ハイスクールD×D 破壊を司る神の弟子   作:狂骨

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懐かしき猫

「…さて、そろそろ行くか」

「随分と楽しそうね」

暗い穴の中にて、2人の男女が話していた。1人は所々に装甲を身につけ、背中に棒を背負っている青年 『美猴』もう1人は、真っ黒な髪を持ち、虹彩が猫のように細く、着物を着崩している女性だ。

 

「まぁな。なんてったって冥界のお偉い様方が集まるパーティだからな」

「ふぅん。私は興味ないけどね」

「お前は確か……『妹』を見に行くんだったよな?」

「えぇ。どれくらい成長しているのか楽しみね」

その女性は妖艶な笑みを浮かべ ると月が輝く夜空を見上げた。その表情は何か寂しさを感じさせるようだった。

 

 

「…(…ゼノ…今はどうしてるのかな…)」

 

 

ーーーーーーー

 

ゼノの仕業により、若手悪魔の会合が 何かめちゃくちゃに終わった。オカ研一同の皆は部屋からやつれた姿で出てきたリアスに何があったのかを聞くとリアスは渋々話した。

事情を聞いた木場とイッセーとゼノヴィアとアーシアは唖然とし、何も言えずにいた。その中で朱乃はいつも通りニコニコ、小猫は無表情でいた。

 

「へぇ…部長と会長の前に先輩とその方達の試合があるんですね」

「えぇ。まぁどうせ脅しだとは思うけど」

リアスは先程のゼノの発言を思い浮かべた。あの時は自分も親友であるソーナの夢を馬鹿にした元老達は許せなかったので スカッとしたが、後から思い返してみるとヤバイと思うだろう。なにせ、足元に及ばないと分かっておきながらも対戦を持ちかけたのだから。

 

まぁ恐らくそんな事はサーゼクスも承知しているので本当にはやらないであろう。そう思っていた。

 

「ま、会合が終わった事だしそろそろ戻りましょう」

ゼノを除いたオカルト研究部の皆はその場を後にすると 屋敷へと引き返した。

 

その後、リアスはこの試合がガチである事をアザゼルから知らされ頭痛を起こしたという。

 

ーーーーーーーー

 

翌日

 

皆はそれぞれいつも通りに修行をしていた。リアスは過去のレーティングゲームの書籍を熟読。イッセーはいつも通りタンニーンと鬼ごっこ。木場はサーゼクスの騎士である師匠と修行。ゼノヴィアはデュランダルを振り回し馴染ませていた。アーシアは魔力上昇。ギャスパーは人前へと出るというのにダンボール。

 

朱乃と小猫は…

 

「ゼィヤァァァッ!!!」

「ハァァァァァッ!!!」

 

「おぉ!?」

イッセーと同じ岩場にてゼノと対戦中である。小猫の手から放たれた鬼火のようなモノがゼノに向かって放たれた。

 

「えいッ!」

「よっと!」

向かってきた鬼火をゼノは脚で次々と左右に流すように蹴った。流された鬼火は後ろの巨大な岩石にあたり、大爆発を起こした。すると、足元に魔法陣が現れ朱乃の雷と本来持つ光が合わさった高密度の魔力攻撃が噴き出してきた。

 

「やぁッ!」

「あぶな!?」

ゼノはそれをまたもや余裕な表情で後ろにステップするように避ける。すると、ステップした先から次々と魔法陣が現れ雷光が吹き出してきた。

 

あまりにも多いので一旦空へ飛びあがり空気を蹴るように次々と避けた。意外としつこく出現してくるので、ゼノならまだしも、上級悪魔なら確実に防げないだろう。それ程までに進化しているという事だ。

 

「ほぅ?やるじゃねぇか」

そう言うとゼノはそれをアッサリと避けた。

 

すると2人は攻撃をやめた。いきなりの停止にゼノは不思議に思うと聞いた。

 

「どうした?もう終わりか?」

 

その時だった。 ゼノは突然 上から高密度の魔力を感じ取った。

 

「!?」

見上げてみるとそこには頭上をほぼ覆い尽くす程の巨大な魔法陣が浮かび上がっており、所々に電気を帯びていた。

 

 

「今です!」

 

小猫の合図と共に朱乃の手が上がる。

 

 

「雷光よッ!」

 

「ッ!」

その瞬間

魔法陣が光りだすと同時に 超高密度の雷光がゼノの頭上から振り下ろされた。

 

雷光はゼノを包み込むと同時に地面に激突すると大爆発を起こした。その威力は中距離程離れていた2人が吹き飛ばされ、辺りの岩場の巨大な岩石も吹き飛ばす程だった。

 

爆風が止み辺りに砂煙が舞うと、朱乃と小猫は膝をついた。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

小猫はもちろんだが、朱乃は魔力がほぼ空の状態へと陥っていた。先程の巨大な雷光に残りの魔力全てを注ぎ込んだのだ。

 

「先輩…大丈夫ですか?」

「はい…ですがしばらく休みたいですね…小猫ちゃんは?」

「私は大丈夫です。それよりも!当たりましたよね!?」

「えぇ…何とか…」

 

すると、煙の中から人影が現れ、こちらに向かって歩いてきた。その人影を見ると小猫は目を細くし頬を膨らませた。

 

「…当たったのにまったく効いてないみたいですね…」

「少し残念です…」

 

「いや?結構 よかったぞ」

その声と共に煙の中からゼノが賞賛しながら現れた。見ると来ている服に若干だが千切れた跡が見える。攻撃が掠ったのだろう。

 

「いいコンビネーションだったぞ。片方の手で魔力を放ちもう片方で残りの魔力を少しずつ溜める。両手でそれぞれ違う文字を書くようなモノだ。よくできたな」

ゼノに褒められると朱乃は瞬時に頬を赤く染めると乙女のように顔を両手で覆う。

 

「そんな…!私なんてまだまだですよ…!」

「…(めちゃくちゃ喜んでる…)」

感情がまったく隠しきれていない反応に小猫はボソッと心で呟いた。

 

一方で、ゼノは2人の魔力が底を尽きている事を確認するとポケットから麻袋を取り出した。そして中をゴソゴソと探ると一粒の緑色の豆を取り出した。

 

「これを食え」

「豆……ですか?」

「そうだ。これは『仙豆』と言ってな。あの世に住む大仙人『カリン様』からいただいた神聖な豆だ」

「それほど貴重なモノを私たちに…よろしいのですか?」

「いいよ。それに仙豆はストックがたくさんあるからな。また貰えばいい」

そう言うと2人に一粒ずつ手渡した。渡された2人はヒョイと口の中へと放り込むと 噛み砕き飲み込んだ。

 

ゴクン

 

『!?』

その瞬間 2人の魔力と体力が一気に全開した。

 

「凄い…一気に魔力が回復した…」

「それだけじゃないです…疲れて重かった体が…凄く軽くなりました」

 

2人が不思議に思う中、ゼノは腕をコキコキと鳴らした。

 

「さぁて、体力が全快したことだし、もう一戦いくか」

 

『え…』

 

 

その後、岩場からとてつもない程の大爆発と悲鳴が聞こえた。

 

 

ーーーーーーー

 

所変わって イッセーはというと、現在 瞬発力と体力を鍛えるため、タンニーンに火球を吐かれながら追われていた。

 

 

「ギャァァァァ!!」

 

ドォン!ドォン!

 

絶叫しながら逃げるイッセーはジグザグに逃げ、元いた地点が次々と爆発を起こしていた。意外にも素早いので、タンニーンはこれに関しては称賛していた。

 

「ほら、逃げるのはいいからさっさと反撃してこい」

「できたらやってるよぉぉぉ!!!」

そう言い未だに反撃してこないイッセーにタンニーンは心底呆れてしまう。ただでさえ龍王である自分すら足元に及ばない相手もとい銀河神といつも同じ空間にいるのに 何故 ここまで怯えるのか理解できなかった。

 

『Boost!』

「よし!ようやく10回目だ!」

「ほう?10回溜まるまで逃げていたのか」

籠手から出された声に タンニーンは力を溜めるために逃げていた 事を推測した。

けれどもタンニーンは炎を吐く手を緩めない。

 

「デカイのいくぞ」

口に大量の炎を溜めると 球体に圧縮し、一気にイッセーに向かって解き放った。

 

「へ…?」

 

その球体は地面に当たると同時に爆散し、イッセーの体を爆風が包み込んだ。そして、煙が晴れるとその場に巨大なクレーターを作り出した。

だが、そこにはイッセーの姿は無かった。

「どうした?死んだのか?」

そう言いタンニーンは辺りを見回した。すると、背後から魔力を感じ振り返った。見るとボロボロでありながらも自分に向かって拳を突き出しているイッセーの姿があった。

 

「喰らえ!“ドラゴンショット”ッ!!」

『Explosion ッ!』

「おぉ?」

 

イッセーの上昇した魔力と共に形成された赤い魔力弾がタンニーンに向かって放たれた。

その魔力弾はタンニーンの顔に衝突すると同時に爆発した。

 

 

「ふむ……」

けれども、まったく効いていなかった。鱗の一枚が剥がれ落ちただけである。

 

「成長はしているな。前よりも威力が上がっている」

「いや…まったく実感が湧かないんですけど…」

「実感が湧かなくても、俺の鱗を一枚剥がしただけで上々だ。今日はこの辺にしておこう」

そう言った時

 

 

ドォオオオオオオオオンッ!

 

遠くの岩場が大爆発した。

 

「あれ…確かあっちって…」

「あぁ。リアス嬢のクイーンとルークが 修行している場所だな」

「えぇ!?どんな修行したらあんな大技だせんの!?おっさんのよりヤベェじゃん!?」

「そうだな。まぁ俺はまだ力をセーブした程度だ。俺の本気よりはまだまだだ(とは言ったものの…悪魔でもここまでの破壊力は上級の中でも限られてくるぞ…一体どんな修行をしたというんだ…)」

 

タンニーンは爆発した方向を見ながら微量の汗を流した。

 

「まぁ、取り敢えず今日はここまでだ。屋敷まで送ってやる」

ーーーーーーーーー

 

一方で、

 

「ふうぇ〜…」

「目が回ります〜…」

朱乃と小猫は重度の修行によって目を回していた。

 

「よし。今日はここまでだな」

ゼノは倒れている2人の手を掴むと瞬間移動をし、屋敷へと戻った。

 

 

「よっと」

「あら、そっちも終わったのね」

「あぁ………痩せた?」

「…」

瞬間移動をした先で、その場にいたリアスに声を掛けられた。見るとやつれており、目が垂れ下がり少し隈ができていた。

「今日一日中 過去のレーティングゲームの本やビデオを見通してたの」

「確かお前は采配力も必要だったな。前のゲームのようなヘマはすんなよ?もしやったら殺すぞ?『宇宙的に』

「え…宇宙的ってなに…?」

虚を突かれたリアスは悔し涙を流しながらも頷いた。

 

「ま、今回はその成長した采配力を見せてもらう。お前が成長した2人をどこまで扱えるか」

そう言いゼノは未だに目を回し倒れている朱乃と小猫に目を向けた。するとリアスは朱乃や小猫から発せられる異常な魔力量を感じ取り汗を流した。

 

「凄いわね…二人の魔力量が既に私を上回ってるわ…」

リアスは元々 魔力が高い家系に生まれた故に生まれついての魔力は相当だ。そしてそれは年を重ねるごとに増加し続けていくので今のリアスの魔力量は確実に上級の中でも高い方だろう。だが、そのリアスでさえも軽く越しているとなると今の2人はそれ程までに強くなったという事だ。

 

「さて、俺は宿に戻る。じゃあね」

「え…えぇ…。そういえば、今日の夜に顔合わせとしてのパーティがあるのだけど、貴方もどう?」

リアスの誘いにゼノは少し考えた。

「人間である俺が行っても大丈夫なのか?」

「えぇ。それに、美味しい料理もたくさん出るわよ?」

「行く」

ゼノは『料理』という単語に反応しすぐさま行く気満々になる。

「じゃあまた後で」

「えぇ。ってちょっとこの二人は!?」

「運んどけ」

「そんな無責任な!?」

 

ーーーーーーー

 

「よっと」

屋敷へと送ってもらったイッセーはタンニーンの頭から降りる。

 

「今夜のパーティには俺も出席する。ではな」

そう言うとタンニーンは去っていった。

 

「よし、準備するか」

イッセーは支度をするために部屋へと戻ろうとした。すると、身体中が傷だらけの木場が姿を現した。

 

「やぁイッセー君」

「木場じゃねぇか!?もう修行が終わったのか!?」

「まぁね。イッセー君の方もだいぶいい身体付きになってきたんじゃないかな?」

「いや…そうだけど何か気色悪い…」

木場のホモ気を混ぜた言い方にイッセーは引く。すると、今度は身体に隙間が無いくらいまで包帯を巻いた謎の人物が現れた。

 

「おわ!?なんだコイツ!?」

「コイツとは失礼な。私だよ」

いきなり現れた人物は顔の部分の包帯を取った。トレードマークであるデュランダルと青い髪、ゼノヴィアだ。

 

「ゼノヴィア!?何があったんだよ!?」

「いやぁ…ついつい熱中しすぎてしまってね。お陰で部長宅の専属の医者にぐるぐる巻きにされてしまったんだよ」

「それでかよ…完全にミイラじゃねぇか」

すると、トタトタと足音が聞こえ、振り返ると懐かしい修道服を纏ったアーシアが走ってきた。

 

「イッセーさん!皆さん!」

「おぉ!久しぶりだなアーシア!やっぱ修道服が一番似合うな」

「えへへ♪」

見るとアーシアは魔力が増加していた。やはり修業した甲斐があったのだろう。

「あれ?ギャスパーは?」

見渡していると、入り口からいつものように女子用の制服を着たギャスパーが走ってきた。

「皆さ〜ん!」

「ギャスパー!?あれ!?ダンボールは!?」

いつもなら必ずダンボールを持ち歩いている筈のギャスパーの手元にダンボールが無かった。

という事は…

「はい!人前に出られるようになりました!」

「やったじゃねぇか!」

「やったねギャスパー君!」

「偉いぞギャスパー!」

「おめでとうございます!」

ギャスパーの引きこもりの克服に皆は祝宴の言葉を次々と挙げた。

「さて、皆揃ったとこだし、パーティへ向かおうか」

「え?朱乃さんと小猫ちゃんは?」

イッセーはその場にいない朱乃と小猫の事が不思議に思った。リアスは家柄の事もおり、打ち合わせだと思っていたが、後の二人はどうなのだろうか。

 

「なんか、二人共 凄く修行で疲れたらしいから一休みしてから行くらしいよ」

「そうか…」

イッセーは昼間見たあの光景を思い出した。

 

それからイッセー達は支度をするとパーティへと向かった。

ーーーーーーーー

 

「ふぅ…来てみたけども…皆 結構 着替えるのに時間掛かってるなぁ…て言うか俺は格好は制服だし…大丈夫か?」

皆は着替えるのに時間が掛かるようで、イッセーだけ早く来ていた。周りの悪魔達がスーツで清潔感を出している中、自分だけ夏服のままで大丈夫なのだろうかと不安になっていた。

すると、

「よぅ。久しぶりだな」

「先輩!?」

背後から懐かしい声がしたと思い振り向くと、ゼノが立っていた。しかも、服装が自分と違い 辺りに合わせており、黒のスーツでキッチリと決めていた。そして髪型も三つ編みを垂らすのではなく、肩からかけるようにしていた。

 

「新鮮ですね。先輩のスーツ姿を見るのは」

「まぁね。それより、どう?修行の進み具合は」

「えぇと…まぁまぁですかね…?」

イッセーは頭をかきながら答える。それに対してゼノは無表情のまま「そうか」といい イッセーを下から見上げるように見る。

 

「まぁ見る限り少しは魔力が上昇してるな」

「そ…そうですか!?いやぁ!良かったです!」

意外にも褒めてもらった事にイッセーは若干驚くも少し照れ臭くなる。一方でゼノは持っていた飲み物を一口飲むとイッセーへ鋭い視線を向けた。

 

「突然だけど…一つ聞くぞ?」

「はい?」

ゼノはある質問をした。

「お前はなんで強くなりたい?」

ゼノは疑問に思っていた。イッセーが一所懸命に修行をする理由を。強くなるのは彼独自の理由があるのだと思い聞いてみたのだ。

その質問にイッセーは張り切って答える。

「それは部長や皆を守る為にですよ!」

その答えにゼノは「そうか」と言い飲み物をもう一口飲む。今のイッセーの言葉は決して悪い事ではない。守る為に強くなるのは立派な理由だ。

だが、恐らくそれは今の目標だろう。ゼノは本当に強くなる為の理由を聞きたい為にもう一度質問をした。

 

「最終的にはどうしたいんだ?」

「そ…そりゃあ上級悪魔に昇格して女の子を眷属にしてハーレム王になるんですよ!」

「……そっか」

理由を聞いたゼノは列車内で予想した事と的中してしまい、少し呆れてしまった。

 

 

「じゃあ頑張れよ。…けど、これだけは言っておく」

そう言いゼノは去ろうとする。すると、立ち止まり、イッセーの方へ鋭い視線を向けた。

 

「そのふざけた目的の為だけに修業してると…これから来る敵には対処できないよ?」

「…!?」

レイナーレ以来 聞いたことがなかったドスの効いた声を再び耳にしたイッセーは身体を震わせた。ゼノは言い残した後 食事が並ぶテーブルへと歩いて行った。

 

「…どういう事…だ…?」

イッセーはゼノの質問や忠告に理解がいかなかった。

 

 

ーーーーーーー

 

一方でゼノはテーブルに並べられた料理を丁寧な作法で次々と口に運んでいった。

 

「ふむ…うまいな…」

ナイフとフォークを綺麗に扱いながら次々と料理を口に運んでいった。ゼノの周りには皿が何枚も積み重なっており、周りの悪魔達からは不思議に思われていた。

 

「(誰の眷属ですかね?)」

「(いやぁ分かりませんなぁ…)」

「(華麗な手捌きなんだが…周りに積み上げられてる皿に目がいってしまう…)」

 

ゼノの耳には普通に届いており、五月蝿いから黙らせようかと思いつつも目の前の食べ物に心を奪われているので全然気にしてはいなかった。ナイフとフォークの動きは華麗だが、積み上げられた皿がその芸を台無しにしていた。

 

「美味い…この肉もう一度食べたいな。…」

すると

 

「ちょっといいか?」

「ん?なんだお前か。どうした?」

振り返るときっちりとスーツを着たアザゼルが立っていた。

「ちょっと会って欲しい奴がいるんだが…いいか?」

「ん…まぁいいけど」

ゼノはアザゼルに案内されるがまま その場を去る。

 

そして連れてこられた場所はなんと魔王達が集まる場所だった。サーゼクスやセラフォルーがいる中、一人見知らぬ男性と女性がいた。男性はやや小柄で眼帯と長い髭を持っていた。一方で女性はスーツを着ており、背が高く脚が長いThe career womanと呼ぶに相応しい程 凛とした女性だった。

 

「あぁ。銀河神様、いきなりお呼び出しして申し訳ありません」

「別にいいよ。それよりその人誰?」

ゼノはサーゼクスにその初老の男性について聞いた。すると その男性は顔を一気に青くさせた。

 

「さ…サーゼクスや…まさかこの方が…」

「はい。地球を含めた北と南の銀河を治める神 『銀河神』様です」

その瞬間 初老の男性は顔面が真っ青になった。

 

「(えぇ!?この前 駅で見かけた子供が!?や…ヤバイ…どうしよ…)」

するとお付きのキャリアウーマンは耳打ちをした。

 

「取り敢えず名前を名乗りましょう。ワザワザ来ていただいたんですから…」

「そ…そうだな…」

その男性はゼノに近づくと頭を下げる。

 

「お初にお目見えになります。私は北欧神話『アースガルズ』を統治する主神『オーディン』と申します。そしてこちらは私護衛である戦乙女『ロスヴァイセ』です。よろしくお願いします」

オーディンと名乗った男性に釣られロスヴァイセと呼ばれたキャリアウーマンも深々と頭を下げた。

 

「俺は黒崎ゼノ。公共の場以外ではタメ口でいいよ。んで?用はこれだけか?なら戻らせてもらうよ」

そう言いゼノは再び食事へと手をつける為 その場を去っていった。

ゼノが去ると同時にオーディンの額から汗が流れ出た。

 

「ふぅ…あれが銀河神様か…見た目はただの人間じゃったが…発せられる気迫か化け物じゃったのう…」

「言っておきますがオーディン殿…くれぐれも『宇宙一の美女を紹介してくれ』などと卑猥なお願いはなされませんように。私達が住む冥界、そして天界、更に各神話系統なぞ、あの方にとっては何の相手にもなりません。すぐに破壊されますよ」

昔からアザゼルと同等かそれ以上のスケベであるオーディンに最新の注意をサーゼクスは促した。それに対してオーディンも分かっているようだ。

 

 

「そんな事ぐらい承知しておる…儂もそこまでバカではないからなぁ」

 

もし万が一 駅で子供として見ていた事がゼノの耳に入ったら確実に一発 ぶん殴られるだろう。

 

ーーーーーーー

 

一方でパーティに朱乃と共に途中参加した小猫は とある森の中へと来ていた。その理由は 会場に突然 迷い込んできた黒猫。小猫はそれを見た瞬間 何かを感じ取ったようでその黒猫の後を追いかけてきていたのだ。

 

そして、現在の場所へ着いた瞬間 その黒猫は木に登ると女性へと変化した。

その姿を見た瞬間 小猫はゆっくりと肩を震わせながら口を開く。

 

「姉様…」

目の前にいる黒い髪の女性こそ 小猫の姉である『黒歌』だった。

 

「わざわざ誘いに乗って来てくれるなんてお姉ちゃん感動しちゃうニャン♪」

まるでふざけているかの様な口振りで猫の様に振舞ってきた。小猫は過去を思い出し少し後ずさりながらも耐える。だが、いるのは黒歌だけではなかったのだ。

「おうおう、黒歌、コイツか?妹ってのは」

会談の時に現れた 現 闘仙勝仏 『美猴』だ。

 

「姉様…どうしてここに…?」

「まぁ話す前に…出て来なさいよ。そこのお二人さん」

黒歌は横にしていた状態を起き上がらせると小猫の後ろの木に目を向ける。

 

「俺らのように『仙術』使ってる奴だと、気の動きで分かっちまうのよ」

美猴の言葉に観念したのか、隠れていた者達はゆっくりと姿を現した。

 

「部長!イッセー先輩!」

隠れていたのはイッセーとリアスであった。二人とも 小猫の動きを見ていたようで不審に思い後をつけて来たのだ。

イッセーは美猴を睨みつけた。

 

「よう猿。ここにいるって事は今からパーティを襲撃するのか?」

その問いに美猴はケラケラと笑いながら答える。

「違ぇよ。俺は暇だったから付き合ってやってるんだよ。ウチの黒歌が妹を連れ出したいという用にな」

『!?』

美猴の言葉にリアスは目を鋭くさせ黒歌を睨んだ。

 

「黒歌…どう言う事かしら?」

 

リアスは若干 怒りを混じらせながら黒歌へ問う。その怒りに黒歌は臆する事なく答える。

「だから、白音をいただきにきたのよ。元々それは私のモノなんだし」

「なんですって…?」

黒歌のことばにリアスは出会った当初の小猫を思い出し青筋を浮かべた。

 

「貴方の所為であの子がどれほどの辛い思いをしてきたか分かっているのかしら?」

「そんな事…知ったこっちゃないわ。ただ単に『邪魔』だから置いていった。それだけよ」

 

「ッ!」

「テメェッ!」

黒歌の想像もつかない程 の非道なる言動にリアスはもちろん イッセーも堪忍袋の尾が切れた。小猫は俯く。

 

「小猫ちゃんはテメェには絶対やらねぇ!小猫ちゃんはウチの立派な部員なんだよッ!」

「へぇ…勇ましいわね」

黒歌は妖艶な笑みを浮かべると全身から邪気を漂わせた。

 

 

 

 

「もうめんどうだから殺すニャ。それからでも遅くないし」

発せられた邪気にイッセーは勿論 リアスも身体が震えた。彼女ははぐれ悪魔の中でも希少なSS級。強さは測りしれないだろう。そして、空気の色も変わった。空が灰色に染まっており、なにやら虹彩のようなツヤが見える。『結界』を張られたのだ。

 

「これで邪魔者は入ってこられないわね」

「という訳で、楽しませてくれよ?赤龍帝」

 

ーーーーーーー

 

一方で 結界が張られた範囲内に一体の龍が迷い込んでいた。『タンニーン』だ。そして、額には向かい風をものともしなずに仁王立ちをするゼノがいた。

「へぇ…結構広い結界だな。これも禍の団って奴の仕業か?」

広大な森を包む結界を見ながらゼノはタンニーンへと質問した。

「恐らくそうでしょう。人数は…手練れが二人と言ったところでしょうか」

「みたいだ」

ゼノは正面へ目を向けた。

 

「さて、黒歌は成長した小猫を見てどう思うかな?」

 

その目には焦りなど感じさせなかった。感じるのは自分の弟子がどれぐらい進化できているかのワクワク感。ただそれだけだった。

 

 

 


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