二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~   作:クラリオン

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本編の更新です。

<魔王>との直接会談を企んで敵に突撃した初代<勇者>パーティー。その計画が上手く運びそうになったとき、<支援者>中岡陽菜乃が殺されてしまう。その結果……


ようやく自分が描きたかった場面に差し掛かりました。人の心情書くのは苦手なので、記述がおかしい・くどいところは大目に見ていただけると幸いです。

それでは第三十五話、どうぞ!


第三十五話  千年前の戦争Ⅱ

 

 

 

 

 

 

<防衛者>国崎春馬にとって、<支援者>中岡陽菜乃は友達であり、仲間であり、比翼であった。

 

 

全ての攻撃を吸収する<防衛者>、その傍らでその全てをサポートする<支援者>。個人的感情は全て抜きに、<防衛者>にとって<支援者>とは、絶対に必要な存在なのである。

 

 

さて、そんな存在が、しかも味方だと思っていた側から殺されたらどうなるか。

 

 

 

彼は、すぐさま自らが担っていた範囲を放置し、彼女のもとに駆け寄った。無論、<反撃魔法>は絶賛発動中である。そして、彼女の生死を確認した。しかしながら、心臓が一撃で貫かれており、既に死んでいた。

 

 

 

どことも知れぬ異世界で、自分を含め四人しかいない日本人、しかも、同じ大学の学部に通う同級生。自分をサポートするための職業であるため、こちらに来ても話す時間は一番長かった。彼にとってこちらの世界で一番仲が良かった友達。

 

 

 

 

「……ろす」

 

「……春馬さん?」

 

 

 

さくらが近づいたとき、春馬は陽菜乃の遺体の横で、俯き何事かを呟いていた。

 

「殺す」

 

「え?」

 

「殺す」

 

「ちょ、待って春馬さん!殺しちゃ駄目だって……」

 

「かまわない、私利私欲のために俺の仲間を傷つける奴は許さない。<防衛装備召喚(サモン・ディフェンス・フォース)>」

 

そう言って彼が召喚したのは、PGMへカートⅡ。対物狙撃ライフルと言う部類にカテゴライズされるこの銃器は、本来、名前通り、物に対する狙撃に使われる。

 

 

 

対物狙撃ライフルとは、重機関銃用の弾丸を利用するため、小銃弾などを使う通常のライフルと異なり、サイズや反動が大きく、基本的に伏射が基本である。

だから決して、今春馬が持っているように、

 

 

 

 

 

 

 

 

両手に一基ずつ構えるようなものではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで一度、この異世界に於ける魔法について少々説明しておこう。

 

 

魔法を発動させるには当然、詠唱というものが必要である。フィンランディアにおいて、魔法とは、術者の魔力が、そのイメージによって形を成し、物理法則を捻じ曲げてでもそのイメージ通りの作用をもたらす能力のこと。その能力を行使するプロセスの中で、詠唱とは、そのイメージを明確にする役割を果たす。

 

 

支援魔法なら、対象者を癒す、あるいは力を与える、そのために自分の魔力を与えるイメージが必要である。攻撃魔法ならば、自分の魔力をエネルギー源として、どの相手に、どのような属性、規模、威力の攻撃を行うのか、はっきりとしたイメージが必要である。

 

 

何が言いたいのかと言うと、魔法には、()()()()()()()()のである。ましてや、今回<石槍>が放たれたのは魔道士の中でも、支援系魔法を割り当てられた部隊。対象を間違えたという言い訳もできるわけがない。

 

 

つまり何者かが意図的に彼女へ攻撃魔法を放ち、恐らくは意図的に殺したことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

したがって現在春馬の胸中に去来しているのはその何者かへの莫大な怒り、そしてそれに内包された悲しみである。

 

 

とはいえ、いずれ消え去るはずのモノだった。

 

「落ち着いて春馬さん!今<完全蘇生(パーフェクトリヴァイヴ)>使ったから!」

 

そう、この場には<聖女>が居る。彼女が創った<蘇生魔法>は完全だ。

 

向こう(地球)と違い、一度死んでも人生は終わらない。

 

その事を思い出した春馬は、渋々、本当に渋々と狙撃銃を格納し、魔族に向き合おうとする。もちろん、心の中は怒りで煮えたぎったまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、その莫大な怒りは()()()()()()。本人ですら驚くほど唐突に、だ。そして、その直後、システムメッセージが召喚者の頭の中で響いた。

 

 

《<防衛者>の感情の揺らぎが規定値を超えた事を確認…レベル10》

 

 

《対象の感情を感情:怒り・悲しみであることを確認》

 

《対象者のレベル確認…152、条件に合致》

 

《対象者に<防衛魔法>レベル10及び<反撃魔法>レベル10を確認》

 

 

《対象者に<防衛装備召喚>レベル10を確認》

 

 

《<防衛装備召喚>を一時的に<現代兵器召喚(サモン・ウェポンズ)>へと変換》

 

 

 

 

 

一時的に改変された能力は、『防衛兵器に限る』と言う制限を外され、()()()()()()()()()()()。つまり<防衛者>が知識としてその存在を知る兵器()()が召喚の対象となり得る。

 

 

 

 

 

 

《必要条件がすべて満たされました》

 

《スキル<報復魔法>レベル1を獲得しました》

 

《<報復魔法>がレベル10になりました》

 

 

 

 

 

 

 

ただ受け身でやられるだけの<防御>から、やられる前に防ぐ<防衛>、さらに目には目を歯には歯を、やり返す<反撃>へと進化した魔法は。

 

 

 

 

 

 

 

《スキル<任務・審判ノ日(ドゥームズデイ・ミッション)>を獲得しました》

 

《スキル<任務・審判ノ日>がレベル10になりました》

 

《スキル<任務・審判ノ日>を発動します》

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも守り切れなかった、自分に対する怒りと、相手に対する怒りと憎しみとを糧に、さらに()()する。

 

 

 

やられた分を、相手に何倍にも増幅して返す、<()()>へ。

 

 

 

 

自らの肉体的苦痛、精神的苦痛。それらと全く同じ、いや、さらに大きな痛みを与えるため相手に攻撃する。

 

 

 

 

今回、加害者となったのは人族の魔導士部隊のとある一人の魔導士。しかし、上記の効果により、対象範囲は広がる。魔導士部隊全体、さらには人族、魔族の全員へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、範囲が定まったことにより、魔法が発動される。

肉眼では確認できない上空に展開される超巨大な魔方陣。そしてそこから<召喚>されたとある兵器が複数、飛び出してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

それがこの魔法における攻撃の要。

 

 

 

 

 

 

 

肉眼では見えないが、その召喚の際の莫大な魔力を探知したさくらと春馬は上空を見上げた。そしてそれぞれ遠隔視系の魔法で、召喚されたはずの兵器を探す。そして見つけた。

 

上空に編隊を成して飛ぶ、鋼鉄の鳥。それは()()()()()()()()()()

 

 

 

「春馬さん……あれ……何……?」

 

 

さくらはいたって普通の女子中学生。いくら秀才であっても、知らないことなどいくらでもある。飛行機の細かい区別など、その方向にのめりこんでいる人でなければ付かない。

 

 

だからこの魔法の発動者である春馬に聞いた。

 

 

その機体が発する、明らかに不穏な雰囲気を感じ取ったためだ。

 

 

 

「あ、れは……そんな……いや、でも、まさか」

 

「ねえ、春馬さん」

 

「……さくら、俺が発動したのは何て名前のスキルだった?」

 

「え?発動したのって春馬さんだから春馬さんも知ってるんじゃ……?」

 

「良いから早く!」

 

「確か……<任務・審判ノ日>だったと思うよ」

 

「<任務(ミッション)>、と言ったな……そうか、いやでも国籍は」

 

「ねえ春馬さん!教えてよ!アレは何?!」

 

「さくら、今から戦場全体に<緊急蘇生(エマージェンシーリヴァイヴ)>を掛けることは」

 

「出来る、けど何で?」

 

「急げ、時間がない、理由は終わった後だ。俺も障壁を張るが耐えきれるかどうか……」

 

「ああ、もう!わかったわよ、後で聞かせてもらうからね!<緊急蘇生>!」

 

魔力の波動が、戦場全体にいきわたる。彼女の現在のレベルは198。素でのMPも40000近くなっており、さらに<支援者>の固有魔法<魔力増幅>により、一時的に最大値が10万を超え、<回復補助>により消費する傍から回復する。

 

戦場にいる全員に<緊急蘇生>を掛けるのに、おおよそ2000万以上MPを消費した。

 

 

 

 

 

 

 

「これで完了。それで春馬さん、アレは何」

 

 

「核爆弾だよ、史上最強のな」




ついに発動される<報復魔法>。しかもいきなり最高位階スキル。そして改変される<防衛装備召喚>。


防衛用という縛りを外されただけでここまで凶悪化するんですよね、いやまあ縛り有っても凶悪ですが。
てか対物ライフル腰だめで撃てるってレベルによる身体能力補助どれだけって()。


それでは質問感想批評などお待ちしております。

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