二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~   作:クラリオン

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数日ぶりですね。時間割り作成にかなり時間を取られました。


それでは第二十七話、どうぞ!


第二十七話  管理者

「あのっ」

 

「ん?何か?」

 

「その……助けてくれてありがとうございました!」

 

「ああ、良いよ別に」

 

「仕事だし、ね」

 

「……仕事?誰かから依頼を?」

 

「うん、君から」

 

「……え?私……から?」

 

「そうそう……って人と話すのにフード被ってるのも失礼か……改めまして、初めまして、雷帝竜の巫女殿。私は<システム>特務管理者のケイト・カンザキと申します」

 

「同じく特務管理者のサクラ・ウチヤマです。昨日の救助要請に応じ、参上いたしました……って言っても多分意味不明ですね……とりあえず移動しましょう。ケイ、<偽装腕輪>はある?」

 

「数百個」

 

「一個レイシアさんにつけてもらって……レイシアさん、コレ付け方わかりますか?」

 

 

 

空間収納(アイテムボックス)>から、<偽装腕輪>を取り出し、付け方を説明する。瞳と髪の色、微妙に顔の形すら変わり、さらに顔が印象に残りにくいような<認識阻害>の魔法をかけた魔道具。

 

それを付けると、金色の瞳は蒼く、金髪は黒髪に変化した。

 

 

 

 

 

「……中々面白い組み合わせね」

 

「まあいいんじゃね?大分印象は変わった。一発で見抜かれることはまずないし、印象にも残らないならバレることは考えなくていい」

 

 

バレたところで、俺達を止められる物は存在しない。

 

 

「この国を出るまでのことだし、ね」

 

「宿は?」

 

「とってきた」

 

「明朝午前五時発」

 

「了解」

 

「さて、取り敢えず宿に移動しましょう。詳しい話はそこで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ」

 

部屋に入ったところでフードを取る。

 

「さて、レイシアさん、いろいろ聞きたいことがあるとは思いますが、まずは我々とその行動についての簡単な説明を聞いてください」

 

「はい」

 

「では私から説明します。私と彼──ケイは、<特務管理者>という地位にあります。そして貴女は恐らく自覚は無いでしょうし、ご存じでないと思いますが、<管理者>という地位にあります。<特務管理者>は<管理者>の……まあ部下のようなものです」

 

「<管理者>……」

 

「はい、詳しくは後で。さて、我々は、昨日、我々より上位、つまり<管理者>からの救援要請を受信いたしました。ちょうど皇都から北へ800キロほどの場所でしたが。そこから要請に応じるべく、急いでここまでやってきて、無事救出に成功した、というわけです」

 

「救助要請?」

 

「ええ、まあ貴女には自覚がないとのことでしたが……助けてほしいと願いはしませんでしたか?」

 

「……確かに願いましたけどでもそんな要請は出していませんわ」

 

「限りなく低い確率ではありますが、<管理者>の能力を無意識に行使したのかもしれません。何か心当たりは?」

 

「……おじい様」

 

「え?」

 

「小さい時からずっと、頭の中にもう一人、男性がいたのです」

 

「……憑依?」

 

「かもしれません、その人はラビラスと名乗りました。声がお年を召していらっしゃったので、おじい様と呼んでおりました」

 

 

 

 

 

 

 

ラビラス。初代リズヴァニア伯爵にしてその実<システム>の<管理者>権限を持つと想定された唯一の人間にして雷帝竜の化身。

 

 

 

 

 

 

 

「声だけですか?」

 

「はい、でも色々……知識面や魔法など様々な事を教えていただきました」

 

「ふむ……その声はどうなりました?」

 

「……昨夜からもう聞こえなくなって……呼びかけても応答がございませんの」

 

「さくら」

 

「居ないわ。何がトリガーか知らないけれど、恐らくもう抜けてる」

 

「ふむ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その男のおかげで、<雷魔導>と<竜魔法>を獲得できたのなら間違いなくその男は雷帝竜だろう。<竜魔法>なんて人族は知らないのだから。<雷魔導>もまず才能があってもこの年齢の少女単独では獲得は不可能。見せてくれる師が居なくては……

 

 

 

 

 

ん?()()()()()()()

 

 

 

 

 

「そうか」

 

 

 

 

 

<魔導>スキルまで持って行ったのは恐らくラビラスだ。竜種は、唯一単独で<魔導>スキルを獲得する存在。彼の魂か、その残滓かは知らないが、憑依していたのならそれくらいは出来よう。

 

待てよ?じゃあもしかして昨夜の救援要請は。

 

 

 

 

 

「なあ、さくら」

 

「なに?」

 

「<管理者>権限ってさ、憑依してたら動かせると思うか?」

 

「……そうね。余計な魔力は消費するでしょうし、そこまで大それた権限は行使できないでしょうけど。例えば────付近の<管理者>への連絡とか」

 

「だな」

 

 

 

 

 

つまり、救援要請を送ったのも恐らくラビラス。昨夜消えたのも、恐らく自分を構成する精神体をエネルギーにし、魔力の代用として、<管理者>権限を発動させたのではないか。

 

これが俺の立てた推論だ。と言ってもこれ以外に考えようがないのだが……

 

 

 

 

「とりあえずレイシアさんに関する謎は解けたけど……話して良いのかねこれ」

 

 

 

 

一般人相手にはアウトな情報が混ざり過ぎてて説明できない。

 

 

 

 

「後で話せばいいんじゃない?どうせ国外まで連れて行く気でしょう、それまでに決断してもらえばいいわ。<管理者>権限は残っているようだし」

 

「だな……というわけで、レイシアさん、その声の持ち主は既に存在していないことをお伝えしておきます。では、次に、これからの事についてお話します」

 

「はい」

 

「今、貴女には二つの選択肢があります。一つ目は、このまま国を出るまで私達と行動を共にし、次の国で別れ、貴女自身で自分の人生を新しく始める選択肢。もう一つは、この国を出た後も、私達と行動を共にする選択肢です」

 

 

 

「ただし、後者には、多くの制約と義務が付属します。その代わりと言ってはなんですが、この世界における一つの重大な事実を知ることが出来るでしょう」

 

 

 

「こんなことを言って、すぐに決めろと言うのは酷なのは私達も理解しています。ですので、考える時間を設けましょう。期限は明後日の朝です。そのころにはちょうどこの国を抜ける頃でしょうから」

 

 

 

「明後日……わかりました、ありがとうございます」

 

「一応念のためですが、外出は控えるか、私かケイと一緒に動くようにお願いします」

 

「わかりました」

 

「部屋はさくらと一緒ですから、何か用があればさくらに言ってください」

 

「……あの」

 

「なんですか?」

 

「何も聞かないんですか?」

 

「色々質問した気がするんですが……」

 

「そうではなく……その……」

 

「──なんで処刑されそうだったか、とかですか?」

 

「!……はい」

 

「正直どうでもいいんですよね……大方冤罪でしょうし」

 

「な、んでわかるんですか……?」

 

「竜種は誇り高き種族です。雷帝竜──貴女の祖先たるラビラスが、貴女を助けることを意図した行動をしたという事は、そのまま処刑の理由がいわれのない物であるということにつながるのですよ」

 

 

 

 

竜種は嘘を嫌う。罪を嫌う。道に反した行為を嫌う。彼等にとって誇りとは絶対的なものだ。

 

その中の一人である雷帝竜、もしくはその残滓が、彼女を処刑から助けるような行動をとった。自分の存在を犠牲にしてまで。もし冤罪でなければ、そんなことをしないだろうし、そもそもその犯罪をどんな手を使ってでも止めに行くはずだ。

 

そうではないという事はつまり、彼女が冤罪という事である。

 

 

 

 

 

 

「だからわざわざ相手を……ましてや我々より上位の権限保有者を傷つけるようなことは言いません」

 

 

 

 

 

一応<聖女>と<勇者>ですし。あれなんかさくらの台詞がイケメン。

 

 

 

 

「吐き出したいことがあったら、今は私を頼ってください」

 

 

 

ちょそれ<勇者>の台詞じゃ……まあ良いか、外見普通の俺よりは外見美少女のさくらが言った方が多分見た目も良いだろうし。

 

 

 

「そこでボケっとしてる男も、きっとストレスの捌け口にはなるので、むかついたら存分に八つ当たりしてください」

 

 

 

待って、ねえ、俺<勇者>ですよ?外見アレだけど<勇者>ですよ?扱い酷くない?

 




以上です。新学期スタートですので、更新スピードは落ちますがそれでよろしければ今後ともよろしくお願いいたします。


それでは感想批評質問等お待ちしております。

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