ハイスクールD×D 破壊を司る神の弟子   作:狂骨

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朱乃vs椿

匙がリタイアした知らせを耳にしたソーナは歯を噛み締める。

「匙…よくやってくれました…」

 

ソーナは今いる自身の駒を見る。女王である椿をはじめ、匙を除いた残りの兵士1名、戦車2名、絶望的な状況だった。相手であるリアスの残りの駒は、兵士1人、騎士2人、王と女王が1人、だが、そのうち騎士1人は瀕死に近い状態である事を椿から聞く。けれども、やはり自身の駒よりも圧倒的に多い。

 

「やはり…小猫さんのあの一撃が大きかったですね。リアス達が来るまでに打開策を取らねば…。(後は下にいる分身の時間稼ぎを頼るしかないでしょう…)」

 

故にソーナは頭を振り絞り冷静に打開策を考える。

 

「椿、しばらくの間、時間稼ぎをお願いできますか?」

「はい!」

 

ーーーーーーーー

 

 

イッセーはリアスや、木場達と合流を果たすとソーナがいる二階へと向かっていた。

 

「いよいよソーナと直接対決よ。駒はこちらの方が多い。けど、気を緩めないで」

『はい!』

リアスの呼び掛けに皆は頷く。

相手は確実に自分よりも知略に長けている為、どんな どんでん返しがくるか分からない。その為にリアスは皆に細心の注意を払わせる。

 

そして、階段を登り詰めると、数人の人影が見えた。

「待っていましたよ。皆さん」

待ち構えていたのは王であるソーナ、そして女王である椿であった。

 

「(相手は2人だけ…。ここで生徒会長を倒せば…俺たちの勝ちだ…)」

イッセーは心の中で勝利を予想する。だが、一つだけ、違和感があった。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…(何だ…?身体がダリぃ…)」

先程から自身の身体が何故かダルいのだ。まるで何日も食べ物を食べていないような。その状態はもう限界に近かった。

ドサッ

 

「イッセー!?」

身体が何故か倒れてしまった。何の前触れもなく。匙との戦闘での傷ではない。

 

「ッ!これは…!」

近くにいた朱乃は、イッセーの腕に繋がれている謎のチューブを発見する。その管は赤く染まっており、まるで血が流れているようだった。

 

「兵藤君の血液を採取させていただきました」

『ッ!!』

その言葉と共にソーナの後ろに待機していた椿が、懐から病院で扱われている血液の袋を取り出した。そこには、大量の血液が溜め込まれていた。

 

「匙に君と戦う際にこれを付着させるように頼んでおいたのです。戦闘終了からここに来るまで、相当の量の血液が失われていると思います」

 

すぐさま木場は持っていた聖魔剣でそのチューブを断ち切る。だが、もう遅かった。

 

「ぐぅぅ…力が…でねぇ…」

立ち上がろうと試みるも、血が不足している為に、立ち上がる事ができなかった。

 

「兵藤君。確かに貴方は強い。けれど、匙も負けてはいません。この一週間、少しでも貴方に追い付くために必死に修行をしたのです」

ソーナの言葉にイッセーは歯を噛みしめる。

 

「裕斗…イッセーをお願い…」

「分かりました」

リアスは木場にイッセーの介抱を頼むと、1人前へと進む。

 

その時

 

「うふふ。王が出るにはまだ早いですわ」

すると、リアスの前に何者かが横入りし、リアスの前進を静止させた。

 

「朱乃!?」

リアスを静止させたのは朱乃だった。

 

「うふふ。修行の成果を見せるいい機会ですわ」

「……頼むわ。________小猫のようにならないで」

「はい♪」

一応 警告する。朱乃も例外ではないのだから。

 

「会長。ここはお任せを」

「任せましたよ」

相手も同じく女王である椿が名乗りをあげる。

 

 

「あらあら。貴方と闘うのは久しぶりですわね」

「えぇ。前よりも随分と……いや、見間違える程まで成長されましたね」

「うふふ。お互い様ですわ」

 

互いに一定の距離まで近づくと、椿は薙刀を構える。

 

 

 

 

 

____ッ!!

 

その時、巨大な魔力が辺りを覆う。

 

「この魔力の量は…!」

リアスとソーナは冷や汗を流す。一瞬にして溢れ出した巨大な魔力。その量はもはや最上級の中でも上位の部類に入るものだった。上級悪魔である2人を震えさせる程の魔力を放出した者は目の前にいた。

 

「朱乃…貴方一体…どんな修行をしたというの…!?」

その巨大な魔力の持ち主は朱乃だった。その体の周りには蒼い稲妻がほとばしり、魔力を次々と上昇させていった。

 

「何の変哲もないただの………神様の修行ですわ」

うっすらと笑みを浮かべた瞬間 朱乃の身体を走る稲妻が輝き出した。

 

「うふふ。ゼノ君、見ていてくださいね…?」

誰にも聞こえないようにそう囁くと朱乃の魔力の嵐が右手に集まる。

 

 

「さぁ…行きますよ?」

 

ーーーーーーー

 

 

「はぁ……」

「負けちゃいました…」

一方で観客席では、ギャスパーと小猫が観客席でうなだれていた。あまり見せ場が無かった事もある。

が、小猫にはもう一つ理由があった。

 

「ったく。ギャスパーはともかく、お前は何やってんだ」

「うぅ…」

ゼノに指摘をされて小猫はうなだれる。あそこであんな攻撃をしては流石に失格になるだろう。

 

「今回は明らかにお前のミスだ。気を付けろ」

「はい…」

 

「…さて、朱乃はどうなるか…」

ーーーーーーー

 

 

朱乃の手に集まった魔力は激しく渦巻いており、手には稲妻が迸っていた。

 

「では……いきますッ!ハァッ!!!」

「!?」

その瞬間 朱乃の手が強い光を放ち辺りを照らす。それと同時に高密度の雷光が椿へと放たれた。

 

「くッ!」

すぐさま椿は横へ逸れる形で避ける。だが、成長した朱乃の雷光は簡単には椿を逃がさない。

 

朱乃は手を横に動かす。

「ヤァッ!!」

 

その雷光は朱乃の手に呼応するかのように軌道を突然変え、避けた椿に向かってきた。

 

「ッ!?」

予想外の事態に椿は困惑する。だが、すぐさま身体に命令を出し、紙一重で向かってくる雷撃を何とか横に避ける形で凌いだ。

 

「あらあら。初見で避けられてしまいましたわ」

その雷は地面に追突する寸前に軌道を変えると朱乃の手に戻っていった。

 

「うふふ」

朱乃は手を振るい骨を鳴らす。隙を見た椿が薙刀を振り回しながら駆けてきた。

 

「ハァっ!!」

大きく振りかぶられ、遠心力を得た薙刀は水平に振られ 朱乃の身体へと放たれた。

 

「…!」

その瞬間 朱乃の身体が雷と化し、その場から消えた。

 

 

 

 

「!?どこに!?」

「後ろですわ」

「!」

瞬時に後ろから声が聞こえた。椿は振り返る。

そこには妖艶な笑みを見せる朱乃の姿があった。すぐに椿は後ろへと下がる。

 

「い…今のは…」

「うふふ。私の身体に雷を纏わせたのですわ。悪魔本来の身体能力と女王の特性…そして雷の瞬間速度を合わせる事で高速移動を可能にさせるのですよ。雑なネーミングですが…『飛雷身(ひらいしん)』とでも名付けましょうか」

「く…!」

 

ーーーーーー

一方で観戦していた皆は朱乃の圧倒的な成長に言葉も出なかった。中でも朱乃の強さを一番知っているリアスは口をガッと開けていた。

「あ…朱乃…どれだけ強くなったのよ…!?」

全くの別物だ。技も今まで上から落とす事や直接あびせる戦法しかなかったのに、今ではそれを応用。あろうことか自身に纏わせるという考えもしなかった事を成し遂げていたのだ。

技はもちろん。魔力量もしかり。朱乃の身体からは自身よりも濃い魔力が滲み出ており、見立てれば軽く上級悪魔レベルだ。

ゼノから聞かされてはいたものの、ここまでとは思いもしなかった。

 

「小猫もそうだけど…朱乃もとんでもないわね…」

 

 

ーーーーーー

 

両者共に睨み合う。すると、今度は椿が仕掛ける。

 

「はぁ!」

持っている薙刀の突き。朱乃は身体をすぐさま逸らし躱す。だが、その位置からすぐさまもう一突き。

だが、朱乃はそれを読むかのようにヒラりとかわした。

続け様に椿は高速の突きを繰り出す。けれども、朱乃は全てを避けた。

 

「うふふ。遅く見えますわ」

ゼノの気弾を避ける修行に比べれば、椿の突きは彼女からすれば全てがスローに見えるだろう。

 

ーーーーーー

『朱乃、お前の弱点は近距離戦闘だ。魔力攻撃で遠距離からの攻撃は得意なものの、近距離に持ち越されたら成す術がないだろ』

「はい…。」

『俺が戦ってきた奴らは近距離も遠距離も自在な奴ばかりだ。どちらか一方に偏っている弱点は致命的だ。だから今から俺が遠距離から気弾を打ってやるから全部避けろ。少しずつ距離を減らしていくからな』

 

 

 

近距離戦闘ができなくても…避ければ大分戦況が変わる。

 

ーーーーーー

 

「(ゼノ君、貴方には感謝しきれません。以前の私ならこの攻撃に圧倒されていた。でも…貴方のお陰で解決できましたわ…!)」

自身を指摘してくれたゼノに感謝をしながら朱乃は椿の突きをまた避ける。

 

椿もこれは予想外だと感じていた。連続突きを止めるとすぐさま後ろに後退する。

 

 

「では…そろそろ決めさせていただきます…!」

「…!この魔力の量は…!」

朱乃は自身に魔力を纏わせる。最後の一撃を放つつもりだろう。すると、魔力が渦を描きながら朱乃の右手に集まる。充分に集まると、その手は金色に輝き出した。

 

「いきます…!!」

朱乃の手から稲妻が現れる。そして、手を目の前にいる椿へ向けた。

 

高密度に凝縮された雷が一気に放たれた。

 

「ヤァぁぁぁぁッ!!!」

 

 

ドンッ!

 

 

極太の雷撃が椿に向かう。

 

最高の一押。イッセーやリアスが完全に朱乃の勝利だと予測する。

だが、次の瞬間 椿が叫んだ。

 

「『追憶の鏡』ッ!!!!」

 

そう叫んだ直後に椿の目の前に巨大な鏡が現れ、雷が当たると砕け散った。

鏡の破片は空中に舞うと白いエネルギー体となる。

 

そのエネルギー体は一気に朱乃に向かってきた。

「!朱乃!!!」

 

後ろからリアスは朱乃に向かって叫ぶ。が、遅かった。

 

 

朱乃の全身が雷に包まれた。自身の魔力を練った攻撃を反射されてしまったのだ。

 

 

「最後の最後で…油断してしまいましたわ……」

全身に傷をおおった朱乃の身体がゆっくりと前に傾いた。薄れゆく景色の中 朱乃は倒れながらも細々とした声で言った。

 

「リアス……皆さん…ごめんなさい……」

そう言葉を残した朱乃は力尽きた。

 

「朱乃…」

 

一方で、椿も全身に傷を覆っていた。

 

「くっ…!?」

「椿!」

ソーナが駆け寄る。見る限り完全に体力が底をついていた。朱乃の魔力を完全に防ぐことは出来なかったようだ。朱乃に返したのは全体の80%程。だが、残りの20%をモロに身体に受けてしまったのだ。あの威力の20%ともなれば、大ダメージは確実だろう。

 

「防ぎ…きれませんでした…申し訳ありません…会長…」

「…いえ、よくやってくれました。椿」

 

相手の女王も力尽きる。

 

両者の女王はリタイアとなった。

 

 




何か最近 スランプになってきました…

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