ハイスクールD×D 破壊を司る神の弟子   作:狂骨

56 / 90
暗黒の力と白き力との激戦

 

ゴォオオオオオオオオオオオオオオ

 

カテレアから放たれた黒い突風は唸りを上げながら周囲のコンクリートによって作られた壁を粉々に破壊し新校舎を崩壊させた。

 

「ん?なんだ?」

外で敵の殲滅作業に取り掛かっていたゼノも突然崩れた新校舎の方へと目を向けていた。

 

ーーーーーーーー

ーーーーー

ーー

 

一方新校舎があった場所ではウイスがギリギリのところでバリアを張ったのが幸いで皆は無償であった。

だが気にすべき事はそれではなかった。

 

「なんだありゃ…」

イッセーが口にこぼす。何故なら、目の前にはカテレアから放出された黒い暴風が一箇所に集まり球体となっていたからだ。

 

その時、その黒い球体が煙のように消えた。そして中から先程とは違い不気味な雰囲気を漂わせているカテレアが姿を現したのだ。

露出の衣装を覆い隠すかのような黒いロングコートを纏い、額からは突き出すように鋭い龍の角が生えていた。

さらに腹部からは先程飲み込んだ暗黒の龍の球が突き破るかのように現れ、その周りにはまるで根を張ったかのように赤い筋が広がっていた。

 

その姿を見たアザゼルは冷や汗を流す。

 

「何なんだこの馬鹿でかい魔力の量は…いくらなんでも『オーフィス』の力を借りたとは思えんな…」

 

「お…オーフィスって…」

 

イッセーの質問にアザゼルは答えた。

 

「『無限の龍神 オーフィス』 最近になって組織名が発見されたテロ集団『禍の団(カオスブリゲード)』の親玉だ」

 

「テロ集団の親玉!?しかも龍神ってことは…!ドライグ!」

 

「(あぁ。俺たち二天龍をも超える力の持ち主さ。現段階で最強のドラゴンだ。だが…)」

 

イッセーの質問に答えたドライグはアザゼルと同じくその異様な魔力量に疑問を浮かべていた。

 

「これ程の魔力…オーフィスとは質も量も全く違う…君らのリーダーは本当にオーフィスなのか…?」

 

サーゼクスは冷や汗を垂らしながらカテレアへと尋ねるとカテレアは不気味な笑みを浮かべながら答えた。

 

「確かに私達『禍の団』のトップはオーフィスです。ですがそれは表での話…」

 

「表……だと…?まさか…!」

 

「えぇそのまさかですよサーゼクス。私達を率いている本当のトップはオーフィスではない。そのオーフィスを超える『神』なのですよ!!」

 

衝撃の事実にサーゼクスやアザゼル達は驚愕した。

 

「この地球上にビルス様達以外にオーフィス以上の力を持つ神など存在するのか…!?」

 

「えぇ。しますよアザゼル。その方のお陰で私はこれ程までの素晴らしい力を手にする事ができましたからね。それと、驚くのはそれだけではありませんよ?」

 

「なに…!?」

 

その時であった。アザゼルに向かって何かが上空から飛来してきた。

 

ドォンッ!!!

 

その飛来した物体をアザゼルは間一髪でそれを避け上空を見上げた。見るとカテレアの背後にもう一つの影があったのだ。

 

「はぁ…こんな時に反旗か?ヴァーリ」

そこにいたのは白龍皇の鎧を身に纏った青年『ヴァーリ』であった。

 

「悪いなアザゼル。此方の方が面白そうでな。コカビエルの運搬中に勧誘されてね『アースガルズと闘ってみないか?』という魅力的な誘いを受けたのだよ。いくらアザゼルでも北のアース神族と闘う事は許さないだろ?」

 

「お前には強くなれとは言ったが『世界を滅ぼす要因だけは作るな』とも言った筈だ」

 

「関係ないさ。俺は闘えればそれでいい」

 

「そうかい。まぁお前が裏切ることは旧魔王派がカオスブリゲードに与っしていると知った時に予想し得たことだがな」

アザゼルは表情をしかめながら言った。その言葉にリアスやサーゼクス達は目を丸くした。

 

「な…どういうこと…!?」

 

リアスがアザゼルの言葉に理解できず驚きの声を上げると、上空にて飛んでいたヴァーリが答えた。

 

「俺は前 魔王の父と人間の母との間に生まれた混血児。俺の真の名は『ヴァーリ・ルシファー』先代魔王ルシファーの血を引くものだ」

そう言った瞬間、ヴァーリの背中からはリアス達と同じ悪魔の翼が現れた。

 

「う…嘘…でしょ…」

 

「事実だ。先代魔王の魔力に神滅具…コイツは俺が知る限り最強の白龍皇になるだろう」

衝撃の事実にリアスは瞳を震わせた。

 

「これで分かったでしょう?旧魔王派は全て禍の団に着いた。よって貴方達の時代はもう終わりなのですよッ!!」

そう言うとカテレアは手に魔力を集中させた。

 

「テメェ…まさかこの都市ごと吹っ飛ばす気か!?」

「えぇアザゼル、世界を変革する第一歩としてまず貴方達三代勢力のトップ…そして破壊神には滅びてもらいますッ!!!!神をも超えた私の力を試すには丁度いいでしょう!!!!」

「ん?まてカテレア…!!」

 

ヴァーリの制止も聞かずにカテレアは小規模な太陽の大きさに固まった魔力をサーゼクス達に向けて放った。

「破壊神と共に 砕け散るがいいッ!!!」

 

ビルスも攻撃対象とされていたのだ。だが、ビルスにとってそんな事は最初からお見通しである。止めるかと思いきやもビルスは薄っすらと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

「調子に乗るな」

 

その言葉と同時に、皆の前に何かが現れカテレアの放った巨大な魔力弾を蹴り上げた。その魔力弾は蹴り上げられると共に上に向かいその場で爆発した。

「な…!?私の魔力が…!?」

奇想天外な出来事にカテレアは目を瞬きさせながら煙が漂うその場を見つめた。

やがて煙が晴れ、そこにいたのはポケットに手を入れながらカテレアを鋭い目で見つめているゼノの姿があった。

 

「ッ!何故人間がこんなところに!?」

 

「人間?ポケットに手を突っ込みながら宙に浮いてる奴を人間と決めつけるなんて随分と………うん。バカだな」

 

「なんだと…!?至高なる魔王レヴィアタンの血を引くこの私に向かって…!」

 

「至高?血を引いてるだけの奴が何言ってんだ」

 

「貴様ッ!」

 

カテレアは魔力弾を生成しゼノへ放った。だがゼノは放たれた魔力弾を人差し指と親指でデコピンを放ち、その風圧で相殺した。

 

「どうした?こんなものか?」

 

「いいえ…まだまだです…!!ガァァ…ッ!!!」

 

カテレアは歯をむき出しにした。その歯は一本一本が犬歯の如く鋭く尖っており、中性的な顔立ちが台無しとなっていた。

 

「さぁ…!貴様の骨と肉を全て喰らい尽くしてやろう…!!」

 

「へぇ。面白い」

両者は共にその場から更に上へと上がった。

 

「……こいよ」

「ギィ…」

ゼノは人差し指で合図するとカテレアを挑発しその場から離れた。その挑発にカテレアは歯を軋ませると手に魔力を纏い離れていくゼノを追いかけた。

 

「グガァア!!!」

「お?」

飛んできたカテレアの拳をゼノは片手でアッサリと受け止める。

「ふむ…(悪魔にしては強いな…やっぱあの腹にある球が力を解放してるらしいな…だが)」

 

その瞬間 ゼノの拳が消え、1秒で星を一周する速度でカテレアの右腕へと撃ち込まれた。光の速度には程遠いが、その速度はカテレアがこちらを向いていたにも関わらず、認識できない程で、その腕を消しとばしていった。

 

「…な!!!」

 

「お前の速さなんてハエが止まる程度なんだよ」

その感覚がカテレアに届くのはその数秒後だった。

 

「がぁぁぁ!!!私の腕がぁ…!!」

 

その膨大な痛みによって、カテレアは無くなった腕の切り口を押さえ込む。

 

「どうだ?これでもまだまだなんだけど」

 

「ぐぅぅ…!!」

そんな時、カテレアの表情が怒りから一瞬 笑みに変わる。

 

「ふ…ふふふ。こんなモノ…!!」

 

その時、球が妖しく赤色に発光した。

 

「お?」

突然の現象にゼノは戸惑う。その光が現れた瞬間、カテレアの消しとばされた腕が神経と骨組みから再生され、僅か1秒で皮ごと元通りとなった。

 

「素晴らしい!何て力だ!これが『再生』か!!」

 

元通りに再生された腕をまるで宝石のように眺めていた。その力は正に人智を越えていた。いくらなんでもここまでの再生能力を秘めた神器は神滅具であっても存在しない。

根源はカテレアが飲み込んだ球だった。

 

「(やっぱりあの球か。早いとこ回収しないと)」

あの球の危険性をいち早く察知したゼノ。だが、カテレアがすんなりと渡す訳が無かった。

 

「さて…この力があれば貴方には力では勝てなくても持久戦なら楽勝ですねッ!!」

カテレアの目が球の色のように赤く光ると、身体中から無数の黒い龍のオーラが現れた。

 

「喰らいなさい!!」

そのオーラは枝分かれに分裂し始め、一斉に襲いかかった。

 

「よっ」

 

ブゥンッ!

 

ゼノは手を横に払い、その時に生じた風圧でオーラをかき消した。

 

だが、

 

「グガァァァァァ!!!!」

「お?」

 

そのかき消したオーラは一瞬で再生し再びゼノへと襲いかかり、ゼノを縛り付けた。

 

ギギギッ……

 

「さぁ、捕らえましたよ?」

「めんどいな」

 

ーーーーーーー

ーーーー

 

「カテレアめ 抜け駆けしやがって。ならば俺はこいつだな」

二人が戦う姿を眺めながらヴァーリは神と戦えない事に落胆し舌打ちを打つとイッセーを見た。

 

「兵藤一誠、運命とは残酷なものとは思わないか?君と俺との質の間には深い深い溝がある」

「…どういうことだ!」

「俺は魔王の血を引き継ぎ白龍皇をも宿した上位の存在…それに比べて君はごく普通の高校生…つまらない。あまりにもつまらなさすぎるよ。これでは何の張り合いにもならない。……そうだ。こういう設定はどうだ?君は復讐者となるんだ。

 

俺が君の両親を殺そう…!!

 

 

「なっ!?」

 

ヴァーリから放たれたとんでもない言葉に一誠は勿論、共に世話になっているアーシアやリアスも驚いた。

 

「そんな勝手な真似はさせないわヴァーリ…」

リアスは怒りを露わにし、滅びの魔力を手に纏いヴァーリへと向けた。

 

「ほう。これは意外な人物が。リアス・グレモリー、まさか貴方が来るとは…まぁ少しは楽しめるだろう」

「イッセーの両親は……私とアーシアのホームステイ…その上、多くの身勝手な振る舞いを許してくれた…本当の家族のように接してくれた……あの二人は……私にとってもう一つの両親だもの…!!!!手を出すと言うなら許さないわ!!」

リアスは涙を流しながら答えた。

 

ーーーーーーー

ーーーー

リアスのその叫び声はその場から離れていたゼノにも届いていた。

 

「(………合格だぞ…)」

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

その叫び声はイッセーの心に響いた。

 

「(部長………ぅぐ……ありがとうございます…俺も部長に任しっぱなしじゃいられねぇ!!)

そうイッセーが心で叫んだ時だった。

 

体の底から何かが溢れてきた。

 

「(な…なんだ!?この異常な魔力量は!?相棒!!)」

ドライグが語り掛けるもイッセーは答えなかった。

ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー

 

一方、現ではイッセーの体から膨大な量の魔力が溢れてその場にいた皆を驚かせていた。

 

「な…!?なんだこの魔力は!?この量…上級どころか最上級レベルじゃねぇか!?」

アザゼルは突然の変化に驚いていた。それはミカエルもサーゼクスも同じだ。

「イッセー…何が起こったというの…」

リアスは驚きのあまりその場で立ち尽くしてしまった。

だがイッセーはその声に耳を貸さないままヴァーリへと近づいていった。

「ヴァーリ…俺の父さんは朝から晩まで働くサラリーマン…母さんは朝昼晩 共に美味い飯を作ってくれる主婦だ…普通だけど俺をここまで育ててくれた最高の親なんだ…それをお前が殺す…?テメェのその気持ち悪い性格や都合で……俺の親を殺されてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

イッセーがそう叫んだ瞬間、籠手が輝き出した。

 

『Welsh Doragon Over Booster』!!!!!!

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

一方、カテレアやゼノもその変化に気づいていた。

 

「ッ!?この魔力は!?」

「よそ見してていいのか?」

カテレアがイッセーの方向を向いた瞬間、ゼノは一瞬の隙を突いた。

「しまった!」

ゼノは体を高速回転し小規模の竜巻を発生させ、そのオーラを引きちぎり拘束から逃れた。

 

「よっと(前にイッセーにやった力…3分の2ぐらい残ってたのか )」

 

ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー

 

「イ…イッセー!?」

「部長…下がっててください…」

イッセーが叫び、赤き龍の鎧を纏うと、リアスの横を通り過ぎ少しずつヴァーリへと近づいていった。一方 ヴァーリは先程の魔力の異常発生に頭を狂わせていた。

 

「(な…何だったのだ今の魔力は…兵藤一誠から放たれたと同時に身体に戻っていった…アルビオン)」

(俺にも分からん…だがあの小僧…魔力の量が先程よりも倍以上に膨れ上がっているぞ…?)

「(そうか…何はともあれ…強くなったのならそれでいい…!!)」

瞬間、ヴァーリは拳を握りしめ、イッセーへと飛び立った。

 

「いくぞ!兵藤一誠!!!!」

その拳はイッセーの頭部へと向けられ、猛スピードで接近していった。

 

その距離が数センチとなった瞬間

 

 

 

 

ヴァーリの拳の軌道が逸れた。

 

 

 

皆は目を疑った。

 

 

「………ゴハァ………」

 

 

そこには、未完成の禁手化状態のイッセーが完璧な禁手化したヴァーリの拳を避け、腹に拳を埋め込んだ姿が映っていた。

 

 

刹那

 

ヴァーリは空高く吹っ飛ばされた。

 

「ガハァッ…!!」

 

その場にいた者は何が起きたのか理解できなかった。

 

一方で吹き飛ばされたヴァーリはなんとか空中で体制を立て直した。

 

「ぐっ……(なんだ今のは…?あの時の俺の速度は軽く音速を超えていた…それを兵藤一誠は躱した…その上俺にカウンターを…)」

(大丈夫かヴァーリ!)」

「あぁ…随分と深くえぐりこまれたがな …ペッ」

ヴァーリは血を吐き捨てるとイッセーのいる方向を見た。だが、そこにはもうイッセーはいなかった。

 

「ッ!」

その時、背後から何かが自分に目掛けて振り下ろされようとした。ヴァーリはすぐさま振り向きながら後退し体制を整えるため動いた。だが、それは叶わなかった。

 

ドンッ!!!!!

 

刹那

 

ヴァーリはその場から地面へと叩き落とされた。

 

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

ヴァーリが落とされた音はカテレア達の元へも届いていた。

 

「今の音……まさか…ヴァーリが!?」

カテレアはヴァーリ達がいる方向へと首を傾け状況を確認した。だが、その動作が、ゼノにとっての最大の隙であった。

 

「よそ見するなよ」

その瞬間 マッハを超える速度で何百発もの練撃が放たれた。その練撃は無数の光が軌跡を残しながら次々とカテレアへと吸い込まれていくように放たれていった。

 

「な…グァァァァァァァァ!!!!!!」

カテレアが気づいた瞬間にはもう遅かった。身体の至る所に次々と巨大な衝撃が伝わってくる。カテレア自身は何が起こったのか分からないが、痛みだけが精細に伝わっていた。

 

「悪いな。数秒 隙だらけだったから500発くらい打ち込ませてもらった」

「う…ゔぐぅ……」

カテレアは腹を抑えながら苦痛の声を上げた。幸いにも球の力でその傷は瞬時に回復した。だが傷は回復できてもダメージまでは回復できずカテレアは少し表情を歪めた。

「さて、そろそろ決着をつけよう」

「グァアァァァァ!!!(ヴァーリ…!そいつらを殺して早くこちらに来い…!!!)」

 

ーーーーーーーー

ーーーーー

ーー

 

一方地面に落ちたヴァーリはその落下した衝撃で肋骨が何本かやられていた上に鎧も砕かれていた。

 

「グハァッ!…(く…肋骨が4、5本やられたか…一体奴に何が起きたというのだ…!?)」

ヴァーリは吐血した血を拭いながらゆっくりと降りてくるイッセーを睨んだ。

 

「どうだヴァーリ!お前を殴ってスッキリしたぜッ!!」

だが、イッセーも魔力を使ってしまったのか少し疲労していた。

 

「スッキリ?ハッ!どちらかが戦闘不能になるまで終わらないさ!」

そう言うとヴァーリは再び鎧を纏うと戦闘態勢へと入っていった。

 

(相棒、テメェの魔力もそろそろ限界だ。さっきのフルバーストで結構使い果たしちまった。この場合は逃げるのが得策だがそうはいかんだろう?)

「あぁ。俺だけ逃げる訳にはいかねぇからな!」

ドライグの問いにイッセーは答えると、辺りを見回した。その時、イッセーは足元に転がっていたヴァーリの鎧の球に目をつけ、それを掴み上げた。

 

「ドライグ…神器は想いに応えて進化するんだよな…?」

(相棒…まさかお前それを…)

「そのまさかだよ」

(ハハハハハ!面白い。ならば俺も覚悟を決めよう!)

イッセーはその球を自分の右腕へとはめ込んだ。

その瞬間、思いもよらぬ激痛が全身に回った。

「グハァ!!木場は不可能とされる聖と魔の融合ができた!だから俺はお前の消失の力を神器に移植してやる!!」

 

(ハッ!バカな事を。我らは相反する存在。それは自滅行為だぞ?)

アルビオンの笑いにドライグは答える。

(アルビオンよ。俺はこの宿主 兵藤一誠と出会って一つ学んだ。バカも貫き通せば不可能を可能にするとな!)

「バカで結構!!!才能で勝てなければ馬鹿げた可能性に俺は掛ける!!」

 

そう言った瞬間、イッセーの右腕が光ったと同時にその部分の色が赤から純白の白へと変わった。

 

Vanishing doragon power is taken!!!

 

(あ…あり得ぬ……相反する我の力を取り込むとわ…!!)

「だが、相反した力を取り込んだとするならばタダではすまない。死ぬ可能性もある」

ヴァーリの憶測にイッセーは反論した。

 

「そう!何が起こるか分からない。俺はそれに掛け、今は生きている!!」

(だが…確実に寿命を縮めたぞ…)

ドライグの言う通り、イッセーは生きているが赤と白、『倍加』と『半減』の力が体内で小規模の拒絶反応を起こし、寿命を減らしてしまったのだ。

だが、ドライグはその事について驚いていた。

(相棒の寿命は確かに縮んだ……だが…減ったといってもたった数十年程度……本来こんな真似をしたら相反する二つの力がぶつかり合い拒絶反応を起こし数千年以上もの寿命が失われる筈だが…何故こんな軽傷ですんでいる…?まさか…これもあの『銀河神』とやらの力なのか…?)

ドライグは意識の中で考えているとイッセーはヴァーリの方へと向き合い、再び戦闘態勢へと入った。

 

「面白い…!!ならば俺も本気を出そう…!アルビオン、覇龍を使うぞ?」

ヴァーリはそう問いかけるもアルビオンは反対した。

(この場でその選択は命取りだぞヴァーリ、今の体力では確実に暴走する…暴走したとなると破壊神に抹殺対象と見なされ消されるぞ…その上ドライグの呪縛も解けるやもしれぬ)

アルビオンの制止もヴァーリは聞かなかった。

「やって見なければ分からなかろう!!我目覚めるは…覇の理に…

(自重しろヴァーリ!!我が力に翻弄されるのがお前の本懐か!?)

 

アルビオンの制止も聞かずにヴァーリは呪詛を唱え始め、内なる力を解放しようとした。だがその時、予期せぬ事態が起こった。

 

「ガッ……」

突然 ヴァーリの呪詛を唱える口が止まり それと同時に鎧が砕け散った。何が起こったのか皆は理解出来なかった。その中でアザゼルは冷静さを保ちながらも冷や汗を流しながら思いもよらない推測をした。

 

「おいおい…マジかよ…兵藤一誠の奴…たった2発でヴァーリを瀕死に追い込みやがったな…」

『!?』

アザゼルの推測に皆は驚きヴァーリを見た。鎧は砕け、地に手と膝をつき、膨大な魔力も底を尽きかけていた。

「凄いな…こんな光景は私も初めてだ…」

サーゼクスは目を丸くしていた。セラフォルーも目を何回もまぐりながら夢かどうかを確かめていた。

 

一方で、ヴァーリも何が起こったのか分からず吐血しながら戸惑っていた。

「ガッ…な…なんだこの疲労感は…!魔力がいきなり尽きるだと…!?」

「え!?」

ヴァーリの言葉にイッセーは戸惑った。ヴァーリは手をつきながらイッセーを睨んだ。

「兵藤一誠…何をした…!」

「し…知らねぇよそんなん!さっきパンチ2発だけ当てただけじゃねぇか!?」

「なんだと…!?パンチ2発だけでこの俺の魔力を95%も削ぐなど…ありえん…!」

 

その時

 

「よっと。迎えに来たぜ?ヴァーリ」

ヴァーリのいる付近に黒い影が降りてきて、イッセーとヴァーリの闘いを遮った。

 

「美猴か…何しにきた?」

「北のアース神族と一戦交えるそうだから帰ってこいだとよ!…てどうしたお前!?魔力が殆ど空じゃねぇか!?」

「心配するな…少し寝ればすぐに回復するさ。」

 

「だ…誰だアイツ!?」

イッセーはいきなりの乱入者に驚き混乱しているとアザゼルが説明した。

 

「ソイツは闘仙勝仏の末裔だ」

 

「闘仙勝仏って…」

 

「分かりやすく言えば西遊記の孫悟空だ。にしても、お前までテロリストだったとはな」

 

アザゼルは呆れた顔で美猴と呼ばれた青年へと目を向ける。

 

「カッカッカッ!俺は先代と違って自由気ままに生きるのさ!よろしくな?赤龍帝」

 

美猴は陽気に笑いながら自己紹介を済ませるとサーゼクス達の裏で此方を見ているビルスに気がついた。

 

「お〜?あれが先代の言ってた破壊神ビルスか?おいおいリアルで見るとガチでバケモンじゃねぇか。仙術使っても全然気の質どころか量も分からねぇぜ〜…」

 

美猴の言葉にビルスは笑みを浮かべると答えた。

 

「ほぉ?僕の名は妖怪の間でも知れ渡ってるとは…やっぱ有名なんだね」

 

「そりゃな。俺らの中じゃ『何があっても絶対に手は出すな!』って言われる程だ」

 

「なら、今ここで手を出してみるかい?そうなれば君は妖怪史上で一番の名を残すことになるよ?」

 

そう言うとビルスは手を出し招いた。だがその誘いを美猴は汗を垂らしながら即座に拒否した。

 

「じょ…冗談キツイって!そんな確実に死ぬ誘いなんざまっぴらゴメンだぜ!アンタなんか先代と帝釈天とで組み合っても絶対勝負になんないって!」

 

美猴の拒否にビルスはため息をついた。

すると、今まで黙っていたウイスが美猴にある質問をした。

 

「貴方、一つお聞きしたいのですが、あの『カテレア』とか言う者が持っていた球…何処で手に入れたのですか?」

 

その問いに美猴は頭を掻きながら答えた。

 

「俺は知らねぇぜ?あんな球。いつのまにかアイツらが持ってたからな」

「アイツら?他にもいるのですか?」

 

その言葉に疑問を感じウイスはさらに聞いた。するとヴァーリが答えた。

 

「あぁ。俺を除く旧魔王派 全員がその球を持っていたな。それ以外は知らんが」

 

「そうですか」

 

ヴァーリがそう言うと美猴は持っていた棍で地面を叩き、魔法陣を出した。

 

「んじゃ、今日のとこは退散退散っと〜♪」

 

「次やる時は俺はもっと強くなってくる。お前も強くなってもっと俺を楽しませてくれよ?兵藤一誠。あ、カテレアは?」

 

「あぁ、放っとけ だとよ」

 

「オーケーオーケー」

そう言うと二人は魔法陣へと消えた。

 

「ま…待て!……うぐ…」

 

跡を追おうとしたイッセーの体を激痛が襲った。それと同時に纏っていた鎧は粉々に砕けた。

 

「あれだけの魔力をフルバーストしたんだ。今のお前じゃそれが限界だ。まぁ今回はスゲェよ。白龍皇を瀕死に追い込んだしな」

 

するとアザゼルはゼノがいる方向へと顔を向けた。

 

「あとは『銀河神』様の方だが…」

アザゼルは大丈夫なのかと不安の表情を出した。それにウイスが答える。

 

「その心配はいりませんよ。もう終わります」

 

ーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーーー

一方 ゼノの方では

 

「な!?この私を置き去りに!?どういうつもりだ美猴!!」

すんなりと置き去りにされたことによりカテレアは混乱していた。その姿をゼノは鼻で笑う。

 

「ハハッ。仲間に見捨てられたか…。哀れだな」

「き……貴様あぁぁぁぁ!!!!」

カテレアは遂に頭に来たのか、目を真っ赤に染め、牙を剥き出しにしながらゼノを睨んだ。

 

「もう許さぬ……アイツらは後で殺すとして…貴様はこの場で骨すらも残さず全て喰らってやるわぁぁぁ!!!!」

その瞬間、カテレアの口内の歯が伸び、全てが鋭い牙となった。

一方ゼノはカテレアが叫ぶと同時に笑うのをやめ、カテレアを睨んだ。

「やはりそうか。その球…宿り主の怨念や執念によってパワーを生み出すらしいな」

「ガァァァァ!!!!!」

ゼノが考察しているとカテレアはその鋭い牙でゼノの肩を噛み砕こうとした。

 

だが、その動きは先程よりも鈍く、ゼノにとって避けるのは容易いことだった。

 

ヒュン!

 

ゼノは、カテレアが認識できない程の速度でその噛みつきを躱すと、腹にある球へと手を出した。

そして

 

グシャァァァァァァァ…!!!!!

 

その球を引っ張ると、その球を腹から引き離した。

 

「な!?」

カテレアはようやく気づいたのだ。自分の噛みつきをかわされ、力の源まで盗られたということに。それと同時にゼノの片方の拳が黒く変色し、辺りの空気全てがその拳に纏わり付き蒸気のようなモノを纏う。そして、その手をゼノは握りしめるとカテレアに向けて放った。

 

 

 

「宇宙へいってろ」

 

無限の修練の末に会得した一撃。その威力は1発で地球をも粉々に破壊する危険な拳技。

 

_____その名は

 

 

 

 

“ビッグバン”ッッ!!

 

 

ドォンッ!!!

 

 

 

その拳はカテレアに放たれたと同時に巨大な衝撃波を発生させた。辺りの結界は一瞬で粉々になり、辺りに散らばる。

 

 

「ぐぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

その衝撃によって、カテレアの体は断末魔と共にまるで弾丸のように一直線に飛んでいき、数秒もしないうちに空の彼方…いや、大気圏を突き破り宇宙へと消えていった。

 

 

「ふぅ〜…やっぱこの技は体にくるな」

振るった腕を回していると皆がこちらに走ってきた。

 

「向こうも終わったようだな」

 

 

 




あと2話程でこの章は終わると思います。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。