修行をするため重力が高い星へと来たゼノはまず朱乃達へ慣れさせる為にまずパワー型の小猫には腕立て 魔力重視の朱乃には滝行を行なっていた。
小猫side
「ふぅ…16……17…18…」
まず第一の課題としては地球で出来ることをこの星でも出来るようにする。小猫は現在 筋肉の基本となる腕立て伏せや背筋等の筋トレを行なっていた。因みに内容は腕立て→腹筋→背筋→バービー→スクワットを5セットからの1000mジョグそしてダッシュである。陸上選手のアップ方法とほぼ変わらないがこれだけでも十分力がつく。そして最後はゼノとの組手である。因みに監督はゼノであり、朱乃の方は魔力に詳しいティアマットに任せていた。
「……39……40…!」
ノルマ回数に到達すると小猫はその場で仰向けに倒れた。
「疲れました…」
「お疲れ」
5セットを終えた小猫の身体は酷くやせ細っており顔色も悪くなっていた。それを察したのかゼノは何処から汲んできたのか分からない透き通った水を頭にかけた。
「ぐぼぼぼ…びずばぼういいでず(水はもういいです)…」
すると小猫の身体から汗の放出が止まると同時に一気に疲れが吹き飛んだ。
「な…!何ですかこの水…飲んだ瞬間…水の中にいる感覚に見舞われました…」
「重力が高い分 果物や水が進化してるんだよ。じゃあ次行くぞ」
そう言い回復した小猫をゼノは立たせて次のメニューへと移行した。
「じゃあ一キロジョグ始め」
そう言われた小猫は頬を叩くとその場からゆっくりと足を動かした。
「ふぅ…ふぅ…ふぅ…」
小猫は息をするリズムを掴みながら集中した。考えることはただ一つ 『走りきる』少しでも雑念が入りバランスを崩しさえすればすぐに体勢も崩れてしまうそんな状態であった。
その様子をゼノは上空から見ていた。
(その調子だ。どんどん集中力を高めろ)
するとゼノはその場から飛び去ると滝壺の方へと向かった。
ーーーーー
ーーー
ー
滝壺では 現在朱乃が修行を行なっていた。
行うことは魔力の長期維持 かつ 増量そして強化
その為 今は身体全身に魔力を体の奥底から出しバリアを張りながら滝行を行なっていた。
因みに少しでも集中を切らすと一瞬で水底にドボンと落とされる。そうならない為朱乃は今 『魔力を出す』事だけを考えていた。
だが来て1日目の朱乃では2〜3分が限界である。
休憩のため滝から出た朱乃はティアマットから食べ物を与えられた。
「どうだ?キツイだろう」
「はい…まるで拳に殴られているような感覚です…」
「それが普通の水と思うまでやらなければ駄目だ。そしてバリア維持も最低では10分は持たせた方がいい。レーティングゲームでも魔力の尽きは敗因の原因にもなるだろう?」
「そうですね。それに敵に見つからなかったとしても回復には時間を掛けてしまいますしその時間の内に仲間がやられてしまう可能性もあります」
「そうだ。魔力を高めたり回復速度を上げればそれを防ぐ事ができる。女王には不可欠だな」
すると
「調子はどうだ?」
上空から声が聞こえ見るとゼノがこちらに向かって降りてきた。すると朱乃は今の段階を伝えた。
「成る程。まぁ初心者はそんなもんだろ。取り敢えず今日の目標は5分だ。少し休んでからまた始めな」
そう言いゼノは飛び去っていった。
「そういう事だ。10分くらい休むといい」
「はい」
ーーーーー
ーーー
ー
「ぜぇ…はぁ…ぜぇ…はぁ…ぜぇ…はぁ…」
一方で小猫の方は無事に1000mを走り切っていた。
「お疲れ。どうだ?慣れてきたか?」
その問いに対し小猫は笑いながら「はい」と答えた。
「走っていくうちに重たい何かが抜け落ちるような感覚でした…!」
「それでいい。あとはダッシュ5本と俺との組手だけだ」
「はい!」
ーーーーーーー
朱乃の方もだんだんと進んでいた。
(集中…集中…)
朱乃は坐禅を組みながら流れ落ちる滝の流れに耐えていた。
「凄いな。あっという間に5分耐えるとは…」
ティアマットは朱乃の成長ぶりに驚いていた。
あれから修行を再開すると朱乃は人が変わったかのように瞬時に滝行に5分耐える事ができたのだ。
ーーーーー
ーーー
ー
「よし小猫。全力でこい」
「はい!」
あれから小猫はダッシュを終え少しの休憩を取った。そして本日の最終メニューであるゼノとの組手が始まった。因みに朱乃も一緒である。
小猫はまず足を踏み込みゼノに向かって右ストレートを打ち込んだ。だがそれはアッサリと受け止められる。
だが、それは予測していたらしく小猫はすぐさま左手を動かしゼノの腹を狙う。するとゼノはもう片方の手で腹に迫ってくる腕を掴んだ。
結果、小猫は両腕を塞がれ、為すすべもないと思いきや、地面を一蹴りした直後にその体勢からゼノの身体へと強烈な両足蹴りを放った。
「うぐ!?」
その蹴りは見事に腹に直撃し、ゼノの握力が弱まると小猫はすぐに手を離し回転しながら着地した。
「へぇ。やるな」
ゼノは小猫の身体能力の成長に賞賛するが、小猫は答えず、すぐさま構え直した。
「いきます…!」
「こい」
その一言と共に小猫は駆け出しその場から跳躍すると空中で体勢を変え水平方向からの蹴りつまりボレーキックを放った。それをゼノは腕で防御すると小猫はすぐさま離れると同時にまた向かってきた。
「セイッ!」
今度はロウキックを繰り出した。だが、その蹴りは跳ぶ形で避けられる。
「とらえました」
その時 状態が浮いているゼノに対し小猫は即座にロウキックを繰り出した脚をすぐさま地面に戻すと手から青い玉を生成し、ゼノ目掛けて放った。
「お…?」
ドォンッ!
それはゼノに見事に当たり、ゼノの身体は爆風に包まれる。
「やるな。ならこっちも少しいくぞ?」
「!?」
突然 爆風が晴れ、無傷のまま現れたゼノは状態を立て直し着地すると即座に小猫の前に移動 そして額にデコピンを食らわす。
「にゃ!?」
「それそれ」
ゼノは次々に小猫の右腕や左腕そして両足へとデコピンを放ち追い詰めた。
「く……」
小猫は何とか後ろへ飛び体制を保つと残りの力を注ぎ回し蹴りを仕掛ける。
「ぜいやッ!」
「ん?」
その回し蹴りは見事ゼノの顔面に当たった。
「いい蹴りだ。今日はまぁここまでだな」
そう言うと小猫の脚をどかす。
「どうでしたか…?」
「重力に縛られてるのに結構動けてたな。いい調子だ」
「そうですか」
小猫はふふと笑うと戻っていき今度は朱乃が前に出た。
「ほんじゃ、次は朱乃だ」
「ハイ!」
呼ばれた朱乃は前に出るとすぐさま魔力をだす。
「行きます!雷光よ!」
すると空に魔法陣が現れ雷に堕天使特有の光が混ざり凄まじい閃光の稲妻が落ちてきた。
「よっ」
それをゼノは横にステップする形で避ける。だがそれだけでは終わらない。その稲妻は地面に落ちると同時に周りに感電した。
「おぉ!?」
流石に予測していなかったのかゼノは避けようとするも、範囲が広すぎた為、モロに受け感電し電気を打ち込まれた。
すると今度は足元に魔法陣が現れそこから上へ伝うように雷光が現れた。
それをゼノは痺れながらも間一髪で避ける。だがその攻撃は止まず脚が後ずさる内に次々と現れた。
「いい成長ぶりだな。こっちもそろそろ行くぞ?」
そう言うとゼノは避けるのをやめ空へと飛び立つ。そして手を出すと何十発もの小さな気弾を朱乃に向けて放った。
「そらそらそらそら!」
「く!」
朱乃は咄嗟に魔力のバリアを張り気弾を防いだ。放った気弾は次々に炸裂し土煙を巻き上げた。
しばらくして土煙が止みあたりの景色が鮮明になってくるとそこにはゼノの姿は無かった。
「ッ!どこに!?」
「ドン」
「!」
気づけば後ろに回り込まれており背中に指を突きつけられていた。
「ま…参りましたわ…」
「よし。これにて今日は終いだな」
そう言うとゼノは掴まれと言い皆と共に地球へと戻った。
ーーーーーーー
地球へと着いた瞬間 小猫と朱乃は今まで感じたことがない感覚に見舞われ小猫はピョンピョンと跳ねた。
「凄いです…風になった気分です…」
「そりゃ重力が違うからな。明日は今日よりもムズくなるからしっかり休んどけよ」
「はい」
小猫が家に戻り、自分も戻ろうとした時、朱乃がゼノを呼び止めた。
「あの……私も…ゼノ君の家にご一緒させたいただけませんか…?」
「は……」
いきなりの要求にゼノは戸惑いを見せながらも拒否を選択する。
「ダメにきまって…「小猫ちゃんはよくて…私はダメなのですか…?」
「う…」
「私は…ゼノ君の普段の生活も参考に強くなりたいと思って……」
そう言いながら朱乃はぐんぐんと顔を迫らせてくる。若干ながら涙目になっていた。
こういう手口にゼノは弱い。
「……いいよ…」
「〜!!」
了承の言葉を聞いた瞬間 朱乃はパァと満面な笑みを浮かべ、鼻歌を歌いながら魔法陣で帰っていった。すると小猫が袖を引いてきた。
「どした?」
「家…大丈夫なんですか?」
「近々マイホームを建てようと思ってるから心配いらん」
「ですが…そのお金とかあるんですか?」
「軽く数十億ぐらい」
「ひょえ〜…」