二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~ 作:クラリオン
それでは第四十二話、どうぞ!
「……どうしよう。魔族侵攻の手抜いてくれないかな」
「<防衛者>が死んでるなら、<精神干渉>して軽くなったかもしれないけど、アンタ生きてるし、防衛戦に必要なレベルには達してるし、スキルも必要なスキルは大体揃っているはずよ」
防衛戦の最初の頃は、基本的に<勇者>とともに行動しその拠点や仲間を護るのを主目的とするため、最悪<
後半、第五フェイズ辺りになるとそれだけではきつくなるが。
現在の俺は流石に<
「……どうしよう」
「……いっそ<初代勇者>として<防衛者>の代理として防衛すればいいんじゃない?最悪第五フェイズの防衛は無くても良いのよ、<防衛者>を殺した人族の自業自得なんだから」
第四フェイズでは<勇者>達や、その拠点の防衛が主任務。<勇者>パーティーが欠けるのは、対<魔王>戦に影響が無いとは言い切れないため、防衛は必須。
しかし、第五フェイズでの<防衛者>の役割は、<勇者>が魔族領へ反攻している間の人族領の防衛。<勇者>は関係無い。ならばわざわざ人族を庇う必要もないだろう。
「……他の国の人達にそうされたわけじゃないのに?」
「ん?」
「その、人族の自業自得って話」
「そうだな。まあ、簡単に言うなら、俺達がここで生きてしゃべっているのは、いわばボーナスみたいなもんだ。本来の<防衛者><支援者>には再生機構なんて無いからな、殺されたらそれでおしまい。だから第四フェイズに参加するってだけでも本来は出血大サービスなんだが」
理沙の問い掛けももっともではあるんだがな。
他の国の人族がどうか、とか本来なら考えることが出来るわけがないんだよね。
本来今代の<防衛者><支援者>は既に死んでいる。たまたま、<防衛者>が元<勇者>で<支援者>が元<聖女>だったから命拾いできただけだ。だから本来ならば、人族、というか<勇者>は第四フェイズも<防衛者>の支援無しでやってもらなわなくてはならない。それが彼等の、この世界の人族の選択の結果だから。
人の生死にやり直しは効かない。それが誰かの独断であり、暴走の末の凶行であったとしても、被害者が死んだ認識のこの場合過程に意味などない。<防衛者>と<支援者>が人族によって殺された。その結果だけが全て。
無論、<防衛者>の支援が無いからと言って<勇者>が負けることはまずない。パーティーメンバーが何人か欠けるかもしれないが。ただそれだと向こうに帰った時どうなるか分からないし、時間がかかる。俺達としてもそれは望むところではない。だから手伝おうというわけだ。
「あ、そっか、そういえば殺されてるんだっけ……過程は問題じゃない、結果だけが全て、か……」
納得してくれて何よりだ。
俺達がこうやって生きているから、意味を掴みにくいかもしれないが、<防衛者>と<支援者>は
「となると、あとは<勇者>連中にどう言うかってのと、どうやって王国もしくは公国まで行くかだな」
次会うときは戦場で敵同士だなとか言った記憶があるんだけど。
「<勇者>はほら、それが新たな任務だからって言っとけば?どうせそこまで長く続かないでしょう?」
「……どう、なんだろうかね。実際第四と第五の境目って大分曖昧だし……まあ出来るだけ早めに抜けるようにはしたいね」
「最悪、王国以外は、騎士団長とかに<
「<神楯>だけでも十分ではある、か……」
魔力消費が少なく、防御対象に向かう全ての攻撃を自動で迎撃してくれる最強クラスの楯。
「王国だけは任せられる人間が居ないから、ケイが出張るしかないけど」
あの国で安心して任せられそうなのは、一般市民か王女殿下だ。
だがどちらに渡してもそれを指揮するのは宰相か国王になってしまう。無論この付与は付与者の権限でいつでも引き揚げさせることが出来るので、悪用されそうだったら引き揚げるだけってのも可能だが。
問題なのは、内容を少しでも知られてしまうという事だ。知ったからどう、ってことも無いが、念には念を入れ、伏せて置けるカードは多く準備するべきだろう。
「どうやって行くか……んーちょっと裏技使うしかないかなあ……」
「裏技?」
「<システム>にアクセスして、一番最近、<犠牲>の<再生プログラム>が稼働した位置座標を特定、<勇者>死亡の特定事例に対し、一番近い<管理者>に急行命令を出してもらう形で、<システム>管轄領域内の<
説明しながら、操作を開始する。
マッチポンプ……じゃない、なんというか……白々しい芝居だが、<システム>の手続規定は遵守しているので、許可は出る。
「……良く分からないけど、取り敢えず向こうに行くの?」
セレスには分かりにくかったか。
「そうそう。だから、俺の<防衛装備召喚>を、さくらに預ける。その中に<転移点記録>を残せばこのまま進んでも帰ってくるときに問題はないはずだ」
公国に行った時と同様の手法を使う。今回は少々長丁場になりそうだ。夜襲が無いとは確定できないから、当然向こうで宿泊することになるだろう。
別にこっちの女三人旅を心配しているわけじゃない。
つまり<防衛装備召喚>レベル10が使える。なんてこった。俺より強いじゃないか。つまり心配する必要は無い……はずだがどうも嫌な予感がする。というかこれフラグじゃね?
「出発は早い方が良いか。もう行くわ……念のため俺が持ってるスキル全部全員に委託しとくよ。嫌な予感しかしない」
「ケイがそう言うなら相当面倒事ね。まあ貰っておくに越したことはないわ、ありがとう」
「私にも?」
「セレスにも理沙にも渡す。セレスは……使って<神楯>くらいだろうが……」
セレスの魔力量は一般的な人族の平均より少し多いくらいか。<神楯>は基本的にはパッシヴスキルで効率も良いから問題は無い。
理沙の魔力量は竜種並みだ。多分<防衛装備召喚>も使えるだろう。
……これで勝てない相手となると竜種を引っ張り出すか、<孤独>とか本来の装備の俺か、本来の装備の朱梨先輩とかじゃないと勝てない。今の俺でギリギリくらいだろう。
そんな事を考えながら、三人全員に付与を掛けた。
「何かあったら<念話>で伝えるか、<転移>使って逃げろ」
<勇者>と<ヴァルキュリオン>なら間違いなく優先順位はこちら。<勇者>が欠けようと人族がいずれ救われるのは既定路線だしな。
「いまさらだけど<支援者>は?」
「……それもアリだが、こっちの戦力がガタ落ちだし、直で<念話>繋げられるのはお前だけだからできればこっちにいて欲しい」
まあ後は単純にこいつらを危険な目・面倒な目に合わせるわけにいかないってのがあるんだが。無論さくらも含め、だ。
正体バレは無いとは思うが、まあ万一に備えてってこった。
「……わかったわ。<防衛業務委託・防衛装備召喚>」
さくらが装甲戦闘車を展開。後部ドアから乗車。
「<転移点記録>。……行ってきます。<空間門>」
「行ってらっしゃい」
ただいま、人族領。
以上です。
主人公も大変ですねえ……
それでは質問批評感想等お待ちしております。