まあさすがに出さなかったらメインヒロイン詐欺とか言われそうですしね
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「ん~」
気の抜けた声と共に両腕を空高く伸ばし屈伸する。
日頃の疲れからかだらしない表情を見せる響。
というのも今日、響は非番で休日をどう過ごそうか考えていた。
まだ来て間もないときは長安の街並みを見るだけで非番を費やしていたが、既に長安の街は熟知している響。
部屋で疲労している体を癒すことも響は考えていたが、それでは何かと損をしている気になり、何かないか商店が並ぶ街並みへと足を運んでいた。
街並みは響にも馴染みのあるお店が繁盛して経営していたり。
行商人が露店を開いて掘り出し物を売っていたり
他にも色々と色んな店が立ち並んでいて、その店に人が入っていっているのを見て司馬懿の手腕を補佐している響にとっても嬉しいことであるために笑みを浮かべる。
「街を見て回るのも悪くないかな?」
日々街の状態も変わっていくことから見てるだけでも悪くないと思った響はこのまま街並みを見て回ろうと町の様子を見ながら歩き出す。
「…あれ?」
しばらく見て歩いていると通りを行き来する人混みの中に懐かしく見知った後ろ姿を目にする。
響の目先にいる人は、小柄の体をし、薄い紫色の髪を少しウェーブした髪形をした少女。
なにやら、キョロキョロと何かを探しているよう動きを見せていた。
そんな彼女に他人の空似かもしれないがと響は一歩また一歩と少女に近づいていく。
そしてかなり少女と近づいた時に少女から呟く声が聞こえてくる。
「へぅ…どうしよう…詠ちゃんとはぐれちゃったし…」
響は彼女の声を聞き、昔聞いた声と全く同じだと気づき、確信した表情で響は後ろから少女に声を掛けた。
「あの、すみません」
「え?はい、私でしょうか」
呼び止める声で、彼女は戸惑いながら響のいる後ろに体を向ける。
彼女が顔を向けてくれたことで彼女の顔を見て、以前にも見た赤紫色の瞳を見てやっぱりと呟く。
「あれ?あなたは…あの時の…!」
後ろを振り向き響の顔を見て彼のことを覚えていたのか、こんなところで再開するとは思っていなかったようで驚いた表情で響を見る。
「やっぱり、あの時、俺を助けてくれた女の子だ」
響は少女との思いがけない再開で嬉しくて笑みを零す。
響が我武者羅に帰る方法を探していた頃に行き倒れるところを助けてくれたあの時の少女、約8ヶ月ぶりとなる再開を果たしたのだ。
「あなたも、長安にいらっしゃったのですね、二ヶ月ほど前にあの時の村に訪れたのですが、あなたは旅だったと聞いたので」
少女も響とまた会えたことに嬉しく思っており、響が仕事場を探すために旅立った後に少女が訪れていたことを説明される。
「そうだったんだ…だいたい4ヶ月前ぐらいに村を出て今は長安のあるところで働かせてもらってるんだ」
少女の話を聞き、もし、村に残っていたら彼女ともっと早く再会できていたのかと思いつつ、響は大体の経緯を彼女に話す。
しかし、響が司馬懿の補佐をしていることは無闇にいうことでもなかったために響はそのことの発言を控え有耶無耶な言葉を口にする。
「そうだったのですか…よかった…あれからどうしたのかあなたのこと気になっていたんです」
響が無事だったことに笑みを浮かべる少女、その笑みからは本当に響のことを心配して、大丈夫だったことへの安心感が窺えた。
そんな彼女の笑みを見ていた響はふと少し前に彼女が困っていたことを思い出し気になったのでその事について彼女に訪ねた。
「そういえば、声かける前になんか困ってるみたいだったけど、何かあったの?」
そう響が訪ねると、響との再会で頭から抜け落ちていたのか、その事について指摘されると、あっと少女が言葉を零すと自分が何をしていたのか思い出す。
「あ、あの、実はここには友達と一緒に来ていたんですけど…つい先程はぐれてしまって…」
「それでその友達を探していたのか」
少女が困っていた経緯を説明され、響は少女が何をしていたのかを理解すると、理解してくれた響に対して少女は頷いた。
「取りあえず、探すの手伝うよ」
「え?いいんですか?お仕事あるんじゃ…」
困っている少女をほっとおけなかった、響は少女の友達を探す手伝いをすることを決めて、そんな響に少女は戸惑う。
少女は響が勤務中ではないのかと疑問に思うが、その疑問について響は笑みを浮かべて直ぐに返事をした。
「大丈夫、今日非番だから」
「そんな、それじゃあ貴重なお休みを私なんかに…」
「どちみち、暇だったから、それに休んでる本人がいいって言ってるんだから、遠慮しなくてもいいよ」
さすがに休みを自分のために費やすことに抵抗があった少女はやんわりと断ろうとするがやることもなく暇であった響は以前に助けてくれた少女のために使えるのならとその意志を曲げずに少女に協力しようと言う。
「それじゃあお言葉に甘えて…」
話し合いは響に軍配があがり、響に好意に甘えた少女は響に手を貸してもらうことを決めて、それを聞いた響はこれで少しは恩返しが出来るかなと嬉しい表情を浮かべる。
「それじゃあ行こうか…えっとそういえば、名前言ってなかったな…俺は八神響…気軽に響って呼んでくれ」
「響さんですね、私は……
お互い初対面ではなかったが初めて会ったときに名前を言っていなかったことを気がついて響は自分の名前を名乗り、響の名前を聞いた後、月と呼ばれた少女も若干の戸惑う間があったが自分の名前を答える。
「取りあえず、あっちのほうにいこうか」
お互いの名前を紹介を終えると響は早速、月の友達の捜索に取りかかり、手始めとして指を指した方向、商店が立ち並んでいる場所にへと月ともに歩き出した。
………
「…中々見つからないな」
月の友達の捜索に乗り出した響であったが、時間を浪費したものの、めぼしい成果は得ることが出来ず。探し出すことはこんなんな状態であった。
「ごめんなさい、響さん」
見つからないことで響の時間が無くなっていくことに申し訳ない気持ちになって月は響に謝罪する。
「別に構わないよ、本当、暇してたし」
その謝罪に響は何も嫌な気持ちでやっていないと主張する。
しかし、かれこれ一刻ほど探し回ったのだがその友達については何一つ手掛かりすら見つけられていない。
どうしたものかと響はまだ探していないところを考えているとどこからが可愛い腹の虫が鳴り響く。
「へぅ…」
腹の虫がなったのは響の隣にいた月であり、なったことに、恥ずかしさから顔を赤らめる。
「ん?もう昼時か…」
月の腹の虫で響も今が昼時であることに気がつき、響本人も空腹であることを感じて、月に顔を向けて提案を述べた。
「少し休憩で昼にしないか?お腹もすいてきたわけだし」
「いいんですか?」
「少し息抜きみたいなものさ、直ぐ近くに美味しい料理店があるからそこに行こう」
と、響は月を連れて、少ししたところにある料理店に入る。
昼時というのもあって客が入っており、カウンターやテーブルにも何人か既に座って料理を食しているのがちらほらと見えた。
「いらっしゃい、あら響さんじゃないか、いつもありがとうね」
入った玄関前で立っていると店の奥からこの店の経営をしている女将がやってきて、いつもの通りに来たお客様に挨拶すると、その来た客が響だとわかると、良く来てくれている響に再三でお礼を述べた。
「今日は連れも居るんだけど…机の方空いてます?」
「もしかして、隣にいるその子かい?あらあら可愛い彼女さんね、響さんも隅に置けないね」
「へ、へぅ…彼女さん…」
響は良く一人で来ていることから今回は月も居ることを女将に告げると、女将は響の隣にいる月に気付き、月のことを響の彼女だと勘違いしその勘違いで月は顔を俯かせて顔を赤くする。
「彼女じゃないって…からかうのも止めてください…」
響は溜め息を吐きながら誤解を解く。
そして解いた後女将の案内で奥の方の2人用の席へと案内され、対面する形で座る。
「はい、注文は響さんはいつものでいいのかい?」
「ああ、それで頼む。月は?どうする?」
「えっと、響さんと同じので」
少ししてお茶を持ってきた女将が注文を受け付けると、常連の響はいつも頼んでいる料理を頼むと、月も響と同じ料理を頼んだ。
注文を受け取って女将が厨房の方に向かっていくと待ち時間の間、何か話そうかと響は月に訪ねた。
「そういえば、月の友達…一体どんな人なのか聞いてなかったけど…どんな人なんだ?」
と、探していたのはいいが月の友人がどのような人物なのか何も聞いていなかった響は月にたずねる。
「そういえば、教えていませんでしたね、えっと、詠ちゃんは私と同じ村で生まれて、小さい頃からのお友達なんです。私と違って頭もよくって、いつも私のことを気にしてくれて…」
「その子は月のこと本当に好きなんだな」
「はい、私も詠ちゃんのこと大好きなんです…ただ」
月の友人のことの話を聞く響は話から本当に月が友人のことが好きであることを感じたが、最後に何かあるのか何故か苦笑いの笑みを浮かべる月に響は首を傾げる。
「詠ちゃん、本当に運が悪くて…やっていることが裏目にでることが多いんです」
「不幸体質ってやつか…」
月の話を聞いて、響は月の友人が不幸体質であることを指摘すると、はいと、月は苦笑いを零しながら頷いた。
「ん?待てよ…?」
響も苦笑いを浮かべながら聞いていたが、ふと視点を変えて月の聞いた話を考えた。
月の友人は不幸体質の持ち主であり物事がよく裏目にですという。
そして月とは幼馴染みの間柄で月のことを良く気遣っている
これから導き出せるのはその友人もはぐれた月のことを心配して探し回っているということ、それが裏目に出て、友人も俺達も未だ再会出来ずにいるということだ。
「どうかしましたか?」
先程、響が考えていることに気づいて月は首を傾げ、それをみた響は行き着いた結論を説明して、説明が終えると月は確かにと納得した表情を浮かべる。
「となると…下手に動かない方がいいのかも知れませんね」
「いやもう、動いたほうがいいだろ、月の友人が言っているほどの不幸体質ならその子が動き回ったところで再会できるとは考えにくい」
動かずに待っていた方がいいのかもと月は主張したが、そこで響は彼女の不幸体質を視野に入れての推測で動くべきだと主張して、それに関しては月も確かにと納得した。
「なんだい?響さんも人を探してたのかい?」
響と月は話し合っていると、気付いたら幾分か時間が過ぎていて、女将が注文した料理を持ってやってきた。
そこで響は気になる言葉が出て来たことで眉をひそめる。
「女将、もって…他に誰かいたの?」
女将はもと…まるで響達以外にもいたという口ぶりで喋ったことから響は気になって、それについて追求する。
「ああ、響さん達が来たほんの少し前かね、長安に来て友達とはぐれたっていう女の子がね、お店に来たのよ」
なにも、言えない理由もないので女将は響達の机に料理を置きながら、すんなりとその情報を教えてくれて、その情報に食いつくように月は更に訪ねた。
「あ、あのその女の子って青緑の髪色で桃色の眼鏡をかけていませんでしたか!?」
「眼鏡!?」
詰めよる勢いのように女将に質問する月に響は裏腹に違うところに驚いて声を上げ額に手を当てて考え始める。
(あ、あれ?眼鏡?いま眼鏡っていった?眼鏡って…漢の時代にもう作られてたっけ?)
「そうそう、あんたが言ったとおりの容姿だったよ、なんだいはぐれた友達ってあんたのことかい、あと少し店から出て行くのを待っていれば会えたのに災難だね」
自身の頭の中の知識で眼鏡について考える響を他所に女将は月からの質問に間違いないと頷き、月の友達が止まっていればとぼやいた。
その話しをしっかりと聞いていた響は取り合えず眼鏡に関してのことは頭の隅に置き、先の話を聞いて思ったことを口にする
「にしても入れ違いとは…とんだニアミスだな…」
「にあみす?」
実際に思ったことを口にした響に月は聞き慣れない単語が出てきて、その単語を復唱する。
復唱したことで気がついた響は外来語出会ったために理解できていないのだろうと気がつき月にもわかるようにはなした。
「ああ、俺の国で使われてる言葉でなすれ違いって意味だ」
「あ、そうなのですか」
「取りあえず、今から追ったところで見つからないだろうし…まあまずは目の前の料理でも食べよう」
「そうですね…それじゃあいただきます」
響は外来語の意味を月に分かるように言うと響の解説を理解した月を見て、今から追っても追いつけないのはわかりきっていたため追いかけることを諦め、まずは注文した料理に手をつけようと薦めると月と一緒に料理を堪能した。
……
「み、見つからねえ…」
あれからも月の友達を捜し回ったが結果見つからなかった。
既に空は日が沈み始めて赤く染まり、人も昼よりかは往来がなくなっている。
昼ご飯を堪能した後2人は人に聞きながら月の友達の後を追っていたが全く再会することが出来ず、遂に夕方までになってしまった。
「詠ちゃん何処に行ったんだろう…」
探し回って疲れをにじみ出している響の隣で月は今どこにいるのか判らない友人のことを心配して、表情を曇らせる。
「取りあえず。もう遅いから……切り上げるしかないな」
「そうですね…一度、宿に戻って…」
「そうだな、一応1人だとなんだろうし宿まで…あっ!!」
日も落ちてきて断念せざる終えないと響は見つからなかったことに少し落ち込みながらも長安の治安は良いのだが一人で帰らせるのもなんだと思い送り届けるようと言おうと来た直後思い出したように大きい声をあげた。
「ど、どうしたのですか!?急に声を上げて…」
響が大声を上げたことにびっくりして慌てて訪ねてくる月。
そんな月に響は詰めよって両手で肩を掴んだ。
「へ、へぅ!!」
「月!宿の場所って分かるか!?」
「や、宿ですか…ど、どうして…あ…」
いきなり詰めよられたことで戸惑う月であったが、響が宿の場所を訪ねてきて、未だ戸惑いながらも場所を告げようと思ったとき、響が思っていた思惑に気付き、響と同じく言葉を零した。
「ここが私の泊まる宿です」
ふたりとも重大な見落としに気付いた後、走って月が泊まる宿へと辿り着いた。
もちろん、ふたりでは走るスピードが違うために響が走る月のスピードに合わせながら隣で一緒に走っていた。
「…取りあえず、此処で待っていれば確実だな…身近すぎて完全に見落としてた…」
一息つき、響は辺りを確認しつつ、苦笑いの笑みを浮かべる。
「はい、多分詠ちゃんも気付いてなかったと思います」
ふたりが見落としてたこと、それが此処、月とその友人が泊まる宿であった。
ここにいれば何かしらの誘拐などがなければ自然に此処に戻ってくるだろうと、確率が高いこの場所を忘れていたのは完全に落ち度であった。
お互い、一番再会できそうな宿の存在が抜け落ちていたのははぐれてしまって慌ててしまったのが故であろう。
「取りあえず、宿まで送り届けたから俺はこれで」
長居は無用だろうと考えた響は司馬懿の自宅へと帰ろうと思い、月に別れの言葉をいう。
「そうですね、今日は沢山助けていただいて本当にありがとうございました」
「別に良いよ、善意でやったことだから、それじゃあ月いつかまた」
「はい!響さん、まあどこかで」
響と月は互いに別れの言葉を述べると響は宿から去っていく。
宿から離れ司馬懿の自宅の帰路へと歩く響は赤く染まる空を見ながら嬉しそうに頬をつり上げて笑みを浮かべる。
「今日はいつにもまして楽しかったな……また…月とは会えるかな」
次の月との再会を心待ちにしながら響は自身の家へと帰って行くのであった。
「…本当に響さんには助けてもらったな」
宿の前で月は去っていく響を遠目で見ながら今日のことを思い出す。
自分が友達とはぐれ困ったときに響と再会し、一緒に友達を探して街を見てまわり、料理を食べたりと今日一日、ほとんど響と一緒にいた。
「こういうのって…恋人がやってるのと同じなのかな…」
ふと今日のことを思い出して、本などで知った恋人たちのデートみたいなものではないのかと顔を赤くして思ってしまう。
「へぅぅ、悪くなかったな」
響と見て回ったこと、嫌いではなかったと、月は一人そんな言葉を零していると響が去って行った別方向から慌てて走ってくる人物が月へと駆け寄ってくる。
「ゆ、月~!」
「あっ!詠ちゃん!」
月の元へやってきたのは響と一緒に月が探し回っていた友達の詠。
「あっ、詠ちゃん、じゃない!全く僕がどれだけ心配してたと思うの!」
漸く再会に陽気にいつも通り話していた月を見て、ずっと心配していた詠は少し怒りながら月を叱る。
「それは私だってそうだよ、詠ちゃん、お昼の料理店にもう少しいてくれたら会えてたんだよ」
「え!?月…あのお店に来たの!?」
「うん、本当に詠ちゃんが出ていった少し後に」
叱られた月であったが言われてばかりではいられなく、お昼での料理店でのすれ違いのことを教えるともちろんのこと詠は月がその店にやってきていたことに驚いた。
「僕の直ぐ後に…お腹が空いて食べ終わったら直ぐに出ていったけど、少し待ってれば…こんな苦労しなかったなんて…どうしてこんなに僕が考えたことが裏目にでるの」
と詠は自身の不幸体質に嘆く。
「積もる話もあるけどもう日も沈むから詠ちゃん、宿に入ろう」
「あ、うん、そうだね」
嘆く詠を見て宿の中に入ろうと提案をする月に詠は素直に頷いて宿へと入っていく。
そして、月も詠に続いて宿へと入ろうとしたときもう一度だけ響が帰って行った道を見つめる。
「また…会えますよね…」
と誰にも聞こえないような小声で再び響との再会をつぶやく。
「月?何してるの?」
「あ、詠ちゃん今行くね」
立ち止まっていた月を見て詠が首を傾げて月を呼ぶとそれを耳にした月は直ぐに返事をして宿の中にへと入っていくのであった。
もしも…
もしもこのとき、月のもう一つの名前を…響が知っていれば未来は変わっていたことだろう。
響と月…この二人が再び再会するのは遠い未来のことである。