ハイスクールD×D 破壊を司る神の弟子   作:狂骨

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遂に来るレーティングゲームそして奇襲

ロベルが去ってから数日。ディオドラが遂に動き出す日であるレーティングゲームの前日の夜。ゼノは数ある部屋の中で何百倍もの重力がある部屋の中で数時間のトレーニングをしていた。

 

「…!!」

 

生半可な者が入ればたちまち押し潰される過酷な環境。その部屋はゼノ以外誰も入る事ができない。たとえ修行で最上級悪魔の力を得た朱乃や小猫でもだ。

 

「ふぅ…」

そんな中、重力が襲い掛かる白い部屋の中で汗を流しながら拳や脚を振り回しながらトレーニングを行っていたゼノはひと段落を付け、重力の作動スイッチをOFFにするとタオルを手に取った。

 

身体から滲み出た汗をタオルで拭き取っていく。

 

そんな時だった。

 

「ねぇゼノ」

 

後ろの扉が開き寝巻き姿のサリが顔をヒョコッと出しながら覗いてきた。

 

「ん?」

 

「そろそろ寝なさいよ。最近 夜更かししてばかりじゃない」

 

「…」

 

確かにそうだ。ここ最近、寝付く時間は必ず深夜であり、酷い時には一睡もしない日があった。

 

その理由は簡単だ。暗黒魔界軍の到来による危機感である。いつ襲ってきてもおかしくない。今この瞬間でもだ。そう思うと全く眠れないのだ。

 

「神様のお仕事も忙しいのは知ってる。けど、休まないと」

 

そう言いサリは部屋の中に入ると立ちすくむゼノの肩に手を置いた。すると今まで感じる事のなかった疲れがドッと押し寄せるかの様に全身に巡った。

 

「…分かった」

 

それからゼノは重力室を出るとサリと共にリビングに向かった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

向かう中、ゼノは隣を歩くサリに向けてあることを尋ねた。

 

「なぁ姉貴。俺が怖くないのか?」

 

「え?」

 

地球へと戻り人と触れ合う生活の中でゼノはビルス城では得なかった感情を持った。

 

それは『恐怖』

自身は仕事とはいえ多くの生物の命を奪ってきた。それは人間である神父や人外の悪魔も例外ではない。

 

命の奪い合いとは乏しい環境下で育ち道徳を身につけているサリにとって自身はどう思われているのか。それが気になっていたのだ。

 

「俺は…今まで何度も命を奪ってきた。姉貴はそんな俺が怖くないのか?」

 

それに対してサリは立ち止まるとしゃがみ込みながら頭を撫でてきた。

 

「全然怖くないよ。確かにお仕事とはいえゼノはたくさんの命を奪ってきてる。けど、それは仕事上仕方のない事だったんでしょ?ゼノはこれまで目的もないのに誰かを殺したことはあるの?」

 

「……いや」

 

尋ねられたゼノは首を横に振った。今まで自身が殺してきたのは全て世界の害になり得る者ばかりであった。無目的で殺した相手などはいない。

 

すると頭を撫でるサリの手が頭から離れると身体に巻き付き抱き締められた。

 

「そういう事だよ。だから私は怖くない。たとえそれで恨まれようとも…私はずっと貴方の味方だから」

 

「姉貴…」

 

その言葉を聞いた瞬間、ゼノはなんだか胸が軽くなったかの様な感覚に見舞われた。

 

それと同時に一つの思いが頭の中を過った。

『死ぬまで彼女を守り抜きたい』…と。

 

それは彼女に対する好意なのか保護欲なのか、はたまた家族の情なのかは分からない。ただ、彼女の言葉に救われた様な気がした。

 

「その…今夜は…一緒に寝ないか?」

「いいよ♪」

それからゼノは久しぶりにサリと同じベッドで寝た。

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

それから一夜明け、遂にレーティングゲーム当日となった。

 

部室内にてリアスと共に皆が決意を固めている中、ゼノは後ろからアザゼルと共にその様子を見つめていた。

 

すると

 

「ゼノ君」

 

「先輩…」

 

朱乃と小猫が手を握り締めてきた。

 

「今回は…思い切り暴れてこようかと思います…」

 

「私も前の様な失敗は致しません」

 

真剣な眼差しを向けてくるその瞳に対してゼノは一人の教える者として手を握り返し声援を送った。

 

「頑張れよ」

 

その声援は二人の緊張を完全に消し去り勇気と自信に満ち溢れさせる。

 

「「はい!!」」

 

それからリアス達は魔法陣によってゲーム会場へと転送されていった。その様子を見送ったゼノは後ろに立っているアザゼルに目を向けた。

すると、アザゼルは魔法陣を展開する。

 

「ほんじゃまぁ、俺達も行くか」

 

「あぁ」

 

◇◇◇◇◇◇

 

レーティング会場へと転移したリアス達。そのフィールドは殺伐とした風景であった。辺りには岩場が広がっており空中に浮かぶ岩や遺跡のような建物があった。

 

「…あれ…?ディオドラは…?」

 

その風景を疑問に思ったイッセーや皆は辺りを見回した。どこを見ても対戦相手となるディオドラは見当たらない。彼の眷属一人もだ。

 

 

その時だった。

 

 

「「「「!?」」」」

 

空に無数の魔法陣が展開しその中からローブを纏った数千もの魔法使いや悪魔達が姿を現した。

 

「こ…これは一体!?」

 

突然現れた大人数の兵にリアス達一行は驚きのあまり硬直する。

 

 

その時だった。

 

「きゃぁ!!」

 

 

「「「「!?」」」」

 

背後からアーシアの悲鳴が響く。それを耳にした皆は咄嗟にその叫び声が聞こえた場所へと振り向いた。

 

そこには多くの兵士達を背景にアーシアの身体を逆さ吊りにし右脚を持ちながら笑みを浮かべているディオドラの姿があった。

 

「な…!テメェ!!!」

 

「ディオドラ!」

 

「やぁ。リアス・グレモリーに眷属の諸君」

イッセーとリアスの怒りの声を嘲笑うかの様にディオドラは閉じていた目を開け黄色の目を向ける。

アーシアをぞんざいに扱うその仕草にリアスは怒りを表し魔力を纏いながらディオドラを睨んだ。

 

「これはどう言う事!?それにアーシアを…!今すぐ返しなさい!」

 

「丁重にお断りする。アーシア・アルジェントは頂いていくよ。そして君達はここで禍の団に殺されるんだ!」

 

「な…!?まさか禍の団と繋がりが!?」

 

「その通りさ。彼らと手を組んで正解だったよ!お陰で“面白い女”に加えてこんな力まで手に入れてしまったのだからね!」

 

朱乃の推測に頷きながらディオドラは手に魔力を出現させると遥か遠方に聳える全長数百メートルもある岩石へ向けて放った。

 

 

 

 

その瞬間

 

 

凄まじい爆発音が鳴り響きその超巨大な岩石は塵も残らず消し飛んだ。

 

それを見た一同は冷や汗を流し始めた。

 

「なんて力…まさかオーフィスの魔力を!?」

 

「それだけじゃないよ!」

 

リアスの言葉に答えながらディオドラは上半身に纏う洋服を捲り上げ腹部を見せる。

 

そこには血のように赤く中心に黒い五つの星が描かれたボールが埋め込まれていた。その球は埋め込まれた場所を中心にまるで根のようなものを張り巡らせていた。

 

「それはカテレアの時の…!」

 

「そうさ!今の僕の力は魔王級…いや、それ以上だろうねぇ!そしてこの球のお陰で『不老不死』の能力も得たんだ!この力で僕は新たなる魔王としてこの世に君臨するッ!!」

 

そしてディオドラは指を鳴らす。すると、それを合図に背後にいた無数の兵士達がリアス達に向けて魔力弾を放った。

 

 

「もしもこの数の中を生き残れたら闘ってあげよう。せいぜい足掻いておくれ。それまで僕はアーシア“達”と楽しませてもらうよ。赤龍帝♪」

 

「…!!」

 

その醜悪に満ちた瞳をイッセーに向けた直後にディオドラは背後に魔法陣を展開するとアーシアと共に転移していった。

 

「アーシアぁぁ!!!!」

 

「落ち着くんだイッセー君!まずはこの戦況をどうにかしないと!!」

 

アーシアを拐われた事により冷静さを失ったイッセーを木場は何とか落ち着かせる。

 

その一方で放たれた魔力弾が雨となりその場に降り注ごうとしていた。

 

「皆…!何としてでもこの状況を切り抜けてアーシアを助けるわよ!」

 

「「「「はい!!」」」」

 

リアスは放たれようとした攻撃から全員を護るべく滅びの魔力を応用しバリアのような球体で全員を包み込もうとした。

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

ドォオオオオオオオオン…ッ!!!!

 

 

 

 

 

 

空から何かが飛来し地面に激突した。辺りには凄まじい暴風と砂埃そして衝撃波が発生し、リアス達に向かってきていた魔力弾をその衝撃によって消しとばした。

 

 

「な…なんだぁ!?」

 

「分かりません…けど…空から何かが降ってきました…!」

 

リアスの魔力によるバリアで何とか生き残っていた皆はその風圧に耐えながらも自身と禍の団の間に飛来したその物体の正体を確かめるべくその場を見つめていた。

 

 

 

次第に晴れていく黒い砂煙。それによって飛来した正体が顕となっていく。

 

「ゼノ…くん…?」

 

その正体を誰よりも早く察知した朱乃の声に皆は驚き再び見えてくる影を見つめた。

 

すると煙が晴れ、飛来した人物の正体が顕となった。

 

そこに立っていたのは戦闘服であるチャイナ服を纏うゼノであった。

 

「先ぱ__!?」

 

その時だった。名前を口に出そうとした小猫が言葉を詰まらせると共に全身を震わせた。それは小猫以外の皆も同じであった。突如として現れたゼノの姿を見た途端、一同は背筋が凍りつき動けなくなってしまった。

 

 

「せ…先…輩…?」

 

小猫の瞳に映るゼノの顔は___

 

 

 

 

 

 

______激しい怒りに満ちていた。

 

 


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