今回から新章?突入です
色々と物事が動き出すと思いますのでこれからもよろしくお願いしますね
漢王朝……
現代でいう中国……そして1700年以上も前に栄えていた漢という国…
栄えていた漢は今や見る影もないほどに衰退していた。
国は荒れ、貧困な民は野垂れ死に…高官や山賊も至るところで我が身大事に悪行を跋扈している。
そんな国で…とある一団が首都洛陽に向かっていた。
馬で乗っている荷物を運び、その道中を話で談笑しているのは洛陽に荷物を運んでいる行商人の一団。
「いや~本当にあなた様に護衛を頼んで正解でした」
馬車に乗っている商人はこれまでの道中で危険なことを考え用心棒を雇って警護していた。
「いいえ、俺自身も洛陽には戻らなければならない理由があったので」
と用心棒もとある理由で洛陽に向かいたかったと柔やかな顔付きで告げる。
「洛陽に行くなんて、なにかあるのか?」
「妻が…洛陽にいるので」
洛陽に向かう理由が何かと気になった商人が用心棒にたずねると、用心棒は小恥ずかしく感じながらも妻がいることを告げると納得した顔をして用心棒をみた。
「若いのにすげえな…あんた」
と用心棒を賞賛する商人であった。
行商人を警護して無事に洛陽にへと辿り着くことに成功した一団は洛陽に入り門の潜った先で荷物の確認をし始める中用心棒と一人の商人は少し離れた場所で対面していた。
「本当にありがとうございますこれは用心の報酬です」
と商人は用心棒に感謝の気持ちと言ってお金が入った袋を用心棒に手渡す。
「ありがとうございます。あなた方の今後の無事を祈っています」
と用心棒も行商人達の行く末に幸運があることを願いそう告げるとその場を後にした。
洛陽から好かし離れた郊外に小さな村が存在した
貧困とも充実とも言えない環境のその村の一角の家に一人の少女が柔やかに食事の支度をしていた。
「~~♪」
支度をしているのが楽しいのか鼻歌を歌いながらも調理をする少女
そんな彼女の家に一人の人物…先程洛陽に来た用心棒がやってくる。
用心棒が来たことに気がついて調理をする手を止める少女は用心棒がいる方向に顔を振り向けて用心棒の顔を見るやいなや、満面の笑みで用心棒に抱きついた。
「お帰り、響」
「ただいま…如月」
少女…如月は用心棒…響が帰ってきたことに喜び、抱きついた後にごくごく自然に互いの唇をあわせてキスをした。
舌を絡めたあと口を離す二人、互いに見つめ合って、他所から見れば間違いなくバカップルと言っても過言ではなかった。
「響は座ってて、もうすぐ料理も出来るから」
「わかった、一週間ぶりの如月の料理楽しみだな」
「うん、腕によりをかけるわ」
と力瘤をみせるその姿は何とも可愛らしく、如月は帰ってきた響のことを思い先程より上機嫌に調理を再会した。
それから1時間もしないうちに如月特製の料理が完成しその料理が机の上にのせられる。
「はい、召し上がれ」
「いただきます」
と響は手を合わせたあと如月の料理を口に入れて何回も噛んだ後胃の中に飲み込む。
「どう?」
「うん、いつも通り美味しいよ」
味の感想が気になった如月は響に訪ねるとすぐに響は笑みを浮かべて美味しいた絶賛する。
それをみて如月はそっかと美味しそうに食べる響を見て笑みを零し自身も食べ始めるのであった。
響と如月……ふたりが洛陽のはずれの村に住んでいるのか…それは半年前のことであった。
地位や名声を全て捨ててまで響と歩むことを決めた如月は当初の予定通り洛陽へと辿り着いていた。
しかし漢の首都の洛陽は見る限りではふたりがいた長安ほど栄えているとは思えない光景が広がっていて、首都に長居する気にはなれなかった。
しかし闇雲に大陸を渡るのも疲れるだけと…そう思った二人は洛陽の外れの村に住み着くことを決めたのだ。
村の村長は二人を歓迎して向かい入れ、それから二人の共同生活が始まった。
まず家を手に入れた二人は金を稼ぐ、響が洛陽を、中心に用心棒としてお金を稼ぎ、元々司馬防のもとにいたふたりだったためにお金については未だに余裕もあり響の稼ぎもあって生活に困ることはなかった。
その上、ただ村でじっとしているのも、性に合わない如月も孫子を彼女なりに注釈した兵法書を作り、時々洛陽に出かけて売って、生活の足しにしていた。
二人の努力の結果、お金には困ることもなく半年間も苦もなく生活していたのだ。
「……ねえ、響」
「ん?なに?如月」
食事も食べ終わり家で寛ぐ響に如月はふと耳にしたことを思い出して響に話しかけてきた。
「実は今都で妙な噂が流れているの」
「変な噂?」
「うん、天の御遣いっていう噂……何でも光り輝く衣纏った御遣いは天の国から流星に乗って現れその人は世界を平和にするって噂」
今、都で噂になっているという話を響に聞かせると少し考えた後、くだらないと言わんばかりに溜め息を吐いた。
「はぁ…そんな、噂が本当なら今頃大陸中が平和だよ、差し詰めほら吹きの詐欺師といったところか…」
大凡の予想をつけて話す響に如月は納得いってないのか、如月が思っていることを話しだした。
「確かにそう思うけどね、天の御遣いって響のことじゃないかって私は思うの」
「俺が?天の?」
如月から言われたことは予想外なことであり、如月を見て唖然とする響、そんな彼を見て如月は話を続ける。
「だって響はこの時代より未来から来たんでしょ?だったら未来の世界が天の国と仮定すれば…」
「……確かにそういったことも言い当てられるけど……俺はそんな大層な人物じゃないよ……今を必死に生き抜いてる……他と変わらないただの人間さ」
如月の告げた仮定を聞いて、少しは納得をする響であったがすぐに自分が御遣いであることを否定し他の人間と大差変わらないと断言した。
「……そうね」
既に長く響と過ごしているために響のことを知っている如月は彼らしいとクスリと笑みを浮かべその後、響に近寄り体を響へと寄り添う。
「響……ねえ今夜は……」
「…………したいのか?」
「うん……もう一週間よ……響がいない間寂しかったのよ……だから……今日は安全日だから」
「……わかったよ」
そういって二人は唇を合わせて濃厚なキスをして夫婦の営みは深夜まで続いた。
翌日……
早朝に響は都に依頼が無いか探しに行き、残った如月は自らの才を磨くために学問書を読んでいた。
「多分、響は依頼もそう簡単に入ってこないだろうし……今夜も一緒よね」
学問書を集中して読んでおらず、如月の頭の中は響のことでいっぱいで浮かれていた。
「昨晩は安全日だったけど今度は危険日で響として…受精したいなぁ~子供は男の子かしら、女の子かしら……どっちでも可愛いのは間違いないし……」
と響との今後のことを妄想していると外から慌ただしい足音が聞こえてきて、大慌ての響が帰ってきた。
「き、如月!!」
「え?響、そんなに慌ててどうしたの!?」
声に焦りが見える響に如月も突然帰ってきたことに動揺して驚きつつもその理由を訪ねた。
「ついさっき……次の依頼が決まったんだ」
「え!?もう次のお仕事決まったの!?」
昨日帰ってきたばかりだというのにもう次の仕事が決まったことに驚きをする如月
しかしそう告げた響本人はあまりいい顔をしておらず何かあるのかと如月は首を傾げてまた訪ねた。
「でも依頼と響の態度と何が関係するの?」
「次の依頼も物資の護送なんだけど……場所が……その……」
「もしかして……成都とかかなり離れた場所なの?」
護送依頼を受けたことを話す響であるが行く場所に何かあるのかと、思い如月も遠くの場所なのか指摘したが響は首を横に振って否定した。
「いや、違うんだ……護送先は………陳留なんだ」
「……え?ええええぇぇぇぇぇぇっ!?」
依頼先が陳留だと明かした響、それを聞いた如月も大きい声で驚きの声を上げた。
半年という時間を平凡な生活を過ごしていた響と如月、しかしそれをぶち壊すことになるとは……この時の二人には想像もできないことであった。