ハイスクールD×D 破壊を司る神の弟子   作:狂骨

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試合の始まり

禍の団の襲来騒動より翌日の夜

 

ゼノはグレモリー邸のある一室へと来ていた。

 

「どうぞ」

「どうも」

グレイフィアが淹れてくれた茶をゼノはゆっくりと口に運ぶ。目の前にはスーツ姿のサーゼクスがソファーへと座っていた。何故彼らの部屋を訪れたのかというと、ある事を聞きたかったからである。

「悪いな。夜中いきなり押しかけて」

「いや。気にしなくていいよ。それよりも…話とは?」

サーゼクスに問われたゼノは真剣な眼差しを浮かべある事を聞いた。

 

「…一度 はぐれ悪魔になった奴のはぐれを取り消す方法はあるのか?」

「…」

その問いにサーゼクスは手を顎に当てる。

 

「ある。ただ、少し難しくなるね」

「教えろ」

サーゼクスは頷き話し出した。

 

「はぐれを取り消すには元老の方や皆と一度その者について話さねばならない。一人でも反対があれば、すぐに取り消しが無効となる」

「へぇ。つまり、あの会合で騒いだ奴らを納得させなければならないって事か」

「うん。だが、ランクが高くなると少し厳しくなるね…中でもSS級となると尚更だ。……やはり、小猫くんの事を気に掛けているのかい?」

サーゼクスは知っていた。ゼノが認定を解除させたいはぐれ悪魔が『黒歌』だという事を。

「…アイツを強くさせるためにはソイツが必要だしな」

「ふむ…」

すると、ゼノは立ち上がる。

 

「ま、方法が知れたらそれでいいよ。俺はこれで帰る」

そう言いゼノは瞬間移動をして、ホテルへと戻っていった。

ゼノが去った後 サーゼクスは本部へと赴き はぐれのリストの中から黒歌に関する書類を取り出した。

 

「サーゼクス、やはり貴方も」

「あぁ。実は私も前から黒歌のはぐれ認定について気になっていたんだ。はぐれとなった原因は恐らくだが、眷属として仕えていた主人が問題だと私は思っている」

「では…」

「あぁ。証拠が揃い次第 議題としてあげるつもりだよ」

そう言いサーゼクスはこの日一睡もせず膨大な書類へと目を通した。

「ただ…彼女が禍の団に属しているとなると…やはり難しくなるな…」

ーーーーーー

それから数日

 

 

 

皆は集まりミーティングを行っていた。

 

「ソーナとの対戦もいよいよ明日となったな。そこで、今回は対ソーナ眷属の会議を行いたいと思う。まずリアス、相手はお前達をどれくらい知っている?」

「そうね…前のレーティングゲームを見ていたからある程度は知っていると思うわ」

 

「なら、向こうの事をお前はどれくらい知っている?」

「ソーナと女王、そして大体の眷属ね。能力が分からない者もいるけれど」

リアスはあまり向こうの眷属と接した事がないためあまり、情報を持ち合わせていないようだ。

 

「レーティングゲームでは、プレイヤーに細かなタイプをつけている。まずは木場だ。お前は速さが利点だからテクニックタイプだ、そしてリアスと朱乃がウィザードタイプ、ギャスパーとアーシアがサポートタイプ、イッセーと小猫とゼノヴィアがパワータイプ。まぁこんなところだ。

取り敢えず、イッセー、お前は禁手化に至ったったろ?」

「は…はい」

実は小猫達が黒歌と戦っている時にイッセーは禁手化に至ったのだ。だが、小猫を見つけた時には既に黒歌は撤退しており、力を発揮出来なかったのだ。

 

「お前が特に注意するのはテクニックタイプだ」

「て…テクニックですか…?」

「そうだ。お前の場合 ゴリ押しが多いだろう。だが、そのゴリ押しを利用されて別方向からの攻撃、またはカウンターを仕掛けられる奴とは最悪だろうな。リアスはそこんとこも見て戦略を練るのが課題だ」

「分かったわ」

アザゼルは要注意なイッセーとカリスマ性が必要なリアスの2人へアドバイスをすると隣にいるゼノへと目を向けた。

 

「ゼノ、エキシビションマッチだが…向こうがマジでやめてほしいと懇願してきたぞ?」

「あ?」

アザゼルの通告にゼノは欠伸をすると頭をポリポリとかくと面倒な表情をした。

「う〜ん…まぁ、俺はもうやる気が失せたからいいけど、あのコスプレ魔王はどうなんだ?」

『コスプレ魔王』とはセラフォルーの事だろう。それに対してアザゼルはやれやれとした表情を浮かべながら答える。

 

「…全然受け入れなかったな。万が一お前さんが出なければセラフォルーが代理でやるぞ?」

「あ〜。ならしょうがない」

何とも酷い話にリアス達はついていけなかった。

 

「まぁ取り敢えず、『無理』と伝えといてよ」

「はいよ」

あの陰湿な雰囲気に腹が立っていたアザゼルは何の抵抗もなく、ゼノの答えを受け取った。

 

「ほんじゃ、各自解散。ゲーム前日だから無理なトレーニングはやめろよ」

 

『ありがとうございました』

こうして、皆は前日 各自で自由に過ごす事になった。

ーーーーーーー

 

当日

 

会場は熱気に包まれており、皆 早く始めろと言わんばかりの雰囲気であった。

「凄いなぁ…このムードの中 ステージに立つなんて緊張しちまうよ…」

「ヒィィィ!!人がいっぱいですぅぅぅぅぅ!!!」

「お前 克服したんじゃないのかよ!?」

会場のあまりにもの強烈なムードに修業を終えたギャスパーも段ボールに籠ってしまった。

 

 

「さて、私達の試合まで時間があるし、観客席へ向かいましょう」

そう言いリアスは皆に呼びかけ観客席へと向かった。

 

「うふふ。鍛えた動体視力でもゼノ君の動きは見えるのかしら?」

「わかりません…けど、多分少しだけしか見れないと思います…」

2人はコッソリと話しながら皆の後をついていった。

ーーーーーーー

 

所変わってフィールドにて

一足先に早く着いたゼノは相手を待っていた。いつものチャイナ服を身に纏っており、二、三発殴るのは確実だろう。

 

「にしても遅いな。いつまで待たせるんだ?」

そう言い首を捻り骨を鳴らす。その様子がモニターに映し出され観客席側へとアップされた。

 

だが、殆どの者はゼノの事を知らずに誰だ?という表情を浮かべていた。

すると、スピーカーから一瞬 ザザッという音が流れるとセラフォルーの声が聞こえた。

 

「皆さま、これよりレーティングゲーム前のエキシビションマッチを始めます。今回は 他の神話系統から来た使者に年配の悪魔の方々達が信頼性を持つ事ができなかったため、それを証明するためにこの前覧試合を開催しました。では、さっそく公開しょ…エキシビションを始めましょう!」

『…!?』

不審な単語に皆は一斉に『ん!?』と耳を傾ける。

 

 

ーーーーーー

 

「始めましょうって言ったってなぁ」

 

すると、目の前の地面に魔法陣が現れた。

「ようやく来たか」

 

ようやく対戦相手が現れ、試合が開始される事となった。

 

「ん?」

ゼノは突然 首を傾げる。現れたのは会合の時に見た老人ではない。会合の時に見た筋骨隆々の若手悪魔だ。

「誰だお前?あの老人供じゃねぇのか?」

その青年は現れると同時に頭を下げた。

「初めまして、私はバアル家次期当主の悪魔 『サイラオーグ・バアル』と申します。この度 上層部の方から頼まれ、代わりに私がご相手する事になりました」

「…へぇ」

結局 逃げた老害達にゼノは呆れてしまった。

「ッ……偉そうにしてる奴らが本番にこれか…」

その一方で知らされていなかったのはゼノだけでなく、セラフォルーも同じであり、ガラス越しからも皆が感じ取れる程 激怒していた。

 

「ま、アイツらが来ないならやる意味はないな」

ゼノが来たのは老害どもへの制裁。本人がいなければ意味は無いと思い会場から出て行こうとした。すると、後ろから青年悪魔サイラオーグに呼び止められた。

 

「お待ちください」

「ん?」

サイラオーグはゼノを呼び止めた。

 

「勝手なお頼みで申し訳ありませんが、私からも手合わせを願えませんか?」

「……」

突然の頼みにゼノは迷った。このサイラオーグという悪魔は確かにそこら辺にいる者よりも強い。その上 魔力を持たず、肉弾戦を用いると聞いていたので少し興味があった。なので多少の暇つぶしとして了承した。

 

「いいよ。そのかわり…全力で来いよ」

「はいッ!」

 

ーーーーーーーーー

 

一方で観客席で見ていたリアス達は予想外の展開に驚いていた。

 

「サイラオーグ!?なんで彼が相手に!?」

「うふふ。どうやら向こう側の方々は、相当 ゼノ君が怖かったんでしょうね。だからサイラオーグさんに頼んだんじゃないですか?」

「だからと言って流石にマズイわよ!?」

いくら肉弾戦に特化しているサイラオーグとて、ゼノの強さを少ししか見ていないので、下手をすれば重傷では済まないと思い、リアスはすぐさま試合中止を促そうとするも、朱乃が制した。

 

「まぁまぁ、ゼノ君なら力の加減くらいできますよ」

「だといいのだけれど…」

 

周りの他の貴族達はリアスの発言に首を傾げていた。

 

「リアス様は何をおっしゃられているんだ?」

「サイラオーグ様ならあんかちびっ子 なぞすぐに倒してしまうでしょうに」

 

だが、彼らは後に目が飛び出す光景を目にする事になるのだ。

ーーーーーーーー

 

 

「ねぇねぇサーゼクスちゃん♪なんで試合直前に教えにきてくれたのかな〜?」

セラフォルーに詰め寄られながらサーゼクスは汗を流し答えた。

 

「い…いやぁ…その通達のミスで___ぶべぇらッ!?」

言い訳しようとしたサーゼクスの頬セラフォルーの見事なストレートパンチが抉り込んだ。

 

「本当の事を言えよ…?嘘ついた事分かってるんだけど…?」

セラフォルーの怒気に負け、サーゼクスはアッサリと自白した。試合拒否の通達を試合直前に知らせろと老人達から言われたそうで、頼まれたサーゼクスは断る事が出来なかったそうな。

訳を話すとセラフォルーはいつもの調子に戻った。

 

「なぁんだ!サーゼクスちゃんが手を回してたんじゃないんだね!ごめんね!いきなり殴っちゃって」

「う…うん…別にいいよ」

セラフォルーの素を見たサーゼクスは恐怖のあまり震えた。

 

「もう〜これでサーゼクスちゃんが手を回してたら殺しちゃうところだったよ〜」

「ははは。まさか…………え?今なんて?」

 

すると、合図と共に試合が開始され、サイラオーグとゼノの勝負が始まった。

 

 


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