二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~   作:クラリオン

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合宿により、1週間ほどこれから離れておりました。本日から再開いたします。

本格的な更新は明日からになるかと思います。今日は、頭を小説シフトに戻すための閑話です。


それではどうぞ!


閑話  管理者達の会談

「王国が<勇者召喚>を行ったらしい。クトゥルフに動いてもらった」

 

「ここ数日の<システム>の異常稼働はそれが原因か?」

 

魔族領南大山脈中腹にある、建物の庭。そこにあるテーブルセットに、二人の男が腰かけていた。

 

「恐らくな。だが<魔王>は……?」

 

「いるわけがない。俺がここに居るのだからな」

 

「だから帰れと言いにやったのだが、しかし既に<聖剣>の召喚すら済んでいる」

 

「呼び出されたのは?」

 

「<聖剣・正義(ジャスティス)>。確か詠唱は『我が正義を以て魔を打ち払い、人の世に聖なる光をもたらせ』だったかな?」

 

「それはまた……<勇者>の()()()()()()()()()()を集めたような<聖剣>だな。<魔王>が居ないというのに面倒な」

 

「いざとなれば管理者権限を行使して<防衛者>に応援を頼む外あるまい」

 

「いや、それには及ばない」

 

「何?」

 

「その<召喚>からと思われるがね。先代が戻ってきた」

 

「ケイトがか?!しかしアイツには既に<聖剣>があるだろう」

 

「いや、どうもそれが、感じ取れる魔力が妙に弱い。恐らく先代<勇者>の姿を隠していると見た」

 

「ふむ?しかしなぜだ?アイツが理屈に合わぬ事をするとは思えん。何かしら考えのある事だろうと思うが……」

 

「ふむ……まさかとは思うが今代に遠慮でもしているのか?」

 

「まさか。アイツが遠慮なんてするわけがないだろう。ましてや<正義>を呼び出すような<勇者>だぞ今代は。アイツにとってはむしろ」

 

「ぶん殴りたい相手だろうなぁ……同族嫌悪的な意味で」

 

「それでもまだ千年前のアイツの方がましだろう。<聖剣・孤独(ソリチュード)>は中々の物だった」

 

「アレは面白かったな」

 

「今代がどんなのか知らんが、あまり関わりたくない相手では────む?これは」

 

「どうした────誰だ?」

 

「クトゥルフか。しかし速度が尋常ではない」

 

「おお、<魔王>殿も一緒だったか」

 

「どうしたクトゥルフ、随分慌てているようだが」

 

「ちょうど今代<勇者>について話していたところだったが」

 

「今代<防衛者>と<支援者>が、殺されたらしい」

 

「……は?」

 

「おいおい一体誰に」

 

「今代<勇者>によれば……魔族、だそうだ」

 

「いつ」

 

「昨日もしくは一昨日の夜」

 

「おいグラディウス」

 

「動いていない。<転移魔法>は」

 

「感知していない。そもそも魔族領から人族の……シルファイド王国だったか、あそこまで転移するとなると馬鹿げた魔力量だぞ」

 

「向こうに前からいた奴の可能性は」

 

「あっちに居るのは全部今代魔王の子飼いか人族にほぼ同化しつつある奴らだ。レベル1であっても<防衛者>を殺せる代物ではない。そもそも奴らには殺す理由がない」

 

「ならば────なるほど、自ら滅びを選びに行ったのか」

 

「おいおい阿呆だろ……いや、まさかとは思うが、伝承がないのか?」

 

「ないとは言えない。まあだからこそ魔族に殺されたなどと戯言をほざけるのだろうが」

 

「ふむ────いや、ちょっと待て」

 

「どうした?」

 

「<防衛者>が殺されたというならば、なぜ<システム>が反応しない?」

 

それを聞き、はっとしたように、近くにある家の中へ駈け込んでいく男──初代<()()>グラディウス。ややあって再び出てきた彼の顔には笑みが浮かんでいた。

 

「予想通りだ、俺としたことが失念していた。<システム>によれば<防衛者>も<支援者>も生きている」

 

「こういうときばかりは<機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)>に感謝だな」

 

デッキチェアに最初から腰かけていたもう一人の男──始祖竜“アザトース”・人化形態は、かつて初代<勇者>神崎啓斗が<システム>の事を知った時に最初に放った言葉を引用した。

 

さくらの評価でも、誤訳(機械神)でも正しい訳(どんでん返し)でも当てはまりそうでこの存在にぴったり、とのこと。

 

「しかしそうなるともう一つ気になることが……」

 

「なんで死んでないか、だろ」

 

「ああ、もしくはなぜ死んだとされているのか」

 

「答えと材料は目の前にある。これはサクラからの受け売り──サクラ自身も本で読んだ事らしいが──になるが、『不可能なものを除外していって残ったものが、たとえどんなに信じられなくとも、それが真実』だ」

 

「……おいおい冗談だろ……いやでも確かにありえない事ではない。前例もないから……でもそれは有り得るのか?」

 

「それ以外にないだろう。<防衛者>も<支援者>も一回死んだんだよ、紛れもなく。そして復活した、この場合は再生したと言った方が正しいかもしれない」

 

「その時点でもう<防衛者>でも<支援者>でもじゃなくなっていたかもな」

 

「アイツの、悲観的未来予測には本当に頭が下がるな」

 

「全く……なら魔力が微弱だったのも」

 

「<防衛者>として存在していたからだろうな……アイツの<ステータス隠蔽>を見破れる奴は人族にはおるまい。で、まあそうなるなら<支援者>は……」

 

「あの子かな?ちょっと<支援者>の魔力量の推移を見てきてくれ」

 

「ああ」

 

再び建物の中へと消えるグラディウス。

 

ややあって出てきた彼の顔は、納得した顔になっていた。

 

「殺されたという日の前日の夜、一瞬だけ魔力量が馬鹿でかくなっていた。あれはレベル1の<支援者>の魔力量じゃない」

 

「確定か。しかし幸運ではあるな。これで<防衛者>達も知らない奴らだったら目も当てられん大惨事だ」

 

「主に人族が、だな」

 

「まああいつらが死を偽装したのなら、目的は分かりやすいな」

 

「こっちへの合流、だろう。<転移門(ポータルゲート)>も失われているし、都市もだいぶ滅んでいるところが多い。千年前の<転移(ポータル)>も記録が役に立たんのではな……」

 

「まあでも、迎えも連絡を入れる必要も」

 

「ないな。アイツなら何が最善かを判断して行動してくれるさ。それでこその<勇者>だ」

 

「そして同時に<防衛者>、か。ふむ、最後は今代<勇者>と激突か」

 

「蹂躙の間違いだろう。同格以上の<勇者>に、莫大な魔力量を誇る<魔王>、そして竜種の頂点六体。こりゃどう考えても覆らんだろう」

 

「我々は待つだけで済む。アイツが動いてくれるなら俺達が手を出す必要もあるまい」

 

「ではアイツが来るのをのんびり待つとしようか」

 

「言わなければならないことは山ほどある……アカリとアリスの事とかな」

 

「そう……だな」

 

一瞬表情が沈むが、再び元通りとなる二人。

 

「クトゥルフ、お前は引き続き王国の動きを探ってくれ。よほどのことが無い限りは手出しも禁止する」

 

「了解」

 

「今代勇者がボコられるのすっごい楽しみだな」

 

「だな」

 

 

彼らはこうして待ち続ける。全ての歯車が揃うときまで。

 




以上です。

<システム>も存在そのものも中々ご都合主義ですし、存在する目的もかなりご都合主義的な物なのでぴったりかと思い名付けています(啓斗が)

感想批評質問等、お待ちしております。

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