ハイスクールD×D 破壊を司る神の弟子   作:狂骨

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終幕そして人間界へ帰還

レーティングゲームでリタイアした者が治療される医務室で朱乃はベッドに座りながら俯いていた。

所々に包帯が巻かれていた。

彼女は落ち込んでいた。今回のゲームで撃破したのは女王1人のみ、何も戦力になれなかった。

 

すると、医務室の扉が開き、ゼノが入ってきた。

 

「よぅ」

「…!ゼノ君…」

朱乃は驚く。一方で何事でもないかのようにゼノは扉の前で朱乃に手をヒョイとあげる。

 

「申し訳ありません…。油断してしまいました…」

朱乃は自身を過信しすぎていた故に警戒を怠った事を詫びる。それに対してゼノは数分間何も言わずに考え込むと、背を向ける。

 

「落ち込む暇があったら直せばいいだろ。ほら、さっさと帰るぞ」

「…!はい!」

その言葉に朱乃は笑みを浮かべた。

 

その後、ゼノは朱乃が医師から診断を受け終わるまで待ち、無事に診断を終えて異常無しとなると、朱乃と共に皆の元へと向かった。

 

歩く中、ゼノは朱乃がリタイアした後の事を話す。

 

朱乃と椿が両方リタイアした後、あの場所にいたソーナが実はただの分身であることが発覚したのだ。

残りの僧侶をリタイアさせ、最上階で王と王の直接対決の末、見事に勝利を収めたのだ。

 

朱乃が相手の駒を減らした事が勝利への大きな一歩だったとリアスが言っていたらしい。

 

「別にゲームだからいいけど、本当の闘いなら死んでたかもしれないから次から気をつけろよ」

 

「相変わらず手厳しいですわね」

 

「神だから」

ーーーーーーー

 

それから皆はレーティングゲームを終えると、リアスと眷属の皆は合宿中にお世話になったグレモリー家の従者や家族に別れの挨拶をしていた。

 

そんな中、目の前の駅に止まっている特急に、先に乗っていたゼノは“ある事”を考えていた。

それは冥界に来た時に感じた“7つの気”その気は来た時に感じられていたが、今ではまるで無くなったかのように気配が感じられなかったのだ。

 

「…(おかしいな。気配が完全に消えてる…。まるで根こそぎ持ってかれたかのようだ…)」

その気自体には興味はない。だが、一瞬でこの気を消し去った正体が、ゼノにとって“問題”であるからだ。

 

「丁度よかった」

偶然と列車に乗車してきたアザゼルはゼノを見つける。

 

「何だ?」

「お前さんが食事時に気になっていた生物の正体が分かったぜ」

それはゼノがアザゼルやサーゼクス達と会食をしていた時だった。ゼノの口から出された『一箇所から感じ取れた7つの気』についてアザゼルは独自に調べていたのだ。

 

「一箇所から七つの気っつぅ事は要するに体内に7つの意識があるという事だろ?それを調べたらとんでもねぇ奴に当てはまった」

 

「ソイツはだれだ?」

アザゼルは誰もいない事を確認すると、長年の研究でようやく極一部であるが、掴んだその生物の貴重な情報を口にした。

 

 

 

 

_____トライヘキサ

 

 

グレート・レッドやオーフィスと並びに聖書に記された生物。曰く…『黙示録の皇獣』とよばれていた。古の時代に聖書の神によって幾千もの封印を施されて封印されたらしい。

 

「判明してるのは姿形がバカデケェ上に七つの首を持っている事だけだ。恐らくお前が感じたのはソイツだろう」

 

「…!」

その瞬間 ゼノは苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべる。気が消失したとなるならば、その獣を誰かが何処かへ転送させた。しかし、地球や冥界圏内ならば、集中すれば気配は辿れるはずだ。だが、先程からそれが全く感じ取れなくなっている。そうなると冥界とは別世界へと転送した可能性がある。それができるのは『瞬間移動』が扱える界王神だけだ。

 

即ち

 

暗黒ドラゴンボールやZソードを盗んだ犯人が関係している。

 

そして、もう一つゼノの頭に最悪の考えが生まれた。ただでさえも時空を歪ませる程の超常的な力を持つ皇獣にゼノにとって羽虫に等しいカテレアが少し自身にパワーを出させる程の力を与える暗黒ドラゴンボールが埋め込まれてしまったらどうなるか。

 

「…下手すれば冥界どころか地球が終わる」

 

「おいおい…いきなりどうしたんだよ?」

アザゼルはゼノの物騒な言葉に身を震わせながらも問う。対してゼノはアザゼルの口の硬さと堕天使達を纏める統率力を信頼しているのか、自身の考えを話す。

 

 

 

 

「……ソイツはヤベェな」

アザゼルはゼノの表情から冗談ではない事を理解すると同時に予想していたスケールが予想していたモノより、大きくなっている事に冷や汗を流す。

 

「おいアザゼル。これは内密にしとけよ」

 

「分かってるよ。実際、コイツの存在自体がトップシークレットだからな。お前さんでもトライヘキサは倒せねぇのか?」

アザゼルは一応ゼノに対してトライヘキサを倒す事が可能か聞く。だが、ゼノはそれを否定する。

 

「バカにするな。師匠に比べればアイツなんて蝿だよ。破壊する必要もねぇ」

「(コイツもコイツでヤベェな…)」

超常的な力を持つトライヘキサさえも軽く『蠅』と罵るゼノにアザゼルは引いてしまう。

 

「けど、問題はそこじゃねぇ」

そう言いゼノは話す。

 

「普通に時空を歪ませる力を持つ奴に暗黒ドラゴンボールを埋め込んだら星一つなんて軽く壊せる力を手に入れられる。そんな力を気配が感じ取れねぇ場所で解放されたら流石の俺も何もできない」

 

「なるほどな。確かにそうだ。なら、ソイツをすぐに見つけださねぇとな」

アザゼルはトライヘキサの追跡を3大勢力共通の優先事項として当たる事を提案する。

 

「けど、見つけても絶対に手を出すな。俺に教えろ」

 

「了解だ」

そう言うとアザゼルは本部へと一時的に戻るために列車を降りた。

 

「あら?アザゼルと何を話していたの?」

 

「別に。ただ冥界の飯が美味かった話をしただけだよ」

 

「?」

後から乗ってきたリアスに事情を聞かれるも、ゼノは受け流す。

 

 

ちなみに帰りはずっと朱乃の膝の上に乗せられていたらしい。

 

ーーーーーーーー

 

グレモリー領から遥か数千キロ離れた暗い洞窟の中にある実験室。

 

 

「ハッハッハッ…こりゃあ驚いたな…まさかガチで本体もろとも眠ってる状態で連れてくるとは…」

 

薄暗く、とてつもなく広い洞窟の中でリゼヴィムは目の前に眠る巨大を見ながら唖然としていた。

 

何度も寝息を立てながら眠るその生物は、体高だけでも数キロはある巨体。そして、それを支える四肢の内、前足らしき腕はまるで巨大な木の様に極太い。そして、それを支える後ろ足2本は前足以上に太く、筋肉も発達していた。

 

「ふむ。やはり幾千もの術が施されているな…。ま、私に掛かれば3日もあれば全て解ける。それに、ここならばあの場所よりも見つかる心配は無さそうだ」

リゼヴィムの横には緑色の肌をした男性がおり、同じく眠る巨体を見ていた。

 

「いやいや…あの場所でも十分安全でしたぜ!?ワシだけしか知らな…ヒィ!?」

 

リゼヴィムが異議を唱えようとした瞬間、男性から鋭い視線が向けられた。向けられただけでリゼヴィムは恐怖のあまり、震え、尻餅をついた。

 

「貴様だけしか知らないだと?ぶざけているのか?あの日、何者かが我らのいる場所を感知したのだぞ?」

「はぁ!?」

リゼヴィムは驚愕の表情を浮かべる。あの場所は冥界から遥か彼方の位置にある。故にインド神話の三柱神やギリシャ神話のゼウスさえも未だにその居場所を知らない。見つけられたとなると、見つけた人物はその神以上の人物となる。

 

「もう貴様の言葉もあまり信用できんな。さっさと持ち場に戻れ」

「へ…へい…」

リゼヴィムはおぼつかない足取りでその場を去る。

 

「さぁ…『トライヘキサ』とやらよ…貴様には新たなる力を授けてやろう…!!」

 

 

 


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