二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~ 作:クラリオン
それでは第二十四話、どうぞ!
「さて、<勇者>パーティーの諸君、静粛に」
「ふざけっ……グッ!」
「無理に動くと傷が痛むぞ、帰るときには治療してやるから黙って待ってろ……さて。<賢者>はどこだ?いくつか親切心で教えてやりたいことがあるんだが」
「は、はい、俺です」
ああ、やはり
「お前何してたんだ?」
「へ?」
「へじゃねえ。お前<賢者>の意味わかってるのか?<勇者>パーティーにおける参謀だぞ」
「そんなの知って……」
「じゃあなぜのこのこと戦場に出てきた。本当にこの国が魔族と協力関係にあるならば、<魔王>とまではいかなくとも、上級クラスの魔族が出てきていたかもしれない、そうは考えなかったのか?」
「あ……」
どうやら彼らは自分で考える頭を持たないようだ。性格云々の前にオツムの問題だったか。
「あ、じゃねえ。全く……王国は一体どんな教育をしているんだ。今回は、結局魔族との関わり合いは無くて、かつたまたま俺が、初代<勇者>が居たからいいものの……まかり間違っていれば、お前ら全滅してたり、<正義>の名のもとに大量虐殺していたかもしれなかったってことを肝に銘じておけ」
「たい、りょう……ぎゃく、さつ?」
「わからないのか?俺が居なかったらお前らが相手していたのは誰だ?公国騎士団だろう。さて問題です。チート級能力を持った異世界人VSこの世界の一般人よりちょい高めステなだけの人種。どうなるでしょうか?」
正解は、騎士団が瞬殺される、だ。今さっき俺は、圧倒的なレベルと戦闘経験の差で<勇者>を瞬殺したわけだが、例えば普通の騎士団員相手であれば、<勇者>は力だけでゴリ押しで勝てる。
騎士団長相手でも、多分勝てる奴は多い。
<召喚>された<勇者>とは、それほどのチートなのだ。だから人に向けてはならない。<システム>の意味がなくなってしまう。
「いいか、良く聞け<賢者>。お前の役割は、<勇者>の行先を正すことだ。一緒になって人の考えに乗っかってんじゃねえ。<勇者>の役割を果たすように、自分で考えて行動しろ。また同じことを繰り返したら、次は手加減できないからな」
本当は竜種とかが来るって言った方が良いんだろうけど、それじゃあなんとなく脅しにならない気がした。
「じゃあな<勇者>諸君、そこに転がってる死体は二時間放置すれば生き返るから埋めたりするなよ。最後に、もう一度忠告しておく、これが最後だ。<勇者>の力を人族に振るうな────<
約束通り、身体欠損とHPを範囲回復させる聖属性魔法を使ってから撤退する。
撤退するときは、後ろから撃たれないように転移。
陣営に戻ると、既に騎士団長以下も居た。なんでも<勇者>が討たれたことは、王国軍の中でもすぐに広まり、すぐに撤退していったらしい。まあ、<勇者>が討たれたとなると、士気は駄々下がりだよなあ……相手側にそれだけの強者がいるってことになるんだから。
「<勇者>は殺した、だが生き返る。まあすぐに戻ってこれるとは思えない。時間はとりあえず稼いだ。もしまた<勇者>が出たら、これを使ってくれ」
そう告げて、団長に石を渡す。
魔法石の一種で伝達石という品物。魔法石としてのランクは低く、効果も、二個一組の片方が割れた時、もう片方が激しく発光し熱を持つというだけ。まあ非常事態発生の報せはそれで十分だろう。
「は、承知いたしました」
「ではな──<転移>」
「おかえり、殺ってきた?」
「首チョンパ」
「……意趣返し?」
「いや、一番楽だったから」
「成長具合は?」
「当たり前だけどまだ固有スキルは出せてない。レベル的にも2から4くらいじゃないかな?」
「まあ召喚して一週間程度なら、上出来かしら」
「うむ、ああ、あと折ってきたぞ」
「他のは?」
「腱斬ったか腕と足奪った。止血は火属性魔法」
「鬼か。まあでも、うまくやれば戦場に出てこれない……うん、上出来」
「え、と、お疲れ様でした、ケイ」
「ああ。……あれで少しは<賢者>がストッパーになってくれるとありがたいんだが」
「無理でしょ。<賢者>は確か……高山でしょ?アイツ頭は良いけど」
「ストッパーに向いては……いないね。
「わかっててやったの?」
「一縷の望みをかけてって奴だな。一応騎士団長に伝達石を渡してきた。何かあれば連絡が来る。<転移>も記録しなおしたしな」
「ああ、何度でもボコれるってわけね」
「その通り。ところで住民の避難はどうなった?」
「大分時間を稼げたみたいで、もう希望者はほとんど南方に逃げたわ。残っているのは政府首脳とか大公、あるいはこの地に骨を埋める決意をした人たちだけよ」
「ふむ、無用な犠牲は避けられたか」
「一時的に、ね。最終的に公国騎士団は全滅するでしょうし、王国騎士団もかなりの被害を受ける」
「その数十倍の一般人が巻き込まれるよりゃましだ」
「えっと、その、ケイ?」
「ん?どうしたセレス」
「公国を助けるんじゃない、の?」
「違うよ、
「え、じゃあさっきまで行ってたのは……?」
「ああ、あれは相手に<勇者>が居たからね、俺はあくまで調整役だ。相手が戦闘不能になればこちらも撤退する。それが<システム>の規定、約定だ」
「……<システム>?何ソレ?」
「それは「ケイ」……悪い。すまんセレス、軽々しく話せる事じゃなかった」
誰が聞いてるともわからないところで話す事じゃなかった、危ない危ない。さくらナイス。
「……そう、なら深くは聞かない」
「まあ、いずれ嫌でも話すことになるからその時に聞いてくれ……と言ってもそれがいつになることやら……」
「貴方がレベル上げして戦車とか召喚できるようになったら済む話でしょ?特に自衛隊装備はほぼ確実に召喚できるんだから」
「わかったわかった、急ぐから。じゃあ次の国行くか?」
「そうね、どうせしばらくは攻めてこないでしょう、距離を稼がなくては」
「次行くのってどこだっけ?」
「南の大国、スルヴァニア皇国よ」
以上です。もう1話挟んで今代側の閑話が入るかもしれません。
クラスメイトの名簿的なのとか投入した方が良いですかね?
それでは感想批評質問等お待ちしております!