二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~   作:クラリオン

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やっぱり毎日触れてないと文章力下がりますね……

というわけで更新です。今回は前回、啓斗が<転移>している間のさくらさんの話です。


それでは第三十三話、どうぞ!


第三十三話  昔について思うこと

「────既定路線を……崩す?」

 

 

「そう、つまり、<魔王>を倒すのを避けた」

 

 

<勇者>が<召喚>されたことは既に起こったこと、避けようがない。個人個人の思惑はどうであれ、既に魔族は人族領へ侵攻を開始。戦争はなし崩し的に始まっている。

 

 

ならば避けるべきはどこか。残る既定事項は一つ、<魔王>の打倒。

 

 

「なんでそうしようと思ったんですか?」

 

「最初は春馬さん……<防衛者>の提言からだったの」

 

 

<防衛者>国崎春馬。彼は<召喚>当時既に大学二年生であり、その知識や思慮深さを以て、<支援者>と共に<勇者>を支え戒めた。

 

 

その彼が、疑問を抱いた。この世界の宗教は、あまりにも綺麗すぎる、と。

 

 

「綺麗すぎる?」

 

「そう、考えてみて。魔族、と言う種族上明らかな敵が存在するとはいえ、人族の宗教は、創世の女神リシュテリアを主神とする女神教だけ。その他、土着信仰が存在していたという痕跡すら見られない。現存する全ての証拠が、遥か昔から、人族は女神教()()を信仰していたという事を示す。これってちょっとおかしくないかしら?」

 

「全ての人族が、ですか?」

 

「ええ、しかも、国としての体裁をとる前……つまり私達の歴史教科でいうなら、“ムラ”が出来始めた頃、と言うことになるのかしら。その時期から、ほぼ全ての地域で同時多発的に女神信仰が始まったようなのよね……」

 

 

きわめて不自然な信仰の発祥。無論、全てを「異世界だから」とすます事も出来ようが、春馬はそうはしなかった。この世界に於いて、人族が魔法を使えるようになったのは国の体裁を為した後である。

 

つまり、それまでは、元の世界に於ける人間とほぼ変わりない生活であったはずなのだ。それを踏まえて元の世界と比較すると、明らかに宗教だけが浮いていた。

 

 

 

後に、魔族と休戦した後で当時の<魔王>、グラディウス・ヴィリエラ・ステラウィトスに確認を取ったところ、魔族側の宗教、いわゆる魔神ラボルファスを信仰する魔神教も、ほぼ同じ発祥をしていたことからますます確信したのだがそれはさておき。

 

 

それらを総合して考えた上に、当時の召喚者達は上位者の存在を感じた。つまり、この世界を創った、もしくは管理する何者かの存在を。

 

 

そして彼等は知っていた、もしくは読んだことがあった。

 

世界を管理する、神と名乗る上位者が、自分勝手やらかすネット小説を。

 

 

 

「今となっては恥ずかしいだけね。ネット小説の主人公になった気でも居たのよきっと」

 

 

 

神を僭称する者を、下から叩きのめす、そんなネット小説の主人公に。

 

 

だからその道を選んだ。すなわち、設定上、今現在一番強大な敵との連合を考えた。無論、当然のことながらそこまでスムーズにいくはずもなく、人族も多大なる代償を払い、<支援者>中岡陽菜乃は一度死亡した。

 

 

その代わりに、魔族との停戦、そして同盟に成功する。

だがしかし、それは取ってはいけない選択肢の一つだった。その事を知ったのは、全てが終わる直前だったのだが。

 

 

 

 

 

 

「──いやあ全くもう本当に。あの頃の私達は馬鹿だったのよ。流石に<システム>について考え付かなくとも、ただ単に既定路線に従っていればよかったのよ」

 

 

「────そうなったら朱梨(あかり)先輩に会えず仕舞いになってたわけなんだがそれについてはどう思う」

 

「ケイ!帰ってたの?」

 

「いや、今戻ったばかりなんだけど……千年前の話か?詳しいことなら俺が話すぞ」

 

 

戻ってきたらさくらがやけに真面目な表情で、セレスと理沙にこの世界で千年前に起きた戦争の話をしていた。

 

 

あの戦争のメインは俺と<魔王>の対話とそれに付随する諸々の出来事なので、俺が話した方が良いと思うのだが、まあその前に。

 

 

「あとあの状態で既定路線続行はかなり厳しいものだったと思うぞ」

 

 

 

あの時の俺達の思考は完全にネット小説のソレであったから、そこからの軌道変更は非常に困難である。どっかの<勇者>さんはこじらせた挙げ句主人公と敵対し、幼馴染にフルボッコにされて正気に戻ったらしい。俺達は流石にそれ程ではなかったにせよ、間違った方向に突っ走ったのは同じである。

 

 

 

違ったのは、スタート地点だけでなく、突っ走った先でも、手遅れになるはるか前に矯正してくれる人(朱梨先輩)がいたことだろう。俺達はかなり周囲に恵まれていた。

 

 

 

さて、それは置いといて。

 

 

 

 

「今代の件は?」

 

「ああ、何か今更な事色々言ってたぞ」

 

「例えば?」

 

「王国からの公国への同盟の申し出」

 

「……馬鹿なの?」

 

「俺も同じこと思った。てか言った」

 

「どう考えてもそうでしょう?ふざけてるとしか思えない」

 

「ああ、あと俺に訓練してくれっていう要請と顔見せろって言われた」

 

「顔?!」

 

「何か今後も会うかもしれないから本人確認したかったらしい」

 

「それは勿論」

 

「断ったよ、今後お前らと会うなら戦場で敵としてだって言ってな」

 

「おお、台詞()かっこいい」

 

「台詞だけかよ」

 

「外見は」

 

「はいはいフツメンですね知ってますわかってます。でも甲冑着てたら分からんだろ」

 

「ふむ、じゃあ外側から見た感じは非常に絵になってるのかしら」

 

 

 

まあそりゃあ<勇者>に授けられた神器だぞ、一応。見た目は絵になるに決まってるじゃないか。むしろそれでだめだったら<システム>は昔の俺に何か恨みでもあったのかと。

 

 

 

 

「まあな。それで色々ごたついたけど最終的に、今の<勇者>はお前らなんだから、お前らだけで何とかしろって言ってきた」

 

「お前それでも勇者かっ!とか言われなかった?」

 

「言われた言われた。今は違うって言ってきたよ、具体的な事は何一つ言っちゃいない。それと同盟の内容だが、まあまあまともだと思う」

 

「なら良いわ。それで、内戦は避けられそう?」

 

「多分な。だが恒例の人魔大戦は起こりそうだ」

 

「やっぱり避けられない?」

 

「多分な。シルファイドはそこそこ大国だし。しかし<魔王>が指定されていない上に、魔族が攻めてきているわけでもなかろうに、どうやって戦争をする気なんだ?」

 

「さあ?でも警告が無いってことは、<システム>はシナリオに沿った戦争だと考えているのでしょうね……」

 

「っつーかそもそも最初からおかしくはあったんだが」

 

「侵攻してるのは確実に人族の方だし、どう考えても<勇者召喚>条件には当てはまらないのだけれど」

 

「でも多分<召喚魔法>は授けられたんだろ?<システム>の故障か?理沙が死にかけてたことと言い……いやアレは布石か」

 

「<システム>がハッキングでもされてるのかしらね」

 

「そんなこと出来る存在があるわけないだろ」

 

「いいえ?居るわよ、一つだけ。多くの異世界召喚系小説で主人公の前に立ちふさがる、世界をまたぐ強大な存在が」

 

「……おいおい、まさか神がハッキングしてるなんて言うのか?」

 

「さあ、あるいは気まぐれな神にチート特典付きで転生させてもらった馬鹿かもしれないわよ。この世界で人族のトップに立ちたいなら、魔族を亡ぼすのが一番楽だし。まあ貰ったチートによるけどね」

 

 

 

 

ああ、それでもネット小説のパターンの一つになるな。

 

 

 

しかし自分勝手な転生者か。転生させた神がどういうつもりか、そいつがそもそも神かどうかとかは置いといて。事実なら大分面倒だな。流石に<聖剣>は持っては居ないだろうが……

 

 

 

俺はとっとと歪み正して元の世界に帰りたいんだけどなあ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

って違う違う、こいつらに千年前の話をしようとしていたんだった。

 

 

「さて、じゃあ移動しながら千年前の話でもするとしようか」

 

 




以上です。


それでは感想質問批評等お待ちしております。

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