
右側で、1人魔族が吹き飛ぶ。
視線を戻せば、再び接近を試みる魔族の姿が。<
現在、彼──<勇者>
最初の方は、突然だったこともあり押されていたが、きちんとした陣を敷いてからは、安定して戦えるようになっていた。あとは目の前にいる魔族を倒せば良い。そう考えていた、のだろう。だが。
「──警戒が甘いぞ今代<勇者>」
「え?」
彼の後で金属音が響く。
「<
振り向くと、後ろで回復魔法や支援系の魔法をかけていたクラスメイトだけがいつの間にか青い透明な障壁で覆われている。その外側に二本の剣を両手に握った騎士が一人。言うまでもなく俺である。
神剣の特殊技能である、『既に放たれた全ての魔法の切断』も駆使して、人族に偽装していた魔族からの攻撃を全て完全に防ぐ。迎撃しきれなかった分も<絶対障壁>が完全に防御した。
これ以上攻撃されるのも面倒だな。
「悪いが死んでくれ」
ただ剣を振って首を落とす。多少HPだとか防御が人族より高いとは言え、所詮は普通の生命体なのだ。首を落とせば俗に言うクリティカルというか即死する。
さて。
「<勇者>、そちらの手助けは必要か?」
「……まさか、初代<勇者>なのか?」
「手助けは?」
「……いや、良い。優菜達をそのまま守っていてくれ」
「了解した」
手助けはいらないらしい。まあ、今の力量ならギリギリか?レベルは……ほう、20か。俺の想定上限まで到達しているのか。なら大丈夫だろう。
じゃあこいつらを守りながら、ゆっくり観戦するか。
剣を二本とも仕舞って腕組みをする。ついでにステータスを弄る。職業を<防衛者>に、そして名前も変える。さらに魔法も発動。
「<
後は何もしなくても自動で迎撃される。魔法ってすごい。
「……あの」
「何か?」
女子が近づいて来たけど、誰だっけ……えっと、あ、そうそう<回復術師>の
「その、私達を助けに来てくれたんですか?」
「……今のところはそう思っていてくれて構わない。だが言っておくが、俺は代理に過ぎない」
「……代理?」
「そうだ、本来なら俺の代わりに、こうやって<勇者>達を守る、防衛してくれる奴が二人、居たはずだったんだがな。もう居ないが」
「……神崎君と内山さんですか?」
そう、俺だ。
って違う違う。なぜに個人名……いや、普通はそうか。そういえば俺、君付けなんだな。
「……誰だそれは。俺が言いたいのは<防衛者>と<支援者>だ」
「あ、そっか、知ってるわけないか……私がさっき言ったのが」
「お前達の世代の<防衛者>と<支援者>か」
「そう、です」
なおここまでの間、魔族から飛んでくる攻撃魔法も、更には直接剣で斬りかかっても全て迎撃されている。
「……しっかりやってくれよ、<勇者>」
誰ともなしにそう呟く。
「えっと、初代さんは、戦わないんですか?」
「俺の役割じゃないし手助けもいらないって言われたからな……<回復術師>、出番だぞ」
<剣聖>が負傷した。というかお前下がった方が良いぞ……<剣聖>は大戦後半にならないと活躍できないからな。
「あ。えっと……『神の癒しを彼の者に』<天光>」
<天光>か。光属性の……第七位階だっけな。レベルは……流石にまだ3か。
<無詠唱>はまだ持ってないんだな。持ってるから何って程でもないが……今代は人数多いし大丈夫だろ。
あ、そうだ。
「<絶対障壁>」
<勇者>前衛組に<絶対障壁>を掛ける。と言っても、目に見える物でも触れるわけでもないが。防御対象を精神干渉系の魔法に絞ってあるからな。
洗脳闇堕ちダメ絶対。昨今のネット小説は割と敵方に回るのはよくあるけど、この世界でそんな事は許しません。
「暇だな」
さっきから張ってる全ての障壁に、魔法が当たっては砕け当たっては砕けを繰り返しているため、定期的に障壁へ魔力供給をしているが、それだけだ。
何かやる事は……ああ、そうそう、聞いてみたいことがあったんだった。
「<回復術師>、いくつか聞きたいことがある」
「は、はい。なんでしょうか?」
「この前……俺は<勇者>を殺したな」
「…………はい」
俺の言葉に、一度目を大きく見開いた。
「その時、<勇者>は生き返ったな?多分二時間か二時間半くらいで」
「はい」
「その事について、お前達はどう思った?」
「どう、って」
「何でもいい、感じた事そのままだ。ちなみに俺が<勇者>だった時にさk……<聖女>に聞いたときは、真顔で『不気味だった』と言われた」
「……すごい、と思いました。流石<勇者>だな、と」
「……ふむ、不気味だとかは思わなかったか」
「全く」
「……復活する瞬間は見ていたのか?」
「いいえ、別室です」
あれか、戦場から死体回収してすぐ別室か。じゃあただ単に死んだ実感が無かっただけか?
「そうか」
しかししつこいねえ魔族も……って言うか前衛組が殺せてないだけなんだが。火力は十分だと思うんだけどなあ……あ、また止めを刺せるとこ見逃してる。実戦経験が足りないのかなあ。魔物と魔族じゃやっぱり動きが違うからねえ。
自分がケガするのある程度厭わずに突っ込めばいつでも止めを刺せるのに……あ、また。
「……何がしたいんだアイツは」
<勇者>こと篠原の動きは、どう見ても相手を本気で殺しにかかってはいない。負傷せずとも止めを刺せるところを見逃した。レベル的には拮抗していて、ステータスでは完全に凌駕している、それはアイツも分かっているはずだ。動きは若干ぎこちないが、それでも相手に負わせている手傷は篠原の方が多い。
にしても、あの動きはどこかで……ああ、成程。
見た事あるのはそりゃそうだ。前回召喚時に初めて朱梨先輩と対戦した時に我が身に受け、今回はついこの間に自分でやったばかりだからな。
何を考えているか分かった。あれは相手を殺す動きではない。狙っているのは武器破壊と魔力の枯渇、疲労あたりだろうか。
アイツが狙っているのは相手の無力化だ。
だが……
「冗談じゃない、ふざけているのか」
「何がです?」
「そこの<勇者>がやっていることだ。何を思ってか知らんが、魔族を無力化しようとしているように見える」
「無力化?」
「武器を破壊し、魔力体力をほとんど枯渇させ、戦えないようにしようとしている。そこまでアイツと魔族との間に戦闘力の差はない。今のアイツは火力でゴリ押ししているだけだ。今はまだ、殺しにかかるしかないというのに……」
介入したいが介入できないのがもどかしい。<防衛者>として使えるのは、専用の固有魔法か、<孤独>と<犠牲>のみ。攻撃系スキルは使用禁止。
以上が、俺が<防衛者>代理として活動する時用に定めたルール。
「初代さんが介入は出来ませんか?」
「手助けは断られた。<防衛者>の代理である以上、<防衛者>に出来ないことはすべきではないしな」
一応遠距離……というか、この距離でも魔族を殺そうと思えば殺せる。そのための札は持ってる。ただこれを使った場合の<勇者>パーティーの反応は確実に俺、もしくは<システム>にとっても悪い方向に行く。
「声をかけるだけにとどめるか。<拡声>──おい<勇者>、何をしたいかは分かるが、殺せ。今のお前じゃ無理だ!」
ややあって、篠原の動きが変わった……ような気がした。直後に確信に変わる。
「……良し」
敵が見せた隙にすかさず付け込んでそのまま斬り殺していた。その後も他の前衛組と協力しながら、全ての魔族を殺しきった。
以上です。
主人公が伏せてた札、は簡単ですね、拳銃です。
それでは感想批評質問等お待ちしております。