戦国†無双   作:ウィングゼロ

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どうも、ウイングゼロです
まず始めに

誠!!!

申し訳…

ございませんでした!!!!!!!!!

先週投稿できず…まさかいつものと不安に駆られた読者もおられたと思います。

先週は中々モチベーションが上がらず期間に間に合いませんでした。

今回はそれを返上ともに本気で書きました。

今回は約9000文字です。

コメント、評価は募集しております。

最後に改めて先週更新できなくて申し訳ございませんでした。そしてこれからもよろしくお願いします


第十二話

「…はぁ…」

 

何を思ったのか暗い顔をしながら溜め息をつく、響

 

何故響が浮かない顔を浮かべているのかそれはほんの10日前…曹操の書状が届き、司馬懿が何やら考えついたあの日からであった。

 

その日の晩…いつも食事をとっていた司馬懿が余り料理に手をつけず、徐々に目に見えるように衰弱し始めていた。

 

余り料理を食べなくなった当初は政務もまだこなせていたが今では寝床に伏せていることが多くなり、政務は補佐であった響が肩代わりをしてこなしている。

 

「どうしてこうなったんだろう…」

 

響はこの状況の起因を考えたが、十中八九で曹操が絡んでいることは明白であり…非力な響にはどうしようもないことであった。

 

そんな響に出来ることは…

 

「取りあえず、出来たから持っていくか」

 

厨房にて器に盛らせた響が簡単に調理したお粥をお盆に乗せて持ち、司馬懿の寝室に向かう。

 

「仲達様、食事持ってきたぞ」

 

「…響さん入ってきて」

 

司馬懿の部屋の前で立ち止まり、室内にいる司馬懿に声を掛けると、それとなく元気のない声が響に返ってきて、中に入ると、寝床に仰向けで横たわる司馬懿の姿がそこにあった。

 

「響さん…」

 

「仲達様、無理に体を起こさなくていいよ」

 

響が入ってきたことで司馬懿は横たわっていた体を起こしそれを見た響は司馬懿の体にあまり無茶はさせたくないために体を起こさなくてもいいと話したが司馬懿は首を横に振ってそれを拒んだ。

 

「流石に主君といえど、横たわって接するのは失礼でしょ?」

 

「…仲達様がそういうなら…」

 

礼儀ありと言わんばかりに上半身だけを起こす司馬懿、それを見て少々気が気でない目で響は司馬懿を見て返事をした。

 

その後、司馬懿は響が持つお盆に気がつくと、響は司馬懿の寝床前まで歩き近くの置き場にお盆を置くと司馬懿に向けて言った。

 

「あまり、喉が通らないとおもったからお粥を作った…これ食べて少しでも体をよくしてくれ」

 

そう言い残し、響は病が移ることを思ってか直ぐさま部屋から出て行こうとすると、突然、袖を引っ張られている感覚陥る。

 

「?仲達様?」

 

袖を引っ張られた感覚で後ろに振り返ると響のブレザーの袖を掴んでいたのは司馬懿で、弱々しい顔つきで響をみつめていた。

 

「…その…食べさせて…ほしいな…」

 

と弱々しい顔つきに加え、上目遣いで響にお願いをする司馬懿

 

そんな途轍もないコンボを不意打ちで受けた響は抗うこともなく、陥落…近くにあった椅子を司馬懿の寝床の前に持ってきて座り、先程置き場に置いたお盆を司馬懿の寝床の隅に乗せると器の中にあるお粥をレンゲで掬い、それを司馬懿の口元までに運ばせる。

 

「熱いから少し冷ましてから食べろよ」

 

「ふー…ふー…はむ」

 

司馬懿の口元へと運んだ、響は出来たてのために火傷するかもと思い、優しく注意し、すると司馬懿は響が掬ってくれたお粥に息を吹きかけてお粥を少し冷まさせると口を開けてお粥を一口食べる。

 

「おいしい…」

 

しっかりと噛んだ後飲み込んで、口に合ったことから司馬懿は賞賛の言葉を述べる。

 

「それはよかった」

 

賞賛の言葉を受けて響はほっとした表情を受け止めながら簡単に返事をする。

 

そしてまた司馬懿にお粥を食べさせようと、響は器にあるお粥を掬おうとしたときであった。

 

「誰か居らぬか!!!!!」

 

「っ!?」

 

玄関の方からか誰かの大声がこの家全体に響き渡り、それに驚いて響は玄関のある方角へ顔を向けた。

 

「誰か…来たのか?」

 

響は戸惑いがこもった言葉でレンゲを器にうまく乗せて椅子から立ち上がり部屋のドアへと手をかける。

 

「来客者が来たみたいだから会いに行きます…仲達様はそのまま休んでいてくれ」

 

とそう言い残し響は部屋から出て行き、廊下を歩いて行くと、その際中も大声を出して家主である司馬懿を呼ぶ、それで司馬懿が大声に響いて体に触られると厄介なために響は急いで玄関前行くとそこには見慣れないふたりの女性が立っていた。

 

一人は大声を上げていた方なのか黒髪で腰まで伸びた髪が特徴な女性。

 

もう一人は珍しいと思う水色の髪で前髪が片目を覆うように延びている女性、その女性は黒髪の女性の少し後ろに立っていた。

 

「お待たせいたしました…この場に何用でございましょうか?」 

 

まず、待たせたことへの礼を入れて、それから響は二人に司馬懿の自宅へ来たのかを訪ねた。

 

「む?貴様が司馬懿か」

 

「違うぞ姉者、恐らく召使いのものだろう」

 

出て来た響を勘違いしてか黒髪の女性は響のことを司馬懿かと確認を取ると、後ろにいた水色の髪の女性はそれを否定して響が召使いであることを予想してそう言った。

 

そしてその二つの話を聞いていた響は目的は司馬懿にあるのだろうと理解して、口を開けてこう言った。

 

「我が主君、司馬仲達様への来訪…それがあなた方のここへ来た目的でございましょうか?」

 

「その通りだ!華琳様の命により、司馬懿とやらを連れてくるようにとのことだ」

 

黒髪の女性の言葉に響は眉をひそめ、先程黒髪の女性が言った言葉を脳内で考える。

 

(華琳…というのは誰なのかはわからないが…連れてくる…ねえ、まるで本人の有無関係なしのようだな)

 

黒髪の女性からの言葉で本人の意思を無視してでも司馬懿を連れて行こうとしていることを察しして響は泰然とした態度で言葉を返した。

 

「我が主君からは此度、客人が来訪するという話は存じておりませんが…なにやら事前に来訪を知らせる書状などはございませんでしたか?」

 

「何を言っているのだ!華琳様より書状は届いているはずだ!」

 

予想外の来客に事前にアポイントメントを取っていないのかと訪ねると黒髪の女性は話が噛み合わないのか、華琳という名前の人物からの書状は届いているはずだと主張した。

 

食い違う二つに意見、それを聞いていた水色の髪の女性はふと思ったことを響に訪ねた。

 

「ならば、曹操様からの書状は届いていないか?」

 

ふたりは先程から華琳という名前を使っていた、それは曹操の真名に当たる名前で、一介の補佐などでは知るはずもない名前、ならば姓名で訪ねれば何かわかるかもとそう思って水色の髪の女性は曹操の名前を出した。

 

すると響もその名前には聞き覚えのある名前だったために思い当たる表情を浮かべて、来客のふたりに対して返事を返した。

 

「曹操殿ですか、それならば先日、書状を受け取り司馬懿様もお読みになられました」

 

「なんだ、届いているではないか…」

 

「姉者…」

 

響の返事に、黒髪の女性はきょとんとして何も疑問に思わずに言い、それを後ろから見ている妹はため息を溢しながら哀れんだ。

 

「まあ、とにかく、何故司馬懿は出てこないのだ!すぐに司馬懿を此処に連れてこい」

 

と黒髪の女性は本題に戻そうと、司馬懿を呼びつけるようにと響に言うと今司馬懿が動ける体調ではないことを知っているため申し訳ない気持ちで黒髪の女性に返事をした。

 

「申し訳ございません。ただいま司馬懿様は病に倒れ療養中なのでございます。」

 

「なに?司馬懿殿は病に?」

 

響は司馬懿の現状を2人に説明すると水色の髪の女性は驚いた顔で司馬懿がに病に倒れたことを心配する声をあげた。

 

この場が少し重々しい空気がたちこもる中…ただ一人理解できていない人物がいた。

 

「む?何を言っているのだ、それぐらい気合いで何とか出来るであろう」

 

と病を気合いで治せると本当に信じているのか嘘偽りない眼差しを響に向けながら話す黒髪の女性。

 

それを聞いた水色の女性は額に手を当てて、彼女の頭の中では予想できたのか、ため息を溢し、常識が欠けているとは思ってもいなかった響はその場で唖然として固まった。

 

「姉者…姉者のように気合いで何とか出来るものではない…」

 

「む?そうなのか?」

 

流石に擁護しなければと水色の女性は響を擁護するように黒髪の女性に司馬懿は黒髪の女性とは全く違うと言い、それを黒髪の女性はそうなのかときょとんとした顔つきで水色の女性を見た。

 

そんなやりとりを見て、響は何でこんな常識はずれの人物を使いに回したのか…曹操の意図が読めなかった。

 

そんなことを響が思っている内に二人の話し合いが終わったのか黒髪の女性は納得がいっていないような表情を響に見せている。

 

「司馬懿殿が病に倒られていては、仕方がない…日を改めてもらおう」

 

と水色の女性が今日は諦めたのか後日、また来客すると響に言い残して黒髪の女性を連れて玄関から去って行った。

 

 

「…行ったか…全くいきなり過ぎて困るよ」

 

響の目から彼女らが見えなくなったのを見計らって張り詰めていた緊張を解き、大きく溜め息を付いて少し愚痴をこぼした。

 

「取りあえず、仲達様に報告だな」

 

気を取り直してまず事情を気になっているであろう司馬懿に話そうと司馬懿の部屋へと引き返す。

 

そして司馬懿の部屋に戻るとそこに広がる光景に響は驚いて固まった。

 

「あっ、響さん、来客者との話し合いは終わったのね」

 

そこにいたのはいつもと何ら変わりのない司馬懿…

 

なぜその何ら変わりのない司馬懿に響が驚いているのかそれは…その司馬懿が先程までは病を患っていたためである。

 

病を患っていないような表情をしている司馬懿に響は驚きを隠せないのだ。

 

「ちゅ、仲達様!?」

 

「そんな驚かなくても…ってそっちの方が無理か」

 

驚きの声を上げる響に先ずは落ち着かせようとする司馬懿

 

しかし、その元凶となっているのは彼女自身であるために仕方がないと司馬懿は少し苦笑いの笑みを零した。

 

「えっと、病のことなんだけど…あれは嘘なの…実際は病なんかにかかってないし」

 

と司馬懿は自身が病にかかっていたことを否定して更に響を驚かせた。

 

衝撃の事実に驚かされた響であったがそれと同時に司馬懿に対して怒りも湧き上がり、声を荒げて司馬懿に言った。

 

「病が嘘なら何で俺に何も言ってくれなかったんだ!」

 

「っ!それは…」

 

「俺がどれだけ心配したか、わかるか!?」

 

怒りの声を上げる響に本気で怒ってくるとは思っていなかった司馬懿はたじろぐ。

 

「ごめんなさい…でも悟られるわけにはいかなかったのよ…」

 

「……」  

 

怒っている響に司馬懿は騙していたことに謝罪をしてことの経緯を話しだす司馬懿、その先端を聞いて響は先程の2人組を頭の中で思い浮かべる。

 

「もし、私が曹操の使いにあったら最後、間違いなく有無を関係なく、陳留に連れて行かれていくことになる…でも仕えたいとも思わない人に仕えたくないもの…それに…」

 

会った場合のもしもの予想を話す司馬懿に響も確かにと重いながら司馬懿の話を聞き続ける。

 

司馬懿は一度話を切って、溜め息をついて深呼吸をすると少し顔を赤らめて響を見ながら小恥ずかしい表情で話し始めた。

 

「曹操の所だと…響さん、重宝されないと思うし…もしかしたら…響さんとは離ればなれになるかも…」

 

ともじもじと遠回しで響と一緒にいたいと告白まがいな発言が飛び出し、それを真剣に聞いていた、響はもちろんこと顔を赤くした。

 

「あっ!べ、別に響さんのことで曹操のところに行きたくないわけじゃないの、単に馬が合わないだけだから!」

 

「お、おう」

 

自身が告白まがいな発言をしたことを言ってから数秒後気がついた司馬懿は直ぐさま訂正して慌てて話すが、響に告白まがいな発言を聞かれたことには変わりなく、まだ正気に戻れずに戸惑いながら響は返事をした。

 

「…と、取りあえず…仲達様はどうしても曹操軍に行きたくないから…仮病で面会を回避した…そういうこと?」

 

「ええ、本当にごめんなさい!」

 

響は司馬懿の話を聞いて、簡潔に司馬懿の仮病の理由を纏めて復唱するとそれに頷いた司馬懿は響を騙していたことからお辞儀をして謝罪をした。

 

「…はぁ…別にもうそこまで怒ってないよ…敵を騙すならまず味方からなんていう言葉もあるしさ…でも相談くらいはして欲しかった」

 

謝罪されたことを見て、響は一度溜め息を溢すと、もう怒っていないことを話した後、次からは相談にして欲しいと告げた。

 

 

そして漸く、司馬懿の仮病の件が片付いたが2人の問題は残っている。

 

曹操の使いの2人はまた後日日を改めてと言っていた。

 

つまりはまた来るのは確定していること、そして司馬懿は会うのを拒んでいるために接触するのは必ず避けなければならない。

 

その上今回の仮病のことがバレれば間違いなく曹操は激怒して司馬懿を捕まえに更に人員を使って曹操の元へ引き釣りだそうとする。

 

それは響にとっても当然喜べる訳がない。

 

そして司馬懿は曹操の使いが来ることを予期していた…次にとる策も準備が整っているために、笑みを浮かべて響に向けて話した。

 

「響さん、今晩中に誰にも悟られずに旅支度の準備を」

 

とそういうと、響は納得した表情を浮かべて返事を返した。

 

「っ!そうか!だからあの時旅用の鞄なんかを!」

 

曹操の書状が届いた、直後に出かけた買い物、その理由はこのためであったことを響は漸く理解した。

 

その理解したことで一つ重大なことにも気づき、響は真剣な眼差しで司馬懿を見てその事を訪ねた。

 

「でも、そうなれば…此処から出ていくことに…司馬防様や伯達様、司馬孚様には…」

 

当然此処に出ていくこと言うことは親しい肉親との別れということになる。

 

肉親から離れる寂しさは現在進行形で身に染みて感じている響にとって良く理解できる感情であり、そのことを司馬懿に訪ねたのだ。

 

「いつかは、旅立つことにはなっていたこと…それに響さんと一緒なら寂しくもないし」

 

とうの昔に覚悟が出来ていたのか迷うことなく決断し…後半から司馬懿は赤く染めて響に聞き取れない声で呟いた。

 

「…分かった、それじゃあすぐに荷造りを済ませてくる」

 

「ええお願いね」

 

司馬懿の覚悟を見て響も腹をくくったのか、旅支度の準備に取りかかる。

 

 

 

 

 

 

 

そして時は流れ、深夜…辺りは静かに虫の鳴き声が響き、空から月の光が指して道をうっすらと照らす。

 

そんな真夜中の通路を余り音を立てずに移動する2人組がいた。もちろんのこと何も言わずに下野しようとしている響と司馬懿の2人である。

 

司馬懿が立てていた作戦の元に2人は東門へと夜の闇に紛れて進んでいく2人…誰にもバレず、見つからずに慎重に進んでいく2人

 

そして、一刻が経過して漸く東門前まで辿り着いたのだが、夜中に紛れて賊が侵入する可能性があるために門には警備兵が2人立って見張っていた。

 

「…辿り着いたのはいいけど…あの警備どうするんだ?」

 

箱車の陰から東門を見る響はすんなりとは通れないと見計らい隣にいる司馬懿に何か作戦があるのか訪ねる。

 

「うーん、響さん…うまく警備兵の目を引きつけて欲しいの」

 

「はぁ!?」

 

司馬懿は少し悩んだ後、響に引きつけるように命令を出し、それを聞いて響は思わず声を出した。

 

「私は響さんが引きつけてる内に門の外に出るから、響さんはなんとか警備兵を同情させて普通に出て来て…それじゃあ行くわよ」

 

「いやいや!行くわよじゃないだろ!」

 

とんでもない作戦を聞かされた響を他所に司馬懿は具体的な作戦を響に小声で説明ししっかりと聞いていた響はいくら何でも問題だろうと小さな声で異議を唱えようとするもすでに箱車の陰からうまく物陰を駆使して門の近くに近づいていっており、異論は認めんということを理解した響は溜め息をこぼした。

 

「どうしろっていうだよ」

 

物陰から門の警備兵をみる響は本当に上手くいくのかと半信半疑な気持ちでどうするか考えた後、手で頭を強くかいて破れかぶれで物陰から出て東門の前に立った。

 

「むっ?そこで止まれ、こんな夜分に何か用か?」

 

東門の前につくと当然のごとく警備兵に見つかり2人の警備兵は俺に近づいてくる。

 

(ええい、ここまできたらやってやる!)

 

「…夜分遅くに申し訳ございません、なにぶん大急ぎなために…どうか一生のお慈悲で外に出しては貰えないでしょうか」

 

心の中でなんとか注意を引き連れようと決めて、響は大急ぎで外に向かわなければならないと急いでいるような顔をして嘘をつく。

 

「…しかしな、既に門を閉じる時刻なのだ、門が開くのは早朝だ、それまで待つことだ」

 

と規律なのでなと当然、響を外には出しては貰えない…しかし、響にも退けない理由があった。

 

「……丁度、日が傾きそうなときでした…私は仲達様の元で補佐として働いておりました。仲達様はご病気を患え苦しんでいる中、私は仲達様の変わりに仲達様の意向の元、政務を全うしておりました。昨日と変わらぬ執務…昨日と同じように終わると思っていたその時に私の元へある知人が訪ねて来たのです。しかし私はその知人の変わり果てたやせ顔を見て鳥肌を立てました。知人はその場で倒れ、私はすぐさまに医者を呼ぼうとしたのですが、知人はそれを拒み…今にも消えそうな声で私に必死にこう告げました。昨今私が生まれ育った小さな村は凶作で食べ物は殆どなく、皆飢えを少ししかない食料で凌いでいると…しかし、いつかは食料もそこをつき飢え死ぬ者が出てくるかも知れない…そう思った知人はこの長安で官職をやっている私の元へ村から走ってきたのです。もちろん、此処から私の村までは相当な距離があります…ここからでもおおよそ3日はかかるでしょう…それほど徒歩では苦難な道のりを彼は一色懸命走ったのです。平地を駆け、山道を駆け…その道中足はもちろん悲鳴を上げ踵からは血がにじみ出し疲れと痛みを抱え耐えながら三日三晩彼走り続けた。そして、私の元へ辿り着いた知人はその村の危機を私に伝え、村が助かるという安堵感から…彼は息を引き取ってしまった。私はそんな彼の亡き骸を手厚く葬り…今も苦しむ、仲達様に心苦しくも村を助けるまでの暇を与えてもらったのです。仲達様も病に苦しんでいるというのに何と寛大なる処置、私は心から仲達様を敬愛しました。そして仲達様の元へと離れる自分の忠義に背徳感を感じながらも私は旅支度を終えて長安から立ち去ろうと思ったのです…ですが、既に今は真夜中…当然のごとく門は固く閉ざされている…ああ!村の者達は今も私の帰りを待っているのでしょう…しかし私にはこの門を越えることが出来ない、今このときも村の者が飢え死んでいるかもしれないというのに私は此処で立ち止まることしか出来ないのです。聞いている兵隊さん達も私の話を聞いて心苦しく思うでしょう…しかし…私はあなた方を責めているわけではございません…あなた方は定められた法の下、職務を全うしているのだから…しかし!今の助けを待っている村のことを思うと私は心苦しく、怒りが募るのです、私はこの怒り何処にぶつければいいのか…このような法を定めた国?それともこのような上下が激しき環境を作り出した世界?はたまたは友が命落として伝えた危機をただ見ていることしか出来ない私自身!ああ、神よ何故このような残酷な世界を作ったのか、村の者は今、命がつきようとしているというのに、私は何も出来ない、これが村の者へと下された天命というのか…」

 

(……自分自身言ってることだが、何言ってるんだ俺は!!!なんだよ知人って!俺この世界に親しい知人なんてそういないし生まれた故郷もでっち上げだし、しかも…平地を駆け、山道を駆けって…何処のメロスだよ!思わずあの名作の一文を真似てた気がする!しかもさっきの会話だけで文字数1000越えたし!作者夜中に即行の思いつきで良くここまで書けたな本当に!!)

 

響は長々と門を出たい理由を熱弁しそれを終えた直後心の中で熱弁中に述べた言葉に対してツッコんだ。

 

こんな熱弁もあって警備兵は完全に響に釘付けになり、その間に司馬懿は難なく門の外へ出ることに成功していた。

 

響の熱弁で司馬懿が笑いを堪えていたのは余談である。

 

響の熱弁でどうすべきか困惑する警備兵達。

 

響も行けるかと不安に思いながら警備兵の返答を待っていると後ろから足音が聞こえてくる。

 

「うにゅ?どうしたの?」

 

「し、司馬朗様!」

 

(げっ!伯達様!)

 

響の後ろから現れたのは司馬朗であり、響の声を聞きつけてか気になって東門にやってきたのだ。

 

予想外の人物に焦りを感じる響、そんな響を他所に司馬朗は警備兵の元に立つと警備兵から響の門の外へと出る経緯を説明を聞く。

 

説明を終えた後、少し考える仕草を取った後、すぐに響に顔を向け、向けられたことで響は体をびくつかせて緊張を走らせる。

 

「…いいよ、通してあげて」

 

何か訪ねてくると思っていた響であったが、司馬朗の発した言葉は警備兵に対しての命令であった。

 

「よ、よろしいので」

 

「うん、響さんは私も知ってるから…」

 

と戸惑っている警備兵達を言いくるめるように話すと命令を受けた警備兵達は慌てて門の開門の作業に入る。

 

「開門!」

 

警備兵達が門を開けはじめる中、司馬朗はなぜが笑みを浮かべて響の耳元に小声で囁いた。

 

「如月ちゃんのこと…よろしくね」

 

「っ!?」

 

その言葉から完全に作戦がバレていることを察した響は目を大きく見開き、戸惑いを見せるが、司馬朗はそんな響の背中を強く押して、こう告げた。

 

「さあ、行った行った、待ってる人がいるんでしょ?」

 

嘘の理由(村の人達)本当の理由(司馬懿)どちらの意味とも取れる言葉を受け取り、響は手を貸してくれた司馬朗に深くお辞儀して門の外にへと出ることに成功した。

 

門から出て東に少し走り門から余り視認できない距離になると、そこに先に出ていた司馬懿が響の到着を待っていた。

 

司馬懿は響の姿を視認すると笑みを浮かべて響のもとに駆け寄ってくる

 

「響さん!無事に出てこれたのね」

 

「ああ、伯達様が…助けてくれた」

 

響は司馬朗のおかげで出てこれたことを話すとやはり知らせていないために司馬懿も大きく驚くが…すぐに冷静になって笑みを浮かべた。

 

「そう、睦月ちゃんが(睦月ちゃん…ありがとう)…さてと…急いで隣の村まで行きましょう…明日の朝にはもしかしたら曹操の使いが追撃に来るかもしないから」

 

「そうだな、隣の村には逃走用の馬を1頭買ってあったな…」

 

「ええ、急ぎましょう」

 

司馬懿は響の脱出に手を貸してくれた司馬朗に心の中で感謝を述べると隣村まで行き、予想される曹操の手からの追撃を躱すべく急かす。

 

響も頭の中で思い出せる隣村で用意してある馬のことを思って急ぐことに賛同して響と司馬懿は足を走らせて長安から離れていく。

 

そんな遠ざかっていく長安を背に響は顔を後ろに向ける。

 

(約7ヵ月だったけど……大変お世話になりました!)

 

と、心の中で長安で過ごしたことへの感謝を述べて響は顔を前を向けて隣村へと急いだ。

 

 


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