二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~ 作:クラリオン
というわけで第十四話、どうぞ!
明け方、王都の東をかすめるように、騎馬で駆ける二つの影があった。
啓斗、さくら、セレスの三名。森から抜けた後、南へ行く途中の村で、
さくらとセレスが同じ馬に乗り先を行く。道案内をするためだ。あとから俺が続く。ちなみに俺とさくらは平民の服に着替えた。
「ケイは、馬乗りなれてますね、やはり<勇者>だからですか?」
「そうだな。さくらも乗れないことはないだろう?」
出発後に、セレスだけ愛称呼びだとおかしくね?という俺の提案により、各自名前で呼ぶことになった。
「じゃあ何で二頭だけ?」
「王都付近の村にとって馬は直接的な生活の糧。それを三頭も奪うのはどうかなと思ったからよ」
「さすが<聖女>」
「……まあこれくらいはね」
「流石です!」
「……でしょ?」
「セレス、あまりさくらを調子乗らせるな」
「了解であります!」
「何言ってんのよ……あ、そこを左に。今右側に王都があるはず。あと三時間程度で次の町……ディセルドに着くわ」
「了解」
「市民証はあるか?」
「私はこれが」
そう言ってセレスが取り出したのは騎士団員章。近衛騎士団の紋章が彫り込まれたものだ。
「これは!大変失礼いたしました。近衛騎士団の方でしたか、こちらへは何の御用で?」
「王命で人の捜索をな」
「我々も協力しましょうか?」
「いや、あまり大騒ぎになってもな。我々だけで探す。ああ、この二人は目撃者なんだが、王都北の農村の者で、村から出たことが無くてな、身分証を持っていないんだ。身分は私が保証しよう」
「はっ、了解いたしました!どうぞ!」
「うむ、すまないな」
「いえ!」
「──近衛騎士すげえな。俺らどう考えても身元不詳の怪しい若者じゃん」
「この程度の無理なら、ぎりぎり通せま、通せるから」
「助かったわ。流石に千年前の
「お役に立てて何よりで、良かった」
「……その癖も直しましょうね?」
「善処しま、する」
「ま、周囲から不自然に見られなければそれでいいだろ」
「そうね」
「とりあえず、ここで馬をもう一頭手に入れて、身分証明証作って、食料買うんだっけ?」
「そうね。<転移>できればいいのだけれど……」
「あー……まともにレベル上げする前に出てくることになったしなあ……あとは稼働してるかどうかの前にあるかどうかすらわからぬ<
「どう考えても無事とは思えないのだけれど」
「じゃあ地道に歩くか……」
「えっと確か最終目的地は……」
「南大山脈。魔族領と、人族領西大陸を隔てる、比較的新しい山脈ね」
「そこまで行くとなると……月どころか年単位かかりません?」
「ううん、多分そこまで時間はかからないはずよ、ねえケイ?」
「そうだな、道中で<防衛者>の方のレベル上げすれば、<勇者>の記録とリンクさせて<転移>が出来るはずだ」
<魔力探知>と<
「何言ってるの?<防衛魔法>から<
「え?何それ?」
「え?知らないの?
「え?春馬さん何か使ってたの?」
「そうよ、詳しいことは話すより自分で確かめた方が早いから、早くレベル上げましょ?」
<防衛装備召喚>?何じゃそりゃ……いや、待て。<装備召喚>ってもしかして春馬さんが使いたがらなかったスキルじゃなかったか?
確か……いや、駄目だ思い出せん。
「……?ケイ?」
「……ああ、悪い、思い出しきれん」
「春馬さん中々使いたがらなかったからねぇ……まあ実際この世界で使うにはかなり危険だったわね、<報復魔法>とはまた別の方向で」
「春馬さんが使いたがらなかったんなら俺も使いたくないんだけど……」
あの人が使いきれないものを俺が使いこなせるとは到底思えない。
「ケイなら上手くコントロールできるでしょ多分。アレは使い方によるからねぇ……多分大丈夫だと思うよ?<勇者>の力も使えるんだし」
「じゃあとりあえずそれ目指してレベル上げ……の前に組合行って冒険者証取らなきゃいけないな」
「作り次第この国を完全に出てしまいましょう。優秀な冒険者だからと下手に召集されても困るし」
冒険者証は全国家共通で身分証となる。千年前のと微妙に異なるため、変えておいた方が良い、とはさくらの助言。
「じゃあセレス、すまないが食料品とか馬の購入を任せる。えっと……ああ、あった。コレ使っていいから」
<空間収納>から<
「昼前に南門前に集結でいいかな?」
「そうね、お昼前に出発、今日中にはこの国を抜けられるかしら?」
「そう……ですね、じゃなくて、そうね。前はここからだと馬で五時間ほどで隣の国の最北端の街に着いたから、多分余裕をもって行けると思う」
「じゃあそういうことで、解散!」
──組合・ディセルド支部
「すいません、冒険者証を作りたいのですが」
「あ、はい。こちらへどうぞ」
「この用紙に、登録する名前と年齢、性別を記入してください。出身地の記入は任意です」
「──書きました」
「はい、えーっと、苗字は無い、サクラさん、16、女と、ケイさん、17、男、ですね?ご兄妹ですか?」
「はい、そうです」
「わかりました……ではこちらに血を垂らしてください。──はい、これで登録は完了です。ランクはFからのスタートになります。ランクごとに適正依頼があるので、それを一定数こなし、ポイントをためることで、ランクアップが可能になります。最高ランクはSS、現在のSSランク冒険者は二名です。SS目指して頑張ってください。ただし、組合規則違反行為をした場合、降格やポイント減少などのペナルティがあります」
「わかりました、ありがとうございます」
「いえいえ、それでは良き冒険者ライフを」
「お前いつの間に俺の妹になったの?」
「ぶっ飛ばすわよ?」
「自分で言ったじゃねえか!」
「……年齢が近い男女で、しかもこの年で、ずっと一緒に旅を続ける関係かつ、外部からちょっかいが無いような関係で、今の私達に一番しっくりくる設定。あ、ちなみにクラウも国出たら組み込むからね?クラウも冒険者証はあるって言ってたから」
「嘘やん……セレスのポジションは?」
「ケイの双子、私の姉。二卵性なら顔立ちと性別が違ってもおかしくはないわ。ああ、後で髪と瞳は色変えてもらうから。偽装腕輪あるでしょ?」
うわぁ……本人の了承を得ないまま姉妹あるいは兄妹にされてる。まあ言い方及び手段は<聖女>としてどうかと思うが、そこに至るまでの思考・論理過程は、非常に合理的なものだ。まあ兄妹が一番かもしれないな。
一番近い……というか有り得るのは幼馴染という関係だが、生憎そこまで互いに詳しいわけではないし、他人がくっつけようとか引き離そうとかするかもしれないことまで考えると、兄妹が一番。
え?自意識過剰?おいおい、俺は確かにフツメン程度だが、残り二人、特に
昼前、無事全員が南門に集合した。
「ケイ、これ。こっちが金貨でこっちが食料」
「ん、ありがと。さくら、あとでこいつに説明しろよ?」
「わかってるわよ。じゃあ行きましょうか」
全員乗馬。旅の再開。途中でセレスにも平民の服に着替えてもらった。
それから三時間後。俺達はついにシルファイド王国から脱出し、隣の小国──エメラニア公国に入国した。
以上です!蘇生させたのは正解でしたね!
ようやく!主人公達が!自由に動けるようになりました!
長かった……
それでは感想質問批評等、お待ちしております!