霊って信じますか?   作:菅原ひかり

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朝の会で私はようやく高校生活の一日の始まりを感じる。

 

 

 

 先生が今日の日程だとか、一ヶ月後のイベントの話をしているが正直興味がない。ってかそんなに話しても覚えられないからそこら辺に紙に印刷して貼っておいた方がいつでも見れて効率的だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな先生のどうでも良い事務連絡よりも重要なのは、転校生の情報だ。誰だってそうだ。絶対先生の話を真剣に聞いている人なんていない。ってか斜め前の男子、隠れてスマホをいじるのやめろ。秋にいたってはカメラで転校生を撮るな。無音カメラを何故知っている。

 

 

 

 

 

 

 その転校生は既に教卓の前に立ち、自己紹介の合図が来るのを待っている。

 

身長は・・・165くらいか?私よりは大きい。すこしぼさっとしている髪の毛。眠たそうな目(実際眠いのかは知らない)。着ている制服がぎこちない。ってかあまり制服の着こなしが良くない。慣れていないのだろうか?

 

一点・・・教室の後ろをじっと見ている。・・そりゃそうか、何も見る物がないもの。むしろ早く自己紹介をして椅子に座りたいのだろう。

 

 

 

先生

「では、今日から転校生として入ってきましたので自己紹介をお願いします」

 

「あ、はい」

 

 

結構あっさりと返答。緊張はしてないようだ。

 

転校生は一回視線をクラスに下ろした。そして口を開けた。

 

 

「初めまして。ウラダタクトと言います」

 

 

「え?漢字はどんなの?」

 

 

野次はえーよ。確かに気になるけれども。浦田?宇良田か?

 

タクト君は動揺はせずに、黒板に自分の名前を書いた。

 

 

 

 

 

『卜田 拓斗』

 

 

 

 

 

 

・・・卜田・・・聞いたことがない名字だ。絶対PCの予測変換では出てこないだろう。私の心の中では『拓斗君』と呼ぶことにしよう。その方が・・・楽だ。

 

 

 

拓斗

「えーっと。本当は入学式からこのクラスにいる予定でしたが、少し手続きでごたごたしまして、遅れてクラスに来ました。昨年とは全く違う環境で生活することになりましたので色々と不便をかけると思いますが、仲良くしてください。よろしくお願いします。・・・あ、一人暮らししてます」

 

 

 

そう言ってぺこりと頭を下げた。クラスの拍手もタイミング良くきた。

 

 

 

 

 

 

 

・・・地味。テンプレ通りの自己紹介な気がしたぐらい普通の自己紹介だった。

 

 

はたしてクラスメイトとなじめるのだろうか?私みたいにグループに入れずに孤立するような気がするが。いや、でも男子だから平気だろう。高校まで来ていじめみたいな事はないと思うし。ってかそんな人の心配をする余裕など私にはないだろうが・・・

 

 

 

 

さて、席のことだが・・・

 

 

 

先生

「では、拓斗君は若菜さんの後ろの席でお願いします」

 

 

 

ま、そうなるわな。そのための空席だったのだから。

 

 

拓斗君は軽く先生に会釈するとバックなどを持って私の後ろに座った

 

 

 

拓斗

「・・よろしく」

 

 

 

すれ違う瞬間、気のせいでなければ私にそう、言った気がする

 

 

 

これで何も言わないと失礼だろう。

 

 

 

「・・・こちらこそ」

 

 

事務的だが、簡単に返答。

 

 

思えば、私も高校生になって初めて挨拶をしたのだった。

 

 


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