ハイスクールD×D 破壊を司る神の弟子   作:狂骨

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猫の迷いと決意

結界が張られた事により、イッセー達は逃げ場を失ってしまった。

 

「そんじゃまぁ、せいぜい楽しませてくれよ!?」

美猴は棒を振り回すとイッセー目掛けて伸ばした。

 

「うわぁ!?」

イッセー達は横へ飛ぶように避けた。美猴は外したと思いすぐさま同じように棒を当てようとした。その時だった。

 

「ほぅ?これはまぁ面白い珍客だな」

「おっさん!?」

突然 その場を黒い影が覆った。皆は上を見上げた。見るとイッセーの修行相手であるタンニーンがその場を巨大な影で覆いながら飛んでいたのだ。

それを見た美猴はまるで子供のようにはしゃぎ出した。

 

「おぅおぅ!?元龍王じゃねぇか!いいかい黒歌!」

「どうぞ。二人分の首ならヴァーリも納得してくれるわ」

「俺も一緒かよ!筋斗雲!そして伸びろ如意棒!」

美猴は興奮し筋斗雲を呼び寄せると飛び乗りタンニーンへ向けて如意棒を放った。

向かってきた如意棒をタンニーンは横に回避する。

 

「ハッ!孫悟空め。なんとも楽しませてくれよ!」

ドォオオンッ!

タンニーンも負けじとイッセーの修行よりも倍以上の炎を吐き出した。

 

 

ーーーーーーー

 

「ふ〜ん。孫悟空に元龍王…まぁお似合いね。さて、そろそろ妹を渡してくれない?」

黒歌は小猫へ目を向けた。すると、今まで俯いていた小猫が顔を上げた。

 

「…へぇ。随分と怖い顔するじゃない」

その顔はいつもの表情ではなかった。目は鋭く 目も猫のような瞳がより一層 鋭くなっていた。

 

「姉様…私は絶対にリアス部長の元は去りません。絶対にテロリストなんかにはなりません」

「…あらぁ?お姉ちゃん悲しいニャ。でも残念でした。貴方が拒否しても連れて行くニャン。2人を殺してでも」

その言葉にイッセーとリアスは戦闘態勢を取る。だが、その脅しの言葉に小猫は慌てる事は無かった。まるで自分の信念を貫き通すかのように言い放つ。

 

「2人には絶対に手出しはさせません…。皆を守るために…私は強くなったのですからッ!!」

その瞬間 小猫の身体から白いオーラが溢れ出た。そしてそのオーラは強く輝き出し辺りを真昼のように照らし出した。

「ハァァァァッ!!!」

小猫の叫びに周りの木が気迫に押され揺れ始めた。

 

「おわ!?」

イッセーやリアスそして黒歌は目を瞑る。そして光がなくなり、皆が目を向けたそこには

 

「白音…まさかその姿…」

目の前には全身から白い気を発し 猫又の特性である尻尾と耳を生やし、先程とは雰囲気が全く違う小猫が立っていた。

 

「私は今まで…この力を嫌ってきました…暴走して自分を見失うのが怖く…恐れていた。でも、今は違う…!この力の悩みや不安…そして恐怖心をあの人は全部壊してくれた!だから私はここまで強くなれた…!」

その鋭い目は黒歌を捉えると、拳を構えた。

 

「私は塔城 小猫!リアス・グレモリー様の戦車ッ!たとえ姉様だろうと…イッセー先輩や部長を傷つけるなら許さないッ!」

その言動と共に黒歌の撒いた毒ガスが浄化されるように晴れた。

 

その時だった。

 

「よし。その息だぞ小猫」

空中から小猫を鼓舞しながら何者かが飛来した。

ドォン!

「前までとは大違いだ。本当に成長したな。小猫」

「…!その声は!」

煙が晴れ飛来した人物の姿が明らかになった時 黒歌は目を大きく開いた。

 

「…ゼノ…!」

そこにはスーツをたなびかせながら笑う銀河神 ゼノが立っていた。

 

突然のゼノの登場にリアス達は驚く。

「ゼノ!?まさか貴方も付いてきてたの!?」

「そうだ。小猫の動きが不自然でな。ずっとタンニーンの上で観察してたよ」

そう言い上にいるタンニーンを指差す。

 

「にしても。SS級はぐれ悪魔か。小猫の力量を試すには丁度いいじゃねぇか」

そう言いゼノは昔馴染みである黒歌を見る。彼女がはぐれ悪魔になっていた事は既に風の噂で知っていた。故に小猫の対戦相手には丁度良いと思っていたのだ。

だが、それに対してリアスは反対した。

 

「何 バカな事言っているの!?相手はSS級よ!小猫1人じゃ無理があるわ!」

「そうですよ!それに姉妹同士を戦わせるってどういうつもりですか!」

確かにそうだ。だが、彼女らは知らない。小猫がどれだけ成長しているのかを。魔力量という外見だけで彼らは決めつけている。だが、それはたった一部だ。小猫が成長しているのは外面だけではない。

故にゼノは言った。

 

「そんな心配いらねぇよ。今のコイツはお前ら2人よりは確実に強いからな。それよりもイッセー」

ゼノはタンニーンから伝言を頼まれていたのだ。だが、その前に確認する事があった。

 

「お前、神器が機能してないみたいだな」

「は…はい…」

見てみるとイッセーは籠手を出現させているのにも関わらず未だに倍加が出来ていなかった。

「じゃあ当たりだな。タンニーンからで、お前は禁手化の目の前まで来てるらしい。激的な変化が必要らしいぞ?」

その言葉にイッセーは驚く。

 

「ま…まじですか!?」

「そうだ。だか…___ん?」

 

ドォオオンッ!!!!

 

その時だった。ゼノの右半身へ黒歌の放った魔力弾が当たった。

 

「いつまでも待ってると思った?隙だらけよ」

「それはわりぃな。けど防いだや

直撃したがそれくらいではゼノは倒れるどころか動かない。当たる直前の0.1秒の間に手を水平に払い魔力弾をかき消したのだ。

 

ゼノは小猫の肩に手を置くと囁く。

「さて、小猫。これは試練だ。今からお前の成長した力を存分にぶつけてこい。とは言ったものの姉だから戦い難いか?」

「はい…ですが…今の私の力なら…姉様の真意を聞くことができるかもしれないです…!」

「よし。なら行ってこい」

ゼノはその場から飛び上がり空中に移動した。

 

「あの子だけで私に勝てると思ってるのかニャ?」

「思ってる。それにあれぐらい鍛えたからSS級ぐらい倒してもらわなきゃな」

「へぇ。ならお手並み拝見と行こうかニャ」

そう言い黒歌は小猫へ目を向ける。

対して小猫も目を向けた。そして再び拳を構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝負です。姉様ッ!」

拳を握りしめた小猫は状態を低くすると脚の筋肉を収縮させた。そして、一気に収縮した筋肉を伸ばしその場から黒歌まで飛び拳を放った。

 

「ヤァァッ!!」

その拳が黒歌に当たるとすっとすり抜けた。小猫は瞬時に理解する。これは『幻影』だ。だとすると本体はすぐ近くに姿をくらましている。

ならば辺りに攻撃を撒き散らしあぶり出そう。だが、それを許す程 黒歌は甘くはなかった。

 

「残念♪ハズレにゃ」

「うぐ!?」

何もないところから放たれた魔力弾が小猫の背中へ放たれた。だが、小猫は耐え状態を直すと手に鬼火を生成した。

そしてそれを黒歌の魔力が感じれる場所へと投げた。

 

ドォオオオオオオオオンッ!

地面へ着弾した鬼火はそこにある木々一帯をまるまると包み込み大爆発を起こした。

 

「…見つけましたッ!」

小猫は黒歌の気を察知するとすぐさま森の中へと駆け出していった。

 

「ちょっと小猫!」

リアスは後を追いかけようにも既に姿を消してしまったので追いかける事ができなかった。

 

 

ーーーーーー

一方で上空ではゼノは黒歌と小猫の戦いを見ていた。

小猫と黒歌を戦わせたのは理由があった。

それは小猫がゼノへ弟子入りをしてきた日の夜だった。

 

ーーーー

「小猫、突然だけど…姉の事をどう思ってる?」

「…」

 

ゼノは小猫へ黒歌の事について聞く。それに対して小猫は俯きながら答える。

「…分からないです…」

「そうか」

 

するとゼノはある事を打ち明けた。

「実はさ、お前らと会った直後にお前の姉に会ったんだよ」

「へ…?」

突然の告白に小猫は目を丸くした。

 

「ほんと 調子のいい奴だったよ。二、三日一緒にテントで過ごしたけど、結構 面白かった。んで、その時にソイツはお前の事を話してくれたよ」

「…何て言ってましたか…?」

「薄っすらなヤツだけだけど…」

 

小猫は知りたかった。本当は姉は自分の事をどう思っているのかを。

そしてゼノはあの時 めちゃくちゃ聞かされた妹の自慢話を再生するかのように話した。

「…無口で可愛い。後ろからトコトコとついてくる姿がペンギンみたいで可愛い、『お姉ちゃん』って呼んでくれない、それから…」

「うぅ…」

ゼノから聞かされたのは殆ど 『可愛い』ばかりであり、聞いてくるとムカッとする事が大半であった。

 

「そして、最後にこう言っていた。掛け替えのないたった一人の大切な『妹』って」

「ッ!」

小猫はとても信じる事ができなかった。あの日 力に飲まれ主人を殺し 、挙句 自分を追いて去っていった姉がそんな事を思っている筈がないと。小猫は疑う。

 

「信じられないか?」

「…はい…」

「ならそう思ってな。ほら、さっさと寝よ」

そう言いゼノは布団を被る。

「ただ、これだけは言っておく。この話は本当にあった事だ。信じるか信じないかはお前次第だよ」

それだけ言うと眠りにつく。

 

ーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーーー

「…(小猫…今のお前はどう思っているんだろうな…)」

ゼノはあの日の夜 話した事を思い返しながら小猫の姿を見守った。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

「それッ!」

正体を現した黒歌は再び分身をすると全員で魔力弾を小猫へと放った。

 

「…止まって見えます…!」

対して小猫は向かってくる魔力弾の大群を手で全て弾き落とした。

 

「嘘…でしょ…。白音…貴方一体どういう修行をしたの?とてもグレモリーの修行じゃ出来ないと思うけど?」

黒歌は小猫の異常な戦闘力に驚き尋ねる。それに対して小猫は首を左右に倒し骨を鳴らすと答えた。

 

「…この世界で一番強い…『神』様です」

「ッ!」

「では、私からも姉様に問います」

小猫はある事を黒歌へ聞いた。それは 自分を置いていったあの日の事だ。

 

「…姉様は本当に私の事が邪魔だったのですか?」

「はぁ?何その質問。当然の事に決まってるじゃない。だからな…「では…何故あの時…私を置いていった日にあんなに辛く悲しい顔をしていたのですか?」

小猫の質問に黒歌は突然黙り込む。それでも小猫は次々と問いたい事を言う。

「私は…姉様の言ったことがよく理解できません。それに私を連れていくなら…姉様なら催眠術や妖術で一瞬で連れて帰れる筈です。何故そうしないのですか?」

 

度重なる質問に対し黒歌はついに口を開いた。

「…答えて何になるの?そんな下らない質問に」

そう言い黒歌は妖術で巨大な木の根っこを地面から出現させた。

 

「答える気はないニャん♪」

出現させた大樹で小猫の四肢を締め上げた。

 

「はい捕まえたニャ。どう?いくら貴方でも解けないでしょ?」

大樹はとても太く小猫の身体程の幅があり、動かそうとするも、大樹はビクともしなかった。

 

「貴方の言う通り気絶させた方が連れて行きやすいわね。ちょっと眠ってもらうニャン♪」

そう言い木の締め付けが強くなり、小猫の腹部や腕と足をきつく締め上げ始めた。

 

 

だが、小猫の意識は落ちる事は無かった。俯いた顔を上げるとうっすらと笑った顔を黒歌へ向けて言った。

 

 

 

 

 

「…姉様は嘘が下手ですね」

「!?」

小猫は先程からの黒歌の気の乱れから確信していたのだ。黒歌は小猫を「邪魔者」だとは思っていなかった事を。

 

 

 

「ハァッ!」

力を込めて小猫は腕を握り締めた。すると、小猫の身体から白い気が湧き上がり、先程までビクともしなかった大樹が少しずつメキメキと音を立て始めた。

 

 

そして 小猫が腕を大きく動かすとその大樹は引き千切れ地面へと崩れた。

 

「なっ!?」

拘束を解き地面へと着地した小猫は黒歌の方へ目を向けた。

 

「あの時…主人を殺した時、姉様は…力に飲まれた訳じゃない…私を守ろうとしてくれたんですよね」

「ッ!そ…それは…」

黒歌は初めて露骨に焦りを出した。図星だということを小猫は感じ取ると真剣な眼差しを黒歌へ向けた。

「ですが…私は…もう昔のように姉様に守られてたばかりの白音ではありません。自分の身は自分で守れる程…強くなったのですから」

「………」

小猫の強い意志が込められた言葉に黒歌は溜息をつくと戦闘態勢を解いた。

 

「はぁ〜。もう今回は諦めるわ」

そう言いつまらなそうな表情をしながら小猫へと背を向けた。けれど振り返った瞬間 何か安心しているようだった。

「まぁ、気をつけなさいよ?その力を使い過ぎたら貴方の大好きな部長や皆が苦しみ…貴方を咎める事を」

去り際に放たれた言葉に小猫は笑顔で返す。

 

 

 

 

「心配してくれるなんて…やっぱり姉様は優しいですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「_____ッ!……くぅ……!」

黒歌は一瞬 驚くと 顔を拭いその場から走るように森の中へと消えていった。そして、この場から黒歌の気配が消えると上空から見ていたゼノが降りてきた。

 

「終わったか。どうだった?」

ゼノに問われた小猫は笑みを崩さず言った。

「先輩の言っていた通りでした…。姉様はずっと私の事を思っていてくれていました」

「なら、お前はどうしたいんだ?」

ゼノは姉の真実を知った小猫に対し意志を問う。それに対して小猫はまっすぐな答えをだした。

 

「もう一度…姉様と…一緒にいたいです…」

小猫は今回の戦いで気づいたのだ。自分が嫌っていた姉は本当は誰よりも自分を大切に思っていてくれた事を。そして、小猫は目から大量の涙を流した。

 

「姉様……ゔぅぁぁぁ…!!」

声を上げながら涙を流す小猫をゼノは優しく撫でた。

その後 黒歌が撤退した事で美猴も引き、結界は崩壊。それにより、皆が駆けつけたが既に痕跡もなく、この騒動でパーティは中止となった。

だが、今回の騒動で小猫は姉である黒歌への信頼を取り戻しいつかまた一緒に過ごしたいという思いが現れ始めた。

 

ーーーーー

 

そして、同時刻の禍の団のアジトの誰もいない岩場にて

 

撤退していた黒歌は空を見ていた。あれ程 苦しい思いをさせたというのに 酷い事を言ったというのに 幸せにしてあげられなかった自分に笑顔を向けてくれた。それだけがとても嬉しかった。

 

「(私が…あの時 白音を一緒に連れ出せていれば…)」

黒歌は過去の自分の行いに後悔しながら涙を流し、空に浮かぶ美しい月を見上げる。

 

「白音…こんなバカなお姉ちゃんだけど…できたらもう一度…やり直したいなぁ…」

離れていても姉妹の気持ちは繋がっていた。

 

 

 


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