二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~   作:クラリオン

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<防衛者>の<報復魔法>最上位スキルにより一度全てが焼き払われた戦場。

世界最強の核兵器の猛威に対してもあっさり耐えきった<絶防ノ盾>の中では何があっていたのか……


というわけで千年前の主人公視線になります。

ところで、自分が長く更新していなかった間もUAが存在していた事に驚いたのですが、皆様どこからコレを見つけているのでしょう……?


と、私の些細な疑問はさておき、まずは第三十七話、どうぞ!


第三十七話  千年前の戦争Ⅳ

 

 

「……<聖剣>の固有技能か。しかし貴様の仲間も外にいるようだが……?」

 

「かまわない、予定通りだ」

 

「なるほど。一対一での決着を望むか。だが良いのか?」

 

「何がだ」

 

「確かに貴様は<勇者>であり、またその持つ<聖剣>は魔族すなわち<魔王>()にも特攻性能のある剣だ。だが、貴様一人だけで、我に敵うと本気で思っているのか?」

 

「いや」

 

 

 

即答。あまりにも潔い否定に<魔王>も一瞬目を剥く。が、すぐに気を取り直し、

 

 

 

「では、なぜこの状況を選んだ。<勇者>よ、貴様は我に敵わぬと知りながら一対一での決着を望むほど死に急いでいるわけでも、愚かなわけでもあるまい」

 

 

 

と言った。

 

これまで、初めて魔族軍が敗走した日から4年が経過している。その間、魔族軍あるいは直接ではないにせよ<魔王>自身、<勇者>とは何度も矛を交えていた。

 

 

 

だから知っている。目の前に立つ<勇者>である少年は、その外見と年齢にそぐわない能力を持つ事を。

 

 

 

定期的に種族内で起こる争いに何度も打ち勝ってきた、歴戦の魔族軍幹部ですら欺き、的確に急所を突く作戦を立案する能力。神出鬼没とも言える程の機動力。精確な情勢判断に加え、実際の戦闘能力においても魔法・物理共に魔族軍の強者を凌ぐ。

 

 

 

それほどの者が自分と相手の戦力差を間違える筈もなく、かといって勝率の限りなく低い賭けに挑むほど人族が追い詰められているわけではない。

 

 

つまるところ<勇者>に何かしら勝算がある上での状況なのだ──と考えていたが、返答は否定。

 

 

では、何を考えているのか。

 

 

 

「其の通りだ。俺の要求を伝えよう、<魔王>よ」

 

「何だ」

 

 

 

<勇者>の考えていたことは、

 

 

 

「この俺、すなわち<勇者>であり人族の全権者である俺は、貴様、つまり<魔王>を魔族の代表とみなし、ここに人魔大戦の()()と、代表者同士の対談を申し込む」

 

 

 

<魔王>の予想の斜め上を行くものだった。

 

 

 

「……休戦、だと?」

 

「そうだ」

 

「不可能に決まっている。我々と人族とは相容れぬ存在。だからこそこの大戦が始まり、今なおも続いている、それは貴様も知っているはずだ」

 

「そうだ、その事は俺も知っている」

 

「では分かっていてなぜ、休戦を持ちかけた?まさかとは思うが……」

 

「安心しろ、話せばわかるなんて腑抜けた(馬鹿な)ことは言わない。実際にお互いそれぞれの大義を掲げて命を懸けている身だ。ソレがどれだけ無礼な事かは分かっているつもりだ」

 

 

 

既に四年間、互いの種族の正義の名の下に、互いに殺しあってきた。<魔王>は魔族の代表として、<勇者>は人族の代表として、相手の種族を、既に4桁から5桁は殺している。

 

 

そんな相手に今更『話せばわかる』などと言えるわけがない。既に話し合ってどうにか出来るレベルを超えている。

 

だからこそ<魔王>が生まれ<勇者>が<召喚>されるのだ。

 

 

 

「ではなぜだ」

 

「その前に一つ、質問をしても良いか」

 

「なんだ」

 

「<魔王>、貴様は、好き好んで人族を殺しているのか?」

 

「……何が言いたい?」

 

「つまり、貴様個人に人族に対する大きな敵意、滅ぼしたいとか魔族の邪魔だ、といった気持ちがあるのかと聞いている」

 

「…………俺は<魔王>だ。魔族の王だ。俺個人がどう思おうとも、俺が<魔王>である限り、人族は俺にとって敵だ」

 

 

 

啓斗の質問に対し、<魔王>はしばらく黙り込んだ。ややあって帰ってきた応えは啓斗が予想したとおりだ。<魔王>個人としては人族は不倶戴天の仇というわけではない。

 

ただ<魔王>と言う称号に求められる役割を果たしているだけ。

 

 

 

これなら、まだ。

 

 

 

否、かなり、説得のチャンスはあるはずだ。

 

 

 

 

 

 

切るべき札は、未だそのほとんどを伏せたまま。それらを使えば、少なくとも<魔王>のままで休戦・共闘に持ち込める。

 

 

「なぜ休戦を持ちかけたのか、だったな。<魔王>、貴様は不思議に思ったことは無いか?」

 

「何の事だ」

 

「この世界は、あまりに()()()()()()()……そう感じたことは無いか?」

 

「どういう意味だ?」

 

 

「言葉通りの意味だ。綺麗に二つに分けられた大陸、対立する二つの種族、それぞれの象徴<魔王>と<勇者>。何百年、あるいは千年ごとに綺麗な境界を越え、人族領に侵攻する魔族。対抗する人族とその先頭に立つ<勇者>。そして常に<勇者>が勝ち、魔族は元の領土へ戻る。また<勇者>と人族もそれを追撃せず、再び平穏が訪れる……良く出来ている、出来過ぎている。まるで……()()のように」

 

 

 

子供に読み聞かせる勧善懲悪の物語のように。

 

 

 

「……それがどうかしたのか」

 

「とてもじゃないが現実の話とは思えない。物語、あるいは劇じゃないか」

 

 

「何が言いたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺達は、俺とお前は、あらかじめそういう役を振られているんじゃないのか、劇作家・監督によって」

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまりお前は俺達がそいつらに操られているとでも?馬鹿な。精神干渉魔法耐性を持っているのは、知っているだろう」

 

 

「そうだ。<ステータス>・<鑑定>の恩恵あっての話だけどな。さて、<ステータス>・魔法・耐性とはなんだ?」

 

 

「俺達の能力に決まっているだろう」

 

 

「そうだな、だが魔法や耐性を生まれつき持っているのは稀だな。それらはどこから、いや、誰によって与えられる?」

 

 

「……さっきからおかしな事ばかりを聞いて来るな……我らが主神ラボルファス様によってだろう。いや人族は女神とやらが居るのだったか」

 

 

 

「そうだ。つまり耐性とは神によって我々が与えられる物。ならば、()()()()()()()()()()()()()()()ことだと思わないか?」

 

 

 

 

<勇者>の口から放たれた言葉は、これまでの会話を経た<魔王>にとってそこまで意外ではなかった。しかし、それでも直接聞くとやや驚き、少々怒りを覚える言葉でもあった。




以上です!

質問感想批評などお待ちしております!


これが今年最後の投稿となります。
読者の皆様、今年、本作品を読んでいただきありがとうございました。来年も良ければ読んでいただけると幸いです。
それでは良いお年を!

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