二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~ 作:クラリオン
今後とも 防衛者 をよろしくお願いします。
竜襲来、さあどうする召喚組!
防衛者 第八話です、どうぞ!
『”現在貴殿等の必要とされる事態は発生していない。よって送還魔法による元の世界への帰還を勧める。その際に必要であれば我らも力を貸そう”。以上だ。良ければこの場で<送還>についての談合を願う』
「必要じゃない、だと…?」
『そうだ、現時点において、異世界より<勇者>の素質ある者を<召喚>する必要性のある事態は何一つとして発生していない。我らは必要以上の争いを好まぬ。先代<勇者>の出身国である“ニッポン”なる国もそうであると聞き及んでいるが、貴殿等はニッポン以外の出身であるか?』
唖然とする篠原に対し、淡々と答えを返す水帝竜クトゥルフ。
「あれほどに被害が出ているというのに何もするなって言うのか?!」
『左様。必要以上に<勇者>に頼るべきではない。現在出ている被害は軍隊、及び冒険者によって防ぐことのできる規模である。わざわざ<勇者>を<召喚>するほどの規模ではない、それが始祖竜の判断であり、また我々もそう判断する。これは先代<勇者>の理念にも沿うものであると考えるが』
「そんなことはどうでもいいんだよ!俺達が戦わなきゃ死んでしまう人がいるんだ!」
『──
篠原の必死の叫びに返ってきたのはそれが至極当然のことと言わんばかりの冷静な声だった。
『それで死んだのなら、彼ら自身の力が足りなかったか、もしくはそれが天命であったまで。貴殿等異世界の人間が気に病むことでもなかろう』
正論だ。彼が言っていることは正しい。もともと俺達異世界人は本来、必要以上にこの世界の事象に軽々しく介入してはならないのだ。
始祖竜曰く、世界のバランスがどうのという話だ(詳細は忘れた)。例外が<魔王>と<勇者>。
<魔王>は世界を亡ぼすだけの力を有するがゆえに、その
「天命……だって……?」
まあ正論であることを知らない彼にとっては受け入れ難い話だよな。
『そうだ。運命とも言う。我々生きとし生けるものが決して触れることのできず、そして触れてはならない領域だ。ましてや、従う因果律の異なる異世界の人間が軽々しく干渉してよいものではない』
「では我々
まあこいつが受け入れるかどうかなんて、俺には関係無いけどな。
『無論』
「おい神崎!」
「ちょっと黙っててくれ篠原。では始祖竜に伝言をお願いしたいがよろしいだろうか?」
『構わぬ』
「ではこう伝えていただきたい。”此度の提案に関し、今代<防衛者>は、これを受け入れ、天命に関し、よほどの事がなければ手は出さない。<勇者>についても可能な限りの説得を行う”と」
『了解した、だが我が言うのもなんだがよいのか?』
「撃ってきたらそいつは敵だ、というのが俺の一種の信念みたいなものでしてね。まあ貴殿方が気にする必要はないですよ」
そして俺は二度魔法を撃たれている。それに則ればこいつらは敵だ。敵を守る必要はあるか?
『ふむ、まあ良い。ではその通り伝言を伝えよう。今日はこれで帰るが、一週間ほど後、送還について答えを聞くとする』
「お待ちください」
内山か、何を……
「始祖竜にもう一つ伝言を。今代<支援者>も手を出すつもりはない、とお伝えくださいませ」
『ほほう……』
そこで初めてクトゥルフの顔に、面白がるような表情が浮かんでいた。だろうな。<防衛者>と<支援者>といういわば人族の楯がそろって手を引くんだ。人類側がどうするか興味があるんだろうな。
『<支援者>もか。ふむ、こうなると事情は少々変わってくるな。まあ良い、伝言は確かに預かった。<防衛者>と<支援者>が手を出さぬか。面白い、<勇者>よ、一週間後来た時に、賢明な選択を聞かせてもらえることを祈っておるぞ。では人間どもよ、さらばだ』
賢明な選択、ね。無理だよなぁ……あの様子じゃあ。
「……い、おい!」
ん?
「なんだ?」
「なんだじゃない!どうしてあんな事を言ったんだ!
「あんな事?」
「とぼけるな!手を出さないと言っただろう!」
やれやれ、やはり賢明な選択とやらは無理そうだな。
まあ、アレを聞いて納得しろというのは
……無理だろおい。どうしろってんだ。
「答えろ!どうしてこの世界の人々を見殺しにするんだ!」
「あ?誰が見殺しにするっていった?」
「手を出さないということはつまり見殺しにするんだろ!」
「天命、つまり定められた事は、大抵覆せない。何かやってみたところで流れに逆らえないのがオチだ。つまり、手を出すだけ無駄だ」
「な……」
「それにだ。あの竜は最初なんと言ったか覚えているか?『<勇者>を必要とする事態は発生していない』と言ったんだぜ?」
次回は割りと早めに更新できると思います。
それでは、感想質問批評等、お待ちしております。