二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~   作:クラリオン

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ハロウィン当日に挙げようと思っていたら寝落ちして微妙に遅刻してしまいました。まあハロウィン当日の話ではないんですが……


軽く読み流してくださいな。


会話パート

敬語口調→啓斗、さくら
タメ口調→春馬、陽菜乃


短編  いつかのハロウィン

 

 

 

 

 

 

「……何アレ」

 

「あー、たぶん日本で言うところのジャック・オー・ランタンってところじゃないかな。素材はアレだけど」

 

「素材っつーかあれどう見ても魔物の骨まんまじゃないですか。ゴブリン系統の頭蓋骨か何かでしょうあれ」

 

「かぼちゃがこの世界にあるかどうかまで気にしたことはなかったけど、まああったとしても食べられる物を細工するよりそのままある物を使えるならってことじゃないかな」

 

「ちょっとだけですが聖属性の魔力を感じます。多分聖水かけている程度ですけど、自然湧きするアンデッドを追い払うには十分ではないでしょうか」

 

「飾りじゃなくて実益狙いですか。道理で墓場周辺と村の周りにあるんですね」

 

「……なんかこう、中途半端な感じだよね。ちぐはぐな感じ」

 

「すべて大真面目というわけでもなく、かといって完全にお祭りとしてはしゃぐわけでもない、ってところですか」

 

「なんかしっくりこないんだよね」

 

「そりゃあ、日本のハロウィンは仮装大会というかコスプレ大会になりつつあるからね。この世界のハロウィンはたぶんハロウィンの原点に近いんだろう」

 

「豊穣を祝い、悪霊を追い出す、でしたか」

 

「そうだね。この世界では悪霊の存在がはっきり可視化されてる分、そっちは実際方面に寄せてあるんだと思う」

 

「トリック・オア・トリートとかあるのでしょうか」

 

「いやぁどうだろうか、仮装は、あれを仮装と言っていいかどうかはともかくあるっぽいけど。いや、あれを見る限りあるのかな。ただ言葉は流石に違うだろうね」

 

「仮装……まあ仮装で良いんじゃないでしょうか。恐ろしいものに擬態する、という点においては忠実ですし」

 

「あと火の事を考えるとサウィンだったか、あそこも混じってるような気がするね」

 

「サウィン?」

 

 

「古代ケルトのドルイドの信仰で一年の始まりにあたる祭りだね。ハロウィンの原点みたいなものかな。かがり火をたいて供物をささげ、夜には村でそれ以外の火をすべて消す。翌朝にその燃えさしを各家庭に渡し、各家庭はそれを使い、かまどに新しく火をつけ、悪い妖精や悪霊が入らないようにする」

 

「曰く、この季節は一年で一度、あの世とこの世がつながる季節だと信じられていたためらしい。尤もこの世界は常時つながっているようなものなんだけど……」

 

 

「えぇ……いやアンデッドを霊魂って言いますか普通」

 

「肉体保持系は正直アレだけどね、死霊系は霊魂ぽくないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

「トリック・オア・トリート! お菓子をくれなきゃいたずらするぞ!」

 

「……いきなりどうしたんですか陽菜乃さん」

 

「二人して小難しい話してたから退屈だなって思って。それで、お菓子はあるの?」

 

「無いですね」

 

「じゃあいたずらだね! ハルのは後で考えるとして、啓斗はどうしようか?」

 

「いや、悩むくらいならしなくても良いじゃないですか」

 

「いやいや、こういうのはちゃんといたずらしないと……さくらちゃんに考えてもらおうかな」

 

「え、私ですか」

 

「うん、だって私はハルの分考えなきゃいけないしね」

 

「……何が良いでしょう?」

 

「適当に軽いので終わらせとけ、面倒だ」

 

「と言われても……あ、そうだ!」

 

 

 

 

何か思いついたようなさくらは、とても『良い』笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……夢か。あの時何させられたんだっけ……あ」

 

 

 

そうだった。あの時は、体を自由にされたのだ。比喩ではなく、まさにその通りに。

 

傀儡人形(マリオネット)>というスキルがある。これは<傀儡術師>しか取得できない職業固有の魔法のような物だ。このスキルを発動中、傀儡と術者を見ると、両者が魔力の糸でつながれていることが見て取れる。

 

さくらがやったのは同じこと。ただ彼女は<傀儡術師>の称号を持っていないため、<魔力操作>による魔力の直接操作で行った。この場合、かけられる側が抵抗すればあっさり断絶してしまうのだが、いたずらという事で抵抗を禁じられていた。

 

まあ本気で嫌だったなら抵抗すれば済む話であり、そうしなかったという事はまあなんだかんだ言いながら楽しんでいたのだろう。なお翌年から春馬ともどもきちんとお菓子を用意する事にしていたが。

 

 

 

「今回はあんなほのぼのとはいかないだろうなあ」

 

 

 

今年のハロウィンはとてもそんなことをする暇はなかった。一日すべてをほぼ移動に費やし、ハロウィンぽい事と言えば、お菓子の交換をしたくらいだろうか。

 

来年もハロウィンぽい事を出来るかどうか微妙だ。今代勇者パーティーに職業・出身国以外のすべてを偽って潜り込み、時には性格すら変えながら『国崎啓』を演じ続けなくてはならない。

 

ハロウィンまでそれが続いたとして、それを完全に楽しむわけにはいかないだろうし、そもそも続くかどうか。続かなかった場合は、おそらく最終決戦の用意をする必要があるから忙しそうだが……。

 

 

 

「いや、さくらならやりそうだな」

 

 

 

否、絶対にやる。今年ですらお菓子交換だけでもと言ってわざわざやったのだから、逃げる必要がないなら多分無理にでも時間を作ってやるだろう。元の世界にいるときもこういうイベント系だけは素を出していたようだったし。

 

 

となると問題は。

 

 

 

「何を作ろう」

 

 

 

時間がある、となれば多分さくらは手作りする。変なところだけ凝ってるのか、はてさて陽菜乃の性格を一部受け継いだのか。

 

となると当然、こちら側も手作りでなくては納得しない気がする。前回召喚後、三回のハロウィンにおいて春馬とともに一応手作りのお菓子を作ってはいる(陽菜乃の言いつけらしい)が、単独ではやった事が無い。

 

 

 

 

「……いいや、来年考えよ」

 

 

 

 

 




以上です!

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