二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~   作:クラリオン

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さて、私事により遅くなりました、4話目です


第四話  嘘

……護るのは<防衛者>の役目のはずだが、<防衛者>どこいった?

 

 

 

 

いや、うん。今までの話も突っ込みどころ満載の内容ではあった。俺たちが体験したことと違いすぎる。

 

 

 

魔王というのは、先代魔王が死ななければ次代が誕生することはない。だから()()()()()()()()()以上、新たな魔王が誕生するわけがない。それとも称号が変わっているから無効判定なのか。

 

 

 

そもそも魔族には魔物を使役する技術は存在しない。いや、しなかった、と言うべきか。今の魔族がどうなのかわからないからな。あれからすでに1000年経っている。その間に開発した可能性もないとは言い切れない。

 

 

 

が、そんなことはどうでもいい。それより、今は<防衛者>の伝承が無いことが重要である。<防衛者>は魔王に対する矛たる<勇者>の対、楯となる存在であり、その任務の重要性だけでいえば、<勇者>をも凌駕する。つまり、他の召喚者、つまり<勇者>パーティーのメンバーと異なり、<勇者>と同格とみなされ、<勇者>とは別物、という扱いになる。そのため、<防衛者>そしてそのペア、というか補佐役である<支援者>は<勇者>の称号を持たない。

 

ここで俺が何を言いたいのかというと、<防衛者>のことが伝わってない以上、ただ二人、<勇者>の称号を持たない俺と内山が、“落ちこぼれ”のように見なされる可能性があるということだ。しかも、都合のいいことに、俺達からすれば、都合の悪いことに、共に後衛職かつ特殊職なので、ステータスはかなり低い。見るからに”落ちこぼれ”。こういうときのテンプレと化しつつある疎外展開が透けて見える。

 

 

さて、どうしたものか。王女様が嘘をついているようには思えないし、対詐術用のスキルが反応していないことからも、王女様がこれを嘘とは思っていないことは事実。ならば国王もしくは国の上層全てが魔王の再臨をでっちあげているか、盛大な勘違いか。偽魔王という線もあるが、これも後者に属するだろう。後者であった場合は良いが、前者であった場合は面倒ごとに巻き込まれることになりそうだ。

 

 

できればそうなる前にこの国からおさらばしておきたい。王女様や<勇者>達には悪いが、策略に巻き込まれるのはごめんだ。

 

 

 

というか早急に確かめたい事があるし、観光もしてみたい。一度目は修行と戦争でそれどころじゃなかったからな。力を振るえる魔王がいない以上、<防衛者>と<支援者>は、置物に近い。もともと動きが全部受動的な職業であるからだ。

 

 

適当なあたりで

 

「やはり<勇者>ではない俺達は足手まといにしかなりません」

 

 

とかなんとか上手く言ってトンズラし

よう。うん、そうしよう。生憎とこちらの世界の情勢に興味ないし、こちらに害がなければ別にどの国が滅ぼうとかまわない。部外者が口を出すわけにもいかないし、な。

 

「ここから先は宰相、お願いします」

 

「は。私がシルファイド王国宰相のゼルビアス・ゴルトニアと申します。以後、お見知りおきを。それでは勇者様、早速ですが、ステータスプレートの確認を行っていただけるでしょうか?」

 

来たか……勇者特定イベント……

 

「こちらの石に触れていただくと、あちらの板にステータスが表記されます。ご自分でも確認なさる方法は後程お教えします」

 

 

さて、ここで<勇者>ステータスが出るのか、あるいは表に出している<防衛者>ステータスが出てくるのか。向こうのほうで何やら歓声が上がった。ああ、篠原か、やはり<勇者>だったか。

 

桐崎の時も歓声が上がった。これは俺も見た。想定通り、<聖女>だった。だろうな。

 

さて、気合を入れなおして俺の番。

 

─────────────

 

ステータス

神崎 啓斗  Lv.1

種族 異世界人

職業 防衛者

年齢 17

性別 男

HP  100/100

MP   100/100

物防 300

魔防 300

物攻 20

魔攻 20

称号 <防衛者>

 

─────────────

 

 

「…………」

 

ほぼ全員が沈黙した。まあそりゃそうだ。今までのみたいに<勇者>称号が無いし、攻撃力はゴミ、防御は恐らく群を抜いているが、だからどうした、という感じだ。

 

沈黙の中、内山が向かう。外見としては<聖女>だが、既に桐崎が<聖女>となっている。ならば内山は?

 

─────────────

 

ステータス

内山 さくら  Lv.1

種族  異世界人

職業  支援者

年齢  17

性別  女

HP    100/100

MP    200/200

物防  12

魔防  12

物攻  75

魔攻  75

称号  <支援者>

 

─────────────

 

 

「…………」

 

再びの沈黙。<勇者>なし二人目の登場。俺だけなら如何様にも侮蔑し、嘲笑できただろうが、内山相手にそれができるやつはそう居ない。

 

とはいえ、<勇者>持ちと、訳が分からない<勇者>なしでは、扱いも大きく違っているはずだ。その度合いによっては、この国を出るのを早める必要があるかもしれない。

 

 

 

 

 

王女様に嘘つかせてまで、この国は一体<勇者>に何を望んでいる?




なんで対魔特効カウンターを使わないだろう、と言ったのか。

対象が居ないからです。



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