二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~   作:クラリオン

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はい、お久しぶりです。

……投稿が遅れまして申し訳ございません!色々理由は山のごとく積み重なっているんですが、それで時間が巻き戻るわけでもないですし……

UAが五万超えてました。まだまだ読んでくださってる方が居るんですね、ありがとうございます。

というわけで第三十一話です。サブタイトルになっちゃいますが、まだ主舞台ではないので悪しからず。


それではどうぞ!


第三十一話  神国

さて、俺達の旅もあれから特に何事もなく進んだ。無論とっくの昔に理沙のランク上げも完了。晴れてDである。移動中の車内では、俺とさくらが主に前回召喚の時の話をしていた。

 

そんな旅程の四日目。つまり半分まで来たところで、俺達は南にあるもう一つの主要国家、聖リシュテリス神国に入った。と言っても普通に国境を素通りしただけであるが。

この国は国土も大して大きいわけではない。

 

ではなぜ主要国家とされるのかと言えば……

 

まあ国名からもわかる通り、この国は宗教国家である。この世界において人族が信仰する神、創世の女神リシュテリア。彼女を祀った教会の総本山があるのがこの国なのである。

 

一応<勇者>も、“女神からの御使い”という認識をされているのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

うん、わかるね?女神なんて存在しないよ?そういう設定を<システム>が創っただけだ。いやもしかしたら俺達なんかが知覚できないようなところに居るかもしれないけれど、それってさ、居ても居なくても変わんなくね?

 

ちなみに宗教が存在する理由は、『思想を操作しやすいから』という理由であるらしい。怖っ。ちなみに魔族側にも魔神信仰がある。こちらも同様。

 

そんなリシュテリア教こと女神信仰の教えはいたってシンプルである。

 

 

 

『魔族は敵』

 

 

『魔物は敵』

 

 

『敵はぶっ殺せ』

 

 

 

 

 

もの凄く簡略化すればこうなる。もの凄く物騒だが、まあ省略したの俺だから察してくれ。まあ実際は色々と人族を持ち上げる修飾と共に大分長く、丁寧な物言いだが、余計なものを省くとこうなる。

 

 

 

 

この教義に従えばそりゃあ魔物狩る職業も出来るわな。魔族とも戦争起きるだろうし、<勇者>呼び出したりもするだろう。本当に良く出来たシステムである。やっぱりデウス・エクス・マキナ(ご都合主義の権化)じゃねーか。

 

まあそれはさておき。この神国を治めるのは教皇である。さらに、時代によっては<聖女>と呼ばれる、聖属性魔法の類稀なる使い手が存在する。この<聖女>も職業はれっきとした<聖女>である。

 

ちなみに今の時代も居るらしい、名前は知らん。あと教皇様はかなりの善政を敷いているようだ、とはセレスと理沙の情報である。

 

この国には出来るだけ関わらないつもりである。こういう世界で、宗教関連は面倒ごとしか持ち込まないという事は良く知っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから関わらないつもりでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いたのだが、この場合、こういう考えはフラグになるというネット小説のテンプレを忘れていた。

 

 

 

 

 

 

 

「助けていただきありがとうございます」

 

跪いてそう俺に言う、白い服を着た少女。

 

 

どうしてこうなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うん、いやね、全力走行してたらね、前方の街道上に魔物に群がられて横転してる馬車が見えたの。うん、めっちゃ高そうな明らかに地位の高い人専用の白い馬車が。

 

 

テンプレが遅れてやって来たんだよ。

 

 

無視するのもアレなので、装甲車片付けて全員で助けに入ったってわけ。と言っても四人全員で雷属性範囲攻撃合唱魔法を唱えただけなんだけど。

 

 

 

んで魔物を全滅させたら馬車の横で護衛らしき人が守ってた、白い服着た少女が俺達の方にやってきてさっきの台詞を言ったってわけ。

 

 

うん、ミスったね。でもここで騒いだら目立つしな。おとなしく終わらせよう。というか逃げよう。

 

「いいえ、誰かが困っているのを助けるのは冒険者の義務ですから」

 

「可能であればお礼をしたいのですが」

 

「いえ、それには及びません。私達は少々先を急ぎますので」

 

「でも命を救っていただいてそのまま何もしないというわけには」

 

「お気になさらずに、では」

 

 

立ち上がって去ろうとしたところで、再び引き留められた。

 

 

「あの、出来れば神都まで護衛していただけないでしょうか」

 

「……既に護衛はいらっしゃるようですが……」

 

「また先ほどの規模の魔物に襲われたらひとたまりもありません、どうかお願いできませんか?」

 

「それには及ばないと思います。先ほどの魔物はヴィーゼンウルフ。ランクそのものはEですが、獲物を見つけた際に、周辺地域に生息する仲間全てを呼ぶ性質があるため群れ自体の危険度はC以上、場合によってはBです。先ほどの群れはC程度ですが一掃したので、この近くにはこのレベルの群れは居ない可能性が高いです」

 

 

仲間を呼ぶタイプの魔物が居る場合の利点はこれだ。群れの規模がそこそこ大きいから周辺に同族乃至同タイプ、つまり肉食の魔物は居ないと考えていい。そして周辺個体が全滅したので、ほんのわずかな間――数日程度だがここは草食乃至雑食で大人しく小型の魔物が住むほぼ安全地帯となる。それ以上すると、<システム>の介入によって、あるいは自然に、周辺から肉食系魔物が侵入。天敵の全滅により数が増え、あるいは大型化した草食系魔物を捕食し、増殖。恐らく一か月と経たずに個体数は回復していくだろう。

 

 

ここら辺は普通の動物のサイクルと変わらない。

 

 

まあ何が言いたいかというと、こっから先は護衛無しで大丈夫、ということである。このヴィーゼンウルフ、仲間を呼べる範囲がやたら広い。千年前は確か半径百キロ近い範囲の仲間を呼べていた。<念話>スキルでも持ってるのかテレパシーでも使えるのか。

 

恐らく変わりはないはずだから近くの街までは何もなくても行ける。

 

 

 

「だから護衛は必要ないのですよ、それよりも、早くどこかの街へ急がれることをお勧めいたします」

 

「貴様!聖女様のせっかくのご好意を……!」

 

「良いのです。そうですか、ではしばらくは安全と考えてよろしいのですね?」

 

「はい、現れたとしても恐らくは大人しい性質の魔物のみでしょう、その程度ならば、護衛の騎士団で対処できるはずです。では」

 

 

 

 

 

 

 

あっぶね。聖女様本人と遭遇とかテンプレじゃねーか。面倒ごと嫌い。というわけで、彼等から離れる方向、南へ歩き出す。さらに途中から街道を外れる。

 

 

 

 

 

背の高い草に紛れ、聖女様が見えなくなったところで一息つく。

 

 

「身分の高い少女を助けてそのお礼にと大都市へ……テンプレね」

 

「行かなくて良かったの?」

 

「ここで余計な寄り道をする必要は無い。<勇者>が出てくる前に南へ行かなくてはならん」

 

 

出来るだけ早く<システム>のもとへ。<魔王>の、グラディウスの魔力を合わせれば、強制的に<送還>を発動可能になる。

 

 

世界の歪みを矯正し、先輩を救わなくては。全ての手は俺達にある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が、焦っているときほど邪魔は入るものだ。ポケットが、いや、その中身──伝達石が発熱している。

 

 

「……ちっ。さくら、後を頼む。<防衛業務委託(ディフェンス・サブコンストラクト)防衛装備召喚(サモン・ディフェンス・フォース)><転移(ポータル)転移点記録(ポータルポイント・レコード)>」

 

「何かあった?」

 

「公国からだ。戦いかどうか知らんが<勇者>が出た。先に行ってろ。<転移門(ポータル・ゲート)>を車内に登録したからしばらくは格納できんが頼む」

 

「了解、いってらっしゃい」

 

 

<聖鎧>展開。

 

 

「<転移(ポータル)>」

 

 

やれやれ、次は何なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツも大分大変よね……<聖剣>だって自分のじゃないのに戦いに引っ張り出されてさ」

 

「え?あの人の<聖剣>って本人のじゃないの?」

 

「ええ、今ある<犠牲(サクリファイス)>は<システム>から登録しただけの仮の<聖剣>。魂に結ばれし<勇者>固有の聖武器ではないの」

 

「え?じゃあケイの<聖剣>は?というかじゃあ<犠牲>の主って誰?」

 

「アイツの<聖剣>……<孤独(ソリチュード)>は朱梨先輩が持ってるわ。ケイが持ってる<聖剣・犠牲>は元はその人が持っていた物よ」

 

「アカリ……センパイ?」

 

「ええ、私達より前にこの世界に<召喚>された人よ」

 

「え?でも初代ってさくらと啓斗じゃ……」

 

「そうよ、人族の伝説の中ではね。でも紛れもなく、この世界に初めて<勇者>として召喚されたのは朱梨先輩なのよ」

 

「じゃあなぜ伝説に残っていないの?」

 

「<システム>がそうなるように干渉したから。<管理者>を除き抵抗することが不可能な<精神干渉>魔法。わかりやすく言うと、記憶と精神を弄り、さらに<システム>そのものの記録をも改竄した。だから啓斗の称号に<初代勇者>が存在するの」

 

 

この世界を管理し、永続させるために創られた<システム>は、この世界のほとんどに干渉することが出来る。例外として、個体それぞれの感情や繁殖には干渉できない。

 

 

「だから<勇者>としての特殊性も持っていた。私達が<召喚>されたのは、彼女が召喚されてから1000年後の事。でも彼女の外見は、召喚当時、つまり高校二年生・17歳のままだった。<勇者>は不老不死だからね」

 

 

<勇者>は基本的に不老不死である。なぜなら<勇者>は<魔王>を倒す事は既定路線であり、その後は<システム>の<管理者>となる事まで決められているからである。

 

そして管理者となった<勇者>は次の<勇者>が召喚されるまで、世界を見守り、次の代の<勇者>による<魔王>打倒を以てその任務を完了、元の世界へ帰還する。

 

 

「物語やゲームでは<勇者>は<魔王>を倒すのが普通。この世界もそういうことになっていた。そして<勇者>はそのまま<管理者>となる」

 

 

<システム>はそのために創られた。異世界から<勇者>を呼び、自身を創造したものの遺志を継がせるために。それは完璧なシステムだった。

 

 

「でもその既定路線を、私達は崩そうとしたの。そしてそれを完全に遂行する途中で、彼女は敵として現れ、最後は自らを()()に、私達の計画を完遂させた」

 

 

 

 

 

だが名も知れぬ聖人は、<勇者>と<魔王>の両方が、厭戦的であるという、非常に小さな、だが有り得た可能性を見逃し、考慮していなかった。

 

 

 

 

あるいは、対立すべき存在として定義した人族と魔族の融和の可能性を考えていなかった。

 

 

 

記録上二度目の<召喚>にして、<システム>の、創造者の、想定外の問題が発生した。

 

 

 

 

 

 




以上です。感想批評質問等お待ちしております。

ただし、物語においてネタバレとなる事項に関しての質問などには答えられない場合がございますのでご了承ください。

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