私
「尾行って・・・」
秋
「簡潔に言えば、尾行して拓斗の住んでいる所在地を確認して欲しいのです。」
私
「自分で行けば良いじゃん」
秋
「いや、私はあまりフィールドワークが得意ではないのです。・・・今までの情報と交換条件として提示しているのです」
うっわ、汚ぇ。対価はいらないって言っていた癖に。
秋
「いつもなら、です。今回はけっこう情報の価値が大きすぎてさすがにただで渡すわけにはいかないのです。・・・それに上手く誘導すれば尾行という形を取らなくても済むのです。」
私
「尾行じゃない形?」
秋
「一緒に帰ればいいのです」
・・・・
秋
「一緒に帰りながら、商店街とか道中の道案内をすればいいのです。席が後ろなんですからその位は簡単にこなせるはずです。大丈夫です、一言『一緒に帰ろ?』って可愛い声で言えばいいのです」
私
「・・・それを秋は尾行して記事にするつもり?」
秋
「」
おい。せめて誤魔化せよ
私
「まぁ、わかったよ・・・」
秋の性格から考えると簡単に引き下がるようなキャラではないだろう。絶対に意見を譲らないに決まってる
それに私自身としても放課後時間があるわけだから、引き受けてもいいだろう。
私
「その代わり、尾行不可能と察したら帰るからね」
秋
「もちろん。まかれても仕方がないです。・・・でも出来るだけ尾行して住んでいる場所の方向だけでも得られるようにしてくださいね」
私
「はーいよ。・・・それともう一つ質問して良い?」
秋
「なんです?尾行のコツですか?それとも私の後ろにいる用心棒のことですか?」
私
「あ、いやそうじゃなくて・・・いや、どうして用心棒なんかいるのかも疑問だけどさ」
とりあえず、今はこっちの方が優先。秋の身内のことは後で聞ける。
私はもう一度スマホを開いた。そしてRINEを起動。
私
「秋からもらった怪異現象の目撃情報地図。これをみて不思議に思ったの。」
秋
「え?全部説明したつもりでしたが?」
私
「地図の説明をするときに、秋は『マッピングが集中している場所がある』と言って、『私の住んでいるアパ-ト』と『商店街の中央広場周辺』について言っていたでしょ?それ以外の情報はないの?」
秋
「あ、あぁ・・・そうですね・・・私としては集中している場所しか詳しく覚えてませんが、確かにあちこちに点在している目撃場所はあります。しかし特に規則性が見られませんでしたし、今回の調査からは除外しました」
私
「・・・・この地図を見ると・・・」
どう考えても・・・・
私
「街の真ん中辺りにもマッピングが集中している気がするんだけど・・・」
宵石町のほぼ中心にもマッピングが集中している場所が確かに存在しているのだ。むしろアパートや商店街よりもマッピングの密度は濃い
私
「私としてはこちらの方も不審に感じるんだけど・・・」
秋
「・・・あ、あぁ、・・・それはですね」
秋の目が泳いだ。・・・?何か言えないことでもあるのだろうか
用心棒
「・・・若菜殿」
私
「うわ、びっくりした!!」
いきなり用心棒さんの野太い声で呼びかけられた。
用心棒
「お嬢は詳しく知らないことなので私が完結にお伝えします。
・・・この街の中心には少し小高い山がございます」
部室の窓を用心坊さんが見た。私も釣られてみると、確かに方向的に見えるあの山のことを言っているのだろう。
用心棒
「・・して、あの山については私が幼き頃から言われている話がありまして。・・・『人が絶対に入ってはいけない』とこの街でキツく言い伝えられている山なのです。
街の外から来て興味本位に出入った人間を私は見ましたが、今のところ次の日までに死亡されているのです」
私
「死亡・・・」
用心棒
「死亡理由は不明。ショック死を言われていますが・・・でもとりあえず、入ってはいけないと言われて実際私たち住民も決して自ら入ったことがないほどなんです・・・そんな奇怪な山について、私達は干渉してはいけないんです」
用心棒さんの顔は真面目で、「これ以上この話をするな」と言われているような気がした。