二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~   作:クラリオン

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どうにか間に合った、かな?




第十五話、どうぞ!


第十五話  初戦闘

「ここがガルデアか」

 

「そう。エメラニア北端の街。と言ってもエメラニア自体がそこまで大きい国じゃないから、早馬ならここから二日もかけずに南端まで行ける」

 

 

ガルデアの北門で、入るための手続きの順番待ちの間に簡単な説明を受けた。エメラニアはどちらかと言うと、東西に広い国らしい。

 

 

「ここで冒険者ランクをCかDまで上げて」

 

「出来れば一週間以内にはここから動きましょう。あの国が本当に<勇者>を手駒として戦争を始めるならまず自国の拡大を図るはず」

 

「ここと後もう少し南に行った国もあまり大きくないので、侵略するとしてもそこまで間をおかないでしょう。いずれ<勇者召喚>と魔王復活を口実に勢力拡大をするでしょうし」

 

「現段階でこの国が攻められる可能性は?」

 

「ないとは言わないわ。でもそのための口実が無い」

 

「さくらが言う通りに動くとしたら、今この状態で他国を敵に回すのはあの国にとっても得策じゃない」

 

「今の段階の<勇者>はまだ手駒(兵士)として使える状態じゃあないからな……早くてあと数週間てとこか」

 

「最初にまず盗賊あたりかしら?私達みたいに」

 

「普通の盗賊か、そう仕向けられた奴かは知らんがな……」

 

「──次の方どうぞ。身分証明書はお持ちでしょうか?」

 

「ああ、三人分。これだ」

 

「──はい、えー、ケイさん、さくらさん、セレスさん、でよろしいですね。冒険者ですか、はい、確認できました。良き滞在を」

 

 

 

 

 

「──んでここが組合(ギルド)か」

 

「そうね、入りましょ?」

 

 

さて、こういう時はやっぱり伝統行事(テンプレ)があるべきだと思うんだがどうかな?

 

 

「すいません、依頼を受けたいんですが」

 

「冒険者ランクはどれでしょうか?」

 

「私と兄がF、姉はDです」

 

セレスは冒険者証(ギルドカード)は持ってはいるが、依頼を大して受けていないのでランクはDなのだとか。

 

「となるとパーティーで受けられるのはEランクまでですね。今現在出ているEランクまでの依頼はあちらの掲示板にあります。受ける依頼が決まったら、依頼書をはがしてこちらまでお持ちください」

 

「わかりました。ありがとうございます」

 

人との折衝はこいつに任せて正解だな。俺と話すときと性格が違う。二重人格者かこいつは。

 

「──どれ受ける?」

 

「出来れば討伐系が良いだろう?<防衛者>のレベル上げを兼ねるなら討伐系が手っ取り早い」

 

「そうだね──じゃあこれかな?」

 

そう言って、俺達に口調を崩すのに慣れてきたらしいセレスが取った依頼書の内容は、

 

《ゴブリンの群れの討伐依頼》

 

だった。

なんでもここから少し西に行ったところにある森から草原にかけて、ゴブリンの目撃情報が頻発しているという。目撃情報から上位個体数体に率いられた群れの可能性が高いとのこと。

 

まあちょうどいいのではなかろうか。三人しかいないなら、<絶対障壁(バリア)>で全員覆って、全員で攻撃しまくればいい。最悪とどめはクラウか<勇者>状態の俺がやればいい。

 

 

しかし上位個体か。アーチャーとかウィザード辺りなら大したことないけど……ジェネラルとかレッドキャップ、ブラック辺りはランク上がるからなあ……ま、いっか。

 

 

 

 

「──これを受けます」

 

「《ゴブリンの群れの討伐》ですね、わかりました。あ、パーティー名どうします?」

 

「どうする?」

 

「あれでいいだろ。いつもの」

 

「了解。じゃあこれで」

 

そういってさくらが紙に書き足した。

 

 

「パーティー名は──<ヴァルキュリオン>で間違いないですか?」

 

「はい。お願いします」

 

「西の森・草原の場所はわかりますか?」

 

「あ、はい。大丈夫です」

 

「それではお気をつけて」

 

 

 

 

ギルドを出たところで、誰ともなしに呟いた。

 

「テンプレ無かったな」

 

「まあ時間帯の問題と、あとは三人ともフードかぶってたから顔見えなかったんじゃない?」

 

「じゃあ次は外して入るか?」

 

「それはそれでめんどくさそう……」

 

 

 

 

 

西の森には、馬を走らせて一時間ほどで到着した。森の外、草原の手前で馬から降りて低くかがむ。

 

「じゃあ始めようか」

 

「そうだな──<魔力探知><周辺警戒(レーダーマップ)><絶対障壁>」

「<硬き壁(ハードウォール)><自動治癒(オートリペア)><自動回復(オートヒール)>」

 

俺とさくらで矢継ぎ早にスキルを発動。完全に無傷で済ませる気だ。さてさて……敵の数は……?

 

「ゴブ43、アーチャー5、メイジ4に……赤5、黒3、あと……将軍(ジェネラル)2、(キング)1」

 

「随分上位個体多いね、これEの依頼じゃないよ、少なくとも4人で、全員Dの編成で挑むような依頼だよ……」

 

「まあ俺等なら」

 

「赤子の手を捻るようなもの……だけどレベルあげしなきゃいけないし」

 

「どうする?」

 

「セレス、遠距離攻撃できる?できれば誘導できるか、見ても回避できない攻撃で」

 

「一応弓矢は出来るけど……」

 

「じゃあ私が付与するからケイ、管制と警戒お願い。アーチャーとメイジ優先」

 

「了解」

 

 

こいつ俺より<防衛魔法>使いこなせそうだな。恐らく矢に速度上昇系の付与をかけるんだろうな。<付与>も魔法に分類されるから、<周辺警戒>にも表示される。誘導系の付与ってそんなんあるの?

 

「<誘導付与(エンチャント・ホーミング)>」

 

あるんかい?!

 

「誘導方向の指示もお願い」

 

「了解、今見てる方向を零時方向とするぞ。一時方向及び二時方向に弓各1、十一時方向に弓1、魔2。十時方向に魔2が並列展開、零時方向に弓2」

 

次々と読み上げていく目標に、これまた次々と矢を放つセレス。ほとんどが誘導の必要性もなく、目標めがけ一直線。途中で速度を上げたのはさくらの仕業か。

 

こうしてまず遠距離攻撃が出来るものから何が何やらわからぬままに駆逐された。どこから攻撃されたのか分かっていないのだろう、普通のゴブリンが半恐慌状態のまま逃げようとしているのが見て取れる。上位個体は流石に恐慌状態ではなさそうだが、攻撃がどこから来たのかわかってはいないらしい。

 

「他の上位個体どうする?」

 

「後は接近戦でひたすら殴る。その方が経験値の貯まりも早いはずだから」

 

とのことなので、あとは3人で固まって派手に突撃。俺が殴ってさくらが投石して、最終的にセレスの剣で止めを刺した。いやあ非常に楽でした、はい。将軍とか王とかもいたけど、一度も攻撃させる事無く倒せた。レッドキャップ?ブラックゴブリン?殴ったりする回数が多かっただけですけど何か?

 

「敵影無し。目標の殲滅を確認」

 

「討伐部位も確認。あとは全部燃やせば済むけど……」

 

「俺がやる──<火球(ファイアボール)>」

 

職業を<勇者>に変えて<火球>を連続で生成。<周辺警戒>でマークした魔物の死体に次々と当てて燃やしていく。あとは放置しておけば、死体が燃焼しきった時点で勝手に消える。

 

とりあえず今回の討伐で、俺もさくらもレベルは4まで一気に上がった。とはいえステータスは大して変わってはいないのだが。

 

「じゃあ行くか」

 

 

 

 

「──これ、全部、ですか……?」

 

「そうです。ゴブリンキング1、同ジェネラル2、ブラックゴブリン3、レッドキャップ5、ゴブリンメイジ4、同アーチャー5、ゴブリン通常個体43の討伐証明部位です」

 

「──しょ、少々お待ちください。昇格条件を確認してまいります」

 

 

ふむ、やはり昇格か。まあゴブリンキングなんてめったに出ないし、ソロ推奨ランクDだしな。しかも普通は取り巻き連れているだろうし、当たり前か。

 

 

「──お待たせしました!えーと、まずさくらさんとケイさんですが、FからDに昇格です。そしてセレスさんですが、DからCに昇格です。おめでとうございます!」

 

 

ふむ、思ったよりは上がったな。これでもうちょい経験値効率の良い依頼が受けられる。レベル上げもそこまで苦労せずにすむ……はずだ。




以上です!


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