私は深く物事を考えるようなキャラじゃない。朝であろうとよるであろうと私は何も考えて生きてないのだ。
友人がいないこの空間で面白いことを考えてもそれを実際に行為に移せるわけでもないのだから、考える必要もない。いっそのことその場の空気に合わせて行動すれば良いだけの話である。
8時半になると生徒の大半も埋まって教室内がざわざわとうるさくなってくるのだが、案の定私の後ろの新しい机に注目がいっている。男子生徒にとってはいつも戯れるために使っていた空間が消えてしまったのだから戸惑うのも当然だろう。私の後の机に注目がいくせいで私にもいくつかの目線が届く。・・・もちろん私は既に後ろの机に興味は持ち終ったので、いつものように小説を読んでいるので目を合わせようとはしないのだが。
「・・・若菜さん?若菜さんはその机のことを知っているの?」
女子生徒が一人話しかけてきた。
私
「・・・・いいえ、私が来るときには既にあったよ」
「・・・その口ぶりだと、今日だけは他の人より早く来ているようね」
うむ・・・そこに注目してくるとは。
本を読んでいた手をやめて、私は声の主を見た。
「やっと私の顔をみて話してくれたわね」
三橋秋・・・赤いメガネで身長はやや高め(私基準)。スタイルもまあまあ良し。特徴的なのは常に人と話すときにはボールペンとメモ帳を装備しているところだ。クラス・・・いや学年内の情報通といえば良いのだろうか
「情報通なら私よりも貴女の方が知っていると思うけど・・・」
「いくら私が情報通でも今日来てみたばかりの出来事までは把握できないわ。・・・この高校の職員室は廊下から見る窓がないからそこまで調べられないし・・・ってか『貴女』じゃなくて『秋』でよろしく」
・・・会話して1分足らずで呼び捨てを要求してきやがった。
だが、とくに断る理由もないので私は要求を呑んだ。
「・・・で、私も後ろの机も知らないんだけど。もしかして情報集めしてるの?」
「そりゃもちろん。新人の報道部としては色々と調べたいのですよ」
「報道部?」
「私の部活です。中学からこういうことが好きなんで」
「中学でも報道部を?」
「いいえ、中学は個人的に活動してただけです。定期的にメルマガを配信してましたが。私のメルマガは自慢でないですけど信憑性もあり人気がありました」
中学生からそんな活動を・・・そんな報道することがあるような中学にいたのは面白そうである。
閑話休題
「ところで、若菜ちゃん」
「私のことも呼び捨てで」
「では若。」
「略すな」
江戸か。
「実は後ろの机だけでなくて他のことも聞きたいんですよ」
「他のこと?私が何かやった?」
たぶん秋との会話が高校生初めての会話だから何もやらかしてないはず。
「いいえ、若は何もやってません。そんな情報もないですし。聞きたいのは『噂』の把握です。」
噂・・・?
「あちゃー・・・そのリアクションだと、知らないみたいですね。」
「人との交流がないのでね」
若干皮肉入りで返事を返した。秋は悪くはないのだが。
「噂というのは『幽霊の目撃』ですよ」