ハイスクールD×D 破壊を司る神の弟子   作:狂骨

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力の証明 後編

 

 

アザゼルの元へと戻った朱乃はただ俯きながら先程の言葉を思い浮かべていた。

 

「小猫ちゃん…先程のゼノ君の言葉…どう思われますか…?」

 

「分かりません…ただ、そう言った時の先輩の気が凄く小さくなって……凄く悲しんでいるようにも…見えました」

 

小猫の言葉に朱乃自身は己の力不足と共に一向に彼の後をついていく事ができない自身の弱さを憂いた。

 

「それに…」

 

「え?」

 

「何だか……先輩の中に…先輩とは違った『何か』がいたような感じがしました」

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

 

80秒経過。

 

「どうやら残りは私とアーシアとイッセー…貴方と匙君だけになったようね」

 

「えぇ…残り時間はおよそ75秒…相手がゼノ君である以上…1秒どころか0.001秒の油断も許されません」

 

ゼノと木場達が戦いを繰り広げていた校舎の裏側では分断して逃げていたリアスとソーナが互いに作戦を考案していた。

 

ーーーーーーー

 

90秒経過。残り30秒

 

「…ん?」

 

校庭を歩いていたゼノは背後から感じる魔力に目を向けると、そこには今まで潜伏していたリアス、ソーナ、アーシアの姿があった。

 

「へぇ?出てきたか。逃げてればいいのにな。リアスとアーシアと眼鏡1号」

 

「め…めがね1号…!?」

 

「どのみち貴方にスピードでは勝てないわ。だからここで少しでも力をぶつけておきたいの」

 

「ハッ。良い心意気だな。ならキッチリ楽しませろよ」

 

すると、リアスは滅びの魔力を、ソーナは水の魔力を生成させる。

 

「それか。そんなの…ん?」

 

それを再び跳躍する形で避けようとした時であった。

 

自身が立っていた場所が巨大な水の檻に隔てられる。ソーナが魔力の応用によって生み出したのだろう。

 

それと共にソーナは更に水の魔力を放出させると龍の形へと変形させる。

 

「リアスだけではありません。我々も勿論修行していました。レーティングゲームだけでなく…これから当たる壁を打ち破るために…」

 

「行くわよソーナッ!!!!」

 

 

そして リアスと共に声を合わせながらソーナはその手をゼノへ向けて振り下ろした。

 

 

「「ハァッ!!!」」

 

黒く赤い禍々しい滅びの魔力と唸り声を上げた透明な水の竜は互いに混ざり合うかのように螺旋状の軌跡を残しながらゼノへ向けて迫っていった。

二人の本来持つスペックと修行によって高められた魔力が練り合わせられた事によってその攻撃は下手をすれば最上級悪魔へもダメージを与える事が可能となるだろう。

 

 

だが、

 

「…成る程」

対するゼノは迫り来る滅びの魔力と牙を剥き噛み付いてくる水の竜を、手を横で振り払う形で掻き消し、即座に三人の元へと現れる。

 

「ソイツの力で魔力を回復しながら牢を作って逃げ場無くすのは良いけど、強度がイマイチだった」

 

「…!!!」

 

「まぁ、けど背後に回られても戦いを続けようとする度胸は流石だな」

 

驚くソーナやリアスに対して評価しつつもゼノは手を止めない。その言葉が二人に向けられた直後にリアス、ソーナ、アーシアの頬に×印が書かれた。

 

 

3人が失格となり、残りはイッセーと匙。そして残り時間は10秒を切っていた。

 

「そろそろ終わり…残り10秒ってところか」

 

 

3人が戻っていく中、ゼノは校舎から発せられる魔力より、残りの二人の居場所を探る。

 

 

 

その時であった。

 

 

「ヴォオオオオオオオオ!!!!」

 

猛々しい雄叫びと共に上空から赤い龍の鎧を身に纏ったイッセーが飛来する。

 

「へぇ。リアスと眼鏡の魔力に隠れて近づいてきやがったか。馬鹿正直に叫び声あげたから全部丸見えだよ」

 

そう言いゼノはその場から後退する形で避ける。

 

「伸びろライン!!」

 

「ふん」

更に後方から匙の神器の能力によって現れた黒いラインが伸びてくるが、それすらもゼノは手を振り払い風圧を発生させる形で掻き消す。

 

そしてすぐさまその場から一瞬で匙へと接近すると彼が気づかないまま、彼の頬へと×印を書いた。

 

「匙…って言ったっけ。威力高めるあまり魔力ダダ漏れだろ」

 

「やっぱり気づかれたか…だけど、よそみしてて良いんすか?」

 

「別に。気づいてるよそれぐらい」

 

そう言いゼノは匙の方向を向いたまま、横から迫ってくるイッセーの拳を避ける。

 

「残るはお前一人だな兵藤」

 

「分かってますよそんぐらいッ!!!」

 

イッセーはそのまま力をフルに解放してゼノへ向けて拳を放っていく。その拳を放つ速度と威力は次々と増加していき、しまいにはゼノを大きく大勢を変化させる所まで追い詰めていた。

 

「成る程。やっぱり力を溜めてたか。意外と速いな」

 

「先輩!確かに俺達は先輩に比べたら足手纏いかもしれない!ライザーの時だって助けてもらいました!!だけどこれからもこの先も先輩に頼らず修行してどんどん強くなります!!冥界や皆を守るために!!」

 

その言葉と共にイッセーの神器が光を発しながら輝く。

 

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イッセーの己の心意気を叫ぶと共にそれに呼応するかのように絶え間なく聞こえてくる増加の合図が更に続く。

 

それと共にイッセーの力は次々と倍になっていき、その魔力量はついに上級悪魔であるリアスを超えて最上級悪魔へと到達したのであった。

 

だが、それだけでは終わらない。

 

 

「ヴォオオオオオオオオ!!!!!

 

イッセーは休む事なく次々と拳を突き出していった。己の全てを出し切るかのように。

 

 

そして 遂に約束の刻が迫ってくる。

 

 

 

5

 

「うぉおおおお!!!」

 

イッセーの拳を放つ速度が更に加速する。

 

4

 

イッセーの拳が次々と的確にゼノを捉えていく。

 

3

 

イッセーの拳がゼノの顔を正確に捉える。

 

2

 

イッセーの拳が握り締められる。

 

1

 

そして イッセーの全魔力が集中した拳がゼノへ向けて放たれた。

 

_______これで終わりだ…!!!

 

 

 

この時 イッセーは自身らに対するゼノのイメージを覆す事ができるという高揚感に包まれていた。

 

自身はここまで強くなった。ゼノが無視できなくなる程まで。

 

そしてそれがあと1秒という限りなく短い時間で証明ができる喜びさえも感じていたのだ。これで自身らは彼と今までのように共に戦える頼もしい仲間としていられる。

 

 

 

 

 

 

 

だが

 

 

 

 

それによってゼノへと放つ最後の拳へとムラが生じ、今までよりも威力が上がったものの、スピードが格段に下がってしまい、それは今まで避けていたゼノを激昂させてしまう事となった。

 

 

「安心してんじゃねぇぞぉおおおおおお!!!!」

 

「!?」

 

その瞬間 ゼノの巨大な怒声と共にイッセーの頬に×が書かれ、ゼノへと届こうとしたイッセーの拳が跳ね返され強烈な痛みが襲った。

 

 

「ぐあああああっ!!!」

 

 

その直後。

 

ピーピーピー

 

アザゼルの手に持つタイマーがアラームを発し、制限時間終了の合図を送った。

 

ーーーーーーーー

 

時間の終了。それによって皆は結末を確かめるべくゼノとイッセーへと目を向けていた。

 

見れば煙が晴れた場所では地面にイッセーが倒れており、それをゼノが見下ろしていた。

 

「ど…どうなったんだ…!?」

 

「…」

 

ゼノヴィアが煙の中を見つめながら尋ねる中、アザゼルは額に手を当てる。

 

「ヤベェなこりゃ…俺たちは完全に舐めてた……」

 

その顔は冷や汗が流れており、目の前の状況を決して良くない結果として捉えていた。

 

そんな彼の言葉に驚いた皆はすぐさま煙が晴れていくその場へと目を向けた。

 

「「「…!!」」」

 

その光景を目にした一同は驚きの目を向けた。

 

 

煙が晴れ、そこから見えてきたのは鎧が砕けた生身のイッセーを掴み上げているゼノの姿であった。

 

「イッセー!!」

 

「ゼノ君!!何をやっているのですか!!」

 

 

「黙ってろ」

その光景を見たリアスとソーナはすぐさま駆け寄ろうとすると、ゼノが一声掛けた途端に二人の身体は氷のように固まった。

 

 

そんな二人に目を向ける事なくゼノは掴み上げているイッセーへと、鋭い視線を向けた。

 

「お前…ふざけてるのか?」

 

「ぐぁ…!?せ…せんぱ…何を…!?」

 

「あのままお前が続けてたら、俺はお前らを改めていた。だけど、お前の行動からその気が失せた。なんでか分かるか?お前、残り1秒のとこで拳のスピード落としただろ?」

 

「…!!」

 

その言葉にイッセー自身は思い当たる事があるのか、先程のゼノへと拳を放った時を思い返した。

 

「慢心してたな。“あと1秒”“コイツを撃てば終わる” 全部丸わかりなんだよ。今回はゲームだけど、本番がそれだけで終わるわけねぇだろ」

 

「ま…待ってくだ…がはぁ!?」

 

イッセーが弁明を口にしようとした矢先にゼノはイッセーを地面に放り捨てた。

 

「勝負に負けた上に最後の一撃に力を集中しすぎて魔力は底につこうとしてるし、それ自体を補う容量も足りない。そしてそれを抑えられないコントロール不足。俺が戦う相手に限らず結局、次のブースト来るまで魔力が尽きたら元も子もねぇだろ」

 

「な……」

 

ゼノの言葉にイッセーはもう何も言い返す言葉が出なかった。

 

 

「さて、もう終わりだ」

 

そして  ゼノは終了を宣言すると共にアザゼルや失格となり待機していた皆の方へと顔を向けた。

 

「結果はお前らの負けだ。約束通り俺の戦いには関わるな。勝手に関わってきたら、問答無用で殺すからな」

 

 

それだけ言い残すとゼノは振り返る事なくその場を後にするのだった。彼が去っていく姿を一同はただ見ている事しかできなかった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

駒王町のとある路地にて。

 

「今日は女子のケツが拝めず散々だったぜ…帰って今日分の復習してミッチリビデオで解消だ!!」

 

夜の住宅街を一人の眼鏡を掛けた男子高校生が卑猥な心意気を掲げながら歩いていた。

 

そんな中であった。

 

ガシャ

 

「…ん?」

 

何やら聞き慣れない金属音が聞こえてきた。その音を耳にした男子生徒は思わず気になり振り返ると__

 

 

____そこには全身が銀で覆われた謎の生物が立っていた。

 

「なんだこれ…おもちゃか?」

 

 

男子生徒は興味を示しながらゆっくりと、現れた物へと近づいていく。

 

 

 

 

その瞬間

 

 

その物はいきなり流体金属のように形を変形させると風呂敷の様に彼に向かって覆い被さってきた。

 

 

「えぇ…?うわぁぁぁぁあ!!!!!」

 

ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー

 

数分後。

 

頭を抱えながら倒れ込んでいた男子生徒はその動きを止めるとゆっくりと立ち上がり、額に掛けていた眼鏡を取り外すと握り潰した。

 

「……」

 

手の中から眼鏡の破片が溢れ落ちる中、その眼鏡の奥から現れた鋭い眼光が空へと向けられる。

 

「フフフフ…さて、始めようか…全人類ツフル人化計画を…ッ!!」

 


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