ハイスクールD×D 破壊を司る神の弟子   作:狂骨

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神の刑罰

ディオドラの目の前で浮遊するゼノはいつもとは雰囲気が違っていた。朱色だった髪は赤く染め上がり内部からは赤いラインの走る紫色のオーラを放ち辺りの空気を揺らしていった。

 

「お前…簡単に死ねると思うなよ…?」

 

「は…はは!たかが髪の色が変わったくらいでいい気になるなよ!それに僕が死ぬ…?ふ…ふははは…!不死身の僕に何を言っているんだい!?」

 

ディオドラは理解に苦しむかの様に自身を睨みつけてくるゼノを嘲笑う。自身は不死身だから無敵。その安心感が彼の自信を掻き立てているのだろう。

その一方で怒りのオーラと共に冥界を揺るがせたゼノは先程、禍の団の兵士達と同じように手をディオドラへと向けると巨大な気弾を生成した。

 

 

「そんなもので僕を殺そうというのかい!?無駄だよ!そんな攻げ___」

 

 

ディオドラが最後まで言い終える前にその気弾は放たれた。

 

 

ディオドラの背後に聳える階段や神殿の様な跡地へと。

 

 

 

「!?」

ディオドラが振り向いたと同時にゼノの放った気弾は神殿の様な場所へ直撃すると大爆発を起こし、神殿そのものを爆炎の中へと飲み込んだ。その神殿の跡地は木っ端微塵となり、瓦礫は煙を纏いながら辺りへと散っていく。

 

その様子を佇みながら見つめていたディオドラは眉間に皺を寄せながらゆっくりとゼノに振り向いた。

 

「ちょっと……何してくれてるのさ君ぃ…!!!」

 

 

その言葉とともに額に青筋を浮かべたディオドラは再び全身から黒い魔力を放出し身に纏うとゼノへ向かっていく。

 

「…遅ぇ…」

 

その瞬間 ディオドラの向かってくる拳がゼノの振り上げられた脚によって軌道を晒された。

 

「くぅ…!!クソがぁぁぁ!!!」

 

防がれたディオドラは更に眉間に皺を寄せると貴族としての気品の欠片を投げ捨て、獣のように叫ぶと次々と拳を突き出していった。

 

「ひぃぃやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「…」

 

黒色に輝くオーラを纏ったディオドラから次々と放たれてくる拳と蹴りの乱撃。辺りに響く重い打撃音からその速度とパワーは既に最上級悪魔を上回っていた。リアス達から見れば残像が見える程の速さであろう。

 

だが、その拳の乱撃をゼノは全て、いや、その先の軌道さえも見切っているかのように次々と右脚だけで捌いていった。

 

「あそこにはリアス達の為に用意した僕の下僕達がいたんだけどなぁぁあ!!!」

 

その一言と共にディオドラは最後の一押しとばかりの拳の一撃をゼノに向けて放つ。

 

「遅いんだよノロマ」

 

その一撃さえもゼノは吐き捨てながら躱し、ディオドラの頭に向けて踵を振り下ろした。

 

「ガハァ…!?」

 

ゼノの踵はそのままディオドラの脳天に向けて振り下ろされ、彼の頭を歪ませるほどまで食い込むと、そのまま彼の身体を地面へ向けて吹き飛ばした。

 

「グボァエ…」

 

巨大な地響きを鳴り響かせながら地面へと叩きつけられた事により彼を中心に半径十数メートルもあるクレーターが形成された。

 

その中心で倒れながらも頭を再生しているディオドラのすぐ側に着地したゼノは再生した彼の頭を踏みつけ、地面へと再び叩きつける。

 

「お前の眷属なんて知るかよ。どうせあの手この手で落としてきた奴らなんだろ?だったら殺して転生させた方がいいじゃねぇか」

 

「な…!何でそれを!?」

 

「全部お見通しなんだよ。アイツの事もな」

 

ゼノは後ろでリアス達に介抱されているアーシアへと目を向けた。

 

「お前は一度、アイツに興味を持ったけど悪魔と教会の立場からそれは無理だった。なら、ソイツが教会から追放される様に仕向ければいい。そう考えたお前は傷を作り、関係者に見られる時間を見極めてアイツに治療させた」

 

ゼノの説明を聞いたディオドラは驚きのあまり硬直。そしてゼノの説明を聞いていたリアスや眷族の皆は怒りを露わにしていた。中でもアーシアの慈悲深い心を理解していたイッセーは激昂寸前であった。

 

その一方で、ディオドラの眷属全員を葬ったゼノは向けていた手を下ろした。

 

「大体はこんな感じだろ。お前の眷属でもお前の所為で人生を狂わされたから情状酌量の余地がある。数時間後には転生するだろ。まぁ1匹、転生できねぇ奴もいたけどな」

 

「…ッ!!」

 

全てを見通され眷属さえも殺され孤独となったディオドラはバツが悪そうな表情を浮かべながら両腕を握り締めていた。

 

「この…チビがあ…!!」

 

「口の利き方に気をつけろ…ッ!!!」

 

その瞬間 ディオドラの頭を踏みつけるゼノの脚が一瞬離れるとディオドラの身体を蹴り飛ばした。

蹴り飛ばされたディオドラは地面を抉りながら遠くの岩場まで吹き飛ぶと一つの巨大な岩石へと身体が叩き付けられた。

 

「ぐぅ…!?」

 

所々にできた傷が煙を上げながら再生する中、ディオドラはゆっくりと立ち上がる。だが、その立ち上がる動作へと掛かていた時間自体がゼノの接近を許してしまった。

 

「…!!」

 

「がぁ…!?」

 

初速から音速を超える速さで駆け出し一瞬で迫ってきたゼノの拳がディオドラの腹へと深く抉り込み、その巨大な岩石へと更に叩きつけた。それによってディオドラの身体は更に沈み込み岩石に巨大なクレーターを形成させる。

 

それだけでは終わらない。

 

「ヴゥォオオオオアアアアア!!!!」

 

雄叫びを上げながらディオドラの顔を掴み指を食い込ませたゼノは岩盤へと更に叩きつけ引きずり始めた。

 

「ぎゃぁぁぁぁ!!!!」

 

次々とディオドラの顔面の皮が剥がれ肉が擦り落ち、目が抉り取られていく。次々と襲いかかる痛みにディオドラは絶叫の声を上げていった。

 

 

そして 岩盤の端へと到達するとゼノは駆け出しながらディオドラの頭を振りかぶり空中へと投げ上げ、オーラを纏い光に近い速度で上昇すると一瞬でディオドラへと追いつきその身体に向けて踵を振り下ろした。

 

「げふぅ…!?」

 

振り下ろされた踵は見事にディオドラの脳天へとクリーンヒットし、頭蓋骨を粉々に粉砕すると共にその頭を空気の抜けたメディシンボールの如く凹ませながらディオドラの身体を地面へと叩き落とした。

 

 

ディオドラが地面へと叩きつけられた事によって辺りには巨大な衝撃音と共に砕けた地盤が飛び散り巨大な砂嵐が吹き荒れた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「アーシア!おい!しっかりしろ!アーシア!」

 

一方でゼノから真実を聞かされたイッセーは涙を流すアーシアを必死に介抱していた。

 

そしてその傍らでは朱乃と小猫が素早い手つきでサリの応急措置を行っていた。

 

「朱乃、小猫。彼女は大丈夫?」

 

「呼吸や鼓動に関しても問題ありません。ただ…ディオドラに何かをされていたとなると…起きた後の精神ケアが必要かと…」

 

サリを介抱していた朱乃と小猫は彼女を巻き込んでしまった事に対して何も出来なかった自身に腹を立てる様に歯を食いしばっていた。

 

すると

 

遥か遠くから巨大な爆発音と共に突風が吹き荒れた。その風に皆は態勢を低くし吹き飛ばされない様にその場にうずくまる。

 

「くぅ…!何て力だよ…!いつもの先輩じゃねぇぞ…!?」

 

「ここにいたら危ないわね…。急いで離れるわよ」

 

遥か遠くから押し寄せるゼノの力の余波にリアスは危険信号を発し、皆へと撤退の指示を出す。

 

 

その時だった。

 

 

「逃がさんぞ。偽りの魔王の妹よ」

 

「「「「「…!?」」」」」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

その一方で 地面へと叩きつけられたディオドラはその際に出来上がった半径数百メートルものクレーターの中心で再び身体を再生させていた。だが、その顔からは勝利への自信が完全に消え去っていた。

 

「く…ぐぅ…!嘘だ…!オーフィスの蛇を得た上に不死身の力を手に入れた僕が…!!」

 

「お前に一つ教えてやる」

 

「…!?」

 

突然と頭上から聞こえた声。振り返るとそこにはまるで“ゴミ”を見るかの様な目で見下ろすゼノの姿があった。

 

 

「不死身には一つだけ利点がある。それは文字通り不死身だ。何度も何度も攻撃しても死なないのは俺でも厄介だ。けど、それは相手が自分と同じかそれより下の場合だけ真価を発揮する。相手が格上ならお前はただの殴り甲斐のある___

 

 

 

 

 

_____“サンドバック”だ」

 

 

「サンド…バックだと…!?」

 

「不死身の自分より強い奴に会った時点でお前は負けてるんだよ」

 

「う…嘘だ…!!」

 

「本当だよ。自分でも薄々気付いてるだろ?」

 

「違う!僕は無敵だ!最強なんだ!!!お前の様なガキに!不死身の僕が負ける筈な__がはぁ!?」

 

最後まで言い終える前に頬に蹴りを入れられ、その場から吹き飛んだ。

 

「プライドの高さもここまで来ると呆れるな。俺に一撃も与えられてねぇくせに」

 

ディオドラを蹴り飛ばしたゼノはディオドラの身体が地面へと着く前にその地点へと先回りし、吹き飛んできたディオドラの顔面を掴むと地面へと叩きつける。

 

「ガハァ!?」

 

脆い音と共に地面へと叩きつけられたディオドラは血反吐を吐き出す。

 

「オーフィスとか言う奴の力も俺より全然弱いって事だけだ。いい加減理解しろよ」

 

そう言い捨てたゼノは地面へと叩きつけたディオドラの頭を掴むと更に地面へと叩きつける。

 

「がぁ…!い…いた…ぐぼぉ…!?」

 

「あと不死身の肉体でも痛覚がある。死なないとしても痛みは襲ってくる。たとえ即死する程のダメージでもな。それに俺の気でその傷の再生を止めれば更に長くその痛みが伝わる。さて」

 

ゼノは叩きつける手を止めるとディオドラの髪を掴み無理やり自身と同じ目線になるまで持ち上げ、血走った目を向けながら、ある事を尋ねた。

 

 

「脳が壊れた時の痛みってどんなモンだと思う?」

 

 

「…は?」

 

その言葉と共にゼノの両手がディオドラの頭を頭部と顎を挟み込む様にして掴む。

 

「な…何の話だ…!?」

 

「簡単だよ。人間や悪魔も脳を破壊されれば死ぬ。けど、死ぬ時の感覚は一瞬。だから脳が破壊されてもその痛覚は感じない。だけど今のお前は不死身。脳はもちろん再生されるけど____

 

 

 

 

 

 

 

____俺の気で再生を妨害したらどうなると思う…?」

 

 

「___!!!」

 

その一言にディオドラの全身の毛が逆立ち顔から完全に余裕が消え去ると共に恐怖に染まった。

 

「なぁ。どうなると思う?知りたいだろ?」

 

「あ…や…やめてくれ…!!」

 

ゼノの手がゆっくりと動き出す。対抗しようにもディオドラは恐怖のあまり立つことも抵抗する事も出来なかった。

 

「俺の手の振動は1秒で約1万回。お前の脳をミキサーに掛ける様に“グチャグチャ”にできる。そしてグチャグチャになった脳みそが再生するのを止めたら…どうなると思う?」

 

「……ま!待て!」

その言葉を聞いたディオドラは後の展開を完全に理解したのか、涙を流し始めた。

 

「嫌だ…!やめて!やめてくれ頼む!そ…そうだ!君を禍の団の幹部にしてあげよう!現魔王の血族である僕なら顔が効く!!それとも金と女か!?望む金も女も用意しよう!」

 

「古くさい血にこだわってる奴らからしたらお前の顔なんてドブ以下だし、金も困ってないし女にも興味ないし俺は神だから幹部なんて意味ねぇ。命欲しさにもう知識も低下してるな」

 

ぐしゃぐしゃになる程まで涙で歪んだ顔に加えて生にすがる必死さ。そしてプライドをへし折られた事による喪失感と誰も助けにこない絶望感。

そのありとあらゆる感情に押し殺されたディオドラの顔はその感情と同じように先程よりも更に激しく醜く“歪んで”いった。

 

「頼む…いや…お願いします…!!やめて…!!」

 

 

 

醜く歪んでいく顔を見ているゼノは____

 

 

 

 

「あはっ!!」

 

 

 

 

_____笑っていた。心の底から。

 

 

「アハハハハ!!いいぞその表情!その顔を見たかったんだよ!不安と絶望に落とされたその表情…最高だ…!!」

 

その気持ちの悪い喜びの声と共にディオドラの頭を掴んだ両手が震え出す。

 

「いや…!待って!頼むお願いだ!お願いします!謝るから許して!許してください!!」

 

ディオドラが助けを懇願すると共に謝罪をしていく度にそれを見つめるゼノの表情は輝いていく。

 

 

「断る」

 

 

 

もう手遅れだった。

 

ディオドラの頭部を掴んだ両手が超音速で震え出す。

 

 

【ヘッドシェイカー】…ッ!!!

 

 

「___あ“あああああああああああああああああ!!!!!!」

 

ディオドラの頭が超高速で振われた事によって凄まじい振幅の振動が脳内へと伝わり、それによって形成されていた脳みそや骨格が組織から粉々に崩壊し遂には溶けていくと共に脳髄が泡を立て始めた。

 

 

高い振幅と共に生物では反応できない微笑時間の間に超高速で振われた事により頭部の内部組織は1秒も経たない内にメレンゲ状に泡立たられてしまった。

 

 

 

「____!!!!」

 

その1秒が経った頃にはディオドラはもう声が出せなかった。感じたこともない痛みと恐怖感に全身を支配された事により声を発する事さえも出来なくなってしまったのだ。

 

 

そしてその振動が終わると残像によって見えなくなっていたディオドラの頭部が顕となった。

 

「いい顔になったじゃねぇか」

 

目と口からは血の混じった謎の液体がメレンゲ状になり大量の空包と共に流れ始めその流水圧によって舌が力なく口内から垂れていた。

 

この世のものではない肉の塊と化したディオドラの頭はそれでも不死身という法則に従い巻き戻しするかのように元の形へと戻っていく。

 

 

だが、寸前にそれは止められた。

 

その瞬間

 

「ァアァアァアアアアアアァアァアァア!!!!!!」

 

ディオドラは頭を押さえながら叫び辺りを死にかけのゴキブリの様に転げ回った。唯一再生されることのない液状化した脳みそ。感じたこともない気持ちの悪い感覚と脳からの情報が伝達できない超常的な痛覚が次々と襲い掛かり彼を苦しめていく。

 

 

その様子が5秒続いた時だった。

 

「はい終了」

 

その声と共に脳みそにかけられた気が解除され、再び脳みそが再構築される。

 

だが、元に戻った時にはもう彼の精神は“崩壊しかけていた”

 

「あ…あ…あ……」

 

それでも彼はまだ生きていた。

何度も何度も身体を損傷するダメージを受けた為にその身に対する痛みを克服してしまっており、頭が崩れた程度ではディオドラ自身は意識を失うことは無かったのだ。

 

 

それが更にゼノを笑顔にしていく。

 

 

 

「もう一回いくぞ?」

 

 

その笑みを向けられた瞬間 ディオドラの顔が再び恐怖に染まった。

 

 

「い…嫌だぁああああああああああああああ!!!」

 

 

 

その後 ディオドラの脳内はゼノによって何度も何度もかき混ぜられていった。脳が溶けていくという超常的な感覚を骨の髄まで染み込ませる程まで味わった事によりディオドラの精神はその痛みに耐えきる事ができず遂に肉体ではなく精神が先に死んでしまった。

 

「……」

それによってディオドラの目からは光が消え去り物事を考える事さえも不可能となり生きながらも思考が停止した“植物人間”へと成り果ててしまった。

 

 

「あ〜、スッキリした」

 

ディオドラの頭から手を離したゼノは植物人間と化したディオドラの身体を蹴り飛ばし、仰向けとなって倒れた際に顕となった腹部に根を張るドラゴンボールへと手を伸ばすとディオドラの身体から引き抜いた。

 

 

「お前は俺を怒らせた。罪状はそれで十分だ」

 

そしてドラゴンボールを手にしたゼノは表情を戻すと再び“ゴミを見る様な目”でディオドラを見下ろしながら手をかざした。

 

「じゃあな、地獄で永遠に苦しんでろ」

 

その言葉と共にディオドラの身体は一瞬だけ発光すると木っ端微塵に砕け散った。

 

ディオドラを葬ったゼノは残る一つの気を感じ取る。その顔からはもう今までの優しい笑みや感情が消え失せていた。

 

「コイツを殺して禍の団への宣戦布告といこうか」

 

 


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