二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~   作:クラリオン

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本編の更新になります。

前話で、亜人族領入国早々に、人拐いを見つけ、取り敢えずビリビリさせてみた主人公達。今話ではどんな面倒に巻き込まれるのか……(つまり巻き込まれるのは確定事項)
『──こちら<システム>です』
ファッ?!






それでは、第四十一話、どうぞ!


第四十一話  通達

 

 

 

「もういっそ門番のところが早いかもね。<治癒(ヒール)>。ここ出るついでに引き渡した方が良いと思うわ」

 

「そうか。じゃあコレは俺が持っていくか」

 

 

未だピクピクしてる人攫い二人を肩に抱える。

 

 

「そっちはお願い」

 

「はいはい」

 

 

少女の方はセレスに抱えてもらった。

 

と、そこである事に気づいた。

 

 

「ここ出る前に偽装変えておいた方が良いんじゃね?」

 

「あ」

 

「……そうだった、私としたことが……この国じゃ人族は、単独パーティーでは動けないんだった」

 

「最低人数は?」

 

「二十人以上」

 

「どっか良い物陰……ああ、さっきの路地でいいじゃん」

 

 

今しがた出てきたばかりの路地へ逆戻り。

 

 

「<幻影>」

 

 

外から見られないように、魔法で壁があるように見せかけ、路地の幅を狭くする。

 

 

「さて、どうする?」

 

「適当で良いんじゃない?」

 

「じゃあ狼で」

 

「なんで……ああ、了解」

 

 

 

理由は簡単。目の前に狼人族の少女が居るから。

 

 

<偽装腕輪>の使い方は簡単。まず腕に付ける。今回は最初から付けていたので一度取り外し付けなおす。次に、魔力を込めながら、どんな姿になりたいかを強く念じる。以上終わり。

 

 

今回は、獣人……狼人族になるだけなので、耳と尾を生やし、髪と目の色を弄るだけ。

 

 

顔は変えない。本来と違う顔で行動するのは短時間ならともかく、長時間は厳しい。

 

そして冒険者証の情報を改竄する。

 

これで俺達全員が完全に、狼人族の少年少女になった。

では改めて、西大陸南端を目指す旅、後半戦スタートである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──協力感謝いたします。良い旅を」

 

 

 

人攫いと少女を届けると、しばらく待機をお願いされた。

まあ共犯を疑われなかったのは、偽装のお陰だろう。これで人族だったらワンチャン共犯で警備隊か衛兵に連れていかれていた可能性もあった。

 

気付いた俺ナイス。

 

まあなんだかんだで、少女と少女の両親と門番さんから感謝の言葉をいただいた。謝礼も、と言われたが、基本善意なのでお断りしておいた。

 

感謝の言葉だけで十分です。あと少女の笑顔。ほら可愛い子の笑顔って見れるだけでお得感あるじゃんか。

 

 

「……ロリコン?」

 

「誰がだ」

 

 

とまあ、そんな感じで亜人族領スロスフィルを出た。そしてその日のうちに旧街道を八九式で爆走し始めた。運転は俺、そしてなんと理沙が交替役である。

 

 

何でも前世入院中は暇だったのでゲームとネット小説が唯一の楽しみだったため、大抵のタイプのゲームはやり尽くしたとのこと。なるほど、確かに<防衛装備召喚>で呼び出した車両の操作はスマホゲームに近い、というかまんまである。

 

 

時々エンジン音だったりを聞きつけるのか魔物がやって来るが、機関砲で瞬殺して経験値になる。移動してるだけでレベリングとか最高かよ。

 

 

基本的に旧街道周辺は人が通らないせいか、高レベルの魔物が多いようで、既にレベルは30を超えている。ただ、延々と使い続けているはずの<防衛装備召喚>、ひいては<防衛魔法>のレベルが6から全然動かないのが不気味だ。そういえば<絶対障壁>と<神楯>も……ってそれは当たり前か、使ってないし<防衛魔法>もレベルアップしてないし。

 

 

そう言えば<勇者>連中のレベルっていくらなんだろ……前戦った時はレベル4くらいだった。話し合いに行った時は5だったか?

 

 

召喚されて一か月少々でレベル5というのは遅いように思われるかもしれない。いやこの世界で言えば十分凄い上がり方だけど、俺がほぼ同期間で20超えているから。

 

 

<勇者>はレベル5にならないと<取得経験値増加>の補正が入らないことになっている。<防衛者>?最初から付いてる。まあこれは<勇者>と<防衛者>の役割の違いによるものだ。<防衛者>は促成栽培じゃないと意味が無いが、<勇者>はそれだと話にならない。確実に戦闘技術が優れている<魔王>を倒さなきゃいけないからね、レベルだけ上げても意味が無い。逆に<防衛者>はレベル上げないと話にならない。

 

 

さて、前回接触時にはレベル5、つまり補正が付き始めたはず。あれから三週間が経過した今、どれくらい上がっているだろうか?俺の時を参考にすればおおよそ25を超えているはずだが、今回は毎週のように魔族が襲来していたわけでもないだろうし……よくて20かな?三週間で15上がるとか化け物かよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《全<システム>管理者へ通達》

 

《<人魔大戦プログラム>フェイズ2、()()()()()()()()()()

 

《今代<魔王>は、アストリア・リスフィリア・ラトウィトス》

 

《種族:魔族、年齢:8、性別:女性、前職業:魔導師》

 

《フェイズ3へ移行》

 

《フェイズ3の開始は3日後正午》

 

《以上、通達完了》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……珍しく<勇者>の事を考えたせいか、面倒事が舞い降りてきた。

 

 

「ケイ」

 

 

さくらと理沙にも聞こえていたようだ。

 

 

「わかってる、何か色々とおかしい」

 

「なぜ8歳の女の子が<魔王>に……」

 

「違うそこじゃない」

 

「え?違うの?」

 

 

いやそれも十分おかしいのだが。

 

と言うわけで<システム>関連についてはさっぱりであろう理沙と、ついでに何もわかっていないセレスに対し説明を開始する。

 

 

 

 

 

<人魔大戦プログラム>は、<魔王>の誕生、魔族の襲撃、それに対抗するための<勇者召喚>から始まる、人族亜人族VS魔族の大戦争の一連の流れの事を言う。

 

 

 

()()()()()():<魔王>の指定

 

第二フェイズ:魔族による人族領への侵攻

 

第三フェイズ:<勇者召喚>

 

第四フェイズ:<防衛者>による防衛戦の開始

 

第五フェイズ:<勇者>を先頭に立てた人族の反撃

 

第六フェイズ:魔族軍と人族軍の決戦

 

第七フェイズ:<魔王>と<勇者>の対決

 

第八フェイズ:戦後処理

 

第九フェイズ:<召喚者>の回収。

 

 

 

 

以上九つのフェイズからなるプログラム。<システム>監督・監修の作品。

 

 

 

「へー……ん?」

 

「気付いたか」

 

「順番違くない?」

 

「正解」

 

 

<魔王>の指定は第一フェイズ。なのに通達では第二フェイズ。まあ俺達が知っている情報で埋めるとするならば。

 

 

「……<勇者召喚>が第一フェイズなの?じゃああの時既に始まっていたと」

 

「そうだね、結果論にはなるけど強制送還しなくて良かったな」

 

「……て事は、第一が<勇者召喚>で第二が<魔王>指定、じゃあ第三は元の第二フェイズ?」

 

「そうだね、魔族軍による襲……撃……あ」

 

「どうしたの?」

 

「第四フェイズどうしよう?」

 

「あ」

 

 

 

第四フェイズ:()()()()()による防衛戦

 

 

 

 

<防衛者>による防衛戦。もう認識上死んでるんだけど、<防衛者>。

 

 

 

 

 

 




仕事の面倒事の責任を全て勇者に擦り付ける世界の管理者が居るらしいです。



と、まあ以上です。

それでは質問批評感想等お待ちしております。

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