「へぇ。これが結界の中か。外とは全く違うな」
ゼノは髪を解きポニーテールを結ぶとそのまま校庭へと歩いた。
着くと、そこはもう戦場であった。
空は夕焼けのように赤くなっておりその下では木場とゼノヴィアがが異形の剣を持ったフリードと闘っていた。
すると、それを離れた場所から見守っていたイッセー達がゼノに気づき驚きの声を上げる。
「!?ゼノ!?お前今までどこいってたんだよ!?」
「ん?飯食ってたんだよ。それより、木場のあの剣、まさか」
「あぁ!あいつ禁手化したんだ!今のあいつならあの聖剣を!」
「その割には少し苦戦してないか?」
見ると木場は武器が変わって能力が上がってはいたが、やはりZソード相手には部が悪いらしく、ゼノヴィアと共に押されていた。
「間に合わなかったか。Zソードは」
「すまねぇ…俺たちでも止めれなかった…」
「いいよ別に。ちょっと俺は木場のとこに行ってくるよ」
するとゼノは戦いの真っ最中の中木場達の間へと瞬間移動した、
「のわ!?なんですか!?いきなり!?」
「邪魔」
「ぎゃふん!?」
ゼノは現れるやいきなり、目の前にいるフリードを蹴り飛ばすと2人に目を向ける。
「ゼノ先輩!!」
「お!お前は!」
「よぅ。イッセーから聞いたよ。禁手化したようだね」
「はい…ですが…あの剣の前では……すぐに…」
「折れちまうか。まぁ無理もな「ウリィィィィ!!!!!!!」ん?」
ゼノが話している中、ゼノへの恨みが大きいフリードが憤怒の表情を浮かべながら聖剣を振り回してきた。
だがゼノの前ではそんなものは無意味である。
「静かにしてろ」
「ガヒャッ!?」
ゼノは手から軽い衝撃波をフリードに向けて放ち、またもやフリードをグラウンドの隅まで吹き飛ばした。
「そう言えば青髪、お前の剣。なんか形変わってねぇか?」
ゼノは横にいたゼノヴィアへと目を向けた。するとゼノヴィアは頷きながら剣を見せた。
「ゼノヴィアだ…。これはデュランダルという聖剣でな。先程封印を解いたのだ。しかし、それでもあの剣とはギリギリでしか渡り合えない……さすがは伝説の剣だ……」
「確かにあの剣は伊達じゃない。けどあれでも聖剣が混じってんだ。お前の仇に変わらないだろ?」
「はい…」
そう言うと木場は前へと出て剣を構えた。
「たとえ無理だとしても諦めません。何本折れようと折られようと僕は聖剣を破壊します!!!」
「私もだ!!!教会の名にかけて絶対にひかん!!!!」
その2人を見るとゼノは笑みを浮かべた。
「だったらもう少し見守らせてもらう。それと、これはほんのプレゼントだ」
そう言うとゼノは木場とゼノヴィアの剣に触れた。すると
シュゥゥゥゥゥ………
木場とゼノヴィアの剣が光を纏い切先まで包んだ。
「ちょっとぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!ボクちゃん抜きでなにやってんのかな〜!!!!!!?このガキがぁぁぁぁぁぁ!!!!」
すると放置されていたフリードが剣を持ちゼノ達へ斬りかかろうとした。
その時
バチンッ!
「のぉおおおおおお!!!!!!?????」
光が3人を中心に膨張し、その波動によってフリードを吹き飛ばした。
一方で、ゼノの気が体内に入れられた事で2人の剣に変化が現れ始める。
「な…!!」
「こ…これは…!!」
剣の形は次第に変化していく。刀身が発光し、発光した光がその刀身を包み込み、新たなる刃を形成した。
「俺の力を少し入れてやった。これならZソードに対抗できる」
「…!ありがとうございます…。ゼノ先輩」
「恩にきるぞ」
2人は剣を構えるとフリードへと向かっていった。
「ゼノ、2人になにをしたの?」
「ちょっとした贈り物を。それより、コカビエルは………あそこか」
上を見るとまるで玉座のような物が浮いておりそこにコカビエルがいた。
「えぇ。コカビエルはこの町を吹き飛ばす気なのよ。今私たちが立ってる下には巨大な魔方陣が設置されているわ」
「そうか」
街が破壊されるというのに焦りの一つもないゼノにリアスは不思議に思う。
「………意外と冷静ね」
「あぁ。でもさすがにこの町破壊されるのはちょっと嫌だから。今回はなんとしてでも阻止しないとね。それよりも、騎士のたたかいを見ないと」
〜
「はぁ!!!!」
木場はフリードへと向かうと剣を横へ振り回した。
「ハッハー!とろい!」
対するフリードは剣を振らずに後ろに回避する形で避けた。
そして、フリードは聖剣に自身の気を込めると、くねらせた。すると切先が無数に別れホーミング弾のように木場に襲いかってきた。
「ゼヤァッ!!」
咄嗟にゼノヴィアが木場の前に現れ、光剣を一振りする。その一振りは輝く軌跡を生み出し、向かってくる無数の切先を粉々に破壊した。
「なんですと〜!?ここにきての超展開!?んなこと望んじゃいねぇええんだよぉおお!!!!!クソビッチがー!!!!」
フリードは怒り狂い聖剣の能力でスピードを最高点に達し、ゼノヴィアへ斬りかかろうとした。
「させるかぁッ!!」
だが、その刃は木場によって防がれた。
「なっ!?」
「そんな剣で僕達の想いは断てない!!!!!!」
木場の心に響くかつての同志達の歌。そしてゼノの神々しき気。更に、フリード達への怒りが頂点に達した事で木場の力は限界を突破していた。
「ゔぉおおおおおお!!!!!」
木場は全ての想いを込めて剣を振った。
そして
バキィィィンッ!!!
凄まじい金属の破壊音と共にフリードの持つ剣が砕かれた。
「なぁぁぁぁぁぁぁ!!!折れたー!!!!????」
「ば……バカな………あのZソードが……………」
すると、折れた剣は聖剣とZソードへと分裂した。
「皆…………見ていてくれたかい………僕の想いは聖剣を超えたよ…………」
すると木場とゼノヴィアは刃をバルパーへと向けた。
「覚悟しろバルパーガリレイ、貴様の計画もここまでだ!」
追い詰められたバルパー。すると、こんな時に研究熱心かつ、無限の探究心が現れ、バルパーの脳内はその聖魔剣への興味に満たされていった。
「あ………ありえない……聖と魔の融合など…!そうかわかったぞ!聖と魔それを司るバランスが大きく崩れているそれなら説明はつく!」
刃を向けられたバルパーは何が何だか分からぬ言葉を発し興奮状態となっていた。
「つまり!魔王だけでなく神をm……」グシャ
最後の言葉を発しようとした時、バルパーが突然の光の槍に串刺しにされた。その瞬間バルパーは粒子となって消えた。
「バルパー、お前は優秀だったよ。そこに思考が至ったのも優れている故だ」
槍を放ったのはコカビエルだった。バルパーを用済みとみなしたのだ。
「コカビエル、これは何の真似かしら?」
「俺は最初からこいつらなどいなくても別にいいんでな」
するとコカビエルはイッセーの方へ目線を移した。
「おい小僧、赤龍帝の力を最大限まで倍加させ誰かに譲渡しろ」
突然の要求にリアスはトサカにきたようだ。
「私たちにチャンスを与えるの?ふざけないで!」
「ふざけないで?それはこちらのセリフだ。この中に俺に勝てる奴がいるとでも?」
コカビエルは気づいていなかった。この場に、魔王さえも軽く屠る程の力を持つ者がいる事を。
「おい。忘れるなよ。カラス」
今まで黙っていたゼノは笑みを浮かべながら皆の前に出る。
「ほう?何時ぞやの人間か。随分と威勢がいいな」
「どうも。それより、昨日、賭けをしたろ?俺と闘り合うのを楽しみにしてたんじゃねーのかよ?」
ゼノが昨日のことを言うとコカビエルは一瞬首を傾げると思い出したかの様な表情を浮かべた直後に笑いだした。
「ハッハッハッハッ!!そうだ。そうだったな!すまんすまん。あまりにもくだらん要求だったから忘れかけてたよ!」
コカビエルはまるでゼノの要求を小馬鹿にしているようだった。コカビエルにとってゼノは魔力を帯びていないただの人間だ。だが、コカビエルは知らなかった。彼が体術だけで既に神レベルを圧倒できる事を。
一方でその挑発に無視しゼノは話を続けた。
「闘う前に一つ聞いておくけど、俺が勝ったらちゃんと話すんだよな?」
「いいだろう。貴様が俺に勝てればなっ!!!!!!!」
言葉と同時にコカビエルが手をかざすとゼノの周りから無数の光の矢が現れた。
「死ね」
コカビエルが手を振り下ろすと同時にその矢は一斉にゼノへ襲いかかった。
「囲んで逃げ場を無くすか……ど素人が」
ゼノはその戦法をアッサリと吐き捨てると手を刀のように構え自身のオーラで手を包み光の刃を形成した。そして自身を軸に回転すると四方八方から襲い掛かってくる光の矢を全て弾き落とした。
「なっ!全て弾いただと!?」
人間とは思えない芸当にゼノヴィアは驚いていた。
「ぐぅぅ!?ならばとっておきをくれてやる…!!」
矢を全て弾かれたコカビエルは歯を軋ませると上空へ上がり、今度は光の刃を集結させ特大の光の刃を形成した。
「くたばれぇぇぇぇぇ!!!」
そしてその光の矢をゼノ目掛けて投げた。
「危ない!」
咄嗟にゼノヴィアはゼノを助ける為に前に出ようとしたがすぐにその動作は停止する。
「ふん」
ゼノは向かってくる光の矢をあっさりと正面から受け止めた。
「返すよ」
そしてゆっくりと手を振りかぶるとコカビエルに目掛けて光の矢を投げ返した。その光の矢をマッハは軽く超える速度でコカビエル目掛けて飛ぶ。
投げられた矢はコカビエルに向かってその切先を向けた。さすがのコカビエルもこれは予想外でありなんとか避けたものの左腕を持っていかれた。
「がぁ!?…まさか光の矢を投げ返しただと………!!ぐぅぅ…!!何なのだ貴様は!!」
流血する腕を押さえながらコカビエルは悲痛の声を上げながら目の前の存在へ叫ぶ。その存在はただ単に答えた。
「人間だよ」
その答えにコカビエルは一瞬表情の変化が止まったが、その直後に狂ったように笑い始めた
「人間だと…?ハハハ!!しかし驚いたものだ!!!神のいなくなったこの世界にこんな化け物がいたとはな!!」
『『!?』』
コカビエルが不意に漏らした言葉にゼノを除いた皆は固まる。
「なに!?神がいないとはどういうことだ!」
神という単語にゼノヴィアは反応し驚きながらもコカビエルに問いつめた。
「口が滑ったか……。まぁ教えてやろう。先の三つ巴の戦争で四大魔王と共に神も死んだのさ!」
『!?』
「か……神が……死んだ……?そんな…」
衝撃の事実を聞かされゼノ以外のリアスやゼノヴィア達は驚愕した。
「先の戦争で悪魔は魔王全員と上級悪魔の大半を失い天使も堕天使も幹部以外ほとんど失った。純粋な天使は増えることすら出来ん。悪魔にとっても純粋は大変希少な筈だ」
「そ……そんな………では…私たちに与えられる愛は………」
「あるわけないだろう!今ではミカエルが代わりに『システム』を起動させているが、それは神張本人が起動させてこそ真価を発揮する!どんなに信仰しても貴様のように切られる信徒など腐る程いるわ!!」
アーシアの嘆きをコカビエルはあっさりと断ち切った。
ショックのあまりアーシアはその場で崩れ落ちた。
「アーシア!おい!しっかりしろ!」
イッセーがアーシアを抱介しているがそれどころではない状態であった。別の場所ではゼノヴィアが力無く項垂れていた。
「う…うそだ……そんなことがあるなんて………」
「貴様ら人間もそうだ!!奴らは弱いからこそ強大なものに追いすがる!実態がないものでさえも信仰する弱小の生き物だ!」
「?」
左腕の付け根を抑えながらコカビエルは叫び狂ったように笑いだした。
「ハハハハハハハハハ!!!!!分かったか!?こらが真実だ!!!人間であるお前らがすがる物などいないのだ!!分かったかゴミめ!」
「だから何だよ?」
「ハハハハハハ!!!!!!……………え?」
「だから何だ?って言ってんだよ。俺は元々 地球の神なんて信じてねぇよ。それ以上の存在に出会ったからな」
「!?」
その言葉と同時にゼノは体から膨大な気のオーラを発した。それと同時に結界は粉々に割れ、辺り一面は月夜に照らされた。
「それ以上の存在?はっ!人間もジョークがすぎる……え…………ま……まさか…!」
その瞬間コカビエルは何かを感じ取り尋常じゃない程の冷や汗を流した。
(な………何だ…この威圧感……いや……強大な恐怖感は………!?この感覚……あの大戦の時 以来だ…!!)
「貴様のオーラの色………いや!そんなことはあり得ない!こんな子供が!」
「ようやく気づいたか。 お前が闘っている相手が何なのか」
「ま……まさか貴様…!!」
ゼノの鋭い目がコカビエルに向けられる。
「自己紹介がまだだったな。俺の名は『黒崎ゼノ』純粋な人間にして宇宙最強の神【破壊神ビルス】の弟子だ」
「…!!」
その名を聞いた瞬間コカビエルは恐怖のあまり一歩後ろへと下がった。
コカビエルだけでなくゼノヴィアさえも驚いていた。
「あ…あいつが……破壊神の弟子…だと…!?」
「ゼノヴィアも知ってたのか!?」
「あぁ…破壊神ビルス…姿形は不明だが…この世で破壊できぬものはないといわれている伝説の神……我ら教会の物で知らぬ者はいないといわれており古の時代より全ての神々から恐れられている神だ…。まさか…あいつが…!!」
一方ゼノは気の放出を止めるとコカビエルの同じ高さまで飛んだ。
「貴様が破壊神の弟子だと!?そんな話信じられるかっ!!」
「なら信じさせてやるよ。お前にとって最後の闘いでな」
「!」
その瞬間に、ゼノからは人間とは思えないほどの禍々しい色のオーラが溢れその場を覆い尽くした。