「迎えに来たよ。アーシア・アルジェント」
現れた若手悪魔『ディオドラ・アスタロト』は部室に現れるや否や突然とアーシアの手を握る。
その時だ。
「おい」
「はい?」
話をする中で突然と割り込んできたディオドラに対してゼノは座りながら瞳だけを動かして睨みつける。
「今、話してる最中だ。後にしろ。それにお前は誰だ?」
その時、ディオドラはようやくゼノの存在に気づき胸に手を当てながら頭を下げる。
「これはこれは。銀河を束ねる神『黒崎ゼノ』様。自己紹介と挨拶が遅れてしまい申し訳ない。僕はディオドラ・アスタロトといいます。話の途中なのでしたら申し訳ないのですが…僕の話はすぐに終わりますので先をお譲りしていただけませんかな…?」
「……まぁいいか。うん」
ゼノは頷くと、話を中断し、ディオドラに譲る。
◇◇◇◇◇◇
それからゼノは席を立つとディオドラへと譲る。
現在はゼノが座っていたソファーにディオドラが座りそれに向かい合うように目の前のソファーに部長であるリアスが瞳を鋭くさせながら座っていた。そしてそれに続くかのようにリアスのソファーの周りには朱乃達が集まっていた。
席を譲ったゼノはリアスの机の上に足を組みながら座りその様子を見つめていた。
「アスタロト…ってなんだっけ」
「分かりやすく言えば現魔王アジュカの実家だ。まぁアンタの目線から言えば市長みてぇなもんだ」
「成る程な」
ゼノはそのままディオドラへと目を向ける。
「にしても、よくもまぁ場を譲ったな〜。お前さんなら自分の話を優先すると思ったが」
「いつでも言える事だから譲ってやったんだよ」
そんな中、ゼノは目を鋭くさせるとリアス達と話すディオドラへと目を向ける。ゼノの目には彼の身体から若干ながら悪魔とは別の形のオーラが滲み出ているのが写っているのだ。
「………」
ゼノは誰にも気付かれないような声量でアザゼルに向けて伝える。
「アイツが帰ったら少し話したいことがある」
「…おぅ」
その時だ。
「触れないでくれるかな?女体にしか興味のない汚らわしい君に触れられると僕まで汚れてしまう」
「んだとぉ!?」
アーシアに強引に迫ったことに対して怒ったイッセーがディオドラに対して怒りを表した。それに対してディオドラは肩に触れられたことに対して冷徹な眼差しを向ける。
その一触即発な雰囲気に溜息をついたゼノは椅子から飛び降り二人に向かう。
「おい。喧嘩する暇あるならサッサと帰れ。すぐに終わるんじゃなかったのかよ?」
「おっと。これは申し訳ない」
ゼノが来たことに流石のディオドラもすぐさま弱気になると引き下がる。
「それでは失礼します…。また会おうアーシア」
ディオドラは魔法陣を展開させるとアーシアへと目を向けながら消えていった。
「ようやく邪魔な奴が帰ったな」
ディオドラが帰った事を確認したゼノはアザゼルに目を向ける。すると、アザゼルはドアに親指を向けてジェスチャーを送った。
◇◇◇◇◇◇
その後、アザゼルとゼノは一時的に部室を出て、晴れ渡る空の下である旧校舎の入り口の扉に背中を預けながら先程のディオドラから滲み出ていたオーラについて話し出した。
「アイツ、何か持ってやがったな」
「ソイツは俺も感じたトコだ。カテレアの時と同じ妙な魔力を一瞬感じた」
それはアザゼルにも感じ取れていた。だが、ゼノよりもそれは鮮明ではなく、霞程度であった。だが、ゼノが感じ取れているならばそれは確かだろう。
「そうなると今回、アイツも禍ノ団とかいうイタい集団と関係があるのかもな」
「あぁ。その可能性は高い。あとイタいっていうのはやめろ。間違ってないけどよ」
ゼノは先程の感じた魔力がカテレアと同じ質であった為に、彼も彼女と同じく禍ノ団の一員または関係者である事を読み取る。それについてアザゼルも納得した。
「どうする?冥界に報告して捕縛させるか?」
「…いや…。少し泳がせる」
ゼノの意外な判断にアザゼルは驚く。
「意外だな。俺はてっきりすぐに縛り上げると予想してたんだかな」
「確信がつかない状態でぶちのめしてもつまらねぇ。ボロが出たところを一気に叩き潰した方がいいだろ」
「まぁそうだな。近々…奴とのレーティングゲームが予定されてるからチャンスはそこだろう。うん。サーゼクスには俺から話しておく」
「分かった」
それからゼノは部室には戻らず、即座に帰路へと着いた。
◇◇◇◇◇◇
「はぁ…」
ゼノは頭を悩ませていた。どうすれば禍ノ団を襲撃する口実ができるのか。その気になれば英雄派、旧魔王派、そしてボスであるオーフィスなど、一網打尽にして破壊できる。だが、テロリストといえども情報と証拠がなければ潰し様がない。悪魔側に損害は出ているものの、自身には出ていないのだ。いや、人間に既に手を出している時点で損害は出ているだろう。
けれども、それを行った決定的証拠が見当たらない。
「とりあえず情報が欲しいな…」
一時は禍ノ団に潜入し内部崩壊を考えていたが、自身では気を隠せていてもすぐに気づかれてしまう。情報が欲しいものの、サーゼクスと連絡手段がない上に、あったとしても深層部分の情報は掴めない。
どうしようかと悩むゼノはそのまま最近 寄る様になったラーメン屋へと向かい、扉を開けた。
ガラガラガラガラ
「ヘイらっしゃいッ!!」
猛々しい大将の挨拶を聞き流しながらゼノは製品を作る景色が広がるカウンター席へと座った。
「大将…大盛りチャーシュー麺1つ。味噌で」
「はいよ!」
ラーメンを注文し、出されたお冷を口に流しながらゼノは考える。アザゼルに再び問い合わせてみるか、それとも直接乗り込むか。
「どうするか…」
「ほほぅ。神でも悩む時はあるんだな」
ふとこぼした自身の言葉に誰かが反応して返してくる。その声は横から聞こえてきた。
「そりゃな…。どうすれば合法的に迷惑集団潰せるか考えてたんだけど…いい案が思い浮かばないんだ……ん?」
それに対してゼノはアッサリと答えた。だがその直後、ゼノは思考を停止させ、ゆっくりと横に目を向ける。感じ取れた魔力に聞こえたその声に聞き覚えがあったからだ。
「やぁ銀河神。久しぶりだな」
そこにいたのは何と二天龍の一角である現白龍皇『ヴァーリ・ルシファー』だった。
確かディオドラが禍ノ団と内通してるって発覚するのは原作だと、この後でしたよね…?