達也達を見つけたはいいけど、何やら深雪さんがお怒りのご様子。
「達也、何故にマイシスターはお怒りで?」
「それは、なのはが遅れたからだろ」
「いやぁ、ID交付の際に、ちょっとね。ごめんなさい、深雪。遅くなって。お詫びに達也がケーキを奢ってくれるから」
「何故お兄様が?」
「今朝なのはとそう言う取引をしたからな」
奢ってくれる約束なんだから仕方ないね。
「で、そちらの方々はどなた?」
「クラスメイトだよ」
「そう、達也の双子の姉の四葉なのはです。よろしくね」
「私は柴田美月です」
「私は千葉エリカよ。エリカでいいわ。なのはって呼んでもいい?」
そういい笑いかけてくるエリカだが、その目は何処か鋭い刃のようだった。
これは、あれだ。
剣豪同士のすれ違いざまに互いの実力に気がつく的な、あれ。
「ええ、なんならなのはちゃんでもいいわよ」
「深雪にも言ったけど、気さくな人?」
「さぁ、どうかしら?」
気さくな人なら小中と友人作れたはずだ。
「まぁ、それはさておき、ケーキ屋にでも行って交友を深めましょう?二人分のケーキ代くらいなら奢るわ」
「ええ!申し訳ないですよ!」
「そうよ」
「良いのよ、達也のケーキ奢るののついでだから」
達也が驚いた顔でこちらを見る。
達也には私と深雪のケーキ代を出せと言ったが、私が出さないとは言ってないし。
久々に達也の驚く顔が見れて私満足。
「はぁ、なのはには敵わないな」
「そりゃあ、弟がお姉ちゃんに敵うわけ無いでしょ」
「流石お姉様です!」
まぁ、私も仕事受けてるからお金はあるし。
〖という訳で、何か食べたいケーキあるかしら?〗
『あの、主。いきなり念話でどうされたんですか?』
〖だから、食べたいケーキある?お土産に買って帰るから〗
『……では、ショートケーキを』
〖おkおk〗
『それと、ミユキに私が料理を作っておくのでゆっくりしていてくださいと』
「じゃあ、行きましょうか。深雪、アインスがどうせ料理作って待っててくれるでしょうから、夕食前までゆっくりしてていいわよ」
「……また、アインスさんは。ではお姉様、お土産にアインスさんにケーキを買っていきましょう!」
「あの子はショートケーキが食べたがってたような気が」
先を歩くエリカと柴田さん、深雪。
私に達也は小さな声で、
「わざわざ、アインスに連絡したのか?」
と聞いてくる。
「私達だけ、ってのは流石に可哀想でしょ?あの子も家族なんだから」
「本音は?」
「アインスに対抗心燃やす深雪が見たかった」
「対抗心と言うか、呆れじゃないか?」
「あの子はあの子で暇なのよ。仕事にも連れてってないし。家事くらい許してあげなさい。今日も入学式開始前までは私の側に居たし」
「過保護なのは相変わらずだな」
「深雪に対する達也みたいに、ね」
さて、ケーキ何食べようかしら。
達也の財布は気にしない方向性で。
結局いちごショートケーキを頼みエリカ達と交友を深め家に帰った。
「お帰りなさいませ、我が主、ミユキ、タツヤ」
家に帰るとリインフォースアインスが出迎えてくれる。
このアインスさん、闇の書事件で消えた初代リインフォースさんその人です。
なんで家にいるのか、というのは……
まぁ、今度機会があったら。
「ただいま、アインス。あれでしょ?お母様達、来てるでしょ?」
「よくお分かりで。つい先程いらっしゃいましたよ」
達也と深雪は呆れて何も言えなそうだったが、私は手に持っていた箱をアインスに渡す。
「はい、ケーキ。予想ついてたからホールで買ってきたわ」
みんなが店を出た後で私一人残ってケーキを買ったので、達也達は私が後で食べる分かと思っていたらしい。
あの親バカお母様と叔母様も入学祝に来そうな予想はあったからね。
「今日の晩ご飯は?」
「三人のお祝いとして普段より豪華にしてありますよ。真夜様と深夜様の分も一緒に」
「ありがとうね、アインス」
「いえ、それが私の役目ですから」
「シャマル先生の料理スキルより高くて」
「そこですか!?」
「だってこの前、シャマル先生の料理のハズレ引いて死にかけたし」
あれはトラウマだね、三途の川見えたもん。
夕食を終えて部屋で本を読んでいる。
いやぁ、いきなりお母様に抱き着かれたりで大変だった。
ここに住むって聞かなかったし。
叔母様が無理矢理連れて帰ってくれたから良かったけど。
入学祝いに私はお母様達から絶版になっていた本を貰った。
達也たちが何を貰ったのかは知らない。
速攻で本読んでるから仕方ない。
「ふぅ、なかなかの読み応えであった」
絶版で電子書籍になってない作品だったから凄く読みたかったんだよ。
「さて、日課の魔法の練習をしましょうか」
〘ようやくですか、マスター〙
私が立ち上がると机の上に置いておいたシーカーが浮き上がり私の目の前に来る。
「怒ってる?」
〘いえ、生活リズムを崩すのを感心していないだけです〙
「さいで、なら地下にGo!」
この家には地下がある。
作ったのは私です、はい。
魔法訓練できる場所が近くになかったからね仕方ない。
仕方なく達也の実験室も作ってあげた。
深雪や達也も時々魔法を使っている。
私の場合目立つし、ディバインバスターとかだと結界張らないと被害出るしでなら地下にしようぜ!って感じで作った。
「あら、お姉様。魔法の練習ですか?」
「ええ、シーカーに生活リズムを崩すなって怒られたの」
地下に降りると深雪が居た。
深雪がいる場所はこの世界の魔法訓練用の場所。
私が向かうのはその下、リリカルなのはの魔法用の訓練室である。
深雪に降りてこないように言ってから私はシーカーを手に持つ。
「さて、シーカー、どこまでやる?」
〘モード・レイジングハートとモード・バルディッシュをいつも通り。それとストライクアーツのトレーニングを一時間ですね〙
「了解っ!シーカー、セットアップ!!」
〘Stand by ready. mode…Raising Heart.set up〙
「では、私も手伝いましょう」
私がなのはさんのバリアジャケットに身を包むと同時にアインスが降りてくる。
私の手には同じくなのはさんの愛機、レイジングハートが。
まぁ、人格はシーカーさんなんだけども。
「えぇ、最強と名高いアインスとやるのは疲れるんだけど」
こやつ、作品内と同じ実力してるからね。
めっちゃ疲れるけど逆ユニゾンもできるぞ?
強すぎて使う機会無いけどね。
〘訓練ですし、ちょうど良いことです〙
「ちょ!?シーカー!?」
こやつ鬼か!?
いや、スパルタ仕様なのは、私の自業自得なんだけどさぁ。
「では、行きますよ」
「何でそこで
〘これもマスターの為です。アインス、使用するのはホーミング系の弾幕で私が終わりというまでです〙
「主、いきます!」
お前アインスの皮被ったシグナム姉さんじゃねぇの!?
〘マスター、避けるか防ぐか、或いは砲撃で発射元を叩くか、同じくホーミング系弾幕で相殺するかして耐えてください〙
「シーカーの鬼畜!シュート!」
迫り来る弾幕をアクセルシューターや砲撃を駆使し相殺しながら回避し、障壁で防ぐ。
ぎにゃぁぁあ!?
掠った!
しかもこれ殺傷設定!
〘当たらなければ問題ありません〙
「当たったら問題でしょ!?」
なのはさんは同じこと出来るらしい。
本当にあの人達すごいと思う。
◇
「深雪、ここに居たのか」
深雪となのはの姿が見当たらなかったので、地下の魔法訓練室に来ると深雪がなのはの訓練を見ていた。
「お兄様!」
「なのはは……アインスと訓練か。やはり、魔法の次元が違うな」
軽々と空中を飛び回りアインスの放つ魔法を掻い潜っていくなのはを眺めながら、達也は静かに呟く。
「お姉様は凄いです。私にはあんな魔法、とても使えません」
「俺も無理さ。あれは俺達の使える魔法とは一線を画しているからな。だが、いつか、あれを使えるように解き明かしてやるさ」
〖いい雰囲気の所悪いけど、私の代わりに話しておいて!?〗
達也と深雪の頭の中に声が響く。
これは、なのはからの念話であると知っている二人は驚くことなく返事を返す。
「相手は誰だ?」
〖うえぉ!?え?相手?そんなん我が格闘技の師、ノーヴェ・ナカジマからだよ!あぶなぁ!?今髪が!前髪がジュ!って!?〗
達也は錯乱しかけているなのはをスルーして、通信用になのはが作ったデバイスを開く。
『よぉ、ってなんだ。達也と深雪か。なのの奴はどうした?』
「お久しぶりです、ノーヴェさん。お姉様なら今アインスさんと訓練中です」
『ノーヴェェェェエ!たーすけてー!アインスとシーカーが容赦ないのぉ!?』
『うるせぇからあいつのいる場所の音声切ってていいぞ』
達也も会話が出来ないので、なのはのいる部屋からの音声をシャットアウトする。
「それで?今日はどのようなご要件でしょうか?」
『よう、って言うか、あれだよ。久しく会ってねぇ教え子がキチンとやってるのか気になって……』
「ノーヴェさんは優しいですからね。お姉様なら毎日欠かさず練習をしていますよ」
恥しそうに目を逸らすノーヴェを見て、深雪は少し笑いそうになるのを堪える。
『そうか?ならいいんだよ。あいつここ最近は管理局の方の仕事で忙しそうだからな。もし実力が落ちてたらちみっ子たちが悲しむ』
「そう言えば、なのはは今度遊びに行くそうです」
達也の一言でノーヴェも一瞬顔がほころぶ。
が、慌てて真面目な顔を作る。
『ならヴィヴィオ達も喜ぶな。じゃあ、あいつにもよろしく言っといてくれ』
「分かりました、ノーヴェさんも体調にはお気をつけて」
「おやすみなさい、ノーヴェさん」
『おう、お前らもな』
通信が終わると達也は溜息をつく。
「別次元の世界との通信というのが当たり前になってたり、四葉では旅行として年に一回はミッドチルダに行くなど、世間から見れば異常だろうな」
「そうですね、でも、お兄様気づいていますか?お兄様はお姉様やミッドミルダの管理局の皆さんの魔法を見るのを楽しそうにしているのを 」
「それは……どうだろうな。俺には感情が」
「『無いわけじゃない、一定以上大きくならないだけ』ってお姉様も言ってますよ?」
敵わないな、と達也は深雪の頭を撫でる。
「……はぁ、そうだな。あの世界の魔法を見る度に自分も使ってみたいという思いや解き明かしてやるって気持ちになるよ」
「それでこそ、お兄様です!」
撫でられた深雪は御機嫌になる。
深雪が、なのはのいる訓練室からの音声をオンにすると、なのはの絶叫が聞こえてきた。
『この薄情者共めぇ!?』
〘マスター、回避しながらモードシフトしてください〙
『こんにゃろぉ!?モードシフト!バルディッシュ!』
〘mode shift…Bardiche〙
白を基調とした戦闘服を纏っていたなのはの身体が雷を受け光ると、その姿は黒を貴重としたマントを纏っていた。
『カートリッジシステム無くてもフェイトさんは速いんだよ!』
『フェイトの物ですか。なら威力より速度を上げましょう!』
『来いアインス!全部避けて一撃当ててやる!』
なのはは先程より機動が鋭く速くなり、アインスの弾幕も的確さを増していく。
「確か、モード・レイジングハートは頑丈なバリアジャケットと遠距離砲撃による一撃。モード・バルディッシュは速度による回避と懐に潜り込んでの鎌での一撃が訓練だったか?」
〘その通りです、達也。これの元の人達はそれを極めていますが、なのははまだ未熟なのです〙
「これが、空戦魔導師の戦い、か」
〘本当の魔導師の戦いはもっと凄いですよ〙
これが、一世紀しか歴史の無い魔法と、次元世界の魔法の差。
達也はその事に絶望することなく、むしろ、やる気になっていた。
激情は無くても、彼にも感情はあるのだから。
「お兄様、笑っていますよ?」
「……そうか、俺も研究に戻るよ。飛行魔法を、成し遂げたいからな」
笑っていたことを否定しないで達也は階段を上っていく。
その際、双子の姉の言葉を思い出した。
《感情は、育つんだよ?だから、いつか、達也の激情も、育つ日が来るかもね》
「なのはばかりに、背負わせてはいられないからな」
達也がなのはに抱く感情は、そう。
憧れ、だ。
それが、達也が客観的に見た己が姉に抱く感情だった。
「憧れ続けて、近づこうとすれば、いつか至れるだろう、か」
アインスに初めてあった時に言われた言葉を刻み込んだ達也の目は、確かにやる気に満ちていた。
リインフォースアインスをなのはの融合機として出したかった。
後悔はしてない。
この作品の達也君は本人も気がついていないけれど、ほんの少し激情が戻っています。
これは、深雪の他になのはが居るのと、自分が確固たる夢を持っているからです。
なぜノーヴェと通信出来るか?
デバイスあるし、こちらではなのはさん達は魔法を使えないけどなのはは使えるから改良して通信できるようにしたんですよ。
ミッドチルダに遊びに行く発言してるが詳しくはいずれ(次かその次になりそう?)