ハイスクールD×D 破壊を司る神の弟子   作:狂骨

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崩れゆく関係

 

現世へと帰還したゼノはサリを休ませるためにベッドへと運ぶ。その際に出迎えたティアマットは慌てていたが、すぐに彼女を落ち着かせ食事を頼むとベッドへと寝かせた。

 

「サリ……」

 

目の前で横たわるのは全身がボロボロに傷つけられたたった一人の姉。それを見ているだけで腑が煮え繰り返りそうな感覚に陥っていった。

 

「…」

 

何とか冷静を保ちながらゼノは彼女の額に手を当て、全身という全身からディアドラに関する指紋や髪などといった彼のDNAが残った情報を感知すると、それらを全て跡形もなく破壊した。

 

そして、それが終わると惑星ピタルにて扱っていた治療薬を傷へと塗りつけ包帯を巻き、自身の気を少し分ける。

 

 

すると

 

「……ん?あれ…ここは…」

 

目がゆっくりと開き、眠気のある声と共にサリが目を覚ました。

 

「ベッド…?何でここに…あれ?ゼノ……え?」

 

それを見た時には既にゼノの身体は反射的に彼女の首に手を回し抱きついていた。

 

「どうしたの…?ゼノから抱きついてくるなんて…まさか!いよいよお姉ちゃんとセッ…あれ?」

 

抱きつかれたサリは顔を真っ赤にさせながら驚くと共に期待するが、ゼノの抱き締める力から疑問に思い首を傾げた。

 

「何かあったの?」

 

「…」

 

彼女を抱きしめていたゼノは彼女がディオドラに拘束されていた時を思い出す。それを思い返させないために首を横に振る。

 

「何もない…ただ、しばらくはこうさせてほしい」

 

「そっか。うん!たくさん甘えて!」

 

ゼノの言葉にサリは笑みを浮かべるとゼノを力強く抱き締めベッドに倒れこんだ。

 

「えへへ~ゼノ~♪」

 

彼女の胸元に抱き締められる中、ゼノはただ虚空に向けて感情の籠っていない虚な瞳を向けていた。

 

 

 

湧き上がるのは純粋なる"怒り"

 

それと共にたった一人の家族に手を出した悪魔やそれを守れなかった己に対して憎しみの念が浮かび上がっていく。

 

 

______家族に手を出す者は全てこの手で殺す_。

 

 

 

それからサリが寝付くとゼノはその手を振り解き、寝室を後にした。

 

 

 

そして後日、ゼノは冥界や天界に乗り込み四大魔王やアザゼル、ミカエルといった勢力のトップを強制的に召集し、今後、自身が独自に活動する事に加えて邪魔をすれば誰であろうと容赦なく破壊する事を忠告した。

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

夏休みが終わりを迎えようとしていた夏の日。

駒王学園のゼノが去ったオカルト研究部の部室では仕事がなく、部室の清掃しかやる事がないリアスは机の上で読書をしていた。

 

 

すると

 

「部長…お茶を淹れましたわ」

 

いつもの様に紅茶が注がれたカップをお盆に乗せた朱乃が現れ、彼女の前に置いた。

 

「朱乃…随分と痩せたんじゃない?」

 

「そうでしょうか…?」

 

リアスの目の前に立っていた朱乃は帰還した時よりも少し痩せ細っており、目元には隈も出来上がっていた。それは彼女だけではない。朱乃と共にゼノの家に居候している小猫も同じであり、彼の話を聞いた途端に目から涙を流していた。

 

「あれから…彼は帰ってきていないの?」

 

「はい…」

彼女達によるとあの日以来ゼノが家に帰ってくる事は無く、代わりに退部届が置かれていたという。

 

それが相当なショックであったのか朱乃や小猫はその日から一睡もできなかったようだ。

 

「先輩…俺達に何も言わずに出て行っちまうなんて…」

 

「仕方ないわよイッセー…私達『悪魔』が彼のお姉さんを汚したんだから…。それに…私だって本来は殺されてもおかしくないのよ。街の管理を任されている身でありながら…こんな大失態を犯したんだから…」

 

そう言いリアスは再び街への侵入を許してしまった自身の不甲斐なさを恨むかのように唇を噛み締めるのだった。

 

 

 

その時であった。

 

 

ガチャ

 

 

何者かが扉を開ける音が聞こえ、一同はそこへ目を向けた。入部希望者か、はたまた顧問であるアザゼルか、皆の視線がドアの方向へと集中する。

 

だが、入ってきたのはどちらでもない。

 

 

「「「「…!!」」」」

 

ドア付近に立っていた訪問者の姿を見た瞬間 全員は目を震わせながら驚いた。

 

「ゼノ…くん…」

 

「先輩…」

 

扉を開けた人物。それはなんと自身らの前から姿を消したゼノであったのだ。更に今の彼はいつものような制服ではなく戦闘用であるチャイナ服を身に纏い雰囲気が一変していた。

 

朱乃と小猫は数日ぶりに見るその姿に震えた声で彼の名前を口にするも部室へと入ってきたのはゼノはその声に何の反応も示さないまま机に座るリアスの元へと向かう。

 

「アザゼルはどこだ?」

 

「え…昼食のために出て行ったわ…」

 

「そうか」

 

リアスが答えるとゼノはそのまま振り返り、部室から出て行こうとする。

 

すると、それをソファーに座っていたイッセーが止めた。

 

「ち…ちょっと待ってくださいよ先輩!!」

 

朱乃や小猫、そして木場が出るよりも早く彼の肩を掴む形で止めたイッセーはゼノへ向けて叫ぶ。

 

「なんで一人で行こうとするんすか!?少しは頼ってくれたっていいじゃないですか!!!」

 

「待ちなさいイッセー!」

 

その訴えは怒りのみが混じっているものであった。それを察知したリアスはすぐさま立ち上がりイッセーを冷静になるよう伝えるも、彼は止まらなかった。

 

「俺たち冥界であんなに修行したんですよ!!これじゃまるで俺達の修行が無駄なみたいじゃないですか!!」

 

リアスの制止に従うことなくイッセーは己の抱く不満をゼノへとぶつける。禍ノ団などの危険因子との決戦に向けて修行してきたのは皆共通であり、中でもイッセーは正義感が強かったために努力を惜しまなかった。

 

だが、

 

「は?」

 

それを耳にしたゼノは今まで聞いたこともない様な低い声を漏らしながら目を細めた。

 

「頼る?お前らを?笑わせんなよ」

 

「え…?」

 

その言葉はイッセーだけでなく、その場にいた全員を凍て付かせた。対してゼノは鋭い目を向けながら淡々と言い放つ。

 

「強くなったって言っても、ただ貰ったおもちゃを使いこなせる程度になっただけだろうが。お前のその神器は10秒ごとに力を倍にするだろ?確かに“お前ら側”から見たら厄介だけど“俺達”にとってそんなモン殺してくださいって言ってるのと同じなんだよ。福引の景品当てたくらいで強くなった気になってんじゃねぇ」

 

「な…なんだと…!?」

 

度重なるゼノの口から吐き出された侮辱とも取れる言葉にイッセーは怒りを露わにし、ゼノへと向かおうとするが、それをリアスが止める。

 

「落ち着きなさいイッセー!」

 

「ですが部長!!納得できませんよ!!俺達は……冥界の為に…この時の為に修行してきたんですよ!!」

 

「…」

 

イッセーの言葉にリアス自身も今回の責任について苦悩しながらも己の修行の日々を思い出しゼノへと目を向ける。

 

「どうすれば、私達が貴方の補助として介入できるのかしら?禍ノ団は私達側から出た危険因子…それを外部である貴方一人に任せるのは此方としては酷く忍びないわ…」

 

そう言いリアスはゼノへと尋ねた。

 

 

だが、返ってきた言葉はとてつもなく悲惨なものであった。

 

 

「黙れ無能が」

 

「「「…!!!」」」

 

彼の口からリアスに向けて発せられた言葉を耳にした全員は瞳を大きく震わせた。

 

「そもそもテメェの管理不足も原因だろうが。いまさら責任?ふざけんのも大概にしろ」

 

「…返す言葉もないわ」

 

ゼノの辛辣な言葉が次々とリアスへと突き刺さっていく中、彼女自身はその言葉を深く受け止めていたのか何も言い返す事も弁明する事もなかった。

だが、その言葉を耳にしたイッセーは額から青筋を湧き上がらせゼノに対して怒りを露わにした。

 

「先輩!!いくらなんでも言い過ぎじゃないですか!?」

 

「あ?」

 

「部長だって頑張ってるんですよ!!この街を管理したり上級悪魔の仕事だったり!!」

 

「じゃあ聞くけど今回お前の親が襲われてたらどうなってた?同じ言葉吐けんのかよ?」

 

「そ…それは…」

 

ゼノの言葉にイッセーは返す言葉を失ってしまったのか、何も言えなくなってしまった。それに伴うかのように周囲に立っていた朱乃や小猫そして木場やゼノヴィア達も俯いた。

 

 

そんな中であった。

 

「でも、そこまで言うなら証明してみろよ」

 

「…え?」

 

突如としてゼノから発せられた言葉に皆は顔をあげ、リアスは理解ができず意味を聞く。

 

「どう言う事…?」

 

「そのまんまだよ。俺の補助になるほどの力があるかどうか。全員グラウンドに出ろ」

 

 

 


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