帰還そして接触の時(リメイク済み)
その日からゼノの地獄のような修行の日々が始まった。気のコントロールやそれらを行うための体力作り。全てが幼い彼にとってはキツイものであり、何度も何度も死の淵を彷徨ったが、その度にウイスの魔法で回復させられ、修行を続行した。
そして
時が経ち10年。
「いや〜10年前まではこんなヒョロヒョロだった君がまさか潜在能力を引き出すとここまでとはね〜でも身長はあんましね〜」
「どうも師匠。あと身長は余計だ」
ビルスの前ではかつてのひ弱な面影が全て消え去り別人のようになったゼノの姿があった。18となった彼は背中まで伸びていた髪は綺麗な三つ編みとなり、虚な瞳には光が戻り鋭い青い目を光らせていた。
そんなゼノと食事を摂る中、ビルスは以前から考えていた事を彼へと話す。
「突然なんだけどね〜そろそろ君は地球に戻ってもいいと思ってるんだ」
「え?」
巨大な肉の一切れを頬張りながら口にした言葉に、ゼノは食べる手を止めてビルスへと目を向ける。
見れば、少しだけだがビルスはややニヤついていた。10年も共に過ごしていれば彼の表情からどの様な事を考えているのかなどわかりやすい。
故にゼノは鋭い目を向けた。
「なんか、企んでますね?」
「ほぅ?さすがは僕の弟子だ。その通りさ」
見事に的中したのか、ビルスは頷くと、地球へと戻す理由を話した。
「もちろん、地球で過ごしてみるのもいいと言うのはあるんだけど、もう一つは、今の地球には悪魔や天使、そして堕天使とか色々いるのが分かってね。色々と騒ぎを起こしてるみたいなんだよ」
「へぇ〜。地球も随分と変わりましたね〜」
「そこでね、君にソイツらを調査…いや、監視してきてもらいたいのさ。もちろん邪魔な存在だったら破壊は許すよ。というか簡単な話 悪魔とかそういうの関わらず地球の近隣の星 全部君に任せたいってこと」
「成る程」
ビルスから理由を聞かされ納得すると、口の中で咀嚼していた肉を飲み込み口元をナプキンで拭き取ると立ち上がる。
「まぁ故郷の星任せられるとは嬉しいです。喜んで引き受けますよ」
「頼んだよ。ウイスにはもう話してあるからさ」
そう言いビルスが手を叩くとウイスは頷き杖を取り出し出発の用意をする。
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「歯ブラシは持ったかい?僕みたいに虫歯になるなよ?あれ結構痛いんだからさ」
「師匠みたいに甘いモンばかり食べてないので。というか師匠、これ以上食べたら糖尿病どころか気も甘い匂いするようになりますよ?」
「なるかぁ!!ほら!いったいった!」
ビルスに背中を押されながらゼノはウイスの肩へと手を置く。
「では、行きますよ!」
「はい!」
すると ウイスの一声と共に彼らの身体が青く輝き始め宙に浮き始めた。
「それじゃ師匠!たまに連絡しますね!」
「別にそんなもんより、地球の食べ物送ってよ〜?」
「わかってますよ。じゃ!」
そして その会話を境にしてゼノはウイスと共にその場から飛び去りビルス星を後にしたのであった。
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場所は変わり、日本の首都である東京の中でも、比較的、穏やかな住宅街が立ち並ぶ街『駒王町』にて。
よう!皆!俺は兵藤一誠だ!思春期真っ盛りで何事よりもおっぱいが大好きな高校生だ!!
俺は今……逃げている…!!
「わけわかんねぇよ!!!!」
俺は今日の夜、昨日夕麻ちゃんとデートした公園に来たら突然現れたハットの男から逃げていた。
「主の気配も仲間の気配もしない…貴様はぐれか?なら殺しても問題あるまい」
そう言いハットの男は槍を俺に目掛けて投げてきた。
(ゆ…夢なら早く…覚めてくれ!)
グシュッ
そう思った矢先に俺の腹に槍が突き刺さった。
「ガハッ…何なんだよこれ…夕麻ちゃんの時はこんなに…痛くなかった…ぐぁ!!」
俺が槍を引き抜こうと掴んだが、刺さった箇所どころか触った手にも痛みが走り出した。
「無理に触らんほうがいいぞ?光は悪魔にとっては猛毒…しかもまだ息があるとはな」
その一言と共にシルクハットの男は槍を作り俺に向けて再び刺そうとした。
クソ…!!彼女にも未練あり…その上、生乳も見られないまま死んじまうのかよ…!!
未練たらたらながらも俺は迫り来る死を覚悟し目を瞑った。
「死ね!!…「はい到着♪」ドォオオンッ!!!!!!「グハァァァァァ!!」
突然俺の目の前に何かが降って来た。
あ…あれ…意識が……
◇◇◇◇◇◇
ビルス星を立ち、広大な宇宙を超速度で進む事25分。ウイスとゼノは遂に地球が目の前に広がる距離まで到達したのであった。
「さてどこへ降りましょうか」
「取り敢えず悪魔とか色々住んでる町で」
「はい♪」
ゼノの要求に笑顔で頷いたウイスはそのままスピードを上げていき、大気圏を燃える事なく突き抜け、そこから更に雲をも突き抜けていき、日本の中でも特に住宅街が立ち並ぶ街へと降りていった。
そして
「はい到着♪」
ドガァァァァァァァァァン
その街へと降り立ったのであった。それによって周囲が揺れると共に草木が吹き飛ばされていった。
「ウイスさん!もうちょっとまともに着地出来ないのかよ!?」
「おほほほ!!これでも普通ですよ♪」
「どこが!?周りの草木吹っ飛ばしてるだろ!?」
「ほほほ♪すぐに直しますから」
ゼノの注意を笑いながら軽く受け流したウイスは軽く地面を叩く。すると、周囲の陥没していた地面などが即座に元の形へともどっていったのであった。
「では、私はここで失礼します。また何かあったら呼んでくださいね」
「あ、はい!今までありがとうございました!」
ゼノのお礼の言葉にウイスは頷くと、そこから杖を叩き、地球から去っていった。
ウイスが去っていった後に、残されたゼノは巨大なバッグを下ろすと、野宿をするべく、テントを張るための場所を探すため周囲を見渡した。
「う〜ん…」
見渡す限り住宅が多く、テントを張れる場所が見当たらなかった。だが、見れば近くには林があり、運がいいのか周囲には建物も建てられていなかった。
「あそこだな」
今晩の野宿先を見つけたゼノはその場から移動しようと脚を踏み出した。
その時であった。
「貴様ぁぁぁ!!!!」
「ん?」
突然と自身が立っていた場所から怒鳴り声が聞こえ、振り返るとシルクハットを被り直しながらコチラを見つめる黒い翼を持った男がいた。
その男は人間には見られないカラスのような羽をバタつかせており、その鋭い眼光を自信へと向けていた。
「至高な堕天使であるこの私を踏みつけるなど…許されざる事だぞ!!」
そしてその男は怒声を放つと共に手に光を収束させていき、大きな槍を形成した。
「人間であろうと容赦はせん…この場で殺してやる…!!」
「殺す?」
その単語にゼノは目を細め笑みを浮かべた。
「へぇ…お前が堕天使か…」
ビルスからの指示そして、興味を持った相手が今まさに目の前にいる事にゼノ自身の闘争心に火がつくと共に内に秘められた気が解放されようとした。
「なら、どれくらい強いのか試してみるか…!!」
「ほざけ!!人間如きがぁ!!!」
ゼノの青く輝く目と堕天使の鋭い目が合った時であった。
「おやめなさい」
「ん?」
その場に第三者の声が聞こえた。見ると、付近の地面が急に赤く光っておりその地面の上に長く紅い髪をたなびかせた女性が立っていた。
それを見た堕天使は光の闇を消し、彼女へと視線を変える。
「紅い髪…グレモリー家の者か」
「リアス・グレモリーよ。ご機嫌よう堕ちた天使さん」
「これはこれはこの町がグレモリー家次期当主の管轄とは…その倒れている奴はお前の眷属ということか」
そう言い堕天使が地面で倒れている青年へと目を向けた。それ自体にゼノもようやく気付いたようで倒れている青年へと目を向ける。
その一方で、現れた女性は堕天使を睨みながら青年の前に守るようにして立つ。
「この子にちょっかいを出すなら容赦しないわ」
「………まぁ今日のところはわびようだが下僕は放し飼いにする者ではないぞ…私のような者が散歩がてらに狩ってしまうからな」
「ご忠告いたみいるわ私からも今度こんな真似をしたらその時は容赦しないからそのつもりで…!」
「ふん!そのセリフそっくりそのまま返そう…我が名はドーナシーク…再び合間見えぬことを祈ろう…」
リアス・グレモリーと名乗った女性の殺気を混ぜた言葉を受けた堕天使は名を残しながら空中へと消えていった。
すると 先程の空気が一変し、青紫色の空はいつものように紺色の景色へと戻っていった。
「はぁ…つまんないな」
それを見ていたゼノは堕天使と戦う事ができなかった事に残念な溜息を漏らすと、先程目をつけた林の方向へと目を向けた。
「とりあえずどっかにテントでも」
「お待ちなさい」
「あ?」
すると 立ち去ろうとするゼノを呼び止める声が聞こえた。振り返ると先程の現れた女性であり、鋭い視線を自身へと向けていた。
「貴方は何者?」
「……」
突然と彼女から尋ねられたゼノは、今までビルス星にてウイスから習った人と人との礼儀作法を思い出し、振り返ると頭を下げた。
____挨拶と名前を名乗るのは最低限の礼儀ですよ。
「コンバンハ クロサキゼノ デス」
「い…いや…あ…これはどうもご丁寧に…」
突然と片言の挨拶に相手側の女性も驚いたのか、調査を崩しながらも同じく頭を下げる。
それから再び頭を上げると調子を戻しもう一度尋ねてきた。
「…で、もう一度聞くけど…貴方は何者…?」
尋ねられたゼノはただ単純に答えた。
「人間だ」
「人間…?う〜ん…」
そう答えると、女性は腕を組みながら倒れている青年にも目を向けると、青年を抱き上げ再び此方へと目を向けた。
「明日、この近くにある駒王学園のオカルト研究部という部室に来てもらえるかしら?」
「え…?」
突然と彼女から聞いた事もない場所に招かれた事にゼノは驚き目を点にする。
「えっと…俺はここに最近引っ越したばかりで場所は…」
「じゃあ地図を渡すから。これを頼りに来てちょうだい。関係者には話を通しておくわ」
「これはご丁寧に」
「じゃあ、また明日」
それからゼノへと指定された場所への地図を渡した女性はその場を後にした。
「これは……接触する機会…なのか…?」
残されたゼノは地図を見ながら顎に手を当て、考え込むのであった。
今回はこういう終わり方です。
一話目からお気に入り10件以上もありがとうございます!!!
もう一つの方も頑張っていきたいと思います!!