ハイスクールD×D 破壊を司る神の弟子   作:狂骨

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冥界へ

時の巣へと着いたゼノはすぐさま魔神サルサが姿を現した事を伝える。時の界王神は一瞬驚くもすぐさま持ち直した。

「本格的に攻めてくるのは時間の問題ね…それに場所も特定できないし…手の打ちようがないわ…」

時の界王神は顔をしかめつらせどうするべきか考える。

「やばい時は悔しいけどヒット達を呼ぶしかないな…。まぁいっか。そろそろ俺は行くよ」

「うん。気をつけてね」

ゼノは時の界王神と別れると地球へと戻っていった。因みにゼノは短期間の間に界王神の『瞬間移動』を会得したようで楽々と地球へと戻れた。

ーーーーーー

次の日の朝

 

「じゃあ行ってくる」

「お土産たくさん買ってきます…」

「楽しみにしていてください」

 

「いってらっしゃい♪」

「行ってらっしゃいです!」

ゼノと小猫と朱乃はサリとティアマットに手を振ると家を後にし集合場所である駅へと向かっていった。

 

ーーーーーー

 

そして駅に着いたゼノ達はやがてリアス達やアザゼルとも合流し全員揃ったところでリアスが懐から一枚のカードキーを取り出しエレベーターに通した。

「なんだそれ?」

「冥界行きの特急がある階へ行くためのカードよ。場所は近いのだけれどこれが無ければ普通の人は一生辿り着けないわ」

「成る程。まぁ既に変な気配が漂ってたから粗方気づいてたけど…」

「えぇ!?」

するとエレベーターが降下し冥界行きの特急駅へと到着した。

「さ、皆 乗って」

そして皆は冥界行き 特急へと乗った。

ーーーーーーーー

 

数分後

 

特急は歪んだ空間の中を疾走し冥界へと向かっていった。リアスやアーシアはイッセーと共に座っておりいつも通りイッセーの取り合いをしていた。 木場は木場でそのいつもの様子を見ながら笑っていた。 ギャスパーはイッセーから拝借したゲームをやっていた。

また少し離れた所では朱乃と小猫が少々ウトウトと眠ろうとしているゼノの両サイドに陣取っておりすり寄っていた。

 

「朱乃先輩…そろそろ離れてください…」

「うふふ。嫌ですわ♪」

すると薄めになりかけていたゼノの目が突然開き立ち上がった。

 

「!」

「どうしました?」

「……トイレどこ?」

唐突のお手洗い宣言に朱乃は微笑みながら前の車両にある事を教えた。

「ちょっといってくる」

そう言いゼノは前の車両へと向かっていった。

ゼノがいなくなると朱乃はいつも無表情な筈の小猫が最近 表情豊かになっている事を不思議に思い質問した。

 

「小猫ちゃん。何かありましたか?」

「え?なにかって…」

「いつもと違って喜怒哀楽の表情がハッキリと現れるようになってると思いまして。まるで何か吹っ切れたような」

その質問に小猫は笑顔で頷いた。

「はい。先輩が導いてくれたお陰で自分を受け入れる事が出来ました。なので私は恐れず仙術を使います」

「そうですか。私も同じです。ゼノ君が母様に会わせていただいたお陰で私も自分の堕天使の力を受け入れる事が出来ました。小猫ちゃん」

「はい?」

「私と貴方は同じ境遇の持ち主です…これからもお互いに頑張りましょ」

「はい!」

 

「ですが正妻の座は譲りませんわ」

「ニャ!?」

朱乃のいやらしいウインクに小猫は腑抜けた声で驚く。

ーーーーー

 

「ふぅスッキリした…」

トイレを済ましたゼノは入り口から出て元の席へと向かった。すると

「ぎ…銀河神さま…少しお時間いただいてもよろしいでしょうか…?」

「何だ?」

皆から離れた場所で座っていたゼノヴィアが突然ゼノを呼び止めた。その顔はやや赤く染まっており何やら悩んでいるかのようだった。

「あ…あの……いえ…なんでもありません…」

「そうか」

そう言いうとゼノは席へと戻った。

ゼノが戻るとアーシアとリアスがイッセーの取り合いをしており 騒がしい中に入るのは苦手なのでアザゼルの近くへと座った。

 

「おや?銀河神殿。元の席に戻らなくていいのですか?」

 

「騒がしいからやだよ。それより、会議とか重要な場合意外ではタメ口でいいよ。師匠と違って俺はあまり崇められるのは嫌いなんだよ。それに一応俺も生徒だし」

 

「では遠慮なく…率直に聞きたいのだが…お前から見たらイッセー達はどれぐらい進化していると思う?」

その質問にゼノは持ってきたバッグの中から麦茶を取り出し飲みながら答える。

 

「イッセーはまずバランスなんとかを使わなければあんましだな。筋肉も一般人並みといえる。その上 戦い方もシンプルすぎる。小猫の教えが身体に染み付いてないと言えるな。進んでるかいないかと言えば進んでない」

 

「厳しいな…」

 

「他はというとリアスやアーシアは魔力が重点的。木場は結構前に手合わせして以来何もしてないから分からん。ゼノヴィアも同じくだ。なぜそんな事を聞く?」

 

「実は冥界に行くと同時に奴らを鍛えてやろうと思ってな。イッセーはバランスブレイカーに至らせ、リアスは統率力 、アーシアは治癒魔力の効率化 などなどだ。アイツらの力はちょっと工夫を入れてやるだけでも格段と強化されるからな」

 

「へぇ。まぁ好きにやってろ。俺は俺でぶらぶらするから」

 

「そうか。その前に一つ聞きたいんだが……」

 

「なんだ?」

アザゼルはジト目で気づかれないように朱乃と小猫を指差す。

「あの二人…魔力が爆発的に上昇してるんだが…何かあったのか?」

 

「簡単だよ。鍛えてやったんだ」

 

「やはりな」

ゼノの真顔の答えにアザゼルは納得した。ゼノからは大したことはないがアザゼルにとっては大した事であり、アザゼル目線だと朱乃から発せられる魔力量がほぼ最上級そして小猫が最上級の一歩手前レベルにまで上がっているとの事だった。

 

「アイツらは目的意識がハッキリしてるからな。ちょびっとだけ手を貸してやった」

 

「ちょびっとであれか…だったらイッセーも鍛えてやった方がいいんじゃねぇか?」

 

その言葉にゼノはあっさりと拒否する。

「目的意識がハッキリしてない奴を強くしてどうすんだよ。それにアイツの場合 女に囲まれたいって願望だろ?そんな自己中心的な考えを持つ奴を強くするなんて本当に嫌だ。万が一それが理由で向こうからお願いされたら確実に殴り飛ばしてるよ」

 

顔の影を強くしながら理由を語るゼノにアザゼルは「恐ろしい…」という表情を浮かべた。

 

「だがよ。ハーレムでもいいじゃねぇか。男の夢だぜ?」

 

「知るか。そんなくだらない事は自分の力で叶えろの話だ」

アザゼルの言葉も一理ある。男の欲求として多くの女を側におきたいというのは夢でもあるといえる。けれどもゼノにはその欲求は通じない。

 

すると

「お二人とも。お話の途中で申し訳ありませんが切符を確認してもよろしいですか?」

 

「おっと。すまんすまん」

髭を生やしスーツを着こなした男性が現れた。彼の名前は『メイナード』といい。この冥界行き特急の車掌である。

アザゼルは懐から何かライセンスらしきものを取り出すと車掌に渡した。ゼノも事前にリアスから貰った切符を見せる。

「では失礼します。まもなく次元の狭間を突破しますので下車のご用意を」

そう言うとメイナードは前の車両へと行った。

 

「もうすぐグレモリー領に着くだろう。だが、俺とお前はまだ降りん。俺は堕天使領に、お前は入国審査を受けねぇといけないからな」

 

「ッ…めんどくいさな…受けなきゃいけないか」

 

その後特急は次元の狭間を通過し抜けると冥界へと辿り着き グレモリー領へと到着した。

 

『お帰りなさいませ。リアスお嬢様』

降りたと同時に目の前には100人程のメイドや執事がお出迎えをしていた。

「ひ…人がいっぱいれすぅぅ!?」

あまりの大人数に人見知りかつ引きこもりのギャスパーは直視できずに小猫の後ろに隠れた。

その後イッセー達が降りると列車は動き出しゼノと皆は別れ馬車へ乗車しリアスの屋敷を目指した。

 

 

 

その様子を見送る中 ゼノの頭に何かが通る。

 

「ん…?なんだこのデケェ気は?しかも七つもある」

列車の中 ゼノは冥界の地平線の彼方へ目を向けそこ一箇所から伝わってくる巨大な7種類の気を感じ取った。

 

「まぁいっか」

別に気にするほどでもないと思い袋から出したお菓子を頬張り始めた。

 

ーーーーーー

 

皆と別れたゼノは入国審査を受けるためにアザゼルに案内されていた。

 

「すげぇな。冥界ってこんな賑やかだったのか」

「あぁ。冥界は他の神話系統の奴らが集まる場でもあるからな。結構広いぞ」

周りの景色を見渡しながら話している内に受付口に着いた。

 

「俺は先に出口で待ってるからな。神様専用の窓口は恐らく一番向こうにあると思うぞ」

 

「分かったよ」

ゼノはアザゼルと別れると言われた通りに並ぶ窓口の中 一番端にある窓口へと向かった。見てみると他の窓口よりも入り口が巨大かつ豪華な仕様となっており如何にも一味違う感じを出していた。

 

「すいません。受付お願いできますか?」

「はい。かしこまりました。ではこちらへ必要事項をご記入ください」

受付嬢から渡された紙に直筆で記入し終え提出した。したと同時に受付嬢の顔が凄い事になったのは分かるだろう。そしてその後、簡単な持ち物検査等で入国審査は終わった。出口を通り冥界の通りへと出てゼノはアザゼルを探した。

すると

「どうしました?」

突然声をかけられ 振り向くと銀髪の長髪でスーツを着たキャリアウーマンの様な女性が立っていた。その女性は中腰になり話しかけてきた。

「あの…さっきからキョロキョロしてますが…親御さんとはぐれてしまったのですか?」

恐らくこの女性はゼノを迷子だと思い込んでいるようだ。まぁそれもそうだ。ゼノの身長は小学六年とほぼ変わらない高さなのだから。一方でゼノは首を横に振る

「迷子じゃない。ただ人を探しているだけだ」

すると

「おーい。ここにいたか。探したぞ〜」

振り向くと手を上げながらこちらへ向かってくるアザゼルの姿があった。

 

「ようやく見つけたよ…ったく。じゃあ失礼」

ゼノはその女性から離れるとアザゼルの方へと歩いて行った。その瞬間に女性の顔が驚きに満ち溢れた。

 

「おぉこんなところにいたのか。ほれ、行くぞ。ん?おぬし何かあったのか?」

一味違う衣装を纏った老人が現れその女性へと話しかける。その老人は女性の向いている方向へ目をやる。

 

「はは。アザゼルか。久しいの。お前は会うのは初めてか?なら驚くのも無理ないのぅ」

 

「い…いえ…総督殿の方ではなくて…隣にいる…」

「ん?」

 

老人は女性が指をさしたアザゼルの隣にいるゼノへ指をさした。

「ハッハッハッ!奴めようやく子供を作りおったか!めでたいめでたい。後で出産祝いを送らんとな!ほれ、行くぞ」

老人はゼノをアザゼルの子供だと勘違いをし高笑いをすると女性の肩をたたき女性と共にこの場を去った。

 

ーーーーー

 

「んで?これからどうするんだ?」

人混みの中を歩く中ゼノは隣にいるアザゼルにこれからの予定を聞いた。初めて来た場所なら流石に自由に動くのは避けた方がいいと考えたゼノはアザゼルの予定を元に動こうと思っているのだ。

 

「取り敢えず食事だ。サーゼクスが冥界でも屈指の高級店を予約してくれたそうだからな。その後 俺は堕天使領へ戻るがお前はどうする?」

 

「う〜ん…俺もホテルにするよ。神と知れてるなら、リアスの屋敷だと気を使われるからな」

ゼノや皆は事前にリアスから自分の実家で泊まるという事を聞かされていたのだが考え直してみるとゼノは神なので向こうにも迷惑が掛かると思い急遽 予定を変更した。

 

「まぁその方がいいかもな。だったらソーナがいるシトリー系列のホテルをすすめるぞ。あそこなら恐らく大丈夫だろ」

 

「シトリー…って確か生徒会長の実家だっけか?」

そう言いゼノの頭の中に眼鏡をカチャっと整えるソーナの姿が浮かんだ。

 

「そうだな。因みに他の生徒会もそのホテルに泊まるそうだ」

 

「成る程。それならいっか」

そう話していると目的地である店へと着いた。外見はやはり高級なだけあって豪華であり 明らかに予約制という感じが漂っていた。

 

「ここか」

 

「そうだ。入るぞ」

ベルの音と共に中へ入ると燕尾服を着用したオーナーらしき男性が立っていた。

「お待ちしておりました。総督殿 銀河神殿」

 

「サーゼクスとセラフォルーは来てるか?」

 

「はい。展望席でお待ちです。どうぞこちらへ」

その男性は2人を展望席へと案内した。

 

ーーーーーー

オーナーに案内された展望席は入り口から2フロア上がった場所にある屋上にあった。

広い場所に複数のテーブルが設置され そこから冥界の空や街の風景を眺める事ができていた。

すると真ん中の席にサーゼクスとセラフォルーが向かい合うように座っていた。

 

「よう。会談の時以来だな。サーゼクスとセラフォルー」

「お久しぶりでございます…銀河神殿…」

軽く会釈したゼノはサーゼクスの隣へアザゼルはセラフォルーの隣へと座った。因みにテーブルが異常に大きく円形で中華風の雰囲気を漂わせていた。

オーナーは頭を下げ戻っていくと展望席には4人だけとなった。

するとサーゼクスとセラフォルーはゼノに対して頭を下げた。

 

「何故 頭を下げる?」

ゼノの疑問にサーゼクスは理由を述べた。

「前回の会談の際…私たちの同族が貴方方 神々への無礼を働いた事に関して謝罪させていただきたいのです…」

「本当に申し訳ございませんでした…血筋ではありませんが…同じレヴィアタンの名を冠する私からも改めて謝罪をさせてください」

2人は深々と頭を下げた。それに対しゼノは頭を上げるように言う。

「それに関しては気にしてないから大丈夫だ。頭を上げろ」

「で…ですが…」

「いいからいいから。それにこれからメシ食うのにそんな事されちゃマズくなるだろ」

ゼノの言葉にサーゼクスとセラフォルーは御礼を言うと頭を上げた。するとゼノは付け足す。

「あと、会談の時以外はタメ口でいいよ。俺は堅苦しいのが嫌いだからな。それともう一つ…俺が神である事は公言するな。好きに観光できなくなるからな」

「そ…そうですか…分かりました」

2人がいつもの雰囲気へと戻るとゼノは内心ワクワクしながら質問した。

「ところでメシはコースか?」

「うん。一応10品つく形かな。人気TOP10を下から順に出してもらうようになってるよ」

「成る程。楽しみだ」

 

その後

食事を終えたゼノは口元をナプキンで拭う。

 

「ふぅ…実に美味だった」

「口に合ってよかったよ。足りたかな?」

「あぁ。満腹になった」

 

 

グゥゥゥゥゥゥゥゥ

 

 

 

突然ゼノの腹部から獣の唸り声が聞こえた。

『………』

「大丈夫だ。今のは屁だから」

(((もっとダメだろ!?)))

 

 

「んん…この後君はどうするんだい?我々は明日の若手悪魔の会合の打ち合わせをする為に一時 屋敷へ戻るが」

サーゼクスの質問にゼノはふぅと息をつくと答えた。

「取り敢えずホテルに泊まる。それで明日から俺も修行するよ」

『!?』

その言葉に皆は目を丸くした。アザゼルは汗を垂らしながら質問する。

 

「星を破壊する程の力を持つのに修行するのか?」

その質問にゼノは目を鋭くさせて答えた。

「あぁ。最近鈍ってるからな。それと……一ついいか?」

「なんだい?」

ゼノは冥界に来た時からずっと感じている巨大な気の正体を知るべく冥界に詳しいサーゼクス達に質問した。

 

「ここに来てから妙にデカイ気が感じ取れるんだ。しかもメチャクチャ遠くから。それに一箇所に7種類もある」

『?』

ゼノの言葉に理解できず3人は首をかしげる。

「旧魔王の奴らか…?いや…違うな…」

「3柱神のシヴァ殿達…?いや…」

サーゼクスとアザゼルは7人でゼノがデカイと言わしめる程であるならばその力は確実に神クラス以上だと考え次々と思い浮かぶ相手を連想した。だが、どれも当てはまらなかった。

 

「まぁいいか。取り敢えず宿に行かせてもらう。お前が仕切るホテルはどこだ?」

「えぇとあそこです」

ゼノは結界をパンチで壊すとその場からセラフォルーの指差す高級ホテルへと飛んだ。

 

「サーゼクス…今度から質より量にした方がいいぞ…」

「そうだね…」

先程のゼノの腹の音に3人は確実に足りていなかったと理解した。

因みにこの後 偶然ゼノが取った部屋の隣はソーナの部屋であり、それを聞いたソーナはショックのあまりぶっ倒れたそうだ。

 

 

ーーーーーーー

 

翌日

 

グレモリー邸の広い庭でアザゼルは皆とミーティングを行っていた。

「よ〜し、お前ら。今日からは各個人で修行を行ってもらう。木場は確かもう相手が来てるんだっけか?」

「はい。一から鍛え直してもらうつもりです」

「よし。次、ゼノヴィアはデュランダルを完璧に使いこなせるようにしろ。極めれば聖剣の中でもトップクラスの破壊力を持つからな」

そう言われた騎士2人はこの場を去りそれぞれの修行場所へと向かっていった。2人がいなくなるとアザゼルは小猫と朱乃へ目を向けた。

「お前らは自分の本来の力を受け入れる事だが…見る限り心配はいらんな」

アザゼルの言葉に小猫や朱乃は自信を持つ表情で返す。

 

「はい。仙術については自分で修行をして向上させていきます」

「私も同じです。ですがまだ使いこなせない部分はあります」

アザゼルは小猫や朱乃の目を見て迷いが消え去った事を安心し頷いた。

 

「よし。なら各自で励んでくれ。朱乃は光の扱い方がまだ分からないならお前の親父を修行相手として呼ぶが…大丈夫か…?」

再びアザゼルは朱乃へと問う。朱乃は今まで父親を嫌っており堕天使の力を封印していた。アザゼルの心配に朱乃は真っ直ぐな答えを出す。

 

「はい。皆の力になれるなら私はどんな相手でも構いません。それに父と一度 話してみたいと思っていたので」

「そうか。分かった」

朱乃の真っ直ぐな答えにアザゼルは頷いた。幼少期から付き合いが長いリアスも朱乃が多少 自分を受け入れている事を知ると涙を流した。

 

「さて、次はギャスパー」

「はい!」

名前を呼ばれギャスパーはビクッと震わせながら返事をする。

 

「お前は人前に出れることから始めろ。レーティングゲームの際は多くの観客がいる中で行われる。その時に引きこもりの所為で神器が発動出来なかったらどうしようもないからな」

「は…はぃぃ…」

ダンボールから発せられる腑抜けた返事にアザゼルは大丈夫かという表情を浮かべた後にアーシアへ目を向けた。

 

「次にアーシア、お前は 魔力の量が高い上に性能のいい神器を持っている。それをもっと効率よくさせろ」

「えぇと…例えばどんな風に…」

「そうだな。遠距離からの回復を出来るようにすると言った方がいいな。お前は傷口に触れないと回復できないだろ?ゲームの場合それがデメリットとなる。だとしたら遠方から出来るようになればそのデメリットは解消され勝率がグッと上がるという訳だ」

「なるほど……つまりこういう事ですか?やっ!」

そう言いアーシアは手を前に出し投げるような姿勢を作った。

 

「まぁそんな感じだ。次にイッセー」

「はい!」

「お前はドラゴンだから手っ取り早くドラゴンと修行してもらう」

「へ…?」

アザゼルの言葉が終わると同時にその場を黒い影が覆った。何だろうとイッセー達は上を見上げた。そこには腰に装甲を身につけて黒い攻殻を持つ巨大なドラゴンが翼を羽ばたかせホバリングしていた。

 

「な…なんじゃありゃぁぁぁ!?」

「魔星龍(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)タンニーンだ。お前の修行のために来てもらった。頼むぜタンニーン」

「フン。サーゼクス殿の頼みだからな。そこは忘れるなよ総督殿」

タンニーンは地上に着地すると籠手を見つめた。

「久しいなドライグ」

『あぁ。懐かしい限りだぜタンニーン』

「知り合いかよ!?」

まるで知り合いかのように話すドライグにイッセーは突っ込む。

 

「取り敢えず 死なない程度に鍛えてくれ」

「了解した」

そう言うとタンニーンはイッセーを頭が下を向くように掴むと近くの山を指差す。

「取り敢えず リアス嬢、あの山を貸してもらえるか?」

「えぇ。思う存分に鍛えてちょうだい」

「うそーん!?部長!!!助けて〜!!」

リアスの鬼が発動するとイッセーは涙を流す。

「もう」

すると、リアスはイッセーのところまで飛ぶと優しく慰めるために顔にゆっくりと手を添えようとした。

 

ところがどっこい。

 

バシンッ!

「アウチッ!?」

リアスは顔ではなく背中をバシッと叩いた。

「しっかり頑張りなさい!私も応援してるわ!」

満面の笑みを浮かべながらリアスはイッセーから離れると地上に戻った。

 

「そんな〜!!!!嬉しいけどなんか嫌ぁぁぁ!!!」

「頑張れ〜♪」

タンニーンは涙ぐむイッセーを容赦なく連れ去っていきその姿をリアスは笑顔で手を振りながら見送った。

 

「ちょっと待ってタンニーンさん!!この体勢だけどうにかして!?頭に血が!血がぁぁぁ!!!」

「ドライグよ。人間界はどうだった?」

『あぁ。悪くないな』

一方でタンニーンは頭に血が上り死にそうなイッセーを放ってドライグと雑談していた。

 

ーーーーーーーー

「さて、イッセーも行ったとこだし。次はリアス」

「何かしら?」

アザゼルはリアスへ一枚の紙を手渡す。

「お前は眷属を従える者として、どうな状況下でも臨機応変に対応できるようにしろ。その為にここに記してある過去のレーティングゲームの結果や状況を調べることだ」

「………」

その紙を見た瞬間 リアスの顔がガチッと固まった。

「ん?どうした?」

「これ……」

リアスは恐る恐る見せた。

 

『アザゼルちゃんへ

いつでも待ってるわ。 また来てね♡

駒王キャバ嬢クラブ ヨシコ より』

 

「間違えたこっちだ」

アザゼルはいち早くリアスから取り上げると本物の紙を手渡す。

「じゃ、頑張れよ」

「今のなに!?」

後ろから聞こえるリアスの声に耳を貸す事なくアザゼルは朱乃と共にこの場を去った。

 

 

 

 


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